2018年5月11日(金)
電撃PlayStationで連載されているPS4用ソフト『モンスターハンター:ワールド』の開発者インタビュー連載企画。ここでは、電撃PS Vol.655(2018年1月25日発売号)に掲載された“第4回:装備デザインへのこだわり”を全文掲載する。
お話をうかがったのは、エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏、グラフィック(デザイン)の山田隆政氏、グラフィック(キャラクター)の河出努氏の3人。装備デザインへのこだわりをぜひ感じとってほしい。
――『MHW』の装備デザイン作りが始まった時期はいつ頃でしょうか?
藤岡要氏(以下、敬称略):以前のインタビューで話した、モンスターやフィールドを作り始めた時期とほぼ同じです。プレイデモを作る際、フィールドやモンスターだけでなく、すでにハンターも『MHW』の世界にいました。
河出努氏(以下、敬称略):『MHW』の世界を表現するには、その世界でハンターがどれだけ動けるのか、という点がどうしても必要になります。そのため、必然的にハンターの装備も早い時期で開発が進んでいきました。
藤岡:プレイデモのハンターの装備デザインは、『MHW』の世界と親和性の高いデザインにしようと考えていました。ただ、現行の据え置き機での開発となると、今までの『MH』シリーズと表現方法が異なってきます。河出は、これまで据え置き機でのゲーム開発に携わってきていたので、今までと違う部分をどのように表現できるのか、という点に注力してもらいました。
――『MHW』に向けた技術研究や検証は、装備デザインでも行われていたんですね。
河出:研究用の検証期間は、開発初期に設けられていました。ただ『MHW』は、各要素の物量がものすごいタイトルなので、検証だけでゆっくり時間を取るわけにはいきません。そのため、検証に使う武器や防具のデザインは、開発初期からゲームに登場することが決まっているものを使って進めていきました。例えば、防具を見て「この部分を表現するには新しい技術が必要」などといった部分ですね。
――その検証の成果が一番わかる装備は?
河出:初期に作ったハンター装備です。この装備には、肩やブーツに白いファーでできた部分があるのですが、こういった部分は今までだと直接テクスチャに描いて表現していました。それを今回は、新しい手段で描いています。
――それは、モンスターの毛にも使われているファーシェーダのことでしょうか?
河出:そうです。『MHW』で独自のファーシェーダを使おうというきっかけになったのが、このハンター装備です。オトモアイルーの毛やハンター装備のファーを描くために専用のシェーダが開発され、それがモンスターにも応用されました。
藤岡:ほかにも、ハンター装備には防具をデザインするうえでのテーマやルールが詰まっています。本作のハンター装備は「新大陸を探索していくという」テーマを持っているので、うっそうとした茂みを動いても草木にひっかかりにくいデザインにしました。また、企画を進めていくなかで生まれたスリンガーや導蟲をデザインとして盛り込む際にも、ハンター装備を試金石としています。
▲トレーラーで姿を見せた“探索”がテーマのハンター装備からは、森の草木を探索の障害としないためのマントや、ファーを用いた素材が見て取れる。 |
――ファーシェーダがなければ、装備デザインは違ったものになったのかもしれませんね。
山田隆政氏(以下、敬称略):そうですね、質感の説得力が増したので、デザインの幅が広がりました。
――毛の質感以外に力を入れたところは?
藤岡:マントは苦労しましたね。ラフで描くうちはバサッと広がった感じでマントが描かれて、それがシルエットとしてもカッコいいんですよ。しかし、広がったマントを生かしてポリゴンデザインを起こすと、ほかのパーツを貫通してしまうなどの干渉が起きてしまうことがあります。そのため、今までは最終的にマントの布地が短くなったり、揺れを抑えたりすることが、よくありました。
――デザインがよくてもゲーム上で完全に表現するのは難しい装備があるということですね。
藤岡:ほかにも、『MH』シリーズは最終的に5パーツの防具を組み合わせて遊ぶタイトルなので、デザイン上でキレイに収まっていても、ほかの防具パーツと組み合わせたときに干渉することがあります。ラフ段階では、かなりデザイナーに好きにデザインしてもらっていますが、それをモデルデザインにする際は、『MHW』のルールに乗っ取った部分をデザイナー自身が説明できるようにしてもらっていますね。
河出:マントやロングコートといった身体に接するパーツは、ほかの部位や防具へ干渉しないように調整するのがたいへんでした。こういったパーツは、リアリティを求めて物理演算で処理する部分が多いのですが、物理演算任せだとほかのパーツに干渉してしまい、破綻することがあります。そういった不都合を別の処理で抑え込もうとすると、制作時間と処理がかかってしまうんです。
藤岡:例えば、腰から垂れ下がる布があった場合、今までならある程度脚の動きに追従して動かしていたんですよ。そのほうが処理が軽く、脚に依存して動いている以上、脚のポリゴンと干渉することも少ないんです。ただ、足もとまで垂れ下がった布は、物理演算で動かしたほうがカッコイイんですよね……。
――布地のヒラヒラした部分の表現は難しいんですね。
藤岡:でも『MHW』では、なるべく各種防具のパーツが目に映えるように制御方法を工夫しました。表現力が上がったぶん「このパーツどこまで動かしますか? そもそも個別で動かしますか?」なんて質問攻めにあう機会も多かったです(笑)。以前の作りでは「風になびくマントってカッコイイよね」といった押せ押せの姿勢で開発を進めるのですが、いざモデルに起こすとき動きを抑えなくてはいけなかったので、デザインを生かしきれないこと悩みました。
河出:ゲームをプレイしている最中って、プレイヤーが目にするのはハンターの背中がほとんどで、マントはよく視界に入るパーツなんですよね。マントが常に激しくたなびいていると、どうしても視覚的にうるさくなってしまいます。そのため、プレイヤーの遊びやすさを考慮して、装備のパーツの動きを抑えるということもありますね。本作に限らず、こういった揺れるパーツは、発売までに何度も調整を重ねています。
藤岡:突き抜けない範囲で調整するか、最初から突き抜けることを前提にしていたんです。これは単純な処理の簡略化もありますが、それ以上にマントを自由に動かしたほうが、多少ほかのパーツと干渉することがあってもカッコいいビジュアルになるという点が大きいですね。しかし、本作で同じような調整を行うとシルエットのカッコよさより、マントが脚などのほかのパーツを突き抜けることのほうに違和感を感じてしまったんです。そこで、防具の各パーツにほかのパーツに対する当たり判定を設定し、マントがほかの防具を貫通しないような調整を施しています。
――そういったマントなどは、背中に背負う武器との当たり判定をどのように処理しているのでしょうか?
