2018年3月27日(火)
コーエーテクモゲームスが、3月15日に発売したPS4/PS Vita/Nintendo Switch/PC用ソフト『ウイニングポスト8 2018』。そのプレイレポートをお届けします。
『ウイニングポスト8 2018』は、今年で25周年を迎えた競馬シミュレーションゲーム『ウイニングポスト(ウイポ)』シリーズの最新作であり、『8』シリーズのタイトル群では5作目にあたります。
自家産馬の配合にこだわり、自分だけの競馬史を築ける従来のおもしろさを継承しつつ、前作『ウイニングポスト8 2017』とのもっとも大きな違いは、“調教”システムの一新です。
今作では、プレイヤーが細かな指示を出し、調教によって“自分で馬を育てる”という実感と楽しさを体験できるようになりました。
▲例外的な作品はあったものの、長年、所有馬を自分で調教したいという声もあったであろう『ウイポ』シリーズ。今作は、自分の手で馬を育てられます。 |
さらに新キャラクターが登場してイベントが増えている他、ドリームマッチという歴代名馬とレースができるシステムも追加されています。また、番組表や実在馬は最新のデータに対応済み。ラッキーライラックなど最新の競走馬が登場します。
本記事では、生まれ変わった“調教”システムを中心に、ゲームのおもしろさを紹介していきたいと思います。
最初に少しだけ『ウイポ』は何がおもしろいのかを語っていきたいと思います。「シリーズを遊んでいるよ」という人は飛ばしちゃってください。
『ウイポ』の1番のおもしろさ、それは“愛馬の血が何代にもつながる”ことだと思います。
心に残る活躍をした馬から仔が生まれ、その仔のレースが記憶に刻まれて、また新しい仔が生まれる。1頭1頭にプレイの思い出があり、それは血と一緒に継がれていきます。
▲優秀な成績を残した競走馬は、繁殖入りしてその血を仔に残します。その仔が繁殖入りできれば、さらに血はつながっていきます。 |
だから、世代を重ねるほど馬に愛着がわくんですよね。何十年かプレイしたデータだと、老舗の“秘伝のタレ”のように愛馬たちの血が継ぎ足された、思い入れの詰まった血統の馬が生まれます。
そして『ウイポ』には決められた1本道のストーリーがあるわけでなく、プレイヤーのゲーム体験そのものがストーリーです。言わばプレイヤーの生んだ血統は、自分の箱庭世界における競馬史の1つでもあるし、ストーリーの一部でもあります。
『ウイポ』をプレイすると、用意されたストーリーをたどるゲームとは、まったく別ベクトルのおもしろさとドラマを体験できますよ。
▲『8』シリーズはプレイヤーも結婚して子孫を残すことが可能! 人と馬の両方で歴史を作ることができます。 |
調教は、コース、強さ、併せ馬の有無を選んで行います。調教コースは5種類あり、コースによって、スピードや勝負根性、瞬発力など上昇する能力が異なるシステムです。
何を選択するとどの能力が上がるかは、各能力の経験値ゲージに変化量が表示されるので、それを参考に調教内容を選択すればOK。実行すると、馬が経験を積んでゲージが上昇します。
▲右側に表示されているのが調教で直接鍛えられる馬の能力で、ゲージは黄色い部分が今回の調教での上昇ぶんを示しています。 |
▲経験値ゲージがMAXになると、能力が1段階アップします。馬の能力は、最高をS+、最低をGとする16段階表示です。 |
説明するとシンプルなシステムですが、そのシンプルさと画面のわかりやすさが、今作の調教システムのいいところ。
経験値ゲージの上昇で1回1回の成果を確認しやすく、馬の能力も16段階表示であることから小まめにランクアップを重ね、着実に馬が成長している“調教の手ごたえ”を得られます。
その手ごたえは、“自分で馬を育てている”という実感にもつながり、調教することが非常に楽しい! 自分で馬を育てる実感があるからこそ、馬により愛着が持てるし、活躍した時の喜びも大きくなります。
