2017年11月2日(木)
カプコンから、2018年1月26日に発売されるPS4用ソフト『モンスターハンター:ワールド』の開発者インタビューを掲載する。
▲左から藤岡さん、徳田さん、辻本さん。 |
本作は、『モンスターハンター』シリーズ最新作となるハンティングアクションゲーム。新たに構築された多種多様な地形や生態系が息づく世界で、そのすべてを利用してモンスターを狩るという狩猟生活を体験できる。
インタビューはカプコンの大阪で行われたメディアツアー中に実施された。取材に応じているのは、プロデューサーの辻本良三さん、エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要さん、ディレクターの徳田優也さん。現状の開発状況やゲーム中の環境、拠点やシステムのこだわりについて語ってもらった。
なお、インタビュー中は敬称略。
――現在の開発状況はいかがでしょうか?
辻本:最終段階で、現在チェック中です。大きな不具合がないことを祈っています!
――今回、メディアツアーを開いた理由は?
辻本:ゲームサイクルを確認してほしいと思ったためと、これまであまりしたことがなかったのですが、時間をかけて序盤から遊んでもらいたいと思ったためです。
あと、大阪の開発フロアを見てもらう目的もありました。開発が終わるとできないので、なかなかチャンスがないので少しですが見ていただきました。
――東京ゲームショウで国内のユーザーが遊ばれましたが、反響はいかがでしたか?
辻本:すごくよかったです。ポジティブな反応、意見をかなり多くいただいております。ただ、整理券がすぐになくなって、プレイできなかった人も多かったのでこの秋から体験会を実施しています。
藤岡:遊ばれた皆さんがすごくいい笑顔で安心しました。ただ、20分ですべてわかるわけではないので、イベントによく来てくださる人からはいろいろと質問されました。答えられる範囲で話したのですが、伝えきれていない部分は今後時間を作って紹介していこうと考えました。
辻本:あと、キャラクリエイションの反響がすごかったです。
徳田:日本はクリエイトが好きな方が多いのを再確認しました。辻本は「男だけでいいんちゃうか?」と言っていたのですが、開発メンバーが頑張ってカワイイ子を作れるようにしてくれたので無理言って紹介させてもらいました。出してよかったです(笑)。
藤岡:キャラクリエイションを担当していたメンバーとは「反響があってよかった」と話をしました。自由度があり、やれることが多く「いいものになった」と思っていても、反応はふたを開けるまでわからない。彼らも肩の荷が下りたと思いますね。
徳田:アクション要素は説明してきたのですが、システム面の説明はTGSまで後回しになってしまい、今回やっといろいろと細かいところまで公開できました。システムを担当しているメンバーは「ついに我々の番が来た!」と喜んでいましたし、評判もとてもよかったので、なおうれしかったみたいです。
試遊してくれた方は熱量高く反応してくれました。あと、以前に『MH』を遊ばれていたけど、少し離れていた人が興味を持ってくれている感触があります。TGSとgamescomの試遊版は、ほぼすべての方がクリアしているので、難易度的には世界共通でいいところに落とせたと感じています。
ちなみにTGSではシングル、マルチともにリオレウスを討伐したという報告が1件ずつありました。0件だとバランスをミスしたと落ち込むのですが、5件ぐらいになると多すぎて凹むのでちょうどよかったかなと(笑)。
藤岡:本作ではクエストターゲット以外のところに難易度をふっているので、あえて狙わないと討伐は難しくなっています。ただそこをあえて狙っている人がいることは把握していました。とにかく情報を集めて、挑戦されたようです。
徳田:gamescomにもリオレウス討伐を目的にしているメンバーがいて、2日連続で来てくれていました。熱心に作戦会議をしていたのですが、討伐に失敗したら責任のなすりつけが始まっていましたね。
(一同笑)
辻本:めちゃめちゃ人間っぽい! 海外の方もそうなんかぁ。
▲gamescom会場の様子。 |
藤岡:海外の人はいろいろと素直に反応してくれますよね。TGSでも海外のユーザーは今までに比べて多い印象でした。
辻本:今回のTGSでは、メディアを含めてアジアの方が特に多かったですね。gamescomで体験できていないメディア陣が集まったのだと思います。
――ユーザーからは何を知りたいという要望が来ていますか?
