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2018年3月17日(土)

【電撃PS】『勇こなDASH』目指せ都会の小雪。山本正美氏コラム全文掲載

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.656(2018年2月8日発売号)のコラムを全文掲載!

第125回:大雪に学ぶ

 アナウンスしてからちょっと時間が経ってしまいましたが、PS Vitaで好評ダウンロード販売中の『勇者のくせにこなまいきだ。G』をスマートフォン向けに最適化した、『勇者のくせにこなまいきだDASH!』が、この原稿が掲載されるころには満を持して サービスインされているはず!

 スマートフォンのゲームも、世界観や物語やキャラクターで推していくことがメインな昨今、ここにきてパズルゲームかよ! というところも1周回ってまた『勇なま』っぽいかなーと思っています。

 しかしこの『勇こなDASH』。昨年『V!勇者のくせになまいきだR』で7年ぶりにシリーズが復活したとはいえ、初代が発売されたのが10年前ですから、スマホゲームを遊ぶ若いユーザーにしてみたら、「また魔王とか勇者とかいってるゲームがきよ……」と思われる可能性が高いんじゃないか、という不安がありました。

 『勇なま』は、アニメ、漫画、映画、ゲームなど、ジャンルを問わず“ネタにする”という自己相対性と、魔王や勇者というキャラクター性という部分で、結構その手のジャンルのなかでは先駆けだったのではと自負していますが、それでも10年ですからね。今や当然知らない人のほうが多いわけです。

 なので『勇こなDASH』の事前登録の達成目標も、10万人くらいを想定して特典などを考えていたのですが、これがフタを開けてみたらあれよあれよという間に5万人、10万人を達成。それどころか30万人を突破し、その快挙に、社内でも「え、あんな地味なゲームが!?」と驚きの声がそこかしこから聞こえてくる始末。

 わはは、やったぜ。これも、的確なPRを仕込んでくれたフォワードワークスの皆さんや、SIE JAPAN Studio側でしっかり現場コントロールをしてくれている波間プロデューサーのおかげです。

 先ほど、「ここにきてパズルゲームかよ」と冗談っぽく書きましたが、実はこれ、大事なポイントなんじゃないかなと思います。『パズドラ』がスマホゲームをけん引していたころは、雨後の筍のようにパズルゲームがたくさん生まれましたよね。その後、ひっぱりアクション系ゲームやリズム系ゲーム、カードゲーム系やRPGなどジャンルがどんどん広がっていくなかで、パズルゲーム自体は、強いタイトルは未だに人気を博しつつ、存在感的には薄まっていきました。

 そこにきて『勇こなDASH』でまたパズルゲーム、というのは、意表を突いた新鮮さがあったのかもしれません。ま、このタイミングのサービスインになったのには色んな事情があったからで、決して狙ったわけではないんですけどね。それもまた大事な「運」かなあと思うのです。

 去る1月22日、関東に大雪が降りました(関東だけではないですが)。都心はいつもの通り大混乱。ちょうど年末から『Vなま』、年明けの『勇こなDASH』とタイトルリリースが続き、「売るってなんだろう? 売れるってなんだろう?」と深く考えていたこともあって、ふと今回の大雪のニュースを見ながら、「都会の大雪」を“コンテンツ”と考えると、売れる要素がてんこ盛りだなあ……と感じあのでした。

 まず、首都圏に雪が降ることは、ないわけではないですが、積もるとなると滅多にあることではありません。つまり、現象の頻度に鮮度がある。どんな人気シリーズも、毎月新作が出たらさすがにニュース性は低くなりますよね。その上、雪は誰しもに関係がある。老若男女問わずターゲットが広いわけです。

 だから、皆が話題にする。しかも、日常でしなければならないことの代表、通学や通勤といった「移動」に関わってくるから、能動的に情報を追っかける必要があります。そして得た情報は、誰かに伝えてあげたくなる。親切心が情報拡散の原動力になるわけです。また、雪が降ると、いつもの景色が真っ白に変わります。日常が非日常に象徴的に切り替わる。

 さらに、誰でも作ることができてSNS映えしやすい「雪だるま」というUGC(ユーザー生成コンテンツ)があり、「雪合戦」といった自由度の高いルールクリエイティビティへの参加も可能。それらをひっくるめて、メディアがガンガン取り上げてくれるため、加速度的にコンテンツ「都会の大雪」が社会を席巻していくことになるのです(ついでに、スコップやスタッドレスタイヤといった周辺コンテンツも爆売れします)。

 コンテンツのヒットは、限りない選択の結果によって成り立っています。選択の結果である以上、どんな選択肢があるか、その数をパターンとして多く知っているほうが有利なのは間違いありません。だから先達は、「引き出しを多く持て」というわけです。

 一方、都会の大雪は、誰かの意図的な選択の結果生まれたコンテンツではありません。しかし、生まれ持ってのコンテンツパワーがひたすら強いので、そのパワーにより、周囲が「勝手に」動くのです。ただ、いつ出るか(降るか)はコントロールでき ない、という根本的な問題がある。僕らのベストな仕事は、数々の選択肢を紐解き、コンテンツパワーの強いものを、コントロール可能な状態で世に放つことなわけですが、これがなかなかに難しい。

 というわけで、『勇こなDASH』。目指せ都会の小雪!

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.658』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2018年3月8日
■定価:694円+税
 
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