河出:非常に悩んだポイントです。マントが後ろにたなびいていると、武器を背負ったときに当然貫通してしまうんです。そこで防具同士と同じように、相互に当たり判定を付けて制御しようとしたら、今度はまるでマントが動かなくなってしまいました。装備のグラフィックが貫通するとリアリティがなくなるとはいっても、まったく動かないマントというのもビジュアル的におもしろくありません。こういったときは、マントの動きに自由度が持たせられるようにしています。
藤岡:装備のビジュアル面で“リアリティを重視”するのか、それとも“カッコよさを生かす”のかというのは、常に取捨選択です。揺れるパーツがまったく動かないのはおもしろくないですが、ちょっとした動作で腕や足がマントを貫くのはカッコ悪い。防具に当たり判定を付けて動きを抑え込むか、動きの自由度を重視するかは個々のケースに合わせてやりくりしています。
――装備デザインは何人ぐらいで作っているんですか?
藤岡:武器と防具を合わせると十数人になりますね。とくに武器の制作にかけられる時間が限られていたので、一時的に人を増やしました。ただ、人数が増えると「デザインをチェックします」と声をかけたとき、十数人が自分のもとに大量のデザインを持ってやってくるんです。人の波とデザインの山に飲まれつつ「この作業はいつ終わるんだろう……」って考えながら、1つ1つデザインをチェックしていましたね(笑)。
――デザインをするにあたって、世界観やゲーム的にどういう位置づけにするかも意識しているのでしょうか?
山田:そうですね。とくに序盤の装備は、本作の世界観に没入してもらうために、リアルなタッチのビジュアルのなかでも映えるものを作るように心がけました。おなじみのアロイ装備は、従来であればシルエットを重視して、ところどころデフォルメしてデザインをしていました。
ただ、このデザインだと『MHW』の世界では少し浮いてしまいます。そこで、過度な誇張は避けつつカッコよさを追求しました。さらに、金属製の甲冑をデザインするだけでなく、毛皮を用いて寒い地方でも活用しやすくしたり、ハンターが動いた際にこすれ合う場所には有機的な素材を用いたりしています。
▲金属と鉱石が独自の輝きを放つアロイ装備は、鉄鉱石やマカライト鉱石など、各種鉱石を主な素材とする装備。本作では、素材となった鉱石を意識した配色や発色がデザインに盛り込まれている。 |
藤岡:装備をデザインする際、今まではシルエットを最優先していて、プレイヤーには個々のシルエットやその組み合わせを楽しんでもらっていました。ですが、本作は今まで以上にディテールを作り込めたので、シルエットにあまり過度なインパクトを持たせず、装備のディテールも楽しんでもらえるようになっています。
――どのようなディテールが注目ポイントですか?
藤岡:先ほどアロイ装備の説明であったような、身体にこすれる部分だから有機的な素材を用いるというのが、その一例ですね。防具を構成する個々のパーツが世界観や設定と合致している点などを見てほしいです。
山田:近くで見ないと気づきにくいディテールもあるので、マイハウスなどで観察してみてください。
藤岡:光の反射で模様が見えてくるデザインなど、ほかにも金属を使ったパーツのディテールを用意しています。金属を使った防具の場合、関節部分を複数の金属板を重ね合わせて可動をイメージしやすく表現したりもします。
河出:そういった細かなディテールを含め、基本的にはあがってきたデザインを忠実に、モデルにしています。
藤岡:モデルを作っていくにあたって、ある意味たいへんなのは、しっかりモデルにできるデザインを作るということですね。デザイナーが勢いで書くと、シルエットとしてはカッコいいけれど「どうやって着合わせているの?」とか、パーツ構成がわかりにくくなってしまうことがあります。
さらに、それが行き過ぎて矛盾してしまうと、イメージどおりにモデルが作れなくなることも……。ですからデザイナーには、パーツ構成を分解して説明できるようなデザインを作ってもらっています。
――個人的に左右非対称のデザインの装備が好きなのですが、本作にも用意されていますよね?
