News

2018年5月22日(火)

アニメ化も決まった『殺戮の天使』や『LA-MULANA 2』など、注目タイトルの開発者にインタビュー!

文:電撃PlayStation

 京都市勧業館みやこめっせにて行われた国内最大のインディーゲームイベント“BitSummit Volume 6”。同イベントに出展していたPlayismのブースでは、話題のインディーゲームを多数展示していた。

『bitSummit』

 そのなかでも、この夏、ついに発売となる期待のアクション『LA-MULANA 2』と、アニメ化も決まった『殺戮の天使』をピックアップ! 会場でお会いしたNIGOROの楢村匠氏と、株式会社バカー代表取締役社長の斉藤大地氏にお話をうかがった。

 なお、同ブースの隣では、KADOKAWAのツクールシリーズ最新作『アクションゲームツクールMV』も展示。国内外を問わず新たな名作が生まれるきっかけとなりそうだ。

『LA-MULANA 2』楢村匠氏インタビュー

『bitSummit』
『bitSummit』

──発売時期が2018年の夏に決まりましたが、完成までの目途が立ったということでよろしいのでしょうか?

楢村匠氏(以下、敬称略):はい。また、ボクが入院し直すことでもない限り、もう延びることはないと思います(楢村氏は昨年の7月、手術のため入院されていた時期があった)。

──今回、ゲーム冒頭から遊べるバージョンが展示されていましたが、プレイされた方の反応はいかがでしたか?

楢村:自分たちだけのブースではないので常に見ていたわけではありませんが、やはり前作を遊ばれていた方と初めてプレイされる方では動きが全然違いました。『LA-MULANA』を遊んだことがない人でも迷わないように、前作に比べるとかなり誘導しているのですが、それでも迷っている人はいますね。

──最初から必須アイテムのスキャナを買える資金を所持していますし、確かに前作と比べるとかなり誘導されているように感じました。

楢村:前作のように序盤から放り投げられる感じは極力減らしました。もちろん、ここからさらに矢印でガイドをつけたり、通れない場所に看板をつけたりして誘導することもできますが、そこまですると無粋なので今のままで行くと思います。

──同じ村から始まるのに、前作とは遺跡や村の様子が全然違っているのがおもしろいですね。あれは、前作のファンに向けたサービスですね。

楢村:そこは狙いの1つです。前作を遊んだ人が、どういった気持ちで見るのかを考えて変えました。

──自分は前作を遊んでいたので感慨深かったです。とくに、長老の変遷には、思わず笑ってしまいました。

楢村:長老は、前作だとそこまでヘイトを集めるキャラとして作ったつもりはなかったんですよ。結果的にはユーザーのヘイトが長老に集まってしまったので、それならば、いっそのこと完全にヒールに回ってもらおうと(笑)。

『bitSummit』

──『LU-MULANA 2』の主人公は女性ですが、主人公を娘に交代した理由を教えてください。

楢村:最初は、チーム内でエイプリルフールのネタ程度に「続編を出す場合は、主人公の娘を主役にしよう」という話をしていました。それをボクが真に受けて、絵まで起こして、もうこれにしようと(笑)。硬派なゲームが好きなプログラマー陣からは「本当に女主人公にするの!?」と引かれてはいたのですが、ボクのなかではもう決まっていました。

 自分は絵描きでもあるので、女性を描いている方が楽しいというのも理由ですね。昔は、意外と女性が主人公のアクションゲームって多かったじゃないですか。アーケードやファミコンソフトにはあったのですが、ボクが触れていたレトロPCゲームにはあまりなかったんですよ。それもあって、動きまくる女性主人公は作っていて楽しいですね。

──個人的には、ずっと同じ主人公で行くと思っていたので意外でした。

楢村:これもデザイナー視点の発想ではあるのですが、前作の主人公は服もグリーン系で帽子をかぶっていて、さらに鞭を持っていて……と本当にインディージョーンズのイメージそのままの格好なんですよ。

 アマチュアの時に作ったので、何も考えずにそれっぽいデザインをしてしまったので、あまり自分でキャラクターデザインをしたという印象がないんです。今回は、初めて新規に『LA-MULANA 2』のためのデザインとして描いた主人公になるので、ボクとしてはより愛着があります。

──ほかにも『LA-MULANA 2』で、前作までと大きく変わったところはありますか?