▲馬の能力画面は、グラフと能力が統合されすっきり。能力は素質ではなく現時点のものが表示されるので、成長のピークに向けてどんどん上がっていきます。 |
また、特定の条件を満たすと発生し、調教効果を高める“調教ボーナス”というシステムがあります。
調教ボーナスは、一定の手順で調教を行ったり、調教師の特性が発揮されたり、あるいは特別な条件で発生したりするなど多彩です。ボーナスを狙えば、より調教にこだわることができ、馬を育てるおもしろさが増します。
▲親が日本ダービーを制したために、同レースに挑もうとする仔が闘志を燃やすイベントが発生することも。いくつかのレースで、同様の調教ボーナスが存在します。 |
▲“縁の馬”でつながっている騎手が、調教に参加してくれることもあります。 |
その他、調教コースにはレベルの概念があり、これは預けている調教師の得意なコースによって決まります。調教師を選ぶ時は調教コースのレベルも参考にしてみると、より高い能力の馬を育てられるでしょう。
▲調教コースのレベルは、その調教師が勝利を重ねることで上昇していきます。 |
コース、強さ、併せ馬の有無を選ぶだけと操作や基本システムはシンプルながら、こだわり始めると奥が深くおもしろい“調教”。『ウイニングポスト8 2016』で調教方針が登場するなどのテコ入れもありましたが、今作の調教は従来のシステム変更とは一線を画す遊びごたえになっています。
ただし、お気に入りの数頭ならともかく、2桁の競走馬を調教まで含めて管理するのはさすがに大変です。そのためか、調教のデフォルト設定は“おまかせON”になっています。
▲手動でやるからには、ボーナスを発生させて効率よく調教したいもの。そうなると、調教を管理しやすい頭数は限られてくるわけで……。 |
つまりは、年に2、3頭を調教するだけでも、まったく調教しなくても、所有馬すべての調教をするのでも、あるいは調教内容はCPUに任せつつその様子を見るだけでも、遊び方は人それぞれ。
個人的に、『ウイニングポスト8』シリーズのよさは、さまざまなプレイスタイルを許容しながら、自分の好きなこだわり方で遊べるところだと感じています。その意味で、また1つこだわれる遊びが増えたなと!
▲能力の高い馬が産まれた証であるイベントの1つ“シュンラン”。こういうイベントを見た馬は、やはり自分で調教して愛を注ぎたくなりますね。 |
結婚をして子ども生み、一族で競馬界に関わりながら、馬だけでなく馬主の血統を作り上げていく楽しみも増えた『ウイニングポスト8』シリーズ。そこで新作が出れば期待してしまうのは、新たなヨメさ……ならぬ新キャラクターです。
今作では、秘書の“黒羽のぞみ”、コースポTVのキャスターである“鞍馬もみじ”、絵本作家の“日向巴”という3名が新たに登場します。
▲明るくかわいい、けれどしなやかな色気がどこか見え隠れする黒羽のぞみちゃん。ぜひ、結婚を前提におつきあ……ではなく秘書を……。 |
▲鞍馬もみじは、ギャンブルのイメージが強い競馬に携わることに疑問を抱えながらも、仕事は熱心なキャリアウーマン。 |
▲トレセンならではのエピソードを見られる日向巴の関連イベントは、興味を引かれるおもしろいものばかりです。 |
いずれのキャラクターも関連イベントが用意されていますが、中でも日向巴は、エピソード的にもゲーム的にもおいしい人物かと思います。
彼女は、絵本作家になる前はトレセンで働いていて、人付き合いが苦手だったために辞めたという経歴のキャラクターです。何か現代社会を反映したかのような背景を持つ人ですね(笑)。
ただし、人付き合いは苦手でも“人馬の絆”にまつわるエピソードは大好きなんだとか。プレイヤーのもとを訪れると、調教師が目をかけている所有馬を教えてくれ、その理由が何で馬と人の間にどんな逸話があるか、まさしく“人馬の絆”を語ってくれます。
