2018年3月5日(月)
藤商事から2018年配信予定のiOS/Android用RPG『23/7 トゥエンティ スリー セブン』。本作のプロデューサーを務める松元威さんと、キャラクターディレクターの宮本祐輔さんへのインタビューをお届けする。
『23/7 トゥエンティ スリー セブン』は、藤商事の完全オリジナルRPGのアプリゲーム。世界中の時計から9時が消滅し、1日が23時間になった世界を舞台に、失われた時間を取り戻すための戦いが描かれる。
ノベル形式で描かれるストーリーや松平健さんをはじめとした豪華キャストの起用など、従来のアプリゲームとは一線を画した本作は、どのようにして生まれ、どのような展望を描いているのか? 開発者であるおふたりにお話を伺った。
――本作には斬新なシステムや試みが多く見られます。これらはどのようにして生まれていったのでしょう?
松元:ゲームディレクターがコンシューマゲームを作っていた人間だったこともあり、オリジナルIPとして育成でき、展開しやすいジャンルはRPGじゃないかという話になったんです。ただ、RPGという王道のジャンルを選択するのであれば、これまであるようでなかったような組み合わせをゲームに落とし込む必要がでてきました。
もともと時間を軸にしたゲームシステムのアイデアはあったので、それをベースに世界観を構築していったというのが大まかな流れですね。ただ、これらの構想がある程度でき上がった段階で協力会社さんにチェックしていただいたところ、没になってしまいまして。一度すべて捨てて、改めて作り直すことになりました。
▲プロデューサーの松元威さん(左)。 |
今の『23/7』の世界観やシステムが完成したのはそれからです。物語の見せ方についても、従来のスマホRPGのスタンダードであるアドベンチャーパートにあわせてバトルが発生するものではなく、ゲームはゲーム、シナリオはシナリオでわけよう。シナリオをわけるなら、物語をしっかりと読めるように1つの章がラノベ1冊ぐらいのボリュームにして楽しんでもらえるようにしよう、といったアイデアもそこで生まれました。
――ちなみに、本作の企画はいつごろから動いていたのですか?
松元:2年以上前ですね。協力会社や開発会社、クリエイターさんなども含めると数百人規模ではありますが。皆さんいい方ばかりなので、リリースした時にはきっと泣いてしまいと思います。うれし泣きで(笑)。
――開発中の思い出や苦労などを聞かせてください。
松元:やはり作り直しになった時の絶望はすごかったです(笑)。でもその決断があったからこそ新しい発想を生み出すこともできたなと。ストーリーもそうですし、システム面もRPGとして新しいシステムを入れることができましたし。無敵時間と爽快感などのバランス調整は大変でしたけどね。
▲主人公・神名ヒカリのクロッカーズとしての能力により、バトル開始から最大77秒は無敵時間となる。 |
宮本:僕も作り直しの時は焦りましたね。イラストもまたゼロからということで、イラストレーターさんを再度依頼する必要があったのですが、その期間がとにかく短くて。凪良さんとlackさんにも大変な苦労をおかけしましたが、それだけにすごくいいものになったと思っています。
――さまざまな苦労と思いが込められた本作ですが、あえて注目ポイントを挙げるとしたらどこになりますか?
松元:もちろんすべてですが、あえてこれ、というのであれば2つあります。豪華クリエイター陣が生み出す、今までになかった世界観がまず1点。もう1つは、他のゲームにはない新しい要素を盛り込みつつ、爽快感を得られるものに仕上げたゲームシステムですね。
宮本:キャラクターディレクターの視点でいうと、豪華なイラストレーターさんたちが描くイラストの数々ですね。新規IPかつゲームでは普段なら目にできないような方も担当してくださっているので、ぜひ見てほしいです。イラストレーターさんのリッチなイラストを再現するため、ゲーム内のキャラグラフィックも1キャラにつき数か月の制作時間をかけて作っているので、こちらも楽しみにしていてください。
――お話にあったとおり、イラストレーター陣がすごく豪華に感じます。選定や制作はどのように行われたのでしょう?
