2017年11月6日(月)

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』豪華特典からも伝わる作品の深さと魅力

文:長雨

 TVアニメ『東のエデン』や『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などを手掛けた神山健治監督の最新作、映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』のBlu-ray&DVDが、2017年9月13日からバップより好評発売中です。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』

 神山監督は『ポポロクロイス物語II』のアニメパート監督や、『サモンナイト2』のオープニングアニメ演出なども手掛けています。さらに本作の音楽は『キングダムハーツ』シリーズなど、名曲を多数生み出した下村陽子さんが担当! ゲームファンにもたまらない豪華なスタッフで制作された『ひるね姫』の魅力を、詳しくご紹介していきます!

夢と現実の世界が交錯するファンタジーストーリー

 2020年夏。岡山県倉敷市に住む高校3年生・ココネ(声優:高畑充希さん)は、車の改造ばかりしている父・モモタロー(声優:江口洋介さん)と2人暮らしをしています。母親のイクミ(声優:清水理沙さん)はココネが小さい時に亡くなっており、無口で不愛想な父の世話はココネの役目となっています。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲岡山県育ちのココネは岡山弁でしゃべります。高畑充希さんが話す岡山弁がココネの雰囲気にピッタリで、方言女子好きにはたまらないです。
『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲父であるモモタローと仲が悪いわけではないのですが、わざわざスマホで話をするなどちょっと微妙な距離感のようです。

 ココネはよく昼寝をしていて、機械産業が盛んな“ハートランド王国”の姫・エンシェンになる夢を繰り返し見る日々を送っていました。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲いかにもファンタジー世界といった雰囲気の夢の世界“ハートランド王国”。夢だったはずのこの世界が、のちに重要な意味を持ちます。
『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲エンシェンは王国の姫でありながら、タブレットを使い魔法を操ることができました。そのタブレットは、現実世界でも重要なアイテムとして存在しています。

 東京オリンピックまで、あと3日に迫った日。突然モモタローが、警察に捕まって東京に連行されてしまいます。ココネは父を助けるため、幼なじみのモリオ(声:満島真之介さん)を連れて東京に向かうことに! その途中、夢の中で見た魔法のように不思議なことが次々と起こり始めて……。

 主人公の高畑充希さんをはじめ、古田新太さん、高橋英樹さんなど、登場人物の声は実力派俳優陣が担当。夢と現実が入り混じる不思議なストーリーが自然に演じられていて、どのキャストもイメージにピッタリです。

 また、声優の高木渉さんや釘宮理恵さんも出演しており、さすがの存在感を見せてくれます。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲釘宮理恵さん演じるジョイは、エンシェンの魔法によって親友となったぬいぐるみ。現実世界ではイクミの形見として、ココネが大切にしています。

繰り返し見たくなるような仕掛けが満載!

 物語は、夢の中に登場するハートランド城から始まります。ファンタジーと現実世界が上手く融合した魅力的な世界観に一気に引き込まれてしまいます。主人公たちが暮らす倉敷の風景も美しいです。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲岡山県倉敷市の風景は、Blu-rayスペシャル・エディションの特典映像に実写風景が収められています。聖地巡礼もできちゃいますよ!

 夢の中の世界と現実はリンクしていて、物語ではそれぞれのシーンが交互に展開していきます。「この夢はこういうこと?」と自分なりの解釈をしながら、物語を追っていくのがとても楽しかったです。

 そもそも、夢の中の“ハートランド王国”の物語は一体何なのか? そして、エンシェンの秘密が明らかになるころ、物語は一気に急展開を見せます。この展開はぜひ、映画を見て感動してもらいたいです!

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲夢の中には“鬼”という謎の敵も登場します。鬼については本編ではあまり語られないのですが、こちらも特典映像に含まれるHuluオリジナル『エンシェンと魔法のタブレット ~もうひとつのひるね姫』を見てみると正体のヒントがわかります。鬼と戦うための巨大でカッコいい“エンジンヘッド”が、操舵兵のペダルで動くという設定もツボでした。

 女子高校生が主役なため一見「日常系アニメなのかな?」と思われてしまうかもしれませんが、実はロボやメカがたくさん登場するのも最高です。私はかわいいロボットに目がないので、サイドカーから魔法の力で変身する“ハーツ”がお気に入り。丸みを帯びたフォルムがたまりません。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲エンシェンによってロボットに変身できるようになったハーツ。重要なシーンで活躍する彼も見どころです。

 下村さんの音楽も全編通して、とてもステキでした。主題歌の『デイ・ドリーム・ビリーバー』のアレンジも下村さんが担当しています。ファンの方なら、少し聞いてみただけでも「下村さんの曲だ!」とわかるかと思います。

