2017年12月23日(土)
この記事には『Life Is Strange』のネタバレが多大に含まれます。
プレイを予定している方は、ご注意ください。
「人生は選択の連続である」と、かの有名な劇作家ウィリアム・シェイクスピア氏は言いました。
筆者も激しく同意せざるを得ません。自分が選んだ結果として嫌なことがあったり、失敗したりした次の瞬間に後悔することも多々あります。結果さえわかっていれば、そんな選択しなかったのに、もっとうまくやれたのにと思うこともあるでしょう。
▲発売はスクウェア・エニックス、開発はDONTNOD Entertainmentが担当します。 |
もし本当に先のことを知り、思うがままに人生を進めていけるとしたら? 過去の謎を解決できるとしたら? そんな現実にはあり得ないことを、不意にできるようになってしまった少女・マックスの物語が描かれるのが『Life Is Strange』です。
2017年に前日譚にあたる『Life is Strange: Before the Storm』日本語版の発売が決まったことですので、『Life Is Strange』をプレイして感じたことを書き綴っていきたいと思います。
『Life Is Strange』は、いったいどんなゲームなのか。簡単に言ってしまえば、主人公“マックス・コールフィールド”のお話であるのですが、いろいろと生々しい展開がプレイ欲をかき立てます。
マックスは、ブラックウェル高校で写真を学ぶ、ちょっと地味で普通な学生です。ひょんなことから時間を巻き戻す力を手に入れ、そこから彼女の生活は一変します。
▲本作の主人公“マックス・コールフィールド”。自撮り好きで内向的な性格です。 |
例えば、友人が目の前で殺されたとしましょう。マックスの力を使って時間を戻せば、殺される前に警告することができます。ただ、普通に考えれば「お前はあと5分後に殺される」と言っても、信じてくれる人は中々いないですよね。
筆者も、いきなり知人に「お前この後、骨折するよ」とか言われても「え?」としか思わないわけです。
そんなマックスの力を最初は疑いながらも、理解してくれるのが彼女の親友で5年ほど連絡をとっていなかったクロエです。もちろん、5年ぶりに再開した時はマックスにこっぴどく嫌味を言ってくるのですが、まあそれはご愛敬ですよね。
青髪にタトゥーと、パンクスな雰囲気を漂わせるクロエは、言葉遣いは荒いし、気も長くなのですが、じつは寂しがりやで、人恋しい、愛情に餓えたかわいい女の子だと思います。
▲クロエ・プライス。5年前とは風体がだいぶ変わっています。 |
ゲームの最中に、マックスを通して彼女と交流していく中で、クロエの内面まで見えてきます。内情を緻密に描かなくとも、登場人物の心のありようまで伝わってくるのは、1人の人物が丁寧に作りこまれたゲームだと感じさせてくれます。
とくにクロエは、不良的行動と自分よがりな一面が目に付くこともありますが、高校生くらいの年代ならよくあることですし、尖ったところが変に削ぎ落されていないぶん、リアリティがあって魅力的です。
そんなマックスとクロエが立ち向かうのが、失踪したクロエの親友レイチェルの真相について。校内のいたるところに、レイチェル失踪の貼り紙があり、面識はなくとも、少しは気になっていたマックスは、クロエとの再会から真相を追うことになります。
▲レイチェル・アンバー。ブラックウェルの生徒で、現在は行方不明。マックスとクロエが真相を追っています。 |
『Life Is Strange』では、つねに選択を求められます。普段、生活していて何気なく選んでいるようもの(言葉や動機)が可視化されているような感じでしょうか。
選んだその場はよいものの、時間が経つにつれて遅効性の毒のようにまわってくる選択もあります。あの選択をしたために、この場面で……となるのが『Life Is Strange』のおもしろいポイントです。
▲マックスは時間を巻き戻すことで、あるべき未来をなかったことにもできます。 |
ゲームをプレイしていると、自身の寂しい青春時代を思い出したり、後悔し始めたりと少し(?)感傷に浸ってしまうのも、魅力的な点でしょう。
筆者も、少しだけマックスに倣って勇気を持って踏み出せばよかったと思い返すことがなきにしもあらず(ほんの些細なことでも)。でも、現実の時間は巻き戻せませんからね……。
そんなマックスが我々と違う点は、選択を何度でもやり直せること。選択の結果を見て、間違っていたら時間を巻き戻し、正しいほうに修正できます。ゲームを進めていくと、気軽にこんな能力欲しいとは言えないのですが。
本作の舞台である“アルカディア・ベイ”は腐敗した街なんて書いていますが、ロケーションや街並みは非常に素晴らしい場所なんですよ。
▲夕暮れのアルカディア・ベイは絶景です。 |
ただ、そこを牛耳るプレスコットが厄介な大家です。アルカディア・ベイは、実質プレスコット家に仕切られており、その息子であるネイサンもマックスと同じブラックウェルに通っています。
親が社会的に力を持っていると、その息子が真面目で思いやりのある人物なことは少なく、ネイサンは学校でやりたい放題しています。プレスコット家が、ブラックウェルに多大な寄付をして、学校側が彼に強く出られないのも要因の1つです。
▲ネイサン・プレスコット。とにかく、やりたい放題やります。 |
街でいろいろな人と話しても、プレスコット家に対して出てくるのは悪評ばかり。名手とは言えないことが、一目瞭然です。ストーリーには、このネイサンも深くかかわってくるので、要注目です。
実際に筆者がアルカディア・ベイに住んだわけではないので、ゲームをプレイしたのみの感想で言うならば、陰鬱とした空気が街に漂っています。レイチェルの失踪に加えて、プレスコット家の支配などが主な要因でしょう。
