2017年10月11日(水)
【おすすめDLゲーム】西洋生まれのJRPG『Battle Chasers』をプレイ。ダンジョン探索にハマる良作
家にいながら手軽に買えて財布にもやさしい、そんなダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。本記事では、日本向けにPC版が10月4日から配信されている『Battle Chasers: Nightwar』のレビューをお届けします。
本作は、アメコミ作家にしてゲームクリエイターであるJoe Madことジョー・マデュレイラ氏が、1998年~2001年に手掛けた『Battle Chasers』というコミックを題材にしたファンタジーRPGです。
▲なじみのあるゲームシステムが多く、遊びやすい内容になっています。 |
RPGとしては、ストーリー、バトル、ダンジョン探索、カスタマイズ要素がうまくまとめられ、きちんと作り込まれたゲームになっています。ダンジョンは特に力が入っていて、ダンジョンに潜り、アイテムを手に入れ、キャラたちを強化していくサイクルは楽しく、気づくと睡眠時間が削れています(笑)。
ここからは、『Battle Chasers: Nightwar』の特徴やおもしろさを、ピックアップして紹介したいと思います。
なお、記事掲載後にPS4、Xbox ONE、Nintendo Switch版が配信されました。
JRPGへのラブレター
『Battle Chasers: Nightwar』は、キックスターターから起ち上がったゲームで、同サイトのゲーム紹介には、本作が“JRPGへのラブレター”であると書かれています。
▲JRPG愛のあふれた作品で、演出も含めたゲーム性にJRPGらしさがあります。 |
海外サイトを調べると、マデュレイラ氏は日本のゲーム・アニメ・マンガ文化を愛する人物で、ゲームの原作であるコミック『Battle Chasers』も日本のゲームやアニメから大きな影響を受けていたようです。
昨今、JRPGへの愛を謳う海外インディーゲームは少なくないですが、JRPGに影響を受けたアメコミがJRPGとしてゲーム化される例は、さすがに珍しいのではないでしょうか(笑)。JRPGスタイルで制作されたゲームだけに、オープニングアニメまで存在します。
『Battle Chasers: Nightwar』オープニングアニメ
本作の世界観は、まさにJRPGにあるような、飛行船や銃といったテクノロジーと魔術の融合した文明を持つファンタジー世界です。
この世界のテクノロジーと魔術には“マナ”というリソースが不可欠であり、主人公たちは、かつて大量のマナが眠っていたとされるクレセントアイランドという島を訪れます。そこで謎の敵対者からの襲撃を受けて、事件に巻き込まれていきます。
では、その主人公たちはどのような人物なのか? 続けて書いていきたいと思います。
キャラ同士の掛け合いが楽しい
主人公は、行方不明になった英雄アラムスを父に持つガリーという名の少女です。彼女を中心に、剣士のギャリソン、老賢者のノラン、ウォーゴーレムのカリブレット、盗賊のレッドモニカがいて、その5名が原作から登場する旅の一行となります。
▲敵の襲撃で仲間はバラバラになり、ウォーゴーレムのカリブレットと2名で旅が始まります。 |
ガリーはまだ子どもで、父から強大な力を持つ“腕甲(こて)”を受け継いだために数奇な運命をたどることになり、周囲の大人たちは、それぞれに彼女を守ろうとしています。
その関係性の描かれ方がよく、人間ではないウォーゴーレムのカリブレットは純朴に、多くを失ってきたギャリソンは不器用に、といったセリフ回しに、愛情と個性の両方を感じることができます。原作をまったく知らない自分でも、キャラ同士のドラマや物語を楽しめる。まずこれで、ゲームに引き込まれました。
▲不器用なギャリソンの代わりに、純朴なカリブレットが彼の言葉を代弁。カリブレットは、とてもJRPG的なキャラでお気に入りです。 |
