2017年12月20日(水)

【おすすめDLゲーム】『They Are Billions』をプレイ。圧倒的ゾンビの大群に対抗する絶望と戦略性が中毒

文:キャナ☆メン

 ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。本記事では、アーリーアクセス中(※ユーザーのフィードバックを生かすため、開発中のゲームが公開された状態)のPC用ソフト『They Are Billions』を取り上げます。

『They Are Billions』

タイトルに偽りなしの絶望を味わえる

 『They Are Billions』は、わずか数千の人間を残して、数十億人がゾンビ(感染者)と化した世界を舞台にするリアルタイムストラテジー(RTS)です。現在は、規定の日数を生き残るサバイバルモードをプレイでき、大量のゾンビが徘徊するマップで生存者のコロニーを築き上げ、運営していきます。

『They Are Billions』
▲ゾンビに囲まれたコロニーの暮らし。

 ゾンビたちに怯え戦いながらフィールドを探索し、資源を確保して施設を作り、居住地を少しずつ拡張して生き残るサバイバル感を楽しめながらも、本作で一番脳汁があふれるのはゲームのラストに行われるゾンビ側の総攻撃です。圧倒的な物量を察知して報告が入ります、「They Are Billions!!」。

 数え切れないゾンビが雪崩を打って襲来し、画面を埋め尽くしてしまう様は、まさに『They Are Billions』のタイトルに偽なしと思えるすごさです。何でも本作用にカスタマイズしたエンジンでゲームを開発しており、リアルタイムで最大2万のゾンビを動かせるのだとか。

『They Are Billions』
▲自分のプレイではゾンビの数をやや控えめにしているので、プレスキットの画像を1枚。エンジンを生かせば、状況次第でこのような地獄絵図も可能なのでしょう……。

 初めてプレイした時は、ただゾンビの凄まじい数に圧倒され、呆然と画面を見つめるだけでした。10時間ほどかけて築き上げた“我が街”のようなコロニーが、波にさらわれる浜辺の砂山のように崩れ去っていく絶望感たるや。乾いた笑いが出てきましたね、あの光景は。

 何せ本作は、自動セーブのみで任意のデータをロードすることができません。つまり、途中で取り返しの付かない失敗をしても、クリアを目前にして望みを絶たれても、“初めから”やり直すしかないのです。だからこそ本気で絶望するし、本気で悔しいのですよね。

『They Are Billions』
▲実際の初見プレイ時における光景です。為す術もなく蹂躙されました……。施設が破壊され暗くなって見づらいですが、歩ける場所のほとんどにゾンビがいます。

 そしてゲームが終了すると、淡々とスコア画面が表示されます。サバイバルに成功しても失敗してもスコアは算出されるわけですが、成否によってこの時の気分は、天と地の差が出るでしょう。失敗した時は、走馬燈のようにプレイのミスや小さな成功を思い出し、「次はこうしよう」「まだ終われない」という気持ちが湧いてきます。

 それに、圧倒的な物量でやって来るゾンビの大群が、壁も建物も破壊し尽くす光景はある意味で痛快でもあり、破壊されているのは自分のコロニーなのに、どこか気持ちよさも感じます。その歪んだユーモアのおかげか、自分のコロニーが台無しになる絶望も、意外とショックが尾を引かないんじゃないかなぁと……筆者がマゾいだけかもしれませんが。

『They Are Billions』
▲そんなことを書きながら、「They Are Billions!!」な総攻撃の前夜はめっちゃ緊張します。すべて無に帰すか勝つか。究極すぎますね(笑)。

止め時を忘れるゾンビサバイバル

 ゲームシステムはオーソドックスで、マップ上に点在する森や鉱石の塊などの近くに採取用の施設を設置すると、木材や石材、鉄材、石油といった資源を得られ、それを使ってより多くの施設やユニットを開発し、コロニーを発展させられます。

 コロニーの発展には人口増加が欠かせず、人は資金を生み出し、労働者となってくれます。人口を支える食料、施設に供給するエネルギーもまたプレイを左右するリソースです。

 人口、労働者、食料、エネルギーは時間経過で増えないリソースなので、増やそうと思ったら、研究して得られる上位のテクノロジーか土地面積、あるいはその両方が必要となってきます。安直に領土を広げると、守るのが難しくなるので悩むところですが……。

『They Are Billions』
▲人口を増やすと資金収入や労働者が増えるだけでなく、一定の区切りごとにボーナスをもらえます。
『They Are Billions』
▲ワークショップを建て、資金と時間を投じて研究を行うと、新しいテクノロジーを得られます。

 ちなみに、最初は司令部1つだけが建ち、未探索の場所は黒く覆われているため、周辺を除いてマップは真っ暗です。見知らぬ土地に求める資源があるか、大量のゾンビが待ち構えているか……そのドキドキ感を味わいながら、一喜一憂できるのも楽しいところ。

 なお、資源やゾンビの配置、地形などはプレイするごとにランダムで決まり、司令部の周囲に資源がたくさんあることもあれば、司令部から目と鼻の先にゾンビが湧き出す拠点のようなものが存在することもあります。

『They Are Billions』
▲司令部が落ちるとゲームオーバーなので、周囲に進入不可地域がどのくらいあるかも、守りやすさに影響します。

 襲ってくるゾンビは人間の建物を壊すだけでなく、コロニーで暮らす人々を感染によってゾンビに変えてしまい、大きな被害を生むことになります。そのため、コロニーにはゾンビの侵入を阻むための防壁が欠かせず、迎撃のための兵士もしくは兵器も必要になります。