辻本:ボリュームを気にしている方は多いようですね。
藤岡:フィールドやモンスターなどはいろいろと予測されているようです。
――本日プレイしていて、かなりの密度を感じています。メインストーリーを進めるだけでもかなり長く楽しめそうですね。
藤岡:繰り返し遊ぶゲームなので、同じ場所には何度も行きます。その度に少しでも新しい発見があったり、違うことが起きたりするような仕組みは大事だと思っています。ちょっとずつ世界を理解していっていただけるとうれしいですね。
――チュートリアルが細かいうえに映像まであって驚きました。
辻本:そこは親切に作っています。据え置きハードで細かいUIまで表示できるのは大きな要素ですね。
藤岡:画面が大きいので、情報を細かく出せるのは近年にない強みですね。以前のテレビとは解像度がまったく違うので。
――最初から通してプレイしていて、これまで以上にストーリーが前に出ていると感じました。
徳田:特に序盤はそう感じられるかもしれません。新しい世界であるうえに、シリーズを初めて遊ぶ人もいるだろうということで、迷わないようにストーリーを敷いています。ただプレイヤーがいろいろなことを理解してくるころには、自由度が高くなり、未開の地を調査している気持ちを味わえるようなレベルデザインになっています。
藤岡:徐々に能動的にやっていくことが増えていきます。
辻本:親切な設計にしているので、「このキャラに話しかけると進行する」という仕組みはわかりやすいと思います。
――これまででいうキークエストのような、“解放されるクエスト”はないのでしょうか?
徳田:本作では進行時に迷わないように、“これをやれば先に進む”ということを明確にしています。据え置きハードなのでいつでも遊べるわけではなく、久々に遊んだ時に「何をしていたっけ?」とわからなくなってしまうことを避けるためです。
――ストーリーでは生態系を調べることが前に出ています。これまでのシリーズでもありましたが、より深い設定が描かれていると感じました。
藤岡:“陸珊瑚の台地”に到達するあたりでは、なぜ本作のような生態系になっているのかといった、設定の一端がわかります。さらに出てきたいろいろなキャラと交流することで、ゾラ・マグダラオスに迫っていきます。
――そのゾラ・マグダラオスについて教えてください。
藤岡:このモンスターの古龍渡りをはじめ、プレイヤーである5期団が編成されるのをきっかけに物語が始まります。ストーリーを遊んでもらうことで、ゾラ・マグダラオスのことがわかってくると思います。
辻本:大きさはシリーズを通しても最大級です。
藤岡:フィールドを背負っているようなモンスターは一度やってみたいと思っていました。ゾラ・マグダラオスと対峙するクエストは、日々やるクエストとは違うタイプで、かなりイベント的な盛り上がりのあるものになっています。
徳田:大きさが規格外すぎて開発・調整はとにかく大変でした(苦笑)。
藤岡:背景とモンスターでは制作を進めるチームが違うんですね。普段はそれぞれの持ち分で仕事をするのですが、このモンスターは背景を背負っているので、「誰が担当するんだ?」って。
(一同笑)
藤岡:どこからどこまでをどちらが担当するのかが難しく、かなり特殊なチーム編成で作っています。背負っているフィールド部分は背景班が作るのですが、本体部分やモーションはモンスター班が作ってと、結構大変でした。
徳田:実は開発の序盤から作っているのですが、最後まで調整と不具合修正が必要で、一番時間がかかりました。
藤岡:さらに「ゾラ・マグダラオスのうえにモンスターを配置したい」となってくると、なかなかに難問でした。ちゃんとした大きさで作っているため、まさに“歩く大地”というモンスターです。
――物語中での演出面や見せ方には、これまで以上にこだわっていると感じました。
藤岡:物語の展開から演出を見せたり、今自分がやっていることと、目の前で描かれていることがリンクしたりすることを心がけています。なるべく感情を細やかに作ることで、イベントカットへのつながりがスムーズになるようにこだわって作っています。
辻本:モンスターの登場シーンにしても、昔はムービーとして作っていたものもあったのですが、今回はすべてリアルタイムで出せるようになっている。そこも大きく関係しています。
藤岡:デザイナーが、かなり力を入れて作ってくれたので、今回は特に素材がしっかりしています。そのため、シーンを用意して、ライティングを調整すると、とても見栄えのいいムービーになるんですよ。作っていて手ごたえを感じているので、リアルタイムの表現を楽しんでいただけるとうれしいですね。
――これまで以上にハンターがアップで出てくることに驚きました。
藤岡:顔に表現を付けられるようになったため、顔をアップで出しても感情がわかりにくいということがなくなったんです。プレイヤーだけをしっかり出せるようになり、演出の幅も広がっていると思います。
――本作でもセリフはないのでしょうか?
藤岡:プレイヤーにはアバターとして主人公という役割があります。イベントカットでその場にいるのですが、性格付けはプレイヤーの中にある。セリフがあると性格が固まってしまうので、自分なりのキャラを投影させる意味でも、プレイヤーにセリフがないのは今まで通りです。
――物語ではないのですが、拠点にある食事場での料理の最後に、料理長が葉をそっと添える演出がいいですね。
(一同笑)
徳田:優しく葉を置く(笑)。
藤岡:ちょっとしたことですが……巧みの技です(笑)。
辻本:え? 葉を置くことが巧みなの!?(笑)
藤岡:レベルが上がると、彼のこだわりをますます楽しめるようになりますよ。
――あの演出を担当されている人がいらっしゃるのですか?