宿屋に泊まると、キャラ同士の関係性を描いたエピソードを見ることが可能です。そこではガリーと仲間の関係だけでなく、いろいろなキャラ同士の掛け合いを楽しめます。より深くキャラを理解できるので、こまめに宿屋で休むといいですよ。
▲ギャリソンとレッドモニカは腐れ縁で、皮肉を織り交ぜた大人の関係が描かれます。 |
▲ノランは、人間ではないがゆえの悩みを持つカリブレットの相談に乗り、豊富な人生経験から彼にアドバイスします。 |
ちなみにパーティメンバーは5人で全員ではなく、動画などが公開済みのアルモンというゲームオリジナルキャラが仲間に加わります。彼がどんな人物かは、ネタバレを避けるために伏せますが、回復系とドレイン系のアビリティを持っていて頼もしいキャラです。
▲左の男がアルモンです。僧兵が武者の面貌を被ったような容姿で、デザインに日本文化の影響を感じます。 |
本作は、世界観や雰囲気を描くことよりも、人物を描くことに力が注がれていて、セリフ主体のJRPGらしいシナリオが作られていると思います。
かといって、世界観や背景の見え方が不十分というわけでもなく、そのあたりは“書物”というコレクション要素によって確認できます。書物を集めると、メインのストーリーで描かれない部分を知ることができるので、物語の理解が深まって、よりゲームに没入できるはずです。
▲書物は、基本的にダンジョン内で見つけられます。 |
工夫の凝らされたダンジョン探索のおもしろさ
本作は、ワールドマップこそ簡易化された形になっているのですが、ダンジョンに力が入っています。と言っても、ワールドマップの探索がリニアなわけではなく、探索自体はプレイヤーの意思で自由に行えます。ストーリーに関係ない探索エリアの冒険や、素材・宝箱の収集はできるので、そのあたりは心配いりません。
▲ワールドマップは道の上だけを歩け、点の上でバトルやアイテム収集、イベントなどが発生します。 |
ダンジョンは、周回用にランダム要素がありながらも、ダンジョンごとの特色に合わせてギミックやトラップが異なり、各ダンジョンで違う体験をしっかり得られます。
ダンジョンのランダム要素を特徴にしていると、たまに背景グラフィックだけが違って、ダンジョン内のゲーム体験に変化がないじゃん! というゲームがあるので、プレイ前は若干それを心配していただけに、個人的にすごくうれしかったです。
▲ギミックは、徐々に謎解き要素が増していく感じです。 |
▲宝箱のある扉を開けるため、本当にナゾナゾを解くこともあります(笑)。 |
▲トラップは、キャラ専用のダンジョンスキルを使って回避することも可能です。 |
そのうえで、先述の書物集めや素材収集にアイテム作成、釣りなど、攻略には直接関係ない要素が豊富にあって、ビュッフェ的にいろいろなゲーム要素を楽しめます。だから単調にならず、時間泥棒なおもしろさがあるんですよね~(目にクマ)。
▲JRPGでもよく見られる釣り。本作にも釣りがあって、つい魚が消えるまでやりたくなります(笑)。 |
また随所で、ゲームブック的な描写の選択肢付き小イベントに遭遇することがあります。その際は、キャラが一切でしゃばらず、プレイヤーの視点で選択できるので、“冒険している感”がすごく得られます。
ゲーム全体でJRPGスタイルを通しながら、サブの部分で、こういったロールプレイ風な要素もあるのがバランスよくて、個人的に好きなポイントです。JRPGの真似事ではなく、アメリカで作られたJRPGのよさがあると思います。
▲情景描写があり、プレイヤーが選択をする……ダンジョン内でこういう演出があると、冒険感がグッと増しますね。 |
なお、ランダム要素として、マップの繋ぎ合わせ方や敵・宝箱・素材などの配置が変わります。そのため、同じダンジョンを攻略するにしても、まったく同じにはなりません。
シナリオに関わる部分は繰り返しになるものの、装備や素材などのアイテム探しは、2周目以降も作業にならず楽しめます。ダンジョン突入時に難易度を選べるので、2周目以降は難易度を上げると、よりおもしろく感じるはず。
