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2018年5月20日(日)

【電撃PS】アニメ『ペルソナ5』やドラマ『コンフィデンスマンJP』など。エンタメ雑食な山本正美氏コラム

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.661(2018年4月24日発売号)のコラムを全文掲載!

第130回:春ウララのアニメやドラマ

 最近、京極夏彦さんの「ヒトごろし」という小説を読みました。何やら物騒なタイトルですが、土方歳三を主人公に新選組誕生の経緯から終焉までを描いた内容で、「人を殺す」という事象に深く執着する、これまでの土方にはあまりないイメージのキャラクター性を通底させた物語で、分厚い本だったのですが興味深く一気に読了しました。

 相変わらず歴史モノに触れることが多く、大河ドラマの「西郷どん」や、同じNHKの「歴史秘話ヒストリア」が毎週の楽しみだったりもするのですが、ふと考えると、昔から歴史モノが好きだったのかといえばそんなことはなかったんですよね。むしろ、10代から20代前半のころは、どちらかといえば「嫌い」でした。

 なぜなのかは判然としないのですが、事実として証明されていることをわざわざ振り返る面白さがわからなかった、ということなのかもしれません。それが、きっかけはよく憶えていないのですが、20代後半にたまたま読んだ司馬遼太郎さんの「竜馬がゆく」に大ハマりして、それからは楽しめるものの幅がガラッと変わった気がします。

 ほら、子どものころに嫌いだった食べ物も、大人になると好きになったりするじゃないですか。椎茸やピーマンとか小さいときは本気で大嫌いでしたが、30歳越えてからはまあ美味しいのなんの。そんな感じで、味覚同様、“楽しみ覚”も変化していくので、改めて、食わず嫌いは人生に損をもたらすのだなあと思ったりもしますね。

 さて、歴史モノデビューは遅かった僕ですが、基本的には「エンタメ雑食」が身上。4月も終わりに近づき春アニメや春ドラマが百花繚乱な様相で、毎日があれこれ楽しい日々。これを書いているタイミングではまだ1話目のものが多いですが、ちょっと感想をいくつか書いてみようと思います。

 「ピアノの森」第1話。一色まことさん原作、同名漫画のアニメ化。天才ピアニストの才能開花が気持ちいい傑作で、原作は僕も大好きな作品です。アニメ初回、初っ端シーンのホールが3Dモデルで作ってあり、なぜ?  と思うや否や、なるほど、その後に続く運指までを再現するピアノ演奏の表現にはCGが必要だったのだな、と思いました。

 通常のアニメでは考えられないくらい、演奏者の指が滑らかに動く動く。思わず「うおお」と声をあげてしまいました。音楽をテーマにしたアニメだと、近年ではジャズシーンをカッコよく描いた「坂道のアポロン」がありますが、今後ピアノというひとつの楽器に振り切ってなおどう演出し続けるのか、非常に楽しみです。

 「ペルソナ5」第1話。ゲームはもちろんクリア済み。その、ゲームのオープニングからの流れをうまくトレースしているなあと思いつつ、しかし改めて浮き彫りになるのは、ゲーム版の偉大さです。ゲームという、インタラクティブな体験を通すからこそ感情に入り込んでくる、あの「異世界へ誘われる感覚と日常の安心感」の相互作用は、インタラクションを通さないアニメにおいて、伝わる感激は薄かったと言わざるをえません。

 いずれにしてもまだ1話。逆に、ゲーム的なわずらわしさから解放されたアニメという表現様式において、どうストーリーが演出されるのか、今後に期待が高まります。

「コンフィデンスマンJP」第1話。いわゆる月9枠、大好きな「リーガル・ハイ」の脚本家、古沢良太さんの新作です。しかも心躍る詐欺師モノということで楽しみにしていたのですが、いやー、スケール感を出そうとしたのか、ちょっと雑さが目立つ1話目 でした(詐欺師モノなので多くは語れませんが)。

 2話目以降に期待しつつ、思うに主役の一人である東出昌大さんは、役柄のキャラ付けというのもありますが、コメディにはあまり向いていないのかも。しかし立ち姿とか美しく、映画版「桐島、部活やめるってよ」の役柄とか本当にカッコ良くて存在感はピカイチだったので、ここでコメディセンスも磨かれると凄い役者さんになりそうな予感です。

 「黒井戸殺し」3時間のスペシャルドラマ。アガサ・クリスティー原作「アクロイド殺し」を三谷幸喜さんが料理するという、ある種夢の競演ミステリー。僕も若いころ原作を読んでその結末に至るアイデアに驚いたクチですが、きっとドラマ版が初だった人は同じように驚いたでしょうね。

 というくらい、平易でテンポ感あるドラマに仕上がっていました。知っている自分が知らない人を想像して驚ける結末を用意するって、これ結構至難の業だと思うんですよね。三谷さん、さすがです。

「ゴールデンカムイ」第1話。恥ずかしながら原作を読んだことがなかったのですが、設定がめちゃくちゃワクワクしますね。原作大人買い確定です。熊退治って、いくつかの漫画でも扱われていますがたまらなく魅力的。しかもそこにミステリアスな犯罪 臭も加わって、期待度倍増。なぜ明治のあの時代が舞台なのかは、きっと理由があるでしょうから漫画を読んで知ることにします。

 その他まだまだありますが書ききれない! また機会があれば!

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.662』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2018年5月10日
■定価:694円+税
 
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