藤岡:イベントカット全体を担当しているチームがあり、そのメンバーからアイデアを出してもらっています。「偉そうなだけで、何もしていないな……」という、巨匠の感じがいいんですよね(笑)。
――拠点全体のコンセプト、作りを教えていただけますか?
徳田:今回は“調査団”というコンセプトがあります。調査団は1期団から5期団まであり、歴史を重ねることで規模が大きくなっています。その調査の拠点であること、継ぎ接ぎで増築してきた場所であることを最初からコンセプトとして掲げていました。
藤岡:乗り付けた船も拠点の素材にして、自分たちの住居を作っているので、そこらへんに船を切り出した部品があります。2期団からは役割がしっかりしています。2期団は技術者が多いため、加工屋回りは彼らの船を資材にしています。3期団に関しては、実は大半この拠点にはいないのですが、彼らはさまざまな研究を担当しています。そして、4期団は資材の管理を行い、この地に住む人々の生活を豊かにしていくのです。
このように期団ごとに拡張している感じを出しています。期団ごとに旗の色が決まっていて、よく見ると持ち物ごとに描かれている旗の色が違うという、こだわりを入れたデザインにしています。
――拠点が広大で、案内された時にいろいろ見ていたらあっという間に時間が経っていました。
藤岡:拠点をウロウロしながらいろいろな人の動きを感じてもらいたいので、コンパクトにまとめるのではなく、あえて広く作っています。
徳田:調査の規模感は大陸全体に広がるもの。拠点がしっかりしていないとリアリティがなくなってしまうので、このような形にしました。
――プレイヤーがリアルに描かれるようになったため、登場人物の名前もリアルになるかと思っていたのですが、わかりやすい名前で安心しました。
徳田:NPCの名前はかなり検討しました。しかし、新たな世界に降り立ち、キャラの役割を把握したうえで名前も覚える必要があると、ユーザーの負担が多いということで、今回も名前に役割を入れる形にしました。
藤岡:なるべく不変的な言葉で何をしているかをわかりやすく表現することはずっとやってきたので、本作でも名前を見れば何をしているか分かる人であるようにしました。
――装備の仕組みは、本作から始めた人でも把握しやすいですね。
藤岡:それは徳田も気をつけている部分です。近年、スキルの種類が増えていることもあり、1つのスキルを発動させると装備が変えにくくなっていました。開発としてはさまざまな防具を作っているので、もう少し気軽に作ってほしかったんです。そこでスキルを1部位で発動するようにして、スキル遊びを楽しんでもらえる仕組みにしました。
「とりあえず何か作っておこう」という感じになっているかと。そこを起点に他を変えていくことで、防具はとっつきやすくなっていると思います。
辻本:素材や費用がもったいないから防具を作らない人が多かったと思うのですが、「とりあえず一番防御力が高いものを作ろう」という風になるのではないかと。
徳田:シンプルながらも装備を組み合わせる楽しさは残しています。序盤はスキルの仕組みを理解してほしいということで、武器・防具の生産費用を抑え目にしています。とはいえ、もちろんずっとそのままではありません(笑)。
――防具のデザインはこれまで以上にリアルで見栄えがしますね。
藤岡:普通にプレイしていると、ほぼ防具の背中しか見ないと思いますが、パーツ構成などいろいろなデザインをしっかり作り込んでいます。今回は加工屋でプレビューを出せるので、細かいところまで見ていただいたうえで、使ってほしいですね。
――カッコいいものやカワイイもの、ネタ系などバリエーションは豊富なのでしょうか?