楢村:前作の知識があるほうが、より楽しめるところですね。前作を遊んでいない人が存在するのは続編物の定めではあるのですが、今は“続編”という言葉があまり使われなくなっています。“シリーズ物”という表現で前作を遊んでいなくても遊べる物が多いのですが、うちの場合はどうしても“続編”という形にしたかったんです。

 前作の舞台が登場して、そこが変化しているのを見たときの感情は続いていないと得られないものがありますから。もちろん、前作を知らなくてもゲーム中のスキャナで調べていくことでなんとなく設定がわかるようになっていますし、ゲーム中でもフォローを入れています。ただ、強制的に読ませてしまうと前作を遊んだ人が退屈になってしまうので、前作にあったメールのように読みたい人が読める。自分の意志で選べるという形をとりました。

 さすがに、今から買うと『LA-MULANA 2』の発売までに終わらないかもしれないので、無理に今すぐ買って遊んでくださいとまでは言いませんが……(笑)。前作を知っていると、より楽しめます。

『bitSummit』

──続編ということで、ゲーム全体のボリュームも気になりますが……。

楢村:前作と、ほぼ同じボリュームです。続編なので前作から減ってしまうとガッカリされてしまいますし、かといって増やしてしまうと作業量的にボクらが死んでしまいますから、妥当な部分として前作と同じボリュームを目指しました。

 遺跡に関しては前作と同じ場所もありますが、新規の遺跡も用意しています。もともとは前作のデータを流用して楽に作り直そうと考えていたのですが、途中からUnityで作り直すことになったので新しくしてしまおうと。

 前作と同じ動きや仕掛けを再現しようとはしたのですが、制作しているうちに再現することよりもUnityになったことで新しくできることをやろうと。回転する床や部屋ごと傾ける仕掛けなど、前作になかった演出や仕掛けでも『LA-MULANA』っぽく使えると思った物も取り入れていますし、気を抜くと潰されてペシャンコになるような仕掛けも健在です。

──それは楽しみです。本作は発表から配信までに4年以上かかっていますが、新しい部分などを取り入れることで制作に時間がかかったのでしょうか。

楢村:時間がかかった理由は老衰です(笑)。今思い返してみても、のんびりしていた期間がないんですよ。常に全力で走り続けてこれだけかかったということは、老衰としか言えません。

 後出しで申し訳ない話ではあるのですが、最初のkick Starterプロジェクトでは2015の発売を予定していました。これは、発売未定で始めたプロジェクトは、いつ出るかわからなくなって成功しないという前例があったのと、当時はUnityで作り直すつもりはなくて、前作を改修する予定だったので2015年に間に合うと思っていたんですよ。

 あと、当時はマヤの予言という“2015年に世界が滅びる予言”のブームがあったので、アレに合わせられればカッコいいと思っていました。結局、そこも過ぎてしまったのでゲーム中では「あのとき、本当は世界が滅びる予定だったけど、前作の主人公が遺跡をクリアしたから無事だった」という話になっています。

──ちなみに、制作人数は前作と同じですか?

楢村:ほぼ変わっていません。前作を作った3人にヘルパーとしてプログラムをやってくれている方を合わせると、コアメンバーは4人ですね。あとは、そこに宣伝担当とデバッグとして何人かヘルパーを頼んでいます。それでも足りないので、メンバーの個人的な知り合いにデバッグをしてもらっていますが、コアメンバーとしてやっていることはまったく変わっていないです。

『bitSummit』

──すぐにというのは難しいかもしれませんが、PC版に続いてコンシューマでの展開も期待したいところです。

楢村:このような話を堂々とするのもどうかとは思うのですが……どうしても複雑なルートを通れるゲームなので、完成後にもバグが残ってしまうと予想しているんですよ。前作でも、予期せぬルートを通って動かなくなるバグがあったので、それを予防するという意味でも、まずはPC版を出して、しっかり遊んでもらってからコンシューマに展開したいと考えています。

 PC版のユーザーをデバッガー代わりに使ってしまうような発言に聞こえるかもしれないので本当に申し訳ないのですが、今はコンシューマで出すハードルが下がったとはいえ、アップデートにかかる手続きや期間はPCに比べてもかなりかかってしまうんです。ですので、PC版のアップデートを反映して手数が増えないようになってからコンシューマ展開ができたらと考えています。

