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2017年10月21日(土)

SMEのインディーレーベル“UNTIES”は、世界を基準としたサポートを行う。キーマンインタビューをお届け

文:電撃PlayStation

 2017年10月17日にソニー・ミュージックエンタテインメントが発表した、インディーゲームパブリッシング事業を行う新レーベル“UNTIES(アンティーズ)”

 このレーベルでは従来のパブリッシュ事業にとどまらない規模でソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)がサポートし、マルチプラットフォームで情報拡散や販売を行っていくと発表したことで、発表以降、国内外のメディアやインディーゲームファンの間で大きな話題をさらっていた。

 今回は、UNTIESの狙いや発足の経緯、今後の展開について、伊東章成氏と伊藤雅哉氏にお話をうかがった。

『インディー』
▲UNTIESの代表メンバーである伊東章成氏(左)と伊藤雅哉氏(右)。伊東氏は元SIEJAでインディーゲームのサポートを長年行ってきた。現在はフリーランスとしてUNTIESに関わる。伊藤氏はQ-Gamesでゲームの開発やマーケティング、宣伝を、BitSummitの立ち上げにも関わった。

SMEだからできる新たなパブリッシュのレーベル「UNTIES」が目指す方向性

──UNTIESの発足を発表してから、その後の反響はいかがでしたか?

伊東章成氏(以下敬称略):キックオフパーティの会場でもたくさんの人から「いろいろ話をしたい」と言っていただけてうれしかったですね。今回は、海外にもグローバルリリースをさせていただいたのですが、IGNやGamespotやDestructroidなど多くのメディアでも記事にされて思った以上に広がったようです。我々も期待してもらえているという手ごたえがありましたし、グローバルに発信して出していくという事業スタイルが表明できたので本当によかったと思っています。

伊藤雅哉氏(以下敬称略):ソニーグループのSMEが任天堂のプラットフォームでインディーゲームを出すという話題性でも、話題が広がったところはありました。そこを意図的に狙っていたわけではなかったのですが、結果的によかったですね。

伊東:そのおかげで海外側のデベロッパーさんからも、いろいろとお話をいただけたのが一番うれしいですね。日本から海外に発信することをメインにしてはいますが、海外側にもまだまだすごいタイトルがいっぱいありますし、海外からの連絡も楽しみですね。

──あらためてお聞きしますが“UNTIES”とは何をするレーベルで、どのような方向を目指しているのか教えてください。

伊藤:基本的にはプレスリリースで発表したとおりで、SMEという強力なブランドに拠ってゲームパブリッシングをしていくレーベルです。ワールドワイドかつ、クリエイターがやりたいことをユーザーにしっかり届けるという部分で、タイトルを出すハードにはこだわらないという、インディーとしては至極当然のことをやっています。

 とくに「お客様にちゃんと届ける」ということは、ボクらがやらなければならないことだと思っています。海外もそうなのですがインディーは仲間内だけで盛り上がってしまうことが多いんです。そうではなく、お客様も巻き込んでおもしろいコンテンツにしないといけないと思っています。

 ゲームというコンテンツは今、特化された一部のファンのみが楽しめるコンテンツになってきている気がしていますので、そうではない形にしたいというのを個人的にも望んでいますし、SMEならそれができるのではないかと思っています。

伊東:ボクが言わなくても同じ発想が出てくるくらい、UNTIESはお互いの意思が合った状態で動けています。

 あえてプラスして言うなら、2人ともインディーを取り巻く環境をずっと見てきた結果、世の中にコンテンツがあふれてしまっていて、どんどんタイトルが出てきている。そのため、すごく尖っていておもしろいゲームでも伝わらないまま終わってしまう、という状況が生まれてきてしまっていると感じています。

 個人のインディークリエイターがプレスリリースを書いて、プロモーションを仕掛け、マーケティングまで行うのは大変なのですが、いよいよそういう時代になってきています。それを一緒にやり遂げていきたいと思ったのが、UNTIESというレーベルを作った意図でもあります。

 雑誌やメディアの人たちのように、よいタイトルを見つけて、どう拡散するのかを計画していく体制をインディーゲーム向けにプランニングしたいという話から始まった集団ですし、こうして集まることができたのもSMEだからです。

