2018年3月17日(土)
文化庁メディア芸術祭実行委員会は、3月16日に東京・六本木の国立新美術館で、“第21回文化庁メディア芸術祭受賞発表(記者発表会)”を開催しました。
“第21回文化庁メディア芸術祭”では、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を表彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバルです。
応募総数は4,192作品、過去最多となる世界98カ国の国と地域から寄せられた作品の中から部門ごとに、受賞作品(大賞、優秀賞、新人賞)が選出されました。
エンターテインメント部門では、PS4用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』が大賞として選出されました。
▲第21回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門大賞『人喰いの大鷲トリコ』『人喰いの大鷲トリコ』開発チーム(代表:上田文人さん) |
会場には開発チームを代表して上田文人さんが登壇。ゲーム概要とともに、注目してほしいポイントとして、膨大なコストをかけて制作したトリコの自然な動きや挙動を挙げていました。
また、「ビデオゲームの枠だけではなくエンターテインメント枠から選ばれたということで、普段あまりゲームをプレイしない人に本作を体験してほしい」とコメント。
選考委員の工藤健志さんは、本作が最終選考に残ったときにプレイを始め、ゲームが新しいステージに上がったという印象を受けたとのこと。
「本作ではまるで1冊の文学を読んでいるかのような感覚になる。ゲームの画面から余白や行間のようなものを感じ取ることができ、そういう体験は凄く新鮮で、ここからゲームの新しい展開を見せていくのではないかという期待を込めて大賞として選びました」と選考理由を述べました。
続いてエンターテインメント部門の優秀賞と新人賞が発表。優秀賞は『FORESTA LUMINA』、『INDUSTRIAL JP』、『PaintsChainer』、『Pechat』が選ばれ、新人賞は『盲目の魚-The Blind Fish-』、『Dust』、『MetaLimbs』が選出されました。
会場には、『MetaLimbs』の作者・佐々木智也さんとMHD Yamen SARAIJIさんが登壇し、作品の概要について説明しました。本作は、2本のロボットアームを装着し、足の動きをマッピングすることで自由自在に操ることができる“新たな腕”を増やす作品となっています。
工藤さんは、「物作る人は必ず3本目、4本目の腕が欲しいって思うんです。そういったものが現実になってくるということはすごく夢があっていいですね」と感想を述べるとともに、今後の展開に期待していました。
▲発表会後には『MetaLimbs』の展示も行われていました。 |
アニメーション部門では、16年ぶりとなる2作同時の大賞受賞となりました。1作目は片渕須直監督のアニメーション映画『この世界の片隅に』が選出。
▲第21回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門大賞『この世界の片隅に』片渕須直さん |
会場には、本作の制作プロデューサー・真木太郎さんが登壇。「受賞させていただいて大変光栄です。国内外の映画賞でアニメーションを対象とした賞のみならず、実写映画を想定した賞もいただいてきました。私たちがたどる道のりはまだまだ続きますが、これからもよろしくお願いします」と片渕監督のコメントを読み上げました。
続いて審査委員の横田正夫さんから「日常の何気ない動作の中に美しさがあることをアニメーションという手間暇かかる作業の中で見せてくれたことが、新しいアニメーションの方向性を示してくれた」と選出理由が語られました。
2作目として選出されたのは、湯浅政明監督のアニメーション映画『夜明け告げるルーのうた』。湯浅監督は、以前にも映画『マインド・ゲーム』、TVアニメ『四畳半神話大系』で文化庁メディア芸術祭の大賞を受賞しており、3度目の大賞受賞という初の快挙を達成しました。
▲第21回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門大賞 『夜明け告げるルーのうた』湯浅政明さん |
登壇した湯浅監督は、「私は、もっと皆さんに自分のことを理解されたいですし、皆さんを理解したいと思っています。今回の賞は皆さんに理解されたとして受け止めます。本当にありがとうございました。スタッフ、キャスト、関係者の皆さまおめでとうございます!」とコメントしました。
歌と動きがあり、軽快さを見せてくれるというところでアニメーションの持ち味がよく出されていた点や、他者と出会うことによって生きる力が活性化されていくというメッセージが表現されていた点などが、選考理由として挙げられていました。
アニメーション部門では、『ハルモニア feat.Makoto』、『COCOLORS』、『Negative Space』が優秀賞、『舟を編む』、『The First Thunder』、『Yin』が新人賞として選出されました。
マンガ部門では、巣立っていく息子を持つ母親の思いが空回りする『きらきらと雨』や修道院に暮らす2人の少女の物語『ザザetヤニク』など7つの物語が収録された池辺葵さんの『ねぇ、ママ』が大賞として選出。
▲第21回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門大賞『ねぇ、ママ』池辺葵さん |
また、優秀賞で『銃座のウルナ』、『ニュクスの角灯』、『夜の眼は千でございます』、『AIの遺雷子』が、新人賞で『甘木唯子のツノと愛』、『バクちゃん』、『BEASTARS』が選出されました。
残るアート部門では、Haythem ZAKARIAさんの『Interstices / Opus I - Opus II』が大賞を受賞。本作は、砂漠の風景を捉えた静的な『Opus I』と海の風景を捉えた動的な『Opus II』それぞれの映像にデジタル処理を行うことで、オリジナルの風景を超越する“メタ・ランドスケープ”を引き出すインタレーションプロジェクトです。
▲第21回文化庁メディア芸術祭 アート部門大賞『Interstices / Opus I - Opus II』Haythem ZAKARIAさん |
『アバターズ』、『進化する恋人たちの社会における高速伝記』、『水準原点』、『Language Producing Factory』が優秀賞、『I’m In The Computer Memory!』、『Panderer(Seventeen Seconds)』、『The Dither is Naked』が新人賞を受賞しました。
発表会後には、エンターテインメント部門大賞『人喰いの大鷲トリコ』開発チーム代表・上田文人さんからコメントをいただけたので、その模様をお届けします。
――贈賞理由として、ゲームとして新たなステージ進む可能性を感じたとありましたが、上田さん自身、そして開発チームの中でその実感はありますか?
まだ作り終えてから時間がたっていないので、実感はないです。制作時は、ビデオゲームを作っているという意識はなく、コンピューターを使って、AIキャラクターとコミュニケーションをとりながら進めていく冒険をイメージして作ったので、今までのゲームとは違うという点を評価していただけたというのは本望です。
――数ある賞がある中で、“文化庁メディア芸術祭”はゲームクリエイターにとってどういう位置づけになるのでしょうか?
すべてのゲームクリエイターがどういう認識をしているのかはわからないです。
自分は、コアなゲームプレイヤーはもちろん、できるだけゲームにあまり興味がなかった人にこそプレイしてほしいと思って作ってきたので、そのきっかけになるような賞だと思いました。
なお、“第21回文化庁メディア芸術祭受賞発表(記者発表会)”の受賞作品の展示や上映、関連イベントが実施される受賞作品展が、6月13日~24日までの期間、国立新美術館で開催されます。興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
(C) 2017-2018 JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL.
(C) Haythem Zakaria
(C) 2016 Sony Interactive Entertainment Inc.
(C) Fumiyo Kouno/Futabasha/Konosekai no katasumini Project
(C) 2017 Lu Film partners
(C) Aoi Ikebe(AKITASHOTEN)2017