2017年11月1日(水)
フランス・パリで開催中の“Paris Games Week2017”に合わせて、Quantic Dreamが開発を手掛ける2018年発売予定のPS4用ソフト『Detroit Become Human(デトロイト ビカム ヒューマン)』のBCDセッションが行われた。
セッション内容は、Quantic DreamのCOOであるGuillaume de Fondaumiere(ギヨーム・デ・フォンダミア)氏によるプレイデモと、Quantic DreamのCEO兼創設者にして本作のクリエイティブディレクターと脚本を務めるDavid Cage(デビッド・ケイジ)氏によるQ&Aの二本立て。ここではその模様をお届けしよう。
プレイデモで用いられたのは、10月31日(日本時間)に公開された新PVに描かれているチャプター。主人公の1人であるアンドロイド・カーラが中心となるシーンだ。
■Detroit: Become Human - PGW 2017 Gameplay Trailer | PS4
<登場人物>
●カーラ
主人公の1人。家政婦用のアンドロイドで、トッド家で働いている。
●トッド
カーラが仕える家の主人で、ドラッグ中毒者。アンドロイドのせいで失業したにもかかわらず、アンドロイドの世話にならなければならない現状に嫌気がさしている。
●アリス
トッドの娘。父に暴力を受けるなど、当たり散らされることも多い。
デモはカーラが食事を持っていくところからスタート。トッドに命じられて電気をつける、食事を運び終えた後はじっとしているなど、アンドロイドとしての役割に準じたプレイで進んでいく。
ここにも選択の自由があり、電気をつけない、じっとせずに動くといったことも可能。ただしその場合はトッドに怒られてしまうようだ。
話が進むとトッドがアリスに対して必要以上に当たり散らし、彼女は身の危険を感じて2階の自身の部屋へと逃げ込む。トッドはアリスをフォローしようとするカーラに「動くな」と命じて1階にとどまるのだが、ここでもプレイヤーの選択が物語の行方を左右する。
カーラは命令に従うようプログラムされているものの、そのシステムを壊すこと可能。トッドの命令に従うか、アリスを追って部屋に行くか、トッドを説得しようとするか――。
今回のプレイではシステムを壊し、アリスを助けに部屋に行くという選択が行われた。
部屋の中でもドアにカギをかける、アリスを連れて逃げる、トッドを説得するといったさまざまな行動がとれるとのこと。
今回はカギをかけたものの、ドアをトッドに壊され、トッドともみ合いに。ここはトッドの攻撃をコントローラの操作で回避していく流れだ。失敗したときの結末は、カーラは破壊され、アリスも死んでしまうという悲惨なものだった。
再プレイではシステムを壊したのち、1階にいるトッドに対し説得を試みるも、失敗。やむを得ず2階に向かい、トッドの部屋から銃を取ってアリスの部屋に行くという流れを紹介。銃を取る選択は、今回のデモよりも前のシーンで銃を見つけていると初めて追加されるものとのことだ。
そしてコントローラ操作でトッドの攻撃の回避に成功すると、カーラははずみでトッドを射殺してしまい、その後、アリスとともにバスに乗って逃亡するという結末に。
さらに、ここで銃を持っていることがのちの選択にまた影響するなど、すべての選択と行動が複雑に絡み合って物語が構成されていくことが説明された。
なお、本作はシーンに応じて操作する主人公が切り替わるため、このシーンでカーラが死んだ場合もストーリー自体は続いていくとのこと。また、チャプターの区切りで自分の選択と物語の分岐がわかるフローチャートも見ることができた。
このチャートは自分が見たことがあるパターン以外は内容がロックされていて中身は見えなかった。開発用の機能ではなく、ゲームに搭載予定だそうだ。
Q&Aセッションでは、今回のプレイにかかわるものだけでなく、ゲーム全体への考えを聞く質問なども飛び出した。質問と、デビッド氏による回答を掲載していく。
――物語の主人公にアンドロイドを選んだ理由を教えてください。
人の脳と機械の進化について書かれた『THE SINGULARITY IS NEAR』(2005年にアメリカで発行された、AIがやがて人間の能力を超えると予言した本)を読んだときに、人間と同じ姿をした機械が、そのまま機械として扱われるとなったら、よりおもしろいなと感じまして。
AIを語りたいわけではなく、自身について、自身がいる世界について語りたいと考えたときにアンドロイドがいいのではないかと思い、主人公に選びました。
――本作のカーラは、2012年に公開された『KARA』に登場するアンドロイドと同じなのでしょうか?
そうですね。同じと思っていただいていいです。
――本作で伝えたいことはなんでしょう?