藤岡:もちろんあります。ただ、モデル担当に一番嫌われるタイプの防具なんですよ(笑)。
河出:非対称なものは苦労します。単純に左右対称な防具は、半分を作ればほぼ作業が終わるんですよ。右半身を作り、それを反転してコピーすれば左半身ができあがるというイメージに近いですね。半分しか作らないということは、1つの防具に使える容量は2倍になるので、細かいところを作り込みやすくなります。そのため、モデル担当としては左右対称のものが好きです(笑)。
――処理の重い防具同士を組み合わせた場合、いわゆる処理落ちとかはしないのでしょうか?
藤岡:そういったケースを避けるために、1つの装備に使える容量の上限を定めています。処理が軽いぶんにはいくらでも許容しますが、処理が重くなりそうな装備は一定の容量内に収めるというのがルールです。
――防具全体だけでなく、個々のパーツに対する処理の上限が設定されているんですね。
藤岡:本作では複数のパーツを着合わせるのが前提なので、5パーツの処理が均等化される必要があります。1つの防具シリーズのなかで極端に容量の軽いパーツと容量の大きいパーツが混在していると、他のシリーズ防具と着合わせたときに全体の容量がオーバーして、何か問題が生じてしまう可能性があるんです。
――プレイ中、プレイヤーがハンターの後ろ姿をよく見るという点は、どのぐらい意識されていますか?
山田:例えば、同じ防具でも前面と背面が同じデザインになることは避けています。前面に各種消費アイテムを配置するなら、背面は装備の素材のカラーを見せるといったように差別化をはかっています。
藤岡:先ほどから何度か話している揺れるパーツも、前面と背面の印象の差別化に一役買っています。防具を着て動いたときに単純に可動するパーツがあるだけで、防具自体の印象がぐっと変わってくるんですよ。そして、その揺れるパーツが頭にあるのか胴にあるのかだけでも、装備が持つ個性は十分に引き出されます。
――装備デザインに関しては、ゲームの進行に合わせてどのようなものが生産できるかも考えられていますよね。
藤岡:プレイヤーがどういった順番で装備を手に入れるかや、どんなタイミングでどんなデザインのものが手に入るかを考えています。
例えば、ゲームを始めた直後にものすごく派手なデザインのマントとかが手に入ってしまったら、プレイヤーによってはそこで満足してしまうじゃないですか。そういったことを避けるため、序盤は『MHW』の世界観にフィットした、調査であったり探索であったりといったテーマが表に出たデザインのものを用意できるように、デザイナーにお願いしました。
そこから物語が後半になっていくにつれ、モンスターの個性を楽しんだり、装備に用いられた特殊な素材の質感を楽しんでもらう形にシフトしていくのが、本作の装備デザインのおおまかな流れになりますね。ゲームを進めるほど、インパクトのあるシルエットの装備が登場するようになっています。
山田:序盤に手堅いデザインの装備を配置して、『MHW』の装備デザインの土台をしっかり作っているからこそ、後半装備の一部に見られる奇抜に映るデザインのインパクトが増しますね。
――とくにインパクトのある装備をあげるとしたら、どんなモンスターの装備になりますか?
藤岡:物語の後半に出てくるヴァルハザクの装備はインパクトがありますよ。いわゆる王道の鎧にボロ頭巾をかぶせたようなビジュアルなんですけれど、使われている素材の重なりあいなど、ディテールがカッコいいんですよ。シルエットはそんなに飛び抜けたデザインではないんですが、装備の内側が光っているなど、いろいろと細かいところに細工が施されています。
ヴァルハザクは、物語のかなり後半に登場しますので「ボロ頭巾」で「内側が光っている」装備に出会ったら、「あのインタビューで藤岡が言っていたのはこの装備のことか」と、ヴァルハザク装備のディテールを楽しんでほしいですね。
――本作では、装備の色は変えられるのでしょうか?
藤岡:今までのシリーズでコーディネートを楽しんでいたプレイヤーに同様のことができるように、装備の色変更は用意しています。
――装備の色変更では、装備全体の色が変わるものと一部だけ色が変わるものがありました。あれは変えてほしくないところの色を固定しているのでしょうか?
藤岡:装備のどの部分の色が変わるかというのは、その装備のどこにどんな素材が使われているかを基準に決定しています。モンスターの素材を使っている部分は色を変えず、そうでない部分はガラっと色を変えられるというのが基本ルールですね。
ただ、この部分の色を変えられることが防具のアイデンティティだろうと判断した部分については、前述のルールとは関係なく大胆に色を変えられるようにしていることもあります。
山田:あまり目立ちすぎないプレーンなデザインの装備は、全面的に色を変えられるようにすると、デザインにクセがないだけにコーディネートのパーツとして使いやすくなります。
――本作の防具は1つのシリーズでそろえるだけではなく、組み合わせても色のトーンが合うと聞いたのですが。
山田:残念ですが、すべての装備がほかのどの装備とも色が合うというわけではありません。それでも、異なるシリーズの装備を組み合わせてもコーディネートを楽しめるよう、これまでのシリーズ以上に意識しています。
藤岡:本作では、とくに装備のディテールを楽しんでほしいので、装備のシルエットは印象が変わらない程度に少しタイトにしています。ですから着合わせも楽しみやすいでしょう。今まで着合わせたときに目立ちすぎたデザインの装備に関しては、なるべく違和感を感じにくいデザインに調整しています。
――その変化が一番感じられるシリーズ装備は?