 SMEはすごくインディーに対しての理解があるんですよ。もともと、SME自体が音楽業界のなかでも、路上ライブをしているといったアーティストを発掘して世に送り出してきたところでもあります。

 ゲーム業界でも、個々のクリエイターが活躍するフェイズに移ったという話をSMEにすると端的に理解してもらえたので、今の体制が組めました。相性とタイミングが非常によく、今だからこそできたブランドがUNTIESなんです。

──SMEがサポートするレーベルということで、やはり、これまでのインディーパブリッシャーとは違う部分も出てくるのでしょうか?

伊東:今までのパブリッシュ事業を見てきてやってきたうえで、違うやり方も選択していきたいですし、SMEならそれができるのではないかと思っています。

 海外ではDevolver Digitalやtiny buildのように、いわゆる第三極のブティックパブリッシャーさんも増えてきましたが、そうしたモデルに近いと思います。

 自分たちが編集機能を持ち、好きな作品を選んで出していくという流れがパブリッシャーのなかでも強くなってきているのですが、そこを日本の“ソニー(SME)”というブランドに乗っけて大きく見せていくことで、世界的にも話題になってくれるんじゃないかという期待があります。

伊藤:発表後に海外も含めて話題になっていますし。今のところ、流れとしては非常にうまくいっていると思います。

──先日発表された4タイトルの反応を見ていても、インディーゲームのファンからは、かなり本気のラインナップだと受け取られているように感じました。

伊藤:そこは、ずっとインディーゲームとデベロッパーを見てきて、選んだからだと思います。それこそ長くお付き合いさせていただいている人たちもいますから。

伊東:UNTIESを発足するずっと前から仲よくしていて、この人たちが作るゲームならおもしろいと思うデベロッパーさんには、積極的に一緒にやっていきたいという話を伝えに行きました。そういう点で言えば、今までインディーゲーム業界でボクたちが活動をしてきたからこその選球眼ですし、長い付き合いから選んだタイトルだとも思っています。まず最初に、どういうコンテンツを手掛けていきたいかという部分に関しては、かなり明確にできたのではないでしょうか。

開発中の段階からサポートしていく4タイトル

──今回発表されたのは『TINY METAL (タイニーメタル)』『Last Standard』『Merkava Avalanche』『DEEMO -Reborn-(仮)』の4タイトルですが、『TINY METAL』以外は発売日も未定で、まだまだ開発中の作品のようですね。

伊東:発売日までのスケジュールを出せたのは『TINY METAL』だけですので、本当にこれからです。

『インディー』
▲11月21日(日本時間)に世界同時リリースを予定しているターン制ストラテジーゲーム『TINY METAL (タイニーメタル)』。

伊藤:キックオフパーティで『Merkava Avalanche』を開発しているWinter Crown WORKSの石濃潤一郎さんが登壇してくださったのですが、開発の進捗状況が17%から18%かなぁとステージで言っていて。その1%の差はなんなんだと思いましたが(笑)、そこまでこだわるのかと驚きましたね。

伊東:PVのバージョンも小数点単位で更新されているのですが、そこがいかにもクリエイターらしい。工数計算がちゃんとできているだなと感じました。完成までイメージできているんだと思います。

『インディー』
▲戦車型の騎兵メカによる集団戦闘3Dアクション『Merkava Avalanche』。

伊藤:『Last Standard』を開発しているI From Japanの中道慶謙さんも、「本当は、まだ発表するべき段階ではない」と言うところを、こちらからお願いして発表してもらいました。

伊東:正式にUNTIESと組むということを発表する以上、もう少しゲームとしての完成度が高くなってから出したいという強い想いがあったようです。このタイミングで出すべきかどうかを、しっかり話し合わせてもらいました。

伊藤:せっかくの晴れの舞台ですし、こんなにメディアでピックアップしてもらえるのも、この先頻繁にあるわけではないでしょうから、ここに乗っかってもらおうとお願いしたんです。『Last Standard』は、現時点でも出して恥ずかしい状態ではないですし。

