2017年12月21日(木)
20年『アトリエ』を追い続けた編集の『リディー&スール』ガチレビュー!「これはいいアトリエだ!」
コーエーテクモゲームスのガストブランドが贈る、今年で20周年を迎えた『アトリエ』シリーズ。電撃PlayStation編集による応援企画の第2回目では、初心者の目線からシリーズ最新作『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』のインプレッションをお届けしました。
第3回目となる今回は、ついに発売となる『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』を、20年間『アトリエ』シリーズを追いかけ、電撃PlayStationで記事を担当する編集Oが、本音で本作を語り尽くしたいと思います。
「いいじゃないか」と思わず口に出た『アトリエ』シリーズ最新作!(編集O)
さて、まず声を大にしてお伝えしたいのが、「これはいいアトリエだ!」ということ。その想いに至った理由は大小さまざまありますが、『アトリエ』シリーズのファンが喜ぶツボをしっかり押さえているからなんですね。そこで今回のレビューでは、クリアまで時間を忘れて遊び倒した目線から、いろいろとツボったポイントを語らせていただきたいと思います。あ、もちろんネタバレはございませんのでご安心を!
●ていねいに世界を描く演出面でのこだわり
最初にお伝えしたいポイントは「とにかくていねいな仕事でまとめられているな」と感じたことでしょうか。例えばプレイを開始すると、タイトル画面にいる双子たちにカメラがググッと寄って、そのままチュートリアルが始まります。この演出方法はとくに斬新なわけではありませんが、この時点からクオリティの高いモデリングと、作り込まれた美しいエリアを存分に見せつけてくれます。そしてそのまま始まるチュートリアルも、双子の性格が伝わるセリフをちょいちょい挟みながら、いろいろと教えてくれるんですね。
個人的に前作『フィリスのアトリエ』で物足りなかった、キャラクターの会話中のカメラワーク、戦闘中の演出、探索するエリアの作り込みなどがクオリティアップしており、「あ、今回のガストさんは本気だな!」と感じたわけです。
●出会ってすぐに人物像を把握できるキャラクター
演出にもつながる要素ですが、自分が『アトリエ』シリーズにハマってきた理由の1つが、キャラクターたちのイベントの豊富さです。本作はアトリエのあるメルヴェイユの都が活動拠点の軸で、登場キャラクターはほぼ全員が都に住んでいます。イベントの発生もタウンマップ(ショートカット)で表示されるので、見逃す心配もありません。もちろん、戦闘に参加する主軸メンバーはメインストーリーで必ず絡むので、印象が薄いというキャラクターは誰一人いませんでした。まあ、これは『ソフィーのアトリエ』に戻ったといえばそうなのですが、「アトリエを拠点に物語が展開していくことこそが『アトリエ』のだいご味だ」と考えている自分としては、こちらに舵を切って戻したことは歓迎したいですね。
しかも、イベント自体もキャラクターの個性が際立つものばかりで、会話はどれこれもおもしろい! もちろん“お約束だな”と感じる展開もありますが、それは“おもしろいからこそ定番”なわけで、キャラクターの個性を明確に伝えるには、これ以上にない手法だと思っています。
ちなみに、今回は鍛冶屋でハゲルが登場するのも、シリーズのファンとしてはうれしいですね。ある意味彼は『アトリエ』シリーズのアイコンでもあり、演じられている立木文彦さんの声とあのテーマを聴くと「ああ、アトリエだな」と、なぜかほっとしてしまうのです(笑)。
●主人公が双子であることの強みを存分に発揮!
