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2018年5月13日(日)

【BitSummit】『がんばれ森川君2号』を作った森川氏が語る、今後のゲーム制作におけるAIの可能性

文:電撃PlayStation

 5月12日、13日の2日間にわたって京都市勧業館みやこめっせで開催された、日本最大級のインディーゲームの祭典“BitSummit Volume 6”

 その会場で行われた、SIEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏と、グラフィック・クリエイター/AI研究者の森川幸人氏による“AI(人工知能)”をテーマにしたトークイベントをレポートする。

BitSummit Volume 6

 森川氏は『がんばれ森川君2号』や『アストロノーカ』などのゲームのほか、テレビ番組『ウゴウゴ・ルーガ』など独創的な作品に多数携わってきた。現在では、日本初のゲーム専用AIの会社“モリカトロン株式会社”を設立している。

 まず、吉田氏に“一般的なAIとゲームAIのちがい”について聞かれた森川氏は「普通のAIは“正しい”を追求していますが、ゲームAIは“楽しい”という、客観的に判断が難しいものを追求しています」と回答。

 また「ゲームAIのなかで最も難しい問題は、高性能なマシンサーバーに膨大なデータを入れ、時間をかけて処理する普通のAIとちがい、ゲームAIはそれよりも性能が低いゲーム機で、瞬間的に処理しなければいけないところにあります」とのこと。

 さらに“スクリプトとAIのちがい”について聞かれた森川氏は「スクリプトは書いたとおりにしか動かないという限界がありますが、AIは自分で動きますのでプランナーが考えなかったことも行う。生き物みたいに予測できないので作っていて楽しい」と語っていた。

BitSummit Volume 6

 ほかにも「AIが、開発者が発見できなかった絶対安全な場所を見つけて、そこから攻撃を行うような事態が起きたことがあります。こういう問題点を見つけてくれるのもAIを使う利点です」と森川氏は語り、AIがゲームのデバッグとしての役割を果たすこともあるという。

 その話題に合わせ、吉田氏は「私も『Horizon Zero Dawn』制作時に、不具合を見つける用途で“ボットAI”をフィールド上に走らせていた。AIはずっと働くし、給料を上げてとかそういうことも言いません。自主的に働くこともないのですが(笑)」と、制作秘話を語った。

 さらに、オンラインゲームのチート行為をAIが見つけてくれたり、ユーザーデータの分析に役立ったりと、AIは開発面でも大きな助けになっているそうだ。

BitSummit Volume 6

 ちなみに今、森川氏がとくに興味を示しているのは“デジタルキャラクターにAIで命を吹き込むこと”だという。「ゲームはこれまでグラフィックのリアルさを追求してきたため、キャラクターの心が置き去りにされてきた節があります。近年は、技術の進歩により、AIも人のようにふるまえるようになりつつありますので、今後はAIで心のリアルさを求められる時代になってくる」とのこと。

 加えて、吉田氏に「誰でも気軽に“AIを使いたい”と依頼できるようになる日は来るのか」と聞かれた森川氏は「以前と比べてだいぶラクになってきています。また“モリカトロン”は今後、ゲームエンジンの“Unity”のようなツールのAI版を当社で作っていきたいと考えています。そうすることで、自社では気づかなかったAIの使い方を見せてもらいたいという想いがあるからです」と、今後の展望を述べた。

BitSummit Volume 6

 最後に「AIは、インディーのような個人のゲームアイデアを再現するような場とすごく相性がいいです」と語る森川氏に対し、吉田氏が「インディーなら、AIをガツンと使った独創的なゲームもできますよね。ぜひ来年の“BitSummit”では“森川さんにやってみろ”と言ってくれるようなチームを募集したいですね」と締め、トークイベントは幕を閉じた。

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