▲2つとも同じダンジョンですが、全体の構造が違います。地形は自動生成ではなく、手描きされたマップとマップの繋がり方が、ランダムで変わります。 |
▲難易度は、初見ではノーマルとハードから選択でき、1度クリアすると最難関のレジェンドを選べます。 |
こうしたランダム要素があってボリュームもあるダンジョンは、それほど数が多くないですが、“探索エリア”というミニダンジョン的なスポットが各地にあり、いろいろな場所を冒険する楽しみが体験できます。
▲探索エリアは、シナリオ進行上で行く場所もあれば、寄り道として行ける場所もあります。 |
▲寄り道の探索エリアには、チャレンジ要素となる強敵が待ち受けることも……。 |
というかまあ、ダンジョン探索がやっぱ楽しいです。一応、ダンジョン内の進行状況をリセットされずにゲームを中断できるのですが、ダンジョン内のアイテムを根こそぎ回収するまで終われません(笑)。
難易度を上げるとバトルがいい刺激になるし、ダンジョン内でちょいちょい何かおもしろいことが起きるので、踏破するまでモチベが下がらないんですよねぇ。
▲ダンジョン内でゲーム終了した場合は、入り口から外に出たのと同じ扱いなので、再開時に“ダンジョンを続ける”を選べばOK。 |
わかりやすいが奥深いバトル
本作のバトルは、敵シンボルとの接触で発生し、敵味方関係なく行動順が回ってきたキャラからコマンドを実行できるターン制です。それに乗っかるシステムも複雑ではないので、ゲームに慣れている人ならすぐなじめるでしょう。
▲サイドビューのコマンド選択式。行動順は、画面の左側にあるリストで確認できます。 |
▲必殺技的な“バーストアビリティ”は、カットシーンと派手な演出付きで、JRPGを思わせるシステムです。 |
ただ、「システムはわかりやすいけど、一手一手は意外と考えるな」と、中盤あたりから段々と感じるようになりました。布石が大事なんですね、本作の場合。
敵のダメージが味方の回復量に比べて高いので、単純に殴り殴られで、HPは減ってから回復すればいいだと、ジリ貧に追い込まれやすいです。しかも本作は、一般的なRPGと比べてサポート技の重要性が高いと思います。なので、バリアやバフ・デバフを踏まえて、先を見越した一手を意識させられるなと。
まあ、言い方は大袈裟ですけども。でも、考えるバトルが刺激になっておもしろ味が増してくると思います。
▲中盤以降は、一手のミスが誰かの死に繋がることもザラです。逆に、考えるバトルでおもしろくなってきます。 |
各キャラごとに用意されたダンジョンマップ専用のスキルには、敵を弱体化させて戦闘を開始するものがあります。その活用も重要で、まさに“勝負は戦う前から始まっている”という感じです。
▲カリブレットのダンジョンスキル“キャノンショット”を発射! |
▲キャノンショットは敵にダメージとデバフ効果を与えるので、有利に戦闘を始められます。 |
また、各キャラにはボーナススキルという任意で選択できるカスタマイズ要素があり、それもバトルをおもしろくしています。ボーナススキルはメニュー画面からいつでも変更できるので、いろいろ試してみるといいかもしれません。
▲ボーナススキルは各キャラに2系統あり、両系統をまたいでのスキル取得が可能です。 |
▲モンスター討伐数で条件を達成すると、少しだけキャラの能力を底上げできるやり込み要素もあります。 |
ちなみに序盤は、あまり難しく考えずとも、戦いながらゲームシステムを覚えられる難易度になっていると思います。
しかし、筆者のように、サクサク進むからって装備品や回復アイテムの準備をおろそかにしていると、レベル13くらいで「……あれ?」ということになるかもしれません。RPGの基本である“回復アイテムをしっかり用意する”、“危なくなったら街に帰る”ということは、頭から消さないようにしておきましょう。
え、当たり前だって? 序盤は、カリブレットのダンジョンスキルとボーナススキルでの回復が優秀すぎて、その当たり前を忘れるんですよね……。便利に慣れすぎて、漢字を書けなくなった現代人みたいなもんです。え、違うだろって?