宮本:本作をIPとして立たせるために、松元さんから最初にもらったオーダーが「メインキャラクターをイラストレーターさん同士のコラボで作りたい」でした。選定の基準にしたのは、さまざまな世界観や(イラストの)タッチが混在するなかにいても埋もれず、男女の隔てなく愛されるキャラ作りができる方、というところです。
ポイントとしては、本作はライトノベルが好きな人にも愛されるゲームにしたいというのがありました。最終的に凪良さんとlackさんにお願いさせていただきましたが、凪良さんは主人公らしい主人公、ヒロインらしいヒロインを描けることと、ライトノベルの人気作の挿絵を担当されている点。lackさんはカードゲームやアプリなどゲーム業界ですごく人気な方で、ゲーム好きの人に刺さるんじゃないかというところが決め手になりました。
▲キャラクターディレクターの宮本祐輔さん(右)。 |
松元:合作でのイラスト制作をお願いするのが失礼に当たらないかという心配はありましたが、おふたりとも快諾してくださったんですよ。
宮本:制作の段階では、主人公のヒカリとヒロインのウルズは凪良さんにキャラクターデザインをしていただき、それをもとにlackさんに作画をしていただきました。凪良さんのデザインは、lackさんが普段あまり描かれないようなものだったのもあり、他のイラストレーターさんからも「おふたりの長所が生かされたおもしろいコラボですね」というコメントをいただけました。他のバースを担当してくださった方々も本当に豪華で、『23/7』の世界感をうまく表現出していただけて幸せです。
――制作時の裏話などはありますか?
宮本:イラストの前段階、設定の打ち合わせ時の話になりますが、その時のことが印象に残っていますね。ヒカリは現代の高校生という設定で、凪良さんと打ち合わせをしてどんな服装にしようかと。
松元:僕はもともとアパレル関係の仕事をしていたので、同席していろいろと案を出しつつ。
宮本:そこで最終的に決まったのが、上着をカーディガンにすることでした。制服はありがちですし、カーディガンなら高校生という設定にもとづきながら今風でかっこよくなるだろうと。でも、送られてきたデザイン画を見るとマウンテンパーカーになっていたんですよ(笑)。
松元:打ち合わせと違うやん! と思いつつも、満場一致で「めっちゃカッコイイ、これにしよう」って(笑)。
宮本:あの時の盛り上がりはすごかったですよね(笑)。そのまま、ヒカリのベースとして採用させていただきました。
▲凪良さんが描いたヒカリの初期デザイン案。 |
他のキャラだと、優紀菜は空手をやっていたという設定で、拳状の武器を使う女の子なんです。打ち合わせを進めるなかで「小柄だけど巨大な拳を装着しているとギャップがあってかわいいんじゃないか」というやり取りがあって、今のサイズになっています。
▲緒方優紀菜。主人公の幼なじみ。 |
芽衣も初期案では普通の日本人でしたが、特徴として魔法少女が好きだったという設定を加えることになったんです。武器もハイパーレスキュー隊に所属しているので消防ホースをベースに、魔法少女のようなステッキにしようと。そこから、ちょっと日本に憧れているハーフにする案も出て、どんどん設定が変わっていきました。
▲巽芽衣。ハイパーレスキュー隊に所属しており、より多くの人を守るために立ち上がる。 |
開発チームが作った設定をどうかっこよく、かわいらしく落とし込むか話し合い、魅力があるデザインになるよう心がけていますね。芽衣の衣装も、巨乳キャラなのでそこ強調されたほうがいいよね、とか(笑)。
松元:実は芽衣の胸のサイズは最初と違うんですよ。
宮本:キャラ付けとして1人は大きいほうがいいだろうと、僕とイラストレーターさんでだいぶ変えさせてもらいました(笑)。
――お気に入りのキャラクターは誰ですか?
