2017年12月15日(金)

『PSO2』開発陣インタビューを再掲載。変化を求めた開発陣とユーザーとで起こったすれ違いについて語る

文:電撃オンライン

 セガゲームスが運営する、PS Vita/PC用オンラインゲーム『ファンタシースターオンライン2』開発者へのインタビューを実施したので掲載する。

『ファンタシースターオンライン2』

 『ファンタシースターオンライン2』は、ネットワークゲームの楽しさや驚き、冒険を再び感じられるゲームとして開発された。PC版とPS4版、PS Vita版がサービス中で、iOS/Android向けサービス『ファンタシースターオンライン2 es』も行われている。

 お話を伺ったのは、シリーズプロデューサー・酒井智史さんとEP5ディレクターの濱崎大輝さん。現在の状況や、2018年の構想などを聞いています。

『ファンタシースターオンライン2』
▲酒井さん(左)と濱崎さん(右)。

 このインタビューは11月22日に発売された『電撃PlayStaton Vol.651』に掲載されたものを再構成したもの。後日行ったインタビューは、近日中に掲載します。なお、インタビュー中は敬称略。

変化を求めた開発陣とユーザーとで起こったすれ違い

――EP5が始まって約4カ月が経過しましたが、現時点での手ごたえはいかがでしょうか?

濱﨑:手ごたえというよりは、長期運営していくことの難しさを目の当たりにしたというのが正しい表現ですね。今回、ヒーローに関してはそこに問題があったと感じています。

酒井:ボクらはゲームを変えるというのが目的だったのですが、ユーザーのみなさんはそこまで大きな変化を望んでいなかったのかなと。5年という期間をやってきて、ここでゲームを変えたほうがいいのではないかという考えでヒーローやバスタークエストを出しました。それに対して、どちらかと言えばNoという答えが出てしまいました。

濱﨑:そこにユーザーさんとの認識の違いがありました。これまで5年間付き合ってきたものを大切にしたいという気持ちと噛み合わなかった。また、本来は改善を考えて入れたものが不具合や仕様の問題などでマイナスになってしまったり、ご不便をおかけしてしまいました。方針の変更やバランス調整、開発体制の見直しなどをして立て直していくのが今後の課題だと思っています。

酒井:マイナスで始まってしまったEP5をどう変えていくのか、まだまだ挽回していかなければなりません。

――ヒーローは上級クラスという位置付けですが、長期的に見てこれからどうしていくのでしょうか?

『ファンタシースターオンライン2』

濱﨑:今の方針として、通常クラスの調整コンセプトは、状況によってはヒーローよりも強い。ヒーローは“ヒーローブースト”を維持しないと火力が安定しないので、エネミーとの戦いが長引く状況では通常クラスのほうがいいという想定です。

 上級クラスに関しては、アクションに自信がない方が遊びやすい環境にすることと、触っていて楽しいということ、この部分は維持しようと考えています。プレイスキルに自信がある方、通常クラスが好きという方はそちらを遊んでいただければと。今後も上級クラスはそういうスタンスで作っていこうと思います。

――上級クラスを複数用意するなどの選択肢は用意できなかったのでしょうか?

酒井:そこは開発体制の問題としか言いようがありません。アクションが通常クラスとはすべて違っているのがネックで、1つ1つを作るのに時間がかかるんです。現状の体制では1クラスが限界でしたし、これまでもクラスの追加は1つで受け入れていただいていたので安心してしまっていた部分もありました。

――先日の“PSO2アークスライブ!”で追加のバランス調整が発表されました。あの内容がすべてなのですか?

濱﨑:まだ一部公開していないものもありますが、だいたい網羅しています。12月下旬のサモナーの調整ではペットの育成面も入っていて、トータルで底上げされます。キャンディー圧縮の成功確率は変わりませんが、消費メセタや必要アイテムが緩和されます。年末までの調整は発表したもので終わりですが、引き続き必要なものには対応していきます。

――ダークブラストの反響はいかがですか?

『ファンタシースターオンライン2』

酒井:ヒーローと同じで、まず選択肢が1つというところがユーザーさんの心象と合致しなかった。変身というキーワードはよかったんですが、形態なども含めて拒否反応がありました。強さや操作といったところのおもしろさは好意的な意見もあります。アップデートは続いていくので、そこも含めて今後を見ていっていただければ。

――『PSU』ではビーストを使っていたので、個人的には違和感なく遊べました。

酒井:ビーストは最初から変身するという前提でユーザーさんも使っていたので、そこに対して拒否反応はなかったんだと思います。今まで変身しなかったものが、いきなり変身するのが許せないということだったようですね。

濱﨑:楽しければOKという人と、うちのキャラはそうじゃないんだよという人がいて、難しいところですね。ボイスもデリケートな部分なので、オフのオプションを入れています。

――現在の開発の進捗はいかがですか?

濱﨑:スケジュールどおり進んでいます。今は来年以降のコンテンツを作っているところですね。

――通常クラスのバランス調整はもともと想定されていたのでしょうか?