 今回Unityで制作したのも、いろいろなコンシューマハードへ対応できるようにという狙いがあるので、出せるハードでは出していきたいです。ただ、単純に言えばUnityで移植できるものは動くはずですが、今回はPC版でも要求スペックが高くなってしまっているので、あまり古い機種だとUnityに対応していても難しいかもしれません。

 PS Vitaでは『LA-MULA EX』が発売されているので、できれば前作と合わせてどちらも遊べる機種として出したいとは考えているのですが……。

──2011年のハードなので、なかなか性能的には難しいところがありますね。ちなみに、価格はどれくらいを想定されているのでしょうか。

楢村:価格は未定ですが、2000円は超えてしまうと思っています。今のSteamはセールが多く、Steam Directで誰でもゲームを出せるようになった反面、ゲームの規模と価格帯で価格破壊が起きているんですよ。

 たとえば、500円以下で出した作品は小規模で、あまり手間がかかっていない物という印象を持たれやすいんです。しっかり手間をかけたものだという証明のためにも、安い値段で出すのは良くないと。あとは、かけた年数が年数なので前作よりは多少値段が上がると思います。

 前作のPC版は1,480円なのですが、これはWiiウェアで初めてリリースしたときに当時の最高値が1,500円だったのが理由です。心の側では1,500円だと安すぎると思っていたのですが、そこよりは少し安い値段にした記憶があります。

──今は2000円前後のインディーゲームも増えたので、手間がかかったゲームはそれくらいの価格で買う印象がついていますね。

楢村:規模的にも、そのクラスの値段で出しているものが多いですね。今はパッケージ物でも、1、2年経つとストアで2000円代になっていますから、これくらいの価格が妥当だと考えています。

──インディーゲームはもともと安いのに、セール時で安い時を狙って買う人も増えていますから、あまり安くしすぎるのも考えものかもしれません。

楢村:そうですね。発売されたらすぐに買いたいという人は当然すぐ買っていただきたいですし、一部にセールを待つという人がいるのも事実です。こちらとしては、セールが待てなくなるくらいにバンバン魅力を振りまいていこうと思っているので、そこはセールまで待つのか。我々に買わされてしまうのかの勝負ですね(笑)。

 今はPlayismさんもパッケージ展開をされてノウハウを積んでいますし、ボクらのタイトルがそれに乗れるかどうかはわかりませんが、パッケージ化もできればしたいと考えています。さすがに、ショップにズラリと並ぶことはないと思いますが、インディーを取り巻く環境がいろいろと変わったので、前作よりもやってみたいことは多いです。

──ユーザーとしても、前作とセットの形でパッケージが出てくれると理想的なのですが……。

楢村:そうしたい気持ちもありますが、今のコンシューマハードで前作を動かせるようにするのがたいへんで……。前作はUnityで作っていないので、移植する場合はイチから作り直しになります。自分たちでは手が回らないのですが前作の移植をしたいという会社があれば、そういった形でも出せるのではないでしょうか。

 今のところ、1つの機種で遊ぼうとするとPCという選択肢しかないのは申し訳ないのですが、開発に時間がかかるチームなので世間のハードの移り変わりやローンチに合わせるということが全然できていないんです。

──その代わり、PC版は今年中に出せるということで楽しみにしています。

楢村:制作の面でいえば、すでにもう全部動いている状態です。あとはデバッグなどを残している状態で、絵や敵のバランスが未調整な物を残りの期間でどこまで完成して仕上げるか、修正できるかという段階ですね。

 『LA-MULANA 2』の制作はkickstaterのプロジェクトを始める前から動き出しているので、じつは5年以上かかっているんですよ。前作のwiiウェア版を作り始めたのが2009年なので、10年間ずっと『LA-MULANA』シリーズにかかわっていることになりますね。さすがにもう、この次は『LA-MULNA』を作らないと思います。最後の『LA-MULANA』になると思うので、悔いのないように楽しんでいただけるとうれしいです。

――ありがとうございました。

『bitSummit』

『殺戮の天使』斉藤大地氏レビュー

『bitSummit』

──『殺戮の天使』はフリーゲームから始まり、コンシューマ版やアニメ化まで展開する作品になりましたが、どのような経緯で展開が広がっていったのでしょうか。

斉藤大地氏(以下、敬称略):もともと、若い人の間で高い人気があった作品なんですよ。作者である星屑KRNKRN(真田まこと)さんからお預かりした作品を、ドワンゴさんのニコニコゲームマガジン(現:電ファミニコゲームマガジン)で公開したところ、そこでも非常に高い人気が出てメディアミックスのお話をいただき、ノベライズやコミカライズを展開できました。

 そうしたメディアミックスでの人気も跳ねて、おそらく今では日本の中高生のなかでもっとも有名なインディーゲームの1つになったと思います。ゲーム実況などを通して、強く広まった印象もある作品ですね。

──なるほど。コンシューマ版は、基本的に移植という形になるのでしょうか。

斉藤:はい。もとの作品を広くプレイしていただくことが目的なので移植の形になります。もちろん、4:3だった画面は16:9に変えていますし、アプリ版で追加されたオマケ画像などは収録する予定です。

──発売時期は夏ということで、ちょうどアニメも放映されますね。

斉藤:はい。現状でほとんど完成しているので、あとは最終調整とデバッグくらいです。アニメ版が放映されるころには購入できるのではないでしょうか。

──ちなみに、ツクールのゲームがコンシューマハードに移植されるのは初めての試みで前例がないことですが、ここまでヒットした理由はどこにあると思いますか?

斉藤:ツクールのゲームが移植されること自体がメルクマール(指標)ですし、中高生のころからツクール制のゲームが好きだったのでうれしいですね。

 インディーゲームが、地上波の1クールアニメになるというのも初なので、いろいろと前例がないことだと思います。ここまでヒットしたのは、やはり作者のストーリーテリング力と、キャラクター造形力にあるのではないでしょうか。

――ありがとうございました。

『bitSummit』

 Playismブースには、ほかにも文章を入れ替えて他人の運命を操っていくビジュアルノベル『Will ‐素晴らしき世界‐』や、フリーゲームで人気を博した『箱庭えくすぷろーらもあ』、ホラーゲームのPS Vita移植版『NightCry』、PCで有名なアクションシューティング『ケロブラスター』といったタイトルが出展。7周年を迎えたPlayismとして、気合の入ったラインナップとなっていた。

『bitSummit』
▲2015年の東京ゲームショウでも出展されていた『Will ‐素晴らしき世界‐』。5月末に正式な日本語版がリリースとなる。

⇒2015年の東京ゲームショウの記事はこちら

『bitSummit』
▲フリーゲームながら異常なまでの完成度で話題を呼んだ『箱庭えくすぷろーらもあ』。こちらもフリーゲームから強化されて正式に配信が開始される。

将来の名作がここから生まれる!? 『アクションゲームツクールMV』

 KADOKAWAブースでは、今夏発売予定の『アクションゲームツクールMV』で制作された作品を展示。実際に試遊することができたが、その完成度はツクール制のサンプルゲームとは思えないほどのクオリティ。

『bitSummit』

 実際に説明されなければ、ほかのインディーゲームと同様に展示された作品だと思ってしまうほど、アクションの挙動も攻撃のエフェクトもしっかりしたものになっていた。

 また、会場には物理演算を使って遊ぶバイクゲームも展示されていた。これは、ユーザーが物理演算に影響する始点と影響する場所を設定するだけで簡単に作ることができるらしく、デバッグメニューでの確認も容易なので、複雑な物理演算のゲームなども作れそうだ。

『bitSummit』
『bitSummit』

 ほかにも、本格的なピンポールなどが遊べるなど、いわゆる純粋なアクションではないゲームも作れるとのこと。会場にはなかったがローカルマルチプレイのゲームも制作できるなど、さまざまなニーズに対応しているようだ。

『bitSummit』

 『アクションゲームツクールMV』はアーリーアクセスで今夏に配信予定。価格的にも発売済みのツクールシリーズと同様の価格帯を予定しているとのことだ。これまでと同様に、規約を守れば制作した作品の販売および配布も可能になっており、アクションゲーム制作に挑戦したい人にオススメのツールとなっている。ツクール制の素晴らしいインディーアクションゲームが生まれることに期待したい。

(C) ASTERIZM CO.,LTD. Game Production Division NIGORO
(C)vaka Inc. All Rights Reserved
(C)KADOKAWA CORPORATION 2018
※画面は開発中のものです。

関連サイト