▲“人馬の絆”イベントは、競馬界のおもしろいエピソードを聞けるので、ゲーム的なメリット抜きにしても、早くイベントが見たいと感じてしまいます。 |
このイベントが発生すると、対象の所有馬が調教ボーナス“人馬の絆”を得て、日向巴の友好度もアップします。さらに、“人馬の絆”イベントとは別にエピソードを見られる場合もあり、その時は能力アップなどの恩恵を得られます。
なので、結婚相手を誰にするかは好みの問題だとしても、彼女はみんなが会いたいと思えるキャラクターでしょう! 人見知りな彼女にとっては迷惑な話かもしれませんが(笑)。
▲登場シーンでは、「馬に囲まれて、ついでに人がいなければ最高……」と人見知り全開の巴ちゃん。 |
ドリームマッチは、年の最後に参加できる“夢の世界のレース”です。史実の名馬と現役の名馬、スーパーホースらが一堂に会し、距離や馬場ごとに最強を決めようというお祭りレースになっています。
このモードの何がおもしろいかと言えば、やはりシンボリルドルフ、ディープインパクト、キタサンブラックといった名馬と同じ土俵で戦えることでしょう。『ウイポ』は好きでも現実の競馬とは無縁な筆者ですが、そんな自分でさえ名前を聞く名馬との対戦は何だかワクワクします。
▲好きな馬を集めるもよし、最強の馬を決めるもよし、ドリームマッチでは世代を超えた夢の共演を果たせます。 |
しかもレースに勝つと、ランクに応じて報酬をもらえます。ランクは対戦相手らの強さによって決まり、6段階で自動的に算出される仕組み。最高ランクのレースに勝利すれば、“スーパーホース(SH)名鑑”というレア名鑑を入手できます。
この“SH名鑑”は、種付け開始の5月1週に使用すると、ドリームマッチ専用のスーパーホースを再現した仔を1頭だけ産めるという名鑑です。能力と容姿だけが再現されるため、血統は自分の配合が反映されます。
▲ドリームマッチ専用スーパーホースは、名前がやたらとカッコイイのも特徴です。例えばモントズィッヒェルは、ドイツ語で三日月の意味。 |
つまり、ある種牡馬の系統確立を狙う時などにSH名鑑を使えば、簡単に超大物クラスの仔を確保できるという……使い方次第で一気に強くなれてしまう要素でもあります(笑)。
▲SH名鑑を使って生まれた仔には、金のお守りマークが付きます。 |
ちなみに、ドリームマッチは出走させる馬やコースを自分でセッティングできるため、人それぞれ思い通りのレースを実現できます。
出走馬を自分の好きな馬だけでそろえることもできますし、歴代の強豪に挑戦し続けることもOK。または、報酬狙いで自分の所有馬で勝てそうな馬だけをそろえることも可能です。
どのようにドリームマッチを楽しむかは、プレイヤー次第! 自分なりの遊び方をできるところも、ドリームマッチのおもしろさだと思います。
▲選択できるコースについては、レースに勝利することで徐々に解放されていきます。 |
今作で調教が生まれ変わったことにより、毎週馬を鍛えるというミクロな遊びが補完され、ドリームマッチを含めて、さらに幅広い遊び方が楽しめるようになったと思います。
調教は、オート進行を多用する場合あまり影響のない追加要素かもしれませんが、この馬こそは自分で細かく管理したいと思える愛馬が生まれた時、調教もできるとさらに愛が深まるのではないでしょうか。
逆に自分で調教できる日を待っていたという人は、間違いなく今作は“買い”でしょう。自分の好みを出せる幅がありながら、複雑なシステムはなく遊びやすい点もいいところです。
▲調教ボーナスを考えたり、ほどよくイベントが発生したり、単調にならず馬を鍛えることができます。 |
自分なりのこだわりを発揮して、痒いところにも手が届くようになった本作は、まさに『ウイニングポスト8』シリーズの集大成。しばらく『ウイポ』を離れていた人も、遊んでみてはいかがでしょうか?
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