『インディー』
▲個人のSNSのアカウントを分析して深層心理を解析し、武器を作成する3Dアクション『Last Standard』。

伊東:交渉においては、直近でもドラマティックな話がいっぱいありました。『DEEMO -Reborn-(仮)』も、劇的に話が動いて決まったタイトルですね。

 彼らは台湾のチームなので、コミュニケーションも含めてイチから信頼を築いていきながらやり取りをしたのですが、彼らが一緒にやりたいという気持ちを持ってくれたことは自信になりましたし、グローバルでデベロッパーさんを迎え入れる体制ができたと考えています。

伊藤:長年、インディーの活動を応援してきてよかったと思ったのが、Rayarkの方たちが今回の件で台湾から来てくれたときに「おお、伊藤さん!」と、自分のことを覚えていてくれたことです。自分がBitSummitの運営にかかわっていたときに、彼らは『Cytus』というタイトルを出展していました。そのときは、自分もまだQ-Gamesに在籍していたのですが、『Cytus』はすごくカッコいいインディーゲームなので、そのことをもっとアピールしたほうがいいと、当時アドバイスしたことを覚えていてくれたんです。

『インディー』
▲大ヒットタイトル『DEEMO』の完全新作にして、初の3D作品となる『DEEMO -Reborn-(仮)』。

──『DEEMO -Reborn-(仮)』は未発表タイトルだったのでサプライズになったわけですが、以前からのつながりが今回の発表のキッカケとなったわけですね。

伊東:もとをたどると、私がソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)に在籍していたときに、彼らがPlayStation Mobileで『Cytus』を出したころからのつながりですね。Rayarkがインディーゲームをスタートさせた時代から、彼らの動きを応援するというスタンスでやってきていました。

 彼らをずっと見ていましたし、何をやりたいかも理解できていました。たまたま今回、ボクらがパブリッシュ事業をするタイミングで『DEEMO -Reborn-(仮)』をやりたいという話を聞きつけて、すぐに体制を組み、実現に向かいました。ずっとRayarkを応援してきたことに対して理解をしてくれたからこそ実現できた形ですね。

 彼らもこの体制にかけたいという想いを強く持ってくれて、両社の想いが合ったので今回のタイトルが実現し、このタイミングで発表できました。ティザームービーも本当にギリギリで完成して、PVの最後にUNTIES、Rayarkというロゴが併記されていたことは感動的でしたね。ボクらを信用してくれた結果が表れている映像だと思っていますし、それに対してしっかり答えていきたいと思っています。

――『DEEMO』とSMEの組み合わせだと考えると、ゲームだけではとどまらなずにいろいろできそうだなと思いました。

伊藤:お(笑)。もちろんSMEがサポートするという部分では、ゲーム以外の展開もできるのではないかと思っています。いわゆるクロスメディア展開も、今までやってきたものとは全然違う規模でできると思いますし、それが自分でも楽しみです。

伊東:今はコンテンツ自体にパワーさえあれば、なんでもできる時代です。人気があれば、ドラマ化もアニメ化もできるでしょう。そうした原作が、インディーゲームになったとしても全然問題ないと思っています。

──まだまだ開発中のタイトルが多いですが、そうした作品へのサポートは具体的にどのような形で行っていく予定なのでしょうか?

伊東:いろいろなパターンがあると思います。ここ数年、自分たちがフロントラインとしてデベロッパーさんの悩みを聞き続けていて、彼らに何が足りないのか、何が欲しいのかもわかっていますし、SIEJAのころ、そこに対して解決できる方法もいろいろとご提案させていただいてきました。ですので、ある程度解決できる方法を事業化したうえで、やっていけると思っています。

 たとえば、足りないものが開発体制であれば、開発体制のやり方をご提案させていただきますし、技術者が足りないのであれば技術者を紹介したり。いわゆるパブリッシャーがやっている機能に関して、大きく仕掛ける部分と小分けで仕掛ける部分を、自分たちなりのカスタマイズをしてできるようにしています。

 オールマイティに動いている状況なのですが、個人のインディーデベロッパーにも対応できますし、Rayarkさんのような次のステージに行っている大きなデベロッパーさんともお付き合いできているのが、証明になっているのではないでしょうか。