藤岡:例えばディアブロス装備は、ねじれた角の使われ方が特徴的な装備ですよね。このシリーズ、一式で着るぶんにはいいんですが、ほかの装備と組み合わせた場合に少し肩のボリュームが目立ってしまいます。
ですから本作では、防具全体の印象を変えない範囲で、ほかの装備にシルエットが勝ちすぎないように調整しています。これはコーディネートを考えてのみの変更というわけではなく、じつは従来のディアブロス装備そのままで本作の防具としてデザインすると、肩パーツが作り出すスキ間が目立ってしまっていたんです。
そういう点もあって、『MHW』のディアブロス装備は、肩パーツを内側に押し込んで肩に密着させ、リアリティのある造形にリメイクしています。もちろん飛び出ているパーツがアイデンティティになるような防具は、きちんと飛び出るままにしていますけど。
▲本作のディアブロス装備は肩パーツ部分のボリュームが抑えられている。また、腰に爪の付いた甲殻が使われているなど、ディテールもわかりやすくなった。 |
――シルエットというと、どうしても過去のウラガンキン装備のインパクトが強いです。
藤岡:ウラガンキン装備の場合は、ほかの防具と組み合わせると個性的になるのも、1つのアイデンティティだと思っています。せっかくウラガンキンを討伐したのに、作れる防具がヒョロっとしていたら残念じゃないですか(笑)。『MHW』でも既存のシルエットを生かしたデザインになっているので、今までのウラガンキン装備のファンの方も、安心してごつい見た目になれますよ。
本作では多くの防具をリメイクしていますが、画一的にリメイクするのではなく、それぞれの装備のどういった点に需要があり、愛されているのかを考えてリメイクの方向性を決めています。
――新しいスキルシステムと本作の防具のデザインは、どちらが先に生まれたものなのでしょうか?
藤岡:新しいスキルシステムは企画担当が別途進めていたもので、先ほど話したとおり装備のデザインの検証などは開発初期から進めていました。ですから、システムによって防具のデザインに影響があったということはありません。
そもそも『MH』シリーズは、以前からいろいろな防具を組み合わせて遊ぶというのが当たり前になっていました。そのため、装備のデザインを作るにあたって、着合わせしやすいようにするというのは常に考えています。この着合わせのしやすさや、本作の世界観に合わせた色味などをすべて加味したのが、今回の装備デザインになります。
逆に装備デザインを見てスキルが決定されるということも、ほぼありません。スキルは基本的にモンスターの特徴に依存していたり、どのタイミングでどんなスキルが欲しいかというレベルデザインに応じた設定をしています。
――ちなみに、本作でスキルシステムをガラッと変えた理由はなんでしょうか?
藤岡:スキルシステムを見直したいというのは、もともと考えていたことの1つです。シリーズを重ねるごとにスキルが増えていき、飽和状態になっていました。強力なスキルと少し使いにくいスキルが同じスキルシステムでくくられているので、結果として特定のシリーズ構成が人気を集める状況が続いていたんです。
そこで本作では、スキルの組み合わせや交換を行いやすく変更しました。また、特殊装具もスキルシステムとひもづいたものとして考案されたものです。装備のスキルとしては実装しにくい強力なもの、例えば「モンスターに見つからなくなる」といった効果を、一時的にスキルとして発動できるアイテムとして盛り込んだものになります。
――特殊装具のなかで「○○の装衣」などは、防具として登場してもおかしくないデザインですよね。
山田:じつは特殊装具のデザインも、装備のデザイン候補の1つだったんですよ。デザイナーの1人がギリースーツのようなデザインの装備を描いたのが藤岡ディレクターたちの目に止まり、隠れ身の装衣の原型となるものが生みだされました。
▲特殊装具のなかには、防具デザインがもとになって生まれたものが存在。ギリースーツのような特殊装具“隠れ身の装衣”は、身にまとうとモンスターから姿を隠すことができる。 |
――デザイナーごとに、それぞれ個性あふれるデザインを作り出しているんですね。
山田:単純にデザイナーとしての個性だけでなく、デザインを作るにあたって今までどんなものに触れてきたかもデザインに現れます。自分が触れたことがないテーマに触れていくと興味が湧いて、逆に妙に詳しくなっていくんですよ(笑)。
藤岡:デザインは最初にスタッフ全員で意見を出しあい、それを山田たちがまとめていく形で進んでいます。得意なものを出しているほうが筆も進むし、バリエーションも豊富になるんですよ。
――1つ1つの装備デザインが完成するまでに、どのぐらいの時間がかかっているのでしょうか?