●『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』主題歌予告PV

 穏やかな日常と、バトルシーンのギャップや、ピアノを使用した音楽が下村さんらしく素晴らしいです。どの曲も魅力的なのですが、個人的にはハートランドの楽曲『夢のはじまり』が好きです。きっと映画を見れば、お気に入りの楽曲が見つかるはずです。

 ファンタジーやロボの話などばかりしましたが、物語のテーマとなっているのは“家族”です。主人公が同じ夢を繰り返し見る理由がわかった時、とても温かな気持ちになれました。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
▲ココネと父・モモタローの関係。さらには……。ぜひ、家族全員で『ひるね姫』を見て“家族”とは何なのかを、考えてみてもらいたいです。

 ココネの両親の物語を知った後、主題歌の『デイ・ドリーム・ビリーバー』を聴くと何とも言えない感慨が浮かんできますよ。そして、もう一度最初から、夢の世界の物語を中心に映画を見たくなります。その理由は、みなさんの目で確かめてみてください。

特典ブックレットでより『ひるね姫』を楽しめる!

 好評発売中のBlu-rayスペシャル・エディションには、キャラクター設定資料や豪華インタビューが収録された“Spec Book”と“Story Book”が特典についています。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』

 特に“Spec Book”は本特典のために改めて行われたインタビューなどで構成されていて、演出の意図や裏設定など、読めば本編がより面白くなる情報が盛りだくさんです。

 中でも神山監督のインタビューは必見です。本作のテーマ、そして神山監督が思う現代の課題といった深いお話をうかがうことができます。

“神山監督:次の世代との断絶というのは、ずっと考えていた問題で。いろいろな理由はあるんだろうけど、ひとつには上の世代が若い世代に対して、教えることを怖がっていろとことがある。オジサンは笑われてもいいから、若い人たちに注意を促すべきなんだろうと思うんです。

 その一方で、若い人たちは若い人たちで“教えられたら死ぬ病”にかかっていて(笑)”

──『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』“Spec Book”より

 また神山監督×下村さんの対談も収録されています。神山監督のお気に入りの曲や、主題歌『デイ・ドリーム・ビリーバー』のアレンジについてなどおもしろいお話ばかりです。

“下村さん:私は映画の劇伴が初めてで、絵に曲を付けることはすごく好きなのですが誰かに習ったわけではないので、おそらくセオリーに従っておらず常識的ではないやり方をしていると思うんです。

 シーケンサーに全部の映像を張り付けたら、約3,000小節あったので、気持ち的にはところどころに長めの休符が入る、全尺2時間の曲のつもりで作っていきました。

 自分でもなかなか無茶なやり方をしているなと思っていたんですが、これが上手くいっているといいなと思っています。”

──『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』“Spec Book”より

 他にも豪華スタッフ対談や、キャラクター原案・森川聡子さんコメントなど、見どころ満載のブックレットとなっています。

 “Story Book”にはわかりやすいストーリーの振り返りや、キャストインタビューを収録。神山監督インタビューでは、企画の始まりやココネの誕生秘話が明らかに! こちらも読みごたえ満載です。

『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』

 見るたびに、新たな魅力を発見できる『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』。アニメ好きな方にはもちろん、雰囲気的にもファンタジー風のゲームが好きな方にもおすすめできます。Blu-rayスペシャル・エディションで、ぜひその奥深い物語を存分に満喫してくださいね。

■『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』Blu-rayスペシャル・エディション商品概要
【メーカー】バップ
【枚数】2枚組(本編ディスク1枚+特典ディスク1枚)
【価格】9,800円+税
【品番】VPXT-71535

本編110分+特典映像
描き下ろし三方背BOX

【Blu-rayスペシャル・エディション特典】
封入特典
・特製ブックレット2冊(Spec Book、Story Book)
映像特典
・予告編
・SPOT集
・舞台挨拶集(完成披露試写会、初日舞台挨拶)
・キャスト アフレコ&インタビュー(高畑充希、満島真之介、古田新太、前野朋哉、高橋英樹、江口洋介)
・座談会集
 スペシャル座談会(高畑充希、満島真之介、江口洋介)
 『ひるね姫】公開記念SP特別座談会 完全版(高畑充希、満島真之介、江口洋介、進行:天野ひろゆき(キャイ~ン))
 神山健治監督SPインタビュー(神山健治監督)
・J-WAVE『AVALON』公開収録(高畑充希、満島真之介)
・岡山県倉敷市 実写風景
・主題歌MV
・ノンクレジットエンディング
・huluオリジナル『エンシェンと魔法のタブレット~もうひとつのひるね姫~』

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