物語の主役である双子たち。拠点となるアトリエでは、リディーとスールのどちらを操作するかを切り替えられます。どちらを操作してもメインストーリーは変わりませんが、それぞれ採取のモーションや調合の演出などが異なり、その違いがまた楽しいんですよ。例えばスールは虫が苦手で、虫を扱う(採取や調合)場合は、いやがる反応を見せるんですね。採取中のアクションも姉のリディーと違ってワイルド系で、ガシガシ蹴りまくります。
正直「操作キャラの切り替えは面倒かも?」と思っていたけれども、それぞれの反応が楽しく&見たくて、気づいたら定期的に変更している自分がいましたからね(笑)。まあ、理想はアトリエの外でも変更できることですが、これはアトリエに一瞬で戻れるからいいかなと。ちなみに細かいけどセーブのアイコンが変わる点も、こだわりが感じられてよかったです。
●仲間との一体感を感じられる戦闘
キャラクターの見せ場でもある戦闘ですが、こちらも『フィリスのアトリエ』から方向性をガラッと変えています。まず、一番大きな点は仲間全員が戦闘に参加できること(最大6人)。しかも、全員のコマンドを入力する必要がなく、操作は前衛のみでOKながら後衛も“フォロースキル”でガンガン攻撃に参加してくれます。よって、入力回数が多くて戦闘のテンポを悪く感じることもなく、全員で戦っている一体感が得られるのです。
しかも、繰り出す技がどれも凝った&スピーディなもののため、戦うことが本当に楽しいです。たとえばフィリスの技ならば、弓で上空に矢を射ってから一瞬手をかざして見上げる演出があり、これがまた彼女らしい仕草でグッとくるんですよ。この何気ない要素へのこだわりは、開発スタッフの。
“愛”を感じました。……というか、本作のフィリスは本当にかわいくて、強くて、お気に入り候補ナンバー1です。ぜひ“フォロースキル”メインで運用させてみてください。「あれ? フィリスって錬金術士だったよな!?」と戸惑うくらい、弓で大ダメージをたたき出してくれますから(笑)。
●物語の目的も目安もわかりやすく迷いにくい
『アトリエ』シリーズといえば、“次に何をする”というお題目がはっきり提示され、そのなかでどんな選択肢を選ぶかという遊びが魅力的な作品です。目的も進め方も自由だった『フィリスのアトリエ』はチャレンジングで楽しかったのですが、急な方向転換に少し戸惑いがあったのも事実です。ですが、本作は『ソフィーのアトリエ』のスタイルへと原点回帰! 話数区切りで物語が進むようになっています。これにより物語にメリハリが生まれ、調合、戦闘、採取といった各要素のサイクルを円滑に進めやすくなりました。変化や進化も大事ですが、楽しく遊べることを考えたときに、戻すべきところは戻した点は評価したいと思います。
●要素の繰り返しが苦にならない遊びやすさ
先にも述べた調合、戦闘、採取の遊びのサイクルがスムーズに回せる点ですが、採取にいたってはテンポよく材料を拾いまくれるため、ついつい取り過ぎて序盤ではカゴがすぐいっぱいになるほど。「材料が足りない。よし、集めてこよう♪」と気軽に出かけられるのは、すごくありがたいです。あ、もう少しだけ序盤からカゴの容量を増やせたらな~とは思いましたけどね(苦笑)。とはいえ、移動のショートカットは充実しており、アトリエと採取地の行き来はまったく苦になりません。
そして、それら材料で行う調合ですが、これがまたルールはシンプルだけどもこだわれば強力なアイテムが完成する作りで、ある意味1つの完成形であると感じましたね。『不思議』シリーズで培われてきたパズル型の調合はママに、発言する効果が数値ではなく目盛り式になったことでわかりやすくなっています。なので、最終目標値を先に立てて、そこから逆算して方程式を組み立てていく過程がおもしろいんですよね。「あーでもない、こーでもない」といろいろ入れ替えながら、最終的に欲しい効果の目盛りが全部埋められたときの爽快感はなんとも言えません。
ちなみに、調合時に積極的に狙いたい作成個数アップや品質アップなどは、“触媒アイテム”で狙えるようになりました。触媒アイテムを使用して、該当効果のマスに材料を配置するだけで効果が発揮されます。“何をすればどんな結果になる”と確認できるのは、初心者にも優しい作りですごく好印象を受けましたね(コアなファンには少し物足りないかもしれませんが)。
●スタッフの“愛”を感じるちょっとしたこだわり
最後は超細かい点になりますが、メニュー画面やロード画面など、ちょっとした部分に“アトリエ愛”が溢れているところも今回お気に入りです。メニュー画面は黒板風で双子の手書き風なデザインが施されていたり、ロード画面では右下に双子が調合しているチビキャラが表示されたりします。さらに、次の目標が確認できる“やることメモ”では、双子の掛け合いがコメントとして掲載されているのです。このちょっとした部分でもファンを楽しませようという気配りが、ゲーム本編のデキのよさをより引き立てる“スパイス”になっているのではないでしょうか。
『不思議』シリーズで残されていた伏線を見事に回収
こちらについては完全ネタバレなので詳細は語りません。とにかくファンがちゃんと納得できるように、いろいろとカバーがされています。ここへの配慮とこだわりも、自分が『リディー&スールのアトリエ』はいい作品だな! と思った理由の1つでもあります。
というわけで期待値をはるかに超えたデキで、幸せな時間を提供してくれた『リディー&スールのアトリエ』。自分と同じく発売を心待ちにする方にこの熱量を届けたく、長々と語らせていただきました。ぜひ、20周年目を迎えた『アトリエ』の本気度を、その手で確めてみてほしいです。
※掲載されている画面写真は、PlayStation®4版のものです。
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