サポートするゲームを選ぶ基準は、タイトルと“人”

──サポートとしてはこれまでのパブリッシャーよりも綿密になると思いますが、現状の伊東さんと伊藤さん、ジョン(ジョン・デイビス氏。DANGEN ENTERTAINMENT所属)さんの3人でやっていくのは大変そうですね。

伊藤:そうなんですよ。だから、キックオフパーティでも「私たちの仲間になりませんか!」とステージ上で呼びかけて、リクルーティングしていました(笑)。

伊東:自分たちで全部やっていくことは考えていなくて、先ほども言ったようにボクたちはブティックパブリッシャーに近い形を取っています。

 自分たちがやりたいかどうか、それをみんなに届けるべきかどうかということに関しては自信を持ちたいので、タイトルもしっかり選ばせていただくつもりです。

──なんでも受けるという形ではないということですね。

伊東:そういう状況ではありますが、各タイトルの状況はしっかり見させていただいているので、そのなかで自分たちもやりたいと思った場合には、積極的に声をかけさせていく形になると思います。

伊藤:自分たち自身が、今までずっとそういう仕事をやってきたので、そこは同じですね。

──ちなみに、UNTIESとして出したいタイトルを選ぶときの基準は、どこに置かれているのでしょうか。

伊東:選ぶ人の個性は出てくると思いますが、あえて自分たちの個性を大事にして、自分たちがやりたくなるコンテンツを選んでいます。純粋な指標は設けずに「これはやりたい、これがいい」という判断基準で、そこに達するかどうかということを重要にしていきたいと思っているんですよ。

 一定のガイドラインで決まりごとを設けてしまうと、意識的な部分や評価的にも固くなってしまい、エンターテインメントの評価として合わないと思いますから。誰が気に入ったのかという部分をすごく大事にしていきたいと考えています。

──たとえば同人ゲームの方面でも、気に入ったタイトルがあれば積極的に見ていく感じになるのでしょうか?

伊東:そうですね。自分はPlay,Doujin!さんの立ち上げも一緒にやらせていただきましたし、同人の業界にも古くから関わらせてもらってもいて、自分自身も同人のお手伝いをしていたことがあるんです。

 そういう方面での日本文化も大好きですし、海外で注目しているコンテンツを選んでもよいと思っています。ボクのような個性もあれば、伊藤のように尖ったもので「これ、ええやん」といえるタイトルがあってもおもしろいでしょう。

伊藤:タイトルベースでもありますが、ボクはこれまでいろいろな人と知り合って、最終的には“人”だと思っています。「この人が出すのならおもしろい」「この人なら、1回賭けてみたい」と思えるかどうかですね。海外国内問わず、作り手がおもしろい場合は、ゲームもおもしろい場合が多いです。

伊東:そういう意味では、彼らをサポートするのがボクらの役目です。すべてをいろいろとサポートするのは難しいですが、支援できるところは何かしらの形でやっていきたい。長年インディー業界で、何かがあるたびに2人で顔を出してきたのは、そうした部分をわかりやすくしたかったという理由もあります。デベロッパーが誰を頼ればいいのか、どういう声をかけて欲しいのかという部分を明確にしたかったからこそ、ずっと活動してきた部分はありますね。

伊藤:ボクらはデベロッパーさんにとって利用される価値があると思っていますから、我々を利用したい人は利用してもらえればいいですし、応援したいといったらおこがましいかもしれませんが、応援していきたいんですよ。

 インディーは基本的にサブカルチャー扱いになると思うのですが、ある程度ポップカルチャーに近づけないと視野に入れてもらえないと思ってるんです。どこまでもサブカルチャーで行くと、お客様に届きにくいままで終わってしまう。やはり、ポップカルチャーに上がれる人は、そのステージに上がるべきだと思うんです。

 インディーパブリッシャーが、そこをケアできるかというと微妙だと思うのですが、SMEの力があればやれるのではないかと考えています。

 ボクは、ゲームクリエイターも歌手や作家や漫画家と同じで、アーティストだと思っているので、やはり彼らもポップカルチャーに登っていく必要があると思っています。

 たとえば、将来的には『Last Standard』の中道さんにあこがれてゲームを作り始めました、という人がいてもいいと思うんですよ。もちろん、日本にはそういう人もたくさんいますが、それがもっと普通になって「あの人はカッコいいよね」という形でインディーゲームクリエイターの名前が出てきてもいいんじゃないかなと。