藤岡:モデルを発注する段階まで考えると、かなりの時間をかけています。デザインを作ったうえで、細かな部分の構造を説明できる形にまとめないといけませんので。
山田:あるモンスターの素材を使った防具は「空を飛ぶ」といったデザインにするなど、モンスターが持つキャラクター性が決まらないと、そもそも制作に取り掛かれないものもあります。
藤岡:パオウルムー装備がその例ですね。パオウルムー自体がふわふわとしたデザインになったことがあって、かなりモコモコした防具になっています。
――モンスターが決まることで、装備のイメージも固められていくんですね。
山田:モンスターのイメージに引きずられ過ぎないように調整する場合もありますよ。例えば、アンジャナフはパワフルで物語の序盤でスポットが当たるモンスターです。つまり序盤のハンターにとっては目標になり得る存在ですが、そういったポジションの装備を蛮顎竜という呼び名に引きずられ過ぎて、蛮族のような見た目にしてしまうと万人には受けない装備になるでしょう。広く受け入れてもらえるカッコよさを求めて、担当デザイナーがワイルドかつプレーンな騎士鎧に仕上げてくれました。
――ゲームの進行に合わせ、大きな目標となるモンスターの装備は力が入って作られているんですね。
藤岡:アンジャナフは地形などの検証用モンスターだったこともあり、かなり早めにモンスターのデザインが決まりました。そのため、防具のデザインも早い段階でスタートしたのですが、やはりワイルドなモンスターというイメージに引きずられたデザインが多く、方向性が決まるのに時間がかかりましたね。
河出:アンジャナフの防具は毛がふんだんに使われているのも特徴で、部分的にフワフワした印象もあります。この毛の表現も苦労したポイントですね。
藤岡:アンジャナフやその防具を初期の頃にデザインできたので、毛の表現を個々のモンスターや防具にどこまで反映できるかは早い段階で見えていました。ほかにも、この毛の表現はハンターの髪の毛など、いろいろなところに役立っています。
以前にも話したとおり、アンジャナフの開発当初は、今よりも硬いイメージの毛が生えていました。そんなモデルを「これがゴールじゃないよね?」と言い続けたことが、今のモンスターや装備の毛の質感に生きているんだと思います(笑)。
――ファーシェーダは、かなりの発明だったんですね。
河出:作業にかかる時間的なコストが下がり、かつ表現の幅が広がっているという最高の形でした。
藤岡:あまりに喜び過ぎた結果、本作ではいろいろな装備がフワフワしています(笑)。
――ハンター同様に、オトモアイルーの装備にもフワフワしたものが見られます。
藤岡:オトモアイルーは『MH』シリーズにおけるマスコットなので、装備をフワフワした雰囲気にしてあげると見栄えがよくなるんです。それでも、オトモアイルーの装備を愛嬌に寄せすぎてアニメキャラみたいにしすぎても、世界観とはマッチしません。一定のラインでリアリティを保つことで、はじめてハンターの隣にいてしっくりくる雰囲気に仕上がるんですよ。
――オトモアイルーの装備は、ハンターの装備と同じタイミングで作るのでしょうか?
山田:基本的にはハンターの装備を作ったあとになります。モンスターの特徴など、ハンターの装備を作る際のイメージ作りに使用した要素に加え、ハンターの装備自体もテーマにしてオトモアイルーの装備を作っていく流れです。例えばハンターの装備が騎士をイメージしたものだったら、従者みたいな装備になったりもしますね。
藤岡:ネタっぽいものが許容されるときはネタっぽく、アンジャナフのような正統なモンスターの場合は、オトモアイルーの装備も正統なデザインにする感じです。
――ではネタっぽいオトモアイルーの装備は?
山田:クルルヤックのオトモアイルー装備はネタに走った例ですね。ハンターのクルルヤック装備は砂漠の盗賊がイメージなんですが、オトモアイルーの装備を作るとなったときに選んだデザインは商人なんです。
最初は盗賊の手下をイメージしたデザインも考えたんですが、ハンターのクルルヤック装備をコピーしたものを、そのままオトモアイルーの装備にしてしまってもおもしろみに欠けます。なので、少しひねったデザインにしようとデザイナー陣で知恵を絞りました。
藤岡:大きなターバンであったり、アイルーのぷくっとしたお腹あたりが、うまいこと商人らしさを生み出しているように思っています。
河出:クルルヤックはモンスター自体が愛嬌のあるデザインなので、オトモアイルーの装備だけでも遊んだデザインにしようとしたというのもありますね。
▲砂漠の盗賊風のハンター装備が考えられたあとに作られたオトモアイルー装備。盗賊に物を奪われる側の商人という斬新な形に! |
――ほかに装備のデザインが特徴的なモンスターは?