補足をするならば、自然豊かで落ち着いた雰囲気であるところは大好きです。
マックスがブラックウェル高校で写真を学んでいることは先に書いていますが、校内にも友人がもちろんいます。その中で、筆者がとくに好きな3人を紹介しましょう。
ケイトはある事件に巻き込まれ、動画をバラまかれて学内でいじめを受けています。本当は明るくて、クセのあるイラストを描くマジメな子なのですが、どんな背景から事件に巻き込まれたのかが、序盤に解明していく部分でもあります。
▲事件以降あまり笑わなくなったケイト。マックスは以前のような明るいケイトに戻ってほしいと願います。 |
かなり思い詰めていることが最初からわかり、見ているのも心苦しいくらいなのですが、事件の真実がわからないために的を射た言葉をかけられないのが、歯がゆくなりました。
しかも選択によっては、ケイトに大変なことが起こります。最初にプレイした時は力が足らずに、ケイトの身に起こる不幸を回避できませんでした。彼女は身をもってどんな選択をするかが、いかに大事なのかをプレイヤーに教えてくれる存在でもあります。
事件のことを吹っ切った後は、マックスを頼ってくれるようにもなり、以前の明るいケイトに戻ってきている様子。
ブラックウェルの用務員。物腰はやわらかいが、生徒たちに気味悪がられている一面もあります。ちなみに、マックスはサミュエルと世間話するくらいの間柄です。
▲サミュエル。ただの用務員にしては、いろいろと鋭い発言をします。 |
非常に詩的な言い回しをする人物で、もしかしたらすべてを知っているのかもと思わせる人物。達観したような物言いをしますが、本人曰く「自分は物事を違う角度から見ているだけ」とのこと。
もう少しだけサミュエルの話を聞いてみたかった気もします。
マックスに好意を寄せている青年。科学を専攻していて映画やTV番組のマニアでもあります。
▲恋する若者ウォーレン。マックスにバレバレな恋心を寄せています。 |
本編では何度もマックスを助けるために活躍してくれており、多くのプレイヤーが彼の恋心に胸をうたれたことでしょう。
最初から貫徹してマックスの味方であるウォーレンは、いいキャラクター性をしていて、ゲーマーには気に入られそうだなと勝手に思っています。やる時はやってくれる真っすぐな人柄がイイんですよ。
ここではとくにお気に入りの登場人物のみを紹介しましたが、もっとたくさんの人物がゲームには登場します。皆、いろいろな一面を持っていたり、悩みを抱えていたりして、会話をしているだけでも楽しいです。
※少々読みずらいですが、上の見出しは反対からお読みください。
最後に『Life Is Strange』のどこが、ここまで筆者に強い印象を抱かせたかを書いて終わりにしたいと思います。
正直なところ、最初はちょっとしたアドベンチャーゲームかと思っていたのですが、エンディングはいい意味で裏切られたと感じました。
エンディングで出てくる選択は、「クロエを犠牲にする」か「アルカディア・ベイを犠牲にする」かというものです。筆者はこの選択で長いこと悩みました。途中にコーヒーを飲みながら熟考するほどに。
▲ここまでゲームを進めてきたアナタには究極の選択とも言えます。選択が出る前のクロエの台詞も心に残ります。 |
「いや、ゲームなのだからまたやり直して別の選択肢を選べよ」と思われる方、おっしゃるとおりです。
あえて言わせていただくならば無理でした。そんなに短くない時間を『Life Is Strange』内のマックス・コールフィールドとして過ごしていた筆者は、クロエを久々に会った親友だと感じていましたし、ときには試行錯誤して何度も彼女を助けてきました。
▲マックスの部屋に飾ってある写真の数と同じように、たくさんの経験をエンディングまでにしてきました。 |
それはエンディングまで自ら選択を続けて、道を進んできた主人公マックス=筆者としての意思でもあったのです。たとえ、クロエ自身が犠牲を望んでいても、彼女に死の因果が待っていようとも、それだけはできませんでした。
よく言われる“多数を救うために少数を切り捨てる”ことが、この時ばかりは躊躇われたのです。レイチェル・アンバーをなくしたクロエ、とある時間の旅で別次元のクロエを失ったマックスは、タイミングや経緯は違えど親友をなくした経験を持っています。
プレイヤーとしての筆者は二度とそんな経験をマックスとクロエにさせたくない、そんな思いがどこかにありました。たとえアルカディア・ベイが犠牲になったとしても、学友がどうにかなってしまおうとも(すまないウォーレン)、クロエだけはマックスと一緒にあるべきではと。
▲薄々わかってはいたけど、いざ自分の目で確かめて実感を持つと辛すぎることってありますよね……。 |
この考えはエピソード4あたりから少しずつ芽生えてきました。すべてが素晴らしい結果に向かうならと、別の未来のクロエの望みを苦しい思いで叶えたからこその答えだったのかもしれません。
クロエの決心を受け止めて、彼女を犠牲にしたならばどのような結果が待っていたのか。これはゲームのプレイヤーとして、見届けなければならない気もします。
▲クロエの決意。筆者には受けとめきることができませんでした。 |
▲これまでの道程を思い出すと胸が痛くなるシーンもあります。 |
最後にゲーム内で何度も見かける印象的なテキストで終わらせていただきます。
『Life Is Strange』ではあなたの選択次第で過去、現在、未来が変わります。慎重に選びましょう……。
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