伊東:人気になって大きくなりたいとがんばっている人たちが、いざうまくいってから大きく展開するときに、受け皿として居続けることができるような体制を考えていますし、いろいろなシーンでサポートできるように作っています。

 SMEなので単純なパブリッシュサポートだけではなくて、メディアミックス展開ができる部署も事業内にありますし、アニプレックスでアニメ展開をするといったことなども描けるかもしれません。グッズ展開できるチームもいます。どこまで描けるかは成功しだいですが、それができるのがUNTIESだと思っています。

UNTIESを通して、クリエイター同士の横のつながりができることが理想

──インディーの人たちを取材していると、宣伝をどうすればいいのか困っている人たちがすごく多い印象を受けます。宣伝展開に関しては、どのようなサポートを想定されているのでしょうか。

伊東:宣伝が一番の課題だということはわかって動いています。ボク自身も前職ではプロモーションからスタートしている人間なので、そこに対して貢献できる内容を勉強してきた人間でもあるんですよ。

 通常のプロモーションだけではなく、我々らしくデベロッパーさんの作ったゲームを個性的に売っていく手法を一緒に取りながら、プロモーションを仕掛ける提案をさせていただく形になると思います。

──近々では『TINY METAL』が発売されますが、具体的にどのようなサポートを一緒にやっていくのですか?

伊東:UNTIESの発表前だったので、これまでは積極的にという状況は難しかったのですが、たとえば、一緒にPAXに行って出展のお手伝いや海外側の展開を一緒にやりましょうと提案させていただいたり、TGS2017のインディーコーナーでサポートさせていただいたり、プロモーションをかけてリリースを打つときのサポートなどをさせていただいています。

 ただ、表向きなプロモーションや仕掛けについてはこれからです。おそらく、出てきたらわかりやすい仕掛けが1つ2つ、見られると思いますよ。

──プロモーションという意味では、インディーだと基本的にイベントが軸になると思います。そういったイベントに関しても、積極的に取り組む予定なのでしょうか?

伊東:そこはボクらとしてもパブリッシャーとして数字を見ることになるので、そこをどう算段するかという話をしたうえで、できるサポートを組ませていただく形になると思います。最終的にどのぐらいいけそうなのかを判断したうえでできることを決めていく形かなと。

 インディーの活動だけではなく、通常のパブリッシャーがやるようなプロモーションラインに関しても検討できるので、インディーゲームだけど、そこまで発展させることができるのかという喜びも持っていただけると思います。

伊藤:普通のパブリッシャーさんだと、日本で展開してから海外や展開をやる場合が多いのですが、そうではなくて同軸で日本と海外を一緒に考えましょうという絵を描きながらやっていけるのがUNTIESです。海外の方も日本のゲームには期待していますし、同時に世界へ行きましょうと言えるパブリッシャーだと思っています。

『インディー』
▲SMEのサポートを受けて、日本と海外の展開が同時にできるのがUNTIESの強み。

伊東:今はSteamなどの環境も整ってインディーが売れていますが、日本と海外で同時に「ヨーイ、ドン!」で展開できるところはなかなかなかったと思います。

伊藤:世界のゲームファンに日本のゲームを売りたい。日本から世界的なヒーローを作りたいというのが個人的に持っている野望でもあります。

 最近いろいろな人と話をしていて、新作だけじゃなくてもいいという気持ちもあるんですよ。すでに売り出している方でも悩んでいる人が多い。自分自身もQ-Gamesの一員として開発の近くにいましたから、いろいろな悩みがあるのは理解しています。

 ボクらはSMEのなかにいながらも、結構自由な立場でいろいろできますし、今まで培ってきた経験値による知恵も働くはずなので、もっといろいろな形でみなさんの役に立てるのではないかとも思っています。

伊東:あとは、UNTIESがクリエイター同士でつながれる機能になれたらいいなとも思っています。絵師さんやプログラマーさんなど、お互いが足りない物を補えるようになれたらより作りやすくなると思うので、そういう部分も大事にやっていきたいですね。

──月1回で交流の場などを設けるということでしょうか?

