2018年6月