藤岡:プケプケ装備などのレンズ表現は、特徴的であり、力の入っているポイントです。レンズの奥をよく見るとアイルーの目が見えるので、ぜひ確かめてみてください。
――コラボ装備にも注目のものが多いですね。
藤岡:『ロックマン』コラボは、ネタを楽しんでもらうことに振り切りました。元のビジュアルを楽しんでもらおうとデザイナーにもオファーしています。「2Dがいい」とか言ったところ「2Dのままって、どうやって作るんですか?」って聞かれて「なんか、こうキューブみたいなのを組み合わせる感じで」とか答えました(笑)。
河出:突拍子もないオファーのようですが、作り始めるとモデル担当も乗ってくるんですよね。本当にドットを1ブロックずつ積んで再現しています。
▲攻撃の一部がロックバスターになり、E缶で回復を行う『ロックマン』コラボのオトモアイルー装備。専用のイベントクエストでは、プレイヤーが装備している武器種によってBGMが変化する。 |
――3Dで2Dをしっかり再現するのは、かなり突拍子もない発想ですよね。
藤岡:なんとなく2Dっぽく見えるという形ではなく、ドットに相当する四角いキューブが組み合わさって装備を構成している形にしてほしいとオーダーしました。
河出:最初に発注したときはモデラーが固まっていましたね。「なんだこれ?」って(笑)。
藤岡:とはいえ、そういった力の入った作りでビジュアルができあがってくると、エフェクト担当のスタッフも乗ってきます。その結果の1つが、攻撃したときに飛ぶロックバスターの弾のようなエフェクトですね。自分のほうも「できることは全部入れ込もう」という思い切った判断ができました。ほかにも「回復薬」の代わりにE缶を使うのも見どころです。
河出:コラボアイテムは、開発もひととおり終わりかけたタイミングで制作します。このタイミングだとプログラマ的には、メモリを整理していきたいんですが、そのような状況で藤岡ディレクターが「E缶入れたいんだけど」って言ってくるんですよ(笑)。
藤岡:結果的にいいものができたので、プログラマにも許してもらえたんじゃないかと(笑)。結局いろいろな部門から、少しずつメモリを分けてもらって、やりたいことは全部ねじ込みました。ここでがんばったからこそ、サウンドを担当しているスタッフからも8ビットのBGMを用意してもらえました。スタート地点がはっちゃけていると、周りも乗ってくれるものです。
――ほかには『Horizon Zero Dawn』とのコラボも発表されています。こちらの注目ポイントは?
藤岡:『Horizon Zero Dawn』のアーロイは、装備1つでキャラクターの見た目全体を変えるというような処理をしています。当然そんなことは『MHW』の開発中に試しもしなかったことなので、まずはアーロイのビジュアルのキャラクターを『MHW』に登場させられるかどうかという検証から始まりました。これにかなりの時間がかかったので、『Horizon Zero Dawn』のコラボ装備は開発終盤まで制作していました。
河出:『Horizon Zero Dawn』のアーロイの骨格と『MHW』のハンターの骨格は全然違いますからね。『MHW』の骨格にアーロイをただ乗せましたという形だと、ゲーム的に破綻してしまう部分が出てくるんです。
藤岡:アーロイ用に専用の表情を用意するわけにもいかないんですよ。装備なので『MHW』のモーションのまま、自然にアーロイの顔や表情を盛り込みました。
――アーロイのコラボ装備は、通常の防具の1つとして扱われているのでしょうか?
藤岡:そうですね。スキン1枚で構成したものですが、重ね着装備ではなく通常の装備(ワンセット防具)になります。オトモアイルー装備は機械獣のような見た目で、こちらはゲリラゲームスさんからの提案を受けてのものになります。
山田:オトモアイルー装備は目が赤く光るなど、機械獣がこちらを見たときに入る青い光のエフェクトも再現しています。『Horizon Zero Dawn』専用のシステムですね。
藤岡:コラボ関係はキャラクターの個性をどれだけ生かせるかというのが、1つの完成度の目安になります。ですから『MHW』チームやカプコンにない処理を盛り込むことになることが多いですね。
▲『Horizon Zero Dawn』の主人公、アーロイになり切れる装備。ゲーム序盤で役立つ性能を持っている。オトモアイルー装備は、作品内で登場する機械獣がモチーフとなっており、目が光るエフェクトが再現! |
――ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとのコラボ衣装は、どういったイメージで作られたのでしょう?
藤岡:「クールジャパン」というコンセプトをもとに、先方からラフイメージなどをもらっての開発となりました。ですから、こちらで制作にあたってこだわったのは、いかにクールでスタイリッシュなものにするかという点と、蒼や金といったカラーリングをどう生かすかという点ですね。こちらも制作はスムーズにいったと思います。
河出:『MHW』はどうしても西洋甲冑のシルエットが多くなるので、和風の装備というのは映えますね。
藤岡:和テイストのものは、ここぞというところで登場させないと生きないので、どのモンスターの装備を和風にするかといった点は入念に考えています。また、ひと口に和テイストと言っても、鎧であったり忍者風であったりといろいろあります。そういった装備デザインをいくつ作るかというのを、残弾数的に考えていますね。本作では、オドガロン装備が和風テイストですよ。
――和風の装備は常に人気がありますよね。
藤岡:そうですね。我々としても和風の装備が国内外問わず人気が高いという点は把握しています。ですから、本作ではあまり特定の難易度ばかりに和風の装備が偏らないようには作っています。
――防具同様に武器もていねいに作り込まれています。こちらでこだわったポイントは?