松元:ゲーム版の主人公・ヒカリの父でコミック版主人公の神名仁ですね。ビジュアルイメージは伝えてなかったにもかかわらず、僕のイメージを完全に反映してくれたようなキャラになっているんです。思い入れが強いキャラなのでいつかゲーム内にも出したいですね。
▲電撃マオウで連載中のコミック版に登場する神名仁。ヒカリの父親にして先代のクロッカーズ。 |
――昨年の12月に行われたクローズドβテストの反響はいかがでしたか?
松元:いい反響をいただけました。多くの方々に遊んでいただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。よかったと思う部分だけでなく、ここは改善してほしいといった意見もいただけたので、ゲームの改修に役立たせていきます。
――意見としてはどういったものが多かったのでしょう?
松元:細かいものはいろいろあります。大きくは4つですね。1つ目はUIまわり。クローズドβテストでは操作アイコンがわかりづらいという声があったので、わかりやすく改善しています。画面をタップしないと表示されなかった情報も初期表示にするなど、デザインも含めてさまざまな改良を行いました。
▲全体的によりスタイリッシュなデザインに。敵の属性やバフ、デバフ効果もわかりやすくなっている。 |
2つ目は、クエスト中に表示されるあらすじが文字だけでわかりにくいという声に応えて、背景に挿絵を挿入することにしました。
▲挿絵が加わり、見た目の楽しさが増している。 |
3つ目は“召喚”についてです。クローズドβテストでは同じキャラが出現しやすくなっていたため厳しいコメントがたくさん寄せられましたが。こちらはクローズドβ版のみの仕様で、リリース時には楽しんで遊べるボリュームのキャラが登場します。どうかご安心ください。
▲リリース時に実装される召喚では、楽しんで遊べるボリュームになっているとのこと。 |
4つ目は“ノベルモード”の縦読み対応です。βテストを行うまではリリース後に対応する予定でしたが、横読みだけだと読みづらいという声が多かったので、優先度を上げてリリースと同時に実装することにしました。
▲縦読みと横読みの好きなほうを選べるように。また、挿絵も表示される。 |
リリース後も皆さまの声をもとに改良を続けて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
――リリース後に考えていることや、今後やってみたいと思う野望はありますか?
松元:東京ゲームショウ2017に続き、先日開催された闘会議2018においても、さまざまなイベントを用意し、いい反響をいただきました。ありがとうございます。
今後、できるかどうかを別にしての野望としては、本作の物語をまとめて書籍化したいですね。ライトノベルとしてのクオリティ、ボリュームは間違いないと自信をもって言えますし。いろいろなグッズも作っていきたいですね。世界観やキャラを活かしたアパレル系の展開なんかもできたらいいなと思っています。
宮本:ヒカリのマウンテンパーカーや、優紀菜のジャージなんかを作りたいですよね。普段使いもできるようなデザインにして。僕としては時計も欲しいです。9時の部分は数字を入れず、本作らしいデザインにして。
松元:アニメ化やゲームの話で言えば、他の作品とのコラボも実施してみたいですし……やりたいことを言い出すとキリがないですね(笑)。でも、これらを実現できるよう頑張っていければと思います。
――最後に電撃オンラインの読者、そして本作の配信開始を心待ちにしているファンの方へメッセージをお願いいたします。
松元:繰り返しになりますが、世界観とゲームシステムに期待してほしいです。他のゲームにない新しいシステムを盛り込んでいますし、倍速や無敵といった部分も世界観とうまく融合できていると思うので、ぜひ味わってほしいですね。リリース後には快適性を高めるシステムの実装も予定しています。
作り直しの苦労はあったものの、開発会社さんや、さまざまなクリエイターさんたちの協力のおかげでクオリティが高いものを作れたと思っています。たくさんの方に楽しんでいただけるとうれしいです。『23/7』に、ぜひご期待ください!!
宮本:キャラはゲームを愛していただくための大切な要素だと思うので、これからも愛されるキャラを作っていきたいと思っています。ユーザーさんのなかにはイラストレーターさんをきっかけに『23/7』に興味を持った方がいると思います。そういった方々に「このイラストレーターさんのこんなイラストが見たかった」と満足してもらえるような作品にしていきたいですね。
(C)FUJISHOJI CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
データ