藤岡:着合わせはしやすいように考えています。シルエットが違いすぎるとあわせにくいので、個性は意識しつつ全体のトーンをあわせることを意識しています。
――メインクエスト以外にも、フリークエストや探索などがあり、遊びが充実していると感じました。
藤岡:拠点にいるキャラのお願いを聞くことでも、いろいろなものが手に入りますし、能動的に探索に出て素材を持って帰るだけでも何か見返りがあります。いろいろなものを探すと発見があるので、環境生物1種類とっても、気にしだすと止まらなくなるかと。
徳田:調査団からの依頼をこなすだけでもいろいろと遊びの幅が広がっていくのですが、依頼に添わずに自分だけでフラッと探索に行くだけでも楽しさが広がります。
――自分が釣った魚がマップに表示されて、マップが充実してくるとまた探索に行きたくなりますね。
藤岡:もう一度その場所に行きたくなったら、生態マップを開いてピンを刺せば導蟲がその場所まで案内してくれるので探索しやすいです。僕はなかなか地形を覚えられないのですが、この仕組みにかなり助けられています。
辻本:古代樹の森は高低差があるのですが、何度も行くので少しずつ慣れていくと思います。
――探索を含めて、自分のルートができるとフィールドに土地勘が出てきますね。
辻本:そうなんです。自分の中に道ができてくると、景色が見えてくると思います。
藤岡:古代樹のあたりで立体的に抜けているところは少し構造が複雑ですね。ただやっていると「あそこにあれがあるな」という風に少しずつ覚えていきます。ただ、昼夜によっても印象は大きく変わるのですが(笑)。
徳田:僕も雨の夜は最初迷いました。ただ、クエストをこなしていくとだいぶわかるようになります。
――フィールドで薬草を採取した時に、自動で回復薬になりました。この自動調合は便利ですね。
徳田:全体的に、フィールドにあるものを気軽に使ってほしいというコンセプトがあります。採取したものを使うために調合を挟むと、ひと手間かかってしまうので、手に入れたものをより直感的に使うにはどうしたらいいかをチーム内で相談しました。
採取した瞬間にオートで調合する“自動調合”の設定をオンにしていれば、薬草は採取した時点で回復薬になります。回復薬グレートも同様で、設定をしておけばハチミツをとった瞬間に回復薬と自動で調合されます。
藤岡:これまでは薬草とアオキノコのように2つを組み合わせていたのですが、手早く使っていくことを考えて、1つでもできるものがあってもいいと思って、このようにしています。
――自動で行いすぎると簡単に感じる人がいたり、シリーズらしくないと感じる人がいたりすると思うのですが……。
藤岡:このあたりは間口を広げる仕組みなので、バランスは考えています。『MH』らしさは失いたくないので、導入として自動調合の仕組みがあって、ユーザーがカスタムする深い部分での遊びの幅は変えていません。レアな素材を手に入れた時のうれしさは残っていますよ。
――剥ぎ取りについても、一回剥ぎ取ったら何種類も素材が入るやり方にできたと思うのですが、そちらはあえて残されていると。
徳田:ランダム要素が大きく絡む、いわゆる“くじ引き”部分は残しています。鉱石もそうですが、何が出るかわからないところはしっかりアクションを用意して、何が取れるかわかっているものは、クイックにする方針です。
藤岡:次に何が出るかという楽しさが剥ぎ取りにあると思うので、そこは残しました。
徳田:レアな素材が出たら喜ぶアクションに変わりますからね。
――そうだったんですね。
藤岡:ということは見ていないんですね(笑)。そのアクションが出たら、ちょっといいのが出るかもという期待が持てます。
――ヘッドフォンをつけてフィールドにいくと、かすかにモンスターの気配を感じました。普通のヘッドフォンなのに、空気感が出ていることに驚きました。
辻本:ヤマハ様の立体音響の総合技術・ViReal(バイリアル)です。普通のヘッドフォンでも、立体的に音を聞けるシステムで、まだ一般提供されていないのですが、先行で入っている技術です。
徳田:3Dの音をシミュレートする仕組みが入っていて、それによってモンスターの方向がわかるようになっています。このシステムのいいところは普通のヘッドフォンでも楽しめるところ。サラウンド環境がある場合、音はしっかり回るのですが、ステレオならばヘッドフォンが断然オススメです。
藤岡:没入感がすごいので、ぜひ一度体験していただきたいです。
あと、BGMもこれまでとは作りを変えています。本作ではモンスターから逃げたり、モンスターを追いかけたりして、戦闘は途切れていないが状況は変わっているなど、いろいろなことが起こります。そのため、この状況はこの曲というふうに、過去と同じようにひとまとめで作るのは難しかったんです。
――どのようにして解決されたのですか?
藤岡:曲の中でも、BGMがシームレスに切り替わるように作ったり、展開によって音が足されることでテンションがガタガタしないように作ったりしてもらいました。最初にいろいろと検証・調整して決めています。
徳田:モンスターとの距離も関係しますが、状態によって、音量などに変化が出ているんです。
藤岡:プレイヤーを追いかけているのか、エリアを離れようとしているのかなど、状況はさまざま。それを自然に感じられるようにしているので、違和感がなければうまくいっているのだと思います。
――発売後の展開はこれまでとは違うのでしょうか?
辻本:イベントクエストはいままでの据え置き機のような感じで、こちらで期間を決めて特殊なクエストを配信するなど管理していく予定です。
藤岡:変わったイベントクエストもある予定です。
徳田:据え置き機なので、ハードを立ちあげるきっかけになるものをいくつか用意しています。「久々にログインしたらいいものがもらえたので、ちょっとやってみようかな」というログインボーナス的なものも考えています。
――楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
データ