藤岡:本作では、開発当初から強化した武器をもとに戻せるようにしたいという企画があったので、デザイン面でも今までの1本の武器がただ強化されていくだけでなく、元の形状に戻ることも考えた形にする必要がありました。
もともと『MH』シリーズには、装備を強化していくうえでデザインが変わっていくという基本のルールはあるのですが、本作ではこのルール自体をイチから作り直しています。
まず刃などがベースとなる武器がいくつかあり、武器を強化していくとベースとなる武器の刃にモンスター由来の素材を付けていくというのが基本ですね。そのなかで刃の形状が変わったり、持ち手の部分に別の素材が加わったりすることで、異なる武器になっていくというイメージです。ベースとなる武器に素材を足していく構造なので、逆に強化前の武器に戻したい場合は、素材パーツを外していく感じですね。
そして、そのなかにいくつか「これは欲しい」と思わせるような、いわば最終形と呼べるようなデザインの武器がいくつか盛り込まれているというのが、本作の武器デザインの基本構造になります。
――武器のデザインというと、ギミックのあるものが苦労しそうな印象があります。
藤岡:ガンランス、スラッシュアックス、チャージアックスといった可変する武器のデザインはたいへんでした。これまでだと、ギミックに該当する部分のポリゴンが他のパーツに刺さっていてもいいくらいの感覚でデザインを作っていたのですが、今回は防具と同様にポリゴンの食い込みを無視しているとリアリティが薄れてしまいます。
そのため、こういったギミックのある武器は理屈通り武器のパーツが収まるようにモデル制作してもらいました。一部のユニークなデザインの武器など、どうしてもほかのパーツと干渉しなければ魅力的なデザインにならないものに関しては、デザインを優先している場合もありますが、基本は変形前後の理屈をしっかり考えて制作しています。
――たいへんな一方、ギミックのある武器ってデザインをするのが楽しそうですよね。
山田:そうですね。変形だとか合体だとか、そういう言葉が好きなスタッフが率先して作っています。
藤岡:変形するぶん通常の武器以上にデザインの制約が多いので、そこに自分の好きな部分をどう入れられるかが、開発スタッフの腕の見せどころですね。
――ギミック付きの武器は、1つ1つデザインを起こしているのでしょうか?
藤岡:さすがにそこまではしていません。ひな形となる武器の構造が決まると、自然と個々の武器の特徴を出すためにいじってOKな部分が決まってくるので、そこにデザイナーが自分のやりたいことをどれだけ盛り込むかというイメージです。
▲ガンランス、スラッシュアックス、チャージアックスといった可変武器の基本デザインは、実際に変形できるような構造で各パーツが作られている。ギミックが動く瞬間に注目してみよう。 |
――ほかに武器デザインでこだわっている点は?
藤岡:本作では、すべての盾の裏をデザインしています。今までの武器は、開発当初こそ腕を通すベルトを着けていたのですが、ユニークなものになると何も作らなかったりしたんですよ。ただ、そうすると『MHW』では少し目立ってしまいます。ベルトで止めているはずの部分にベルトがないと、盾が浮いて腕に付いてしまうんです。そういった見えない部分で、構造上の説得力を失わないように注力しています。
――武器や防具のなかで、気に入っているシリーズがあれば教えてください。
藤岡:ヴァルハザク装備のほかだとボーン装備ですね。ディテールがかなり変わっていて、バサっと毛皮を着ている感じがカッコいいんですよ。本作では、ディテールのしっかりした防具がとくに好きですね。
山田:自分はリオレウス装備です。今までのシリーズを踏襲した、ハイブリッドなデザインになっている点が気に入っています。造形自体はシンプルで、なじみ深いものですが、細部に魅力のある防具ですよ。
藤岡:今回のリオレウス装備のテーマは、初代『MH』のレウスシリーズのリメイクですね。シルエット自体は初代のものですが、可動する部分のディテールなどを細かく描き直しています。リオレウス装備は、ファンにとって思い入れのある装備だと思うので、本作でも感情移入しやすいようにリオレウス装備のレベルデザインや入手タイミングを設定しています。
▲初代『MH』と『MH3(tri-)』以降のデザインがハイブリッドした、懐かしくも新しいリオレウス装備。プレイヤーのハンター歴によって、受ける印象は異なったものとなるだろう。 |
河出:自分の場合はハンター装備ですね。検証期間も含めて最初に作った装備であり、苦労をともにしたという点で思い入れがあります。配色も好きですし、ストレートにカッコいいなと思います。よく見るといろいろな素材が使われていて、多彩な装備を制作するうえでの基礎がすべてつまっているんですよ。
藤岡:調査団の紋章など、『MHW』ならではというパーツが、ハンター装備にはいろいろ盛り込まれています。
――装備だけでなく、キャラクターの作り込みも変化しました。とくにキャラクタークリエイションは、かなり細かな部分まで作り込めるようになりましたよね。
河出:キャラクタークリエイションでは、かなり自由にハンターの顔を設定できます。ただ、あまり自由度が高いとユーザーさんが難しいと思ってしまうので、ある程度制限をかけつつ、十分な自由度でキャラクターを作れると思ってもらえるラインを目指しました。
――本作はワールドワイドで発売されていますが、国ごとのキャラクターの好みはどう反映させたのでしょう?