『ファンタシースターオンライン2』

濱﨑:EP5開始時に下方を含めた修正をやりましたが、あの段階ですでにバランス調整を定期的にやっていくスケジュールを組んでいました。本来はいくつかのアップデートに分散してやっていくつもりで、9月27日に前倒したのは予定外でしたが、調整の項目や内容は事前に決めていたものです。

――“PSO2 STATION!”の放送が火曜日になりましたが、ユーザーの反応はいかがですか?

酒井:おかげさまで今までよりも多くの方にリアルタイムで視聴いただきましたので、やってよかったなと。土日のほうが見やすいと思っていたのですが、休日は外出などの都合もあって火曜日のほうが見やすいのかもしれません。水曜日が『PSO2』のアップデートなので、その直前というのもいいタイミングなのかもしれませんね。

新レイドボスやS級特殊能力など今後の配信内容はいかに!?

――12月配信予定の新レイドボス“エリュトロン・ドラゴン”のクエスト内容について、言える範囲で教えてください。

『ファンタシースターオンライン2』

濱﨑:エリュトロン・ドラゴンは、幻創戦艦・大和やデウス・エスカと同じタイプの進行型クエストになっています。橋の上からスタートして、魔物種と戦いながら二の丸、本丸と追い詰めていって、各所でエリュトロン・ドラゴンと戦う形式です。

 マップ内にはこのクエスト専用の“ラコニウムソード”という剣があり、ボスの弱点を露出させるようなギミックがあります。

――ラコニウムソードは弱点を露出させるためだけの武器なのでしょうか?

酒井:通常クラスの方でも、ラコニウムソードを手にすることでヒーローのような、というよりヒーロー以上のアクションで戦えるようになっています。

濱﨑:採掘基地防衛戦のA.I.Sみたいなものですね。使用回数に制限はありませんが、同時に出現するのは3本までです。効果時間が切れるか、装備時のHPがなくなると手放して再びマップに出現します。装備に自信がないという方は剣を持ってもらって、逆に装備が強いという人は自分の武器でも十分戦えますよ。

――どのタイミングで使うかも重要に?

濱﨑:どんどん使ってかまいません。どちらかと言えば、剣を持った人がちゃんと使いこなせるかが重要ですね。操作に関しては、A.I.Sやライドロイドほど特殊なものはありません。

――バトルアリーナは今後どのようにアップデートしていくのでしょうか?

『ファンタシースターオンライン2』

濱﨑:新たな武器と入れ替えるパターンもありますが、今までやっていなかった武器の組み合わせによるレギュレーションなども予定しています。年末までは今のペースでやっていきますが、年明けからは大きな変更は半年に1回くらいに緩めて、レギュレーションの変更は2カ月~3カ月に1回くらいの予定ですね。

酒井:12月にもアップデートがあって、そこでマップが1つ増えます。森林エリアの雨バージョンで、ちょっとだけマップが変わっています。マップの両側に川が流れていて、それを移動に使うのが攻防のカギになります。

濱﨑:あとは落雷が発生したり、今までジェットブーツでしか行けなかった高台の高さが変更になったりと細かい変化があります。狙撃ポイントとして使えるかもしれません。

――現状、バトルアリーナのプレイ状況はいかがですか?

濱﨑:すごくたくさんの人が遊んでいるというわけではないのですが、熱心にプレイされている方がいるという状況です。ランクマッチを遊んでいる方がいる一方で、アークスバトルトーナメントの出場者はチームでパスワードマッチをずっとやっていますね。みんなが思い思いに遊んでいるという状況です。

酒井:今後も、バトルアリーナが遊びとして定着してくれるとうれしいですね。それから、バトルコインの交換アイテムは定期的に変えていきます。

――来年配信予定の新フィールド“幻惑の森”で実装予定のクエストはどういったものになるのでしょうか?

濱﨑:12人同時にスタートする進行型クエストで、魔物種と魚介系ダーカーが出てきます。バスタークエストでしか出ていない魔物種が、じつはこんな動きをするだとか、こういう風に出てくるとやっかいだったのかとか、そういったところも見どころです。バスタークエストでは塔を狙って攻撃してきましたが、プレイヤーを狙うようになるので新しい発見があると思います。

――ロードマップの最後に書かれた“星雲”という部分で、何か教えてもらえないでしょうか?

『ファンタシースターオンライン2』

酒井:うーん、“星雲”という言葉の意味は何かのメタファーくらいでとらえていただければ……というぼんやりとしたことしか言えませんね。

――話は変わりますが、S級特殊能力はどういったものになるのでしょうか?

濱﨑:今までの特殊能力とイメージ的には近く、パラメータが直接上がる効果の代わりにプチ潜在能力のようなものが設定されているといった感じです。PP消費量が減ったり、クリティカルが出やすくなったりといった効果ですね。ただ、全部の武器に付けられるのではなく、今後配信されるS級特殊能力用のスロットが付いた武器に付けることができます。そのスロットはS級と通常のどちらの特殊能力も付けられる、そういった仕

組みですね。

――合成や継承のルールはどうなるのでしょう?