伊東:そのような交流もやりたいですね。前職のときにPlayStation Mobile GameJamを開いたり、Indie Streamのミキサーであったりといったことを仕掛けていたのですが、そういった異業種交流の組み合わせはずっとやりたかったんですよ。今までいろいろな形で仕掛けてきた経緯を見ていただければ、こちらが何をしていきたいのか想像しやすいと思います。

伊藤:たとえば、UNTIESが陣頭指揮を執ってこういうイベントをやって欲しいと言われたときに、それが業界のためになるなら話を聞きますし、自分たちじゃないとできないのであれば、どんどん動いて行きたいと考えています。ボクらに相談して実現しそうだと思えるなら、どんどん相談してくれてかまいませんよ。

──インディーデベロッパーでセルフプロデュースができるところは限られていますし、そこを頼れるのはデベロッパーからすると大きいと思います。

伊東:これから先の時代は、開発体制の個人化と大規模化が両極端に分かれてきて、作り手のやり方しだいで「これがやりたい」というのが出てくると思います。

 『Cuphead』に対するID@xboxのように、資金的なサポートがあれば作れるものは増えていきますし、そのチャンスを十分に発揮できる人たちがいれば、世界的に展開したり、売れる物を作っていけると思います。

──行く行くは資金的なサポートもされていくのでしょうか?

伊東:もちろん可能性としてはあります。

──伊藤さんは架け橋ゲームズ、ジョンさんはDANGENを兼任されていますが、UNTIESとそれぞれのパブリッシャーで、タイトルをどのように分けられるつもりですか?

伊藤:架け橋ゲームズの場合は、代表のザック・ハントリがUNTIESのことでも動いてくれている仲間のような立場だと思っています。

 架け橋ゲームズはパブリッシャーにはならないので、セルフパブリッシングをしたかったら架け橋ゲームズを選べばいいですし、そうじゃない場合はUNTIESという選択肢を架け橋ゲームズのお客様にも提案してあげる形ですね。

 たとえば、ローカライズ部分は架け橋ゲームズにまかせることもできますし、架け橋ゲームズのためのビジネスも描けると思います。架け橋だけだとローカライズサポートしかできませんが、その後ろにUNTIESもいます。

伊東:DANGENの場合は、ジョンがこちらに加わったばかりなので、DANGENとこちらのかかわり方を整理しているところですが、正直、特別にコレだと決めてやっているわけではないと思っています。

 ただ、全般的に海外側のパブリッシャーさんは、横のつながりがギスギスしていないんですよ。フランクにやっていて、共同でいろいろなイベントを出していたりするような状況なので、ジョンもそうしたスタンスでやっているのかもしれません。

──まだまだ動き始めたばかりだとは思いますが、今後どれくらいのスパンで新しい情報を出していく予定でしょうか?

伊東:スパンは断言できませんが、近いタイミングでまたいろいろなことを言えると思います。年内でも、まだまだ動きがありますよ。

伊藤:年内に言える第2弾の情報には大きいものを準備しています。

伊東:ゲームが発売までに出せるのかという部分を心配する人がいるかもしれませんが、フロントに立っている我々3人以外に、ちゃんとうしろにサポーティブなメンバーが控えているんですよ。そういう点で言えば、ちゃんとスケジュール通りに進行できるようになっています。

 ボクらが言ったプロモーションが計画通りに遂行されるかということも重要ですが、パブリッシャーなのでスケジュールを引く部分のサポートはちゃんとさせていただき、いつ出すかというプランを立てたうえでやる予定です。

 もちろん、インディーなので柔軟にやる部分はありますが、期限をしっかり決めてどういうサポートを行うのかというイメージを伝えつつ、デベロッパーさんと一緒にやっていくつもりです。インディーの良さに期限を決めないで作り続ける部分もありますが、やるところまで仕上げてちゃんと出す、という形でやっていこうと考えています。

――これまで以上にインディーゲームが盛り上がることを期待しています!

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