河出:最初にいろんなCGアニメとかフィギュアなどのキャラクターを「シリアス気味でデフォルメされている」とか「コミカルに振り切っている」といったように区分けして、分布図のように配置してみました。そこから日本のキャラクターは分布図のどこにいて、欧米のキャラクターはどこに位置しているかということを割り出し、自分たちが目指すラインを決めていきました。
藤岡:ハイエンドのゲームのキャラクタークリエイションというと、欧米のプレイヤーが好むようなキャラクターに行きがちです。ですが、本作は日本の人たちにも遊んでほしいタイトルなので、分布図で真逆にいるようなキャラクター造形もキャラクタークリエイションに落とし込むようにしました。
河出:目の形状や鼻の形を細かく調整できる海外のタイトルがありますが、本作はクリエイトした顔が表情を付けてアニメーションするので、あまり大胆に調整できると破綻してしまいます。そこで、パーツの位置調整には制限をかけつつ、選べるパーツの種類を増やしてバリエーション豊かなクリエイトができるようにしました。
藤岡:目の高さなど、パーツの位置を少しいじれるだけでかなりキャラクターの印象は変わります。プリセットがいくつかあるのに加え、自分の好みを反映しやすいようにグラフィッカーの間でアイディアを出しながら、必要なパーツを補完していきました。
河出:表情を選べるようにしたのも補完の1つですね。例えば渋いおじさんのキャラクターが喜怒哀楽の表情が豊かだと興ざめする人もいるでしょう。そういった人のために、ある程度抑えめの表情も用意しています。
――ほかにキャラクターでこだわったポイントは?
藤岡:顔に合わせた頭装備の調整です。顔のフォルムに合わせてアゴの留め紐の位置が変わるといった調整も行っています。髪も頭装備をかぶると消えるのではなく、頭装備のなかできちんと押さえつけられているんですよ。
河出:同じ頭装備を身に着けたとしても、基本的に隙間からのぞく髪型は異なるものになっていますよ。
▲細かなパーツを選べ、自由度が大幅に増したキャラクタークリエイション。リアルだからといって西洋に寄りすぎず、日本のアニメのようなキャラクターを作り出すことも可能だ。 |
――NPCも衣装がオリジナルですよね。1つ1つ作られたのでしょうか?
河出:すべてほかにはない一品物です。
藤岡:いっさい使いまわしていないので、NPCの装備だけでかなりの容量を裂いています。もちろん顔もそれぞれのNPCオリジナルのものですし、身に着けている手帳などの備品も個々のNPCだけのために作ったものです。
ですから、固有のキャラクター専用の処理なんてものもあります。それだけの容量を裂いて苦労しているぶん、なにげない会話でも自然な表情を作れるようになっており、これまで以上にNPCごとのキャラクター性を強く出せたと思いますね。
――あとは食事シーンのこだわりもすごいです。めちゃくちゃウマそうに仕上がってますね!
藤岡:イベントカットで登場する食事に、食事場やキャンプで食べられる料理。そのすべてにこだわっています。「今までよりもおいしそうな食事がいい」と、スタッフに何度も言っていました。
しかし、開発が進んでゲームの流れやイベントシーンなどを映像で見る機会が増えても、まだそこに登場する食事がおいしそうじゃなかったんです。「食事のデザインはいつ完成するの?」と聞くと「そろそろ完成予定です」と言う答えが返ってくる。
そこで「食事担当全員集合!」と声をかけて「この食事、全然おいしそうじゃないから、もっとプレイヤーが食べたくなる表現にして欲しいデザインに」と、開発終盤にもかかわらず、何度も打ち合わせをしました(笑)。
河出:あのときの藤岡ディレクターは熱かったですね。「肉に照りが足りない! もっと照りを!」とか「柔らかさを感じさせる自然な揺れも!」とか。終盤のゲーム開発の打ち合わせとは思えないほど、アツイ檄が飛んでいました(笑)。
さらに今回は、モンスターのコンセプトなど、さまざまな要素から形作られる装備のデザイン。その一部を紹介していく。
▲アンジャナフ装備(男)。5期団のエンブレムや腰のベルトの下のデザインなど、細かいところにもこだわりが見られる。 |
▲アンジャナフ装備開発案の1つ。完成稿が騎士なら、こちらはワイルドな戦士といったところ。アンジャナフの力強さが色濃く現れたデザインだ。 |
▲プケプケ装備(女)。皮系の素材が中心の防具で、胸や腕、脚などがアシンメトリーなデザインの防具。女性用は、ゴーグルが動物の耳のように配置されている。 |
▲リオレウス装備(男)。これまでのリオレウス装備が組み合わさったようなハイブリッドなデザイン。いくつもの金属板を組み合わせて胸部や腕部が形作られているのがわかる。 |
▲オトモアイルーの装備は、種類によってデザインの作り方が異なる。アロイ装備などはハンターと同じテーマでデザインされているが、アンジャナフ装備はアンジャナフをデフォルメしたようなデザインだ。 |
Horizon Zero Dawn(TM) (C)2017 Sony Interactive Entertainment Europe. Developed by Guerrilla.
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