 兵士ユニットは訓練施設を作ると生産できるようになり、偵察や敵の釣りに向いた弓使いのレンジャー、銃器を使って前線を張るソルジャーが初期からいます。研究を進めることで狙撃手、ロケットランチャーを使う兵士、二足歩行兵器を駆る兵士なども生産可能です。

『They Are Billions』

 ゾンビに話を戻せば、マップ上を徘徊するゾンビが人や建物に引き寄せられて襲ってくる以外にも、定期的にゾンビの群れによる襲撃が発生します。群れはどの方角から襲ってくるか直前の予告までわからず、守りの薄い地点を攻められる可能性もあります。襲撃を必死にしのぎながら、防備を完成させていく状況も、墨俣一夜城的なシチュエーションでおもしろいですけどね(笑)。

 このように、ゾンビから人々を守ってコロニーを発展させていくプレイサイクルは、いわゆる街作り的なゲーム性とサバイバルの楽しさがあり、リアルタイムなゲーム進行と相まって、つい止め時を忘れます。

『They Are Billions』
▲作ったばかりの壁にゾンビの群れが押し寄せ、必死の迎撃をしている場面です。バリスタや壁を急造しながら何とか退けた覚えが……。

サバイバル以上にハマる戦略性

 ゾンビの群れによる襲撃は回を重ねるごとにエスカレートし、個体の強さや数を含めて脅威が増していきます。そして最終的には、「They Are Billions!!」と悲鳴を上げるようなゾンビの大群が発生するわけです。

 やはりそのタイトルを冠する本作において、ラストにやって来るゾンビの大群こそが、プレイの醍醐味であり、おもしろさのピークになると思います。いや、タイトルに負けないゲーム的なおもしろさがあると言うべきか。

『They Are Billions』
▲「They Are Billions!!」と報告が入り、押し寄せてくるゾンビの大群。並大抵の魔王やボスキャラよりも恐怖を感じ、心に残る光景です。

 最後の総攻撃になると、四方から同時に襲撃が行われ、襲ってくる群れの規模もそれまでの比ではありません。防壁はそれまで以上に時間稼ぎにしかならいので、迎撃用の兵器やユニットを十分に配置できないと、あっという間に壁を突破されてゾンビの大群が雪崩れ込んで来ます。これがいかに絶望的な状況をもたらすかは、先ほど述べた通りです。

 しかし一旦打ちのめされると、どれだけ大きな脅威でも最後に何が起きるかわかっているので、計画的に対応することが可能だと気付きます。

 コロニーを発展させるにあたって生じる判断やジレンマも、漠然とした将来ではなく、明確にラストの総攻撃を目標にして、「最終的に司令部を守れるか?」という基準で考えればいい。正誤を突きつけられるのはラストなので、間違っていると激しく絶望するわけですが(苦笑)。

『They Are Billions』
▲準備をすれば、津波のように押し寄せるゾンビたちを次々と返り討ちにしていくことも。

 ゾンビの攻撃をしのいで波乱のサバイバルライフを送るのも楽しいですが、すべては最後の展開に備えるため、という戦略性が一番ゲームとして奥深く、しゃぶり尽くせる部分だと思います。

 戦略性という希望があるからこそ、圧倒的なゾンビの大群という絶望もゲームを引き立てる刺激的なスパイスに変わり、またプレイしたいという中毒性をもたらしてくれるのかもしれません。

『They Are Billions』
▲なお、ゲーム中は一時停止をして、じっくり考えることが可能。大事な局面でも焦らずプレイできます。

開発中だがゲーム性は楽しめる1本

 サバイバルモードは、マップ(MAP TERRAIN)、プレイ日数(GAME DURATION)、ゾンビの数(INFECTED POPULATION)を自分で選択し、ゲームをスタートできます。

 マップについては、最初に選べるものは1つですが、3つの項目によって決まるSCORE FACTORが一定値以上を満たしてマップをクリアすれば、次のマップが解放される形です。

 プレイ日数は、書き換えると“ゾンビの総攻撃が行われるまでの猶予期間”になり、長いほど準備に時間が取れるので難易度が下がる、ということになります。ゾンビの数は、当然ながら多いほど難しいです。

『They Are Billions』
▲SCORE FACTORは難易度の指標のようなもの。これが高いほど、クリアのハードルもクリア後のスコアも高くなります。

 本作は、現在英語のみ対応しているゲームですが、サバイバルモードはストーリーがあるわけでなく、少し遊んでゲームに慣れたら、基本的にリソース名と数字を見てプレイできるので、細かい英語がわからなくてもあまり困らないと思います。

 ただ、今後のアップデートによって複数の言語でサバイバルモードを楽しめるようになるとアナウンスされており、日本語もその中に含まれています。

 配信時期については、「必要なだけアーリーアクセス期間をとる」としながら、2018年春を目処にキャンペーンモードを完成させ正式版を出したい計画の模様。キャンペーンモードは、本作のメインモードとして40~50時間のプレイボリュームがあり、ストーリー要素やさまざまなタイプのミッションを楽しめるとのことです。

 アーリーアクセス中のゲームであるため、正式版に向け今後さまざまな変更が入るでしょうが、『They Are Billions』の名にふさわしい圧倒的なゾンビの大群に備えて、幾度の襲撃をしのいでコロニーの防備を築き上げるというゲーム性は、現時点でも十分に楽しめると思います。開発中のゲームを遊ぶことに抵抗がなく、サバイバルやシミュレーションゲームが好きな人であれば、ぜひおすすめしたい1本です。

データ

▼『They Are Billions』
■メーカー:Numantian Games
■対応機種:PC
■ジャンル:SLG
■配信日:2018年春
■価格:2,570円(税込)
※現在はアーリーアクセス中で、購入できるのは開発中の内容。
※価格はアーリーアクセス時のもの。

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