▲序盤は初見のダンジョンで難易度“ハード”を選んでも、適度な刺激を楽しめる感じだと思います。 |
もちろん、パーティメンバーのレベルや装備によっても、全然違う印象になると思います。すんなり勝ちたい人は、敵より少しレベルを上げておくといいかもしれません。敵からガツンと大きなダメージをもらって、「親父にもぶたれたことないのに……!」と、頬を押さえたくなるようなことが減るかと思います(笑)。
▲本作はオートセーブとなっているため、全滅すると地味に出費が痛いです……。 |
ローカライズについて
今作はRPG、しかもJRPGスタイルで作られたゲームであるため、ローカライズも大切なゲーム要素だと思われます。
シナリオの翻訳については、十分にストーリーを楽しめるテキストかと思います。若干、用語の表記不統一など見られますが、セリフからはキャラの個性を感じられるし、物語やそのテイストを楽しむ部分では、没入感を削がれることなくプレイできています。
▲翻訳は、基本的にしっかりしています。改行までは配慮されていませんが、テキストは十分に楽しめるはずです。 |
ただし、一部のUIや機能説明などに関しては、誤訳や微妙な訳が見受けられます。これらは、プレイヤーに情報を伝えるメタ的な部分とも言えるので、物語の魅力を損なうとは個人的には感じませんでした。ですが、人によって受け止め方は違うかもしれません。
▲宿屋で“休憩(Rest)”が“残り”に。記事で画像だけ見るとひどい訳ですが、全体的なクオリティの高さからするとご愛敬です。ご心配なく。 |
そして、本作は日本語ボイスが収録されていて、日本語のマニュアルまで見ることができます。全体で見た時に修正の余地はあるものの、キックスターターから始まったゲームが、ここまで日本語ローカライズを頑張ってくれることは、むしろ感謝したいと思います。
ローカライズに関しては、パブリッシャーのTHQ Nordicによるところが大きいらしいので、もはやオーストリアには足を向けて眠れません!
▲タイトル後のメニュー画面でポーズをかけると、日本語のマニュアルを見られます。これは素直にすごい……! |
JRPG愛だけじゃない、ゲームとしておもしろい
人にもよるでしょうが、本作はパーティメンバーを全員集めるだけでも30時間以上かかり、かなりのゲームボリュームになると思います。思いますというのは、残念ながら筆者も未クリアだからです。まだ中盤を抜けておりません……。
なので、間違った感想などあるかもしれませんが、少なくともプレイしている限りでは、豊富なゲームシステムがダンジョン内にうまく落とし込まれ、遊んでいておもしろいゲームだと思います。ラーメンのトッピング全部のせのようなボリューム感。
海外向けにはPS4/Xbox One版も配信されていて、Nintendo Switch版のリリースも予定されているので、日本でもコンソール展開を期待したいゲームです。
▲紹介できなかったサブ要素もけっこうあります。連続して敵と戦う“アリーナ”もその1つ。 |
『Battle Chasers: Nightwar』は、作り手もゲームもJRPG愛にあふれる作品です。ですが、それだけが魅力で「JRPGライクだからどうぞ」ではなく、「ゲームとしておもしろいから遊んでみてください」と言いたくなる作品に思えます。ぜひ、秋の夜長にJRPGを求めている方はいかがでしょうか。
▲最後に。ダンジョンでボス討伐後にもらえる宝箱は、所持品メニューから開けないと中身をもらえません。忘れやすいのでご注意! |
(C) 2017 Airship Syndicate Inc. Published & Distributed by THQ Nordic GmbH, Austria. Airship Syndicate, Battle Chasers and their respective logos are trademarks and/or registered trademarks of Airship Syndicate Inc. All rights reserved. All other brands, product names and logos are trademarks or registered trademarks of their respective owners. All rights reserved.
データ
- ▼『Battle Chasers: Nightwar』
- ■メーカー:THQ Nordic
- ■対応機種:PC
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2017年10月4日
- ■価格:2,980円(税込)
- ※価格はSteamのもの。
- ※開発:Airship Syndicate
- ▼『Battle Chasers: Nightwar』
- ■メーカー:THQ Nordic
- ■対応機種:PS4
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2018年6月6日
- ■価格:3,4990円(税込)
- ※開発:Airship Syndicate
- ▼『Battle Chasers: Nightwar』
- ■メーカー:ワーカービー
- ■対応機種:Switch
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2018年10月4日
- ■価格:3,499円(税込)
- ※開発:Airship Syndicate