本作はメッセージを伝えるものではなく、プレイヤーが親近感を抱き、思い入れを持てる質問を投げかけられるよう作っています。
選択からなにかを受け取る人もいるかもしれませんし、逆にまったく何も思わない人もいるでしょうが、それはそれで構いません。多くの分岐やエンディングがあるなかで1つのメッセージを送るのは難しいし、いいことでもないと思っています。
――ゲームシステムは『HEAVY RAIN』と『BEYOND』のどちらに近いですか?
開発が同じなので全然違うということはありませんが、過去と同じことをもう一度やろうとは思っていません。
操作方法などいくつかの共通点はあるものの、根本にあるのは本作のストーリーを語るうえで一番いいシステムを用意すること。大きな変化をもたらすよう作っているので、そういった意味では、どちらのタイトルとも違うゲーム体験を味わっていただけるはずです。
――ストーリーの分岐はどのようにして考えられたのでしょうか?
基本のアイデアはプレイヤーがジレンマを感じる、どちらを選べばいいか迷ってしまう選択を突きつけるというのを軸にしています。
6000以上の変化があるので、管理していくのは簡単ではありませんでしたが。また、本作には多くのテーマがありますが、なかには実際にあったこともテーマになっています。
――なぜプレイヤーがジレンマを感じる選択を与えたかったのでしょう?
ゲームならではの体験だからですね。映画は与えられた物語を観賞するだけですが、ゲームなら自分で物語を変えられるし、結果を自分で生み出せるじゃないですか。プレイヤーの選択の結果が個性であり、あなたの作った物語だと。
善悪など単純なものでなく、非常に難しい状況があって、それがあなたに起こったときにどうしますか? というような選択と決断を体験してもらいたいんですよ。
――技術的な面や分岐を作る点で、過去の作品から学んだことはありますか?
これまで独特の操作が多くありましたが、プレイヤーに慣れるまでの時間を与えてしまうと感じたので、物語に集中してもらうために労力をあまりかけず学べるようにしています。
進化している部分で大きいのはパフォーマンスキャプチャーですね。
『BEYOND』以上の深い演技ができていると思います。本作も専用エンジンを作って開発しているので、ライティングなどの進化による演出効果も楽しんでいただけるはずです。
――プレイデモでカーラが自身のシステムを壊していましたが、あれが彼女の能力ですか?
彼女にはほかの能力もありますが、それは後日公開予定です。もちろんコナーにはコナーだけの、マーマスにはマーカスだけの機能が備わっています。
――カーラはやや受け身のように感じましたが、なぜそういった役割にしたのでしょう?
今回お見せしたプレイデモは、1つのシーンでしかありません。彼女の物語はこれからも続いていくので、そのなかで本当の姿が見えてくると思います。
――物語は今回のシーンのように常に緊張感があるのでしょうか?
それぞれのシーンを違うスタイルで描いています。3人の主人公がいるのもポイントで、それぞれでトーンが違うし、物語進行や音の使い方、描き方も異なっていますね。
3人を操作していろんなトーンの物語をプレイしながら、1つの大きな物語を体験してもらえると思います。
――コナーにあるような捜査パートが、カーラにもあったりしますか?
コナーは捜査官だからこそ捜査パートが存在しています。本作は捜査ゲームではないので、主人公ごとに異なるゲームプレイを味わえるようにしています。
――主人公同士、例えばカーラとコナーが出会って選択を突きつけられることもあるのでしょうか?
ほかのキャラで行ったことが別のキャラに影響する作りになっているので、なかには干渉することもあるかもしれませんね。
――脚本家としてどのキャラに一番思い入れがありますか?
20年でいろいろなキャラを書いてきましたが、すべてのキャラに自分の分身といえる部分があるので、1人を決めるのは難しいですね。いろいろなテイストを持つキャラがいることが好きです。
――サウンドがすごくよく感じましたが、サウンドトラックの発売予定はありますか?
後日発表を予定しているので、今はいえません。続報を楽しみにしていてください。
――PS4 Proでの違いはありますか?
もちろん解像度がよくなりますので、より深いゲーム体験をしてもらえると思います。
――2018年の春発売とのことですが、あとはどんな作業が残っていますか?
まだまだたくさんありますね(笑)。最後のシーンに取り掛かってはいるものの、終えたら再度プレイしてより磨きをかけていく必要があるんですよ。
この工程が非常に重要。すべてのシーンを高いレベルで統一したいですし、分岐も手を抜いたと思われたくないですからね。カメラ、サウンド、ライト、エフェクトの見直しなど、まだまだ多くの仕事が残っています。
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