濱﨑:基本的なルールは通常のものと変わりません。S級特殊能力はドロップ武器に付くものと、特殊能力因子で出せるものがあります。

――配信済みの武器は★14武器でもS級特殊能力には対応しないのでしょうか?

『ファンタシースターオンライン2』

濱﨑:★13武器で★14武器の強さに近づくためのものと考えているので、現状では対応する予定はありません。

――特殊能力追加のルールがかなり複雑になっていますが、そういったところの調整は考えていますか?

濱﨑:現状ではありません。S級特殊能力は継承率が100%なので、まずはそこから手を付けていってほしいと考えています。

――とくに“ヤマト・ファクター”が顕著ですが、武器と比べてユニットの特殊能力は入手しにくいと感じます。入手の緩和は予定していますか?

濱﨑:予定はありませんが、入手経路を増やしたり、人気の特殊能力に近い数値のものを追加するなどして対応していきます。“ヤマト・ファクター”については持ち帰って検討します。開発内では、値崩れが起きてしまってがんばって手に入れた人がガッカリしないように気にしている部分もあるんです。そういった意味では、「リターナー」は今後も緩和しません。

――★14武器が登場してから約1年になりますが、ドロップ率など緩和は予定していますか?

濱﨑:イベントなどで定期的にドロップするようにしているので、配信当初に比べたら入手しやすくなっています。緩和というわけではないですけど、なんらか気軽に入手できるものは考えています。今の★14とは毛色の違うもので、育成する★14武器という感じでしょうか。

――共通シップで楽しめるコンテンツの予定はありますか?

濱﨑:実装は確定していませんが、考えていることはあります。それに関しては共通シップでも楽しめるようにならないか検討しているところでして、どれくらいできるかはわからないので確約はできません。

2018年はユーザーが安心して遊べる環境を目指す

――来年3月に開催予定の“ライブシンパシー2018”の反響はいかがでしょうか?

『ファンタシースターオンライン2』

酒井:これまでやってきたシンパシーよりも初動がいいですね。今回は特典アイテムコードが付かないので、特典内容の発表まで待つという方がいないからかもしれません。席はスタンディングよりも着席指定席が人気でした。

――出演者や楽曲はもうすべて決まったのでしょうか?

酒井:スケジュールを調整中ですが、出演者はまだ増える予定です。曲はゲームのものと、キャラソンのバランスをどうするか悩んでいますね。ライブで実施するのは初になりますが、EP5のボーカル曲も入ることになりそうです。

――最後に、2018年以降の展開も踏まえて、読者&ユーザーにメッセージをお願いします。

『ファンタシースターオンライン2』

濱﨑:EP5が始まってから不具合などでご迷惑をおかけしました。しっかり改善していって、2018年はみなさんが安心して楽しんでいただける環境を目指してがんばっていきます。新しいコンテンツだけでなく、過去に好評だったコンテンツやみなさんが好きなコンテンツも充実させていって、より幅広く楽しめるものを作っていきます。2018年も『PSO2』をよろしくお願いします。

酒井:EP5の初動の悪さ、我々の思惑と違ってしまったこと、非常にご迷惑をおかけして申し訳なく思っています。開発の都合と我々が言ってしまってはいけないんですけど、それが優先されすぎてしまったこと。長期運営に対して、多様化しているユーザーのみなさんへの気の遣い方が我々に足りなかったと痛感しています。

 EP5については、アップデートの計画を見直し、コンテンツごとの力の入れ方や開発・運営の体制など、まずは失ってしまった信頼とみなさんに楽しく遊んでいただける環境を取り戻すことを最優先にやっていきます。

 2018年に向けては、Nintendo Switchの『PSO2 クラウド』が入ってくるので、新たなユーザーさんを迎えるための土台作りもやっていこうと考えています。『PSO2』はまだまだ止まりません。今回の顛末で『PSO2』から離れてしまった方たちにも見直していただけるような施策をしていきますので、どうかこれからもよろしくお願いします。

――ありがとうございました。

データ

▼『ファンタシースターオンライン2 EPISODE 4 設定資料集』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:KADOKAWA
■発売日:2017年11月25日
■価格:3,600円+税
 
■『ファンタシースターオンライン2 EPISODE 4 設定資料集』の購入はこちら
Amazon.co.jp
▼『ファンタシースターオンライン2 ファッションカタログ 2016-2017 Realization of Illusion』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:KADOKAWA
■発売日:2017年8月12日
■価格:3,000円+税
 
■『ファンタシースターオンライン2 ファッションカタログ 2016-2017 Realization of Illusion』の購入はこちら
Amazon.co.jp
▼『ファンタシースターオンライン2 エピソード4 デラックスパッケージ』
■メーカー:セガ
■対応機種:PC
■ジャンル:RPG
■発売日:2016年4月20日
■希望小売価格:4,990円+税
 
■『ファンタシースターオンライン2 エピソード4 デラックスパッケージ』の購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト