2018年6月12日(火)
ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回は、PC用ソフト『BATTLETECH(バトルテック)』のプレイレポートをお届けします。
本作は、人類が宇宙に広く進出し、巨大ロボット“バトルメック(以下、メック)”が戦場の主役となった遠未来を舞台に、星間国家同士の戦争を描いたSF作品『バトルテック』のゲームシリーズ最新作です。
『バトルテック』は、ボードゲームをオリジナルとして、TRPGや小説、ゲームなど、多数の作品群によって世界が広がり、その壮大な歴史がつづられてきました。日本だと、メックを操縦して戦場を体験する『メックウォーリア』シリーズや、グループSNEの翻訳した作品などが比較的知られているかもしれません。
なお、本作『BATTLETECH』は、ランス(小隊)を指揮して戦うターン制シミュレーションゲームになっています。開発を行ったのは、『バトルテック』の生みの親であるJordan Weisman氏が率いるデベロッパー、Harebrained Schemesです。
同スタジオは2015年にKickstarterを行って、目標額の10倍を超える270万ドル以上の支援を集めるに至りました。PVPや充実した内容を持つキャンペーンを搭載した製品版は、先日同スタジオの買収を発表したParadox Interactiveが今年4月にリリースしています。
主にメック同士で戦うターン制タクティカルバトルを軸に、1人用のキャンペーンでは傭兵部隊のマネジメントや国家の内乱を描いたストーリーを楽しめます。好きに惑星を移動して、傭兵としてのミッションを受けられる自由度の高さも魅力です。
▲キャンペーンシナリオは、主に3025年が舞台。中心領域と辺境の堺に位置する小国Aurigan Coalitionのクーデターに端を発した戦争が描かれます。 |
▲辺境との堺が舞台とはいえ、ゲーム内で移動できる範囲は広く、数多くの星々が存在します。ある程度シナリオを進めれば、一部の惑星を除いて自由に移動可能です。 |
戦場で鹵獲(ろかく)したメックパーツや武器によって戦力を増強し、パイロットであるメックウォーリアを育て、好みの組み合わせでランスを編成して戦いに挑む。そのおもしろさは、きっとロボット好きのハートを刺激するでしょう。
▲ショップでもメックを購入できますが、主な入手方法は、撃破したメックのパーツをサルベージして、機体を完成させること。バトルの最大のモチベかもしれません。 |
とはいえ、「『バトルテック』の新作を待っていました!」という熱いファンは既に本作を購入していると思われるので、本記事では、ロボットが好きな人に向けて、ロボットゲームとしての魅力や、どのようなゲーム体験を楽しめるかをお伝えしていこうと思います。
本作『BATTLETECH』では、30種以上(※派生型を含めれば50種以上)のメックが登場し、4機編成のランスをミッションに送り出せます。
メックのカスタマイズ要素もあり、搭載する武器や装置を変更をしたり、装甲を減らしてより多く武器を積んだりすることもできます。事前のカスタマイズ戦略やランスの編成は、もちろんバトルの戦術に大きな影響を与えます。
▲出撃前の編成では、どのメックにどのメックウォーリアを搭乗させるかも自由に選択可能。プレイスタイルや戦術など、各自のこだわりを発揮できます。 |
メックの重量は20トン~100トンと幅広く、その重さに応じて、軽・中・重量型および強襲型の4段階に分かれます。軽いクラスのメックほど戦闘におけるイニシアティブが高く、その値に従って行動順が回ってくるターン制であるのが特徴です。
▲イニシアティブが同じ値の場合は、自分で先に行動させるメックを選択できます。画像では3機のメックがイニシアティブ3で、指示するメックを選ぼうとしています。 |
無骨で金属の香りがしそうな外観のメックが、重厚な足取りで戦場の地を踏み、撃ち合いを繰り広げる様は、見ているだけでもロボット好きの心をくすぐること請け合い。
その舞台となるマップも、緻密な背景と起伏に富んだ地形で描かれ、そこにある独特な空気感とメックの重厚さが相まって、戦場のリアリティとゲームへの没入感を味わえます。
▲メックの重厚感を堪能できる本作。戦闘を繰り返すとテンポの遅さが気になりますが、アップデートによる改善が予定されています。 |
ちなみに、マップにはミッションの目的地が表示されるものの、素直に直進してしまうのは禁物。ミッション開始時に敵の位置がわからない本作では、迂闊に移動すると、開けた地形で戦いを強いられたり、多数の敵に囲まれたり、痛い目を見ることもあります。
そのため、初めに全体の地形をよく観察し、どの辺りで会敵するか、逆にどの地形で戦うのが自分に有利か、予測して戦術を立てることが重要になってきます。
また、敵部隊は各個撃破を狙ってくる傾向があるので、攻撃ばかりに目を向けず、防御行動も的確に使わないと、思わぬピンチを招くでしょう。
必殺技などの派手な要素を入れたゲームと比べて地味に感じるかもしれませんが、逆にプレイヤーの一手一手が着実に戦況を左右するのが、本作のおもしろさ。バトルの難易度は辛口ですが、SLGの“思考する醍醐味”をしっかりと味わえます。
▲マップの中でも特に重要なのが森林(FOREST)の位置。被ダメージを25%削減する地形効果があるため、可能な限り森林に位置取ってから攻撃するのがセオリーになってきます。 |
『バトルテック』らしい、そしてロボットのリアリティを感じるゲームデザインとして、腕や脚、頭に胴体など、メックの各部位に耐久値が設定されている他、機体に熱(HEAT)のパラメータが存在します。
各部位にはフレームと装甲の耐久値があり、装甲の下にあるフレームの耐久値がゼロになると部位破壊です。頭や胴体の中央部、または両脚を破壊できれば、そのままメックを無力化できます。
▲敵機の左胴体を破壊し、その影響で左腕も一緒に壊したところ。もちろん、部位破壊は味方のメックにも起こります。 |
▲攻撃する方向によってどの部位に命中しやすいかが変わる他、ランス共有の士気(MORALE)を消費して特殊攻撃を実行すれば、指定した部位に当たりやすくなります。 |
さらに、部位破壊に至らずとも、装甲を貫いた攻撃が、武器や装置を破壊することも。弾薬が誘爆するケースもあるので、単なる部位破壊システムに留まらない、リアリティを感じるシチュエーションに思わずニヤリとできるでしょう。
また、攻撃や誘爆、転倒の衝撃でコックピット内のメックウォーリアが怪我をすることもあり、最悪、メックという巨大な金属の塊が棺桶になってしまうことも……。
▲新人のメックウォーリアに経験を積ませようとしたところ、戦闘中の怪我であえなく死亡……。これでベテランが死ぬとなると、その悲しみは想像すらしたくありません。 |
▲上の戦闘の結果画面です。一番右が怪我で死亡したメックウォーリアです……。メックの頭や胴体の中央部を破壊されても、搭乗者が死に至るので要注意。 |
“熱”の概念については武器システムと直結し、攻撃の際、各武器に応じた熱が発生します。メックの発熱が一定値を超えるとオーバーヒートし、それを無視して熱ゲージがMAXになると機体がシャットダウンするので、バトルでは熱の管理が重要です。
武器の中でもレーザー系は熱が上がりやすく、実弾系は弾薬を必要とする代わりに、熱が上がりにくく相手の安定性(STABILITY)を崩しやすい長所を持ちます。
▲オーバーヒートしても攻撃を続け、シャットダウンしてしまった敵機。メックが灼熱してひどい有様に。 |
▲攻撃時は、画面右下のリストから、どの武器を使用するか個別に指示できます。熱の上昇を抑えたい時や弾薬を節約したい時などは、必要に応じてOFFにしましょう。 |
安定性もまたロボットらしさを表現しているシステムの1つで、機体がどのくらいバランスを保っているかという値です。一定値の衝撃(STB.DMG.)を受けるとメックが転倒し、行動順が回ってくるまで完全に無防備をさらします。
敵機が転倒した場合は狙う部位を指定できるので、ここぞとばかりに集中砲火を浴びせましょう! 逆に味方機が転倒した場合は袋叩きにあうので、機体の安定性は、ある意味で熱以上に注意を払いたいパラメータかもしれません。
本作はこのように、“巨大ロボであるメック同士が戦ったらこんなことが起きる”というリアリティが、細かなところまでゲームシステムに落とし込まれています。それがプレイヤーの想像力をかき立てるとともに、ロボットらしさを感じさせてくれる。没入感たっぷりのバトルを堪能できますよ!
▲動く的は当てにくいため、移動すると回避バフが付くシステムも。バフ・デバフもメックの状態や戦場のバイオームなどを反映して各種あり、戦闘の状況が細かくシステム化されています。 |
▲メックは格闘戦もできます。重厚な機体が繰り出すパンチや体当たりは、マニア心をくすぐる光景。発熱を抑え、相手のガード状態を剥がせるといったメリットがあります。 |
先に必殺技などの派手な要素はないと書いたものの、アニメ的な演出のそれがないというニュアンスで、実際には本作の世界観に沿った必殺技的な攻撃は存在します。
それが“Death From Above(DFA)”。直訳すれば“上方からの死”といった意味の言葉です。
DFAを実行すると、メックがジャンプユニットを使って跳び上がり、両脚で敵機を踏みつけます。……文章で書くと非常に地味な攻撃ですが、思い出してほしいのはメックの重量が20トン~100トンだということ。その重量が落下すれば、完全に凶器です。まさしく“死”に他ならない!
▲DFAを実行し、メックがジャンプユニットで跳躍! |
▲そのまま、転倒した敵機めがけて落下し……。 |
▲その超重量を武器に、落下するメックが敵機を踏みつぶす! |
おもしろいのが、攻撃の実行コマンドは射撃であればFIRE、通常の格闘であればATTACKと表示されるのに対し、DFAは“EXECUTE”であること。この単語は命令などを実行するという意味もありますが、処刑するという意味もあります。本作の中では、そのくらい圧倒的なダメージを誇る攻撃法です。
ちなみにDFAは諸刃の剣でもあり、落下の反動によって実行したメックの安定性が大きく崩れ、なおかつ両脚に相当なダメージを受けます。脚にダメージを受けた状態でDFAを使うと、そのまま脚が壊れることも……。なので乱用はできず、使う場面の限られたまさしく“切り札”となるでしょう!
ロボットらしさ、言い換えればメックのリアリティを感じさせてくれるバトルを体験できる『BATTLETECH』ですが、キャンペーンで行える傭兵部隊のマネジメントは、リアリティのあるゲーム体験やバトルのおもしろさを、より高めてくれる要素になっています。
例えば時間の概念。バトルでフレームが破損したメックや怪我をしたメックウォーリアは、修理や治療が必要です。修理や治療にはある程度の日数を要し、傷ついたメックやメックウォーリアは、戦場にすぐ復帰できるわけではありません。
▲ミッションに出撃すると、大抵の場合、1機か2機は修理する必要が出てきます。船のアップグレードを進めてMECHTECHを上げるほど、短期間で済むようになります。 |
▲メックウォーリアの治療はメックの修理に比べて時間がかかるため、管理が難しいところ。育てるほど給料が高くなるので、雇い入れる人数は頭を悩ませるでしょう。 |
しかもキャンペーンでは、メックの修理費やカスタマイズにかかる費用とは別に、30日ごとに傭兵部隊の維持費を払い続ける必要があります。つまり、何もしなければ資金が出ていくだけになる世知辛いシステムです。
そうなれば金を稼ぐために、ベストではない編成でミッションに挑む必要も出てきます。前述の通り、本作のバトルは辛口なので、予備の機体やメックウォーリアを投入すれば、そのぶん戦いは厳しいものに……。
けれど、その苦しい状況を乗り越えた時の達成感が、またたまらない快感! “つねに万全の状態で戦いに臨めるわけではない”というリアリティが、バトルのおもしろさを引き立てるエッセンスになっていると思います。
▲維持費としてかかるのは、船内設備やメックの管理費、メックウォーリアたちへの給料など。もちろん、戦力や設備を拡張するほど維持費は膨れます。 |
▲予備のメックでもミッションをこなせるようになると、収入が増えるはず。何より、戦力的なリソースを管理するおもしろさがあります。 |
なお、主人公の率いる傭兵部隊は“借金まみれで経営状況が火の車”という悲しい設定で物語が幕を開けます。
プレイでもそんな設定をなぞるように、毎月出て行く維持費に涙しつつ、戦力の増強と資産状況を天秤にかけ、苦しい資金繰りに頭を悩ませる体験ができます。そのジレンマも、マネジメントのおもしろさですが(笑)。
バトルとマネジメント、2つの要素が互いに影響し合うゲーム性は、“自分の傭兵部隊を率いている”という体験を強く感じさせてくれるでしょう。
▲シナリオに絡んだミッションは、報酬がかなり高め。資金に困った場合は、シナリオを進めるのも1つの手です。 |
母船のアップグレードやメックのカスタマイズ、メックウォーリアの育成も、マネジメントとバトルのおもしろさをつなぐ大きな要素です。どれもプレイヤー各自の好みやこだわりを発揮できる遊びなので、ある意味で一番、頭を悩ませ、ワクワクできるでしょう。
▲船のアップグレード画面です。船内設備の拡張は戦力の増強や効率的な運用に欠かせないので、この画面を見てからが、ゲームプレイの本番と言えるかもしれません。 |
メックのカスタマイズは、各部位に積める武器の種類が決まっているなど、メックが持つ特徴や制限はきつめです。ただその中で、どれだけ自分なりのこだわりを出せるか、それを突き詰めるおもしろさがあります。
同じ種類のメックでも、搭載する武器や装置によって、得意な距離、戦い方が変わってくるので、育てているメックウォーリアとの相性を考えながらカスタマイズすると、より楽しめるでしょう。
▲腕や脚を自由に付け替えることはできませんが、工夫次第で遠距離戦主体だったメックを、近距離戦主体の機体に……なんてことも。カスタマイズの奥深さはあります。 |
▲ある程度ゲームを進めると、プラス効果の付いた武器や、機体性能を変えるさまざまな装置を入手でき、サルベージとカスタマイズの楽しみが広がっていきます。 |
メックウォーリアについては、戦闘に出して生き残れば経験値を獲得でき、それを割り振って自由にスキル値を成長させられます。
スキルは4種類あり、いずれも最大値まで育てることは可能ですが、特定のスキル値に達すると取得できるアビリティは3つまでしか持てず、実質的にアビリティの取得順序が個性を分けます。アビリティの取り直しはできないので、計画的な育成を!
▲具体的には、スキル値8に対応したアビリティは最初に取った1つ、スキル値5で取得できるアビリティは2つまで、ということになります。 |
なお、6月~7月に予定されたアップデート#1が適用されると、雇ったメックウォーリアの外観やコールサイン、名前、ボイスを変更できるようになるとのことです。完全に自分オリジナルの部隊を組織したい人は、アップデートを楽しみに待ちましょう!
キャンペーンは、プレイヤーの分身として主人公のキャラメイクを行えます。顔の見た目を自分好みに作れるだけでなく、経歴や背景を選択することも可能です。もちろん、主人公はメックウォーリアとして戦場に出ることができます!
▲肖像画のカスタマイズ画面では、複数の項目についてタイプを選択し、好みの外観に近づけていくことができます。 |
キャンペーンで描かれるストーリーは、継承国家と呼ばれる5大勢力の版図である中心領域の外縁にあり、辺境との堺に位置する小国を舞台にした内乱です。統治者であった父が事故死し、その後を継ごうとしたカメア・アラーノが、戴冠式の日に叔父であるサンティアゴ・エスピノザのクーデターにあう……という出来事から物語は始まります。
▲彼女がカメア・アラーノ。父と一緒に母を亡くし、そこへ追い打ちをかけるように母の出自であるエスピノザ家から裏切られるという、波乱の運命をたどることになります。 |
主人公はそのクーデターの折、アラーノ家の近衛兵としてカメアを護衛する任務に就いていました。しかし、機体の故障によって任務を全うできず、脱出したところをコマンダーを失った小さな傭兵部隊に拾われます。
それから3年後の3025年。プレイヤーは主人公となって、借金で首が回らない状況の傭兵部隊を立て直すため、彼らを率いて戦うことに。そして、その運命はあのクーデターの日の続きと交わっていきます。
▲借金まみれな状況をクールに説明してくれるナビゲーターのスミレ。彼女の他に、主人公を拾ってくれた恩人のダリウスや、メックの面倒を見てくれるヤンといった仲間がいます。 |
なお、本作を開発したHarebrained Schemesは、『シャドウラン』をリブートしたRPG3作品を手がけたデベロッパーです。
会話の選択で主人公の性格を演出できたり、ランダムイベントでは選択肢によって結果が変わったり、キャンペーンにはRPGらしいエッセンスがほんのりと漂います。ロールプレイが好きな人は、その点も楽しめるでしょう。
▲星から星へと渡る途中、ランダムイベントが発生することがあります。この際、どうやって出来事を解決するかによって、よい結果や悪い結果を生むことも。 |
本作は、戦争を軸にしたシリアスな世界観とリアリティにあふれたゲームシステムにより、メックの“ロボットらしさ”をとことん堪能できるゲームです。
バトルとマネジメントが相互に影響し合うおもしろさも秀逸で、キャンペーンでは、オンボロ傭兵部隊を精鋭に育て上げていく苦悩と達成感を、楽しみながら体験できます。自分だけの部隊を作ることにこだわれる人ならば、長く遊んでいられるタイトルでしょう。
日本語版がないので、英語に抵抗があるとそこがネックになるかもしれませんが、ロボット好きであれば、ゲームシステムだけでもかなり楽しく遊べるはずです。硬派なロボット作品を好む人には、どストレートに刺さるゲームだと思うので、気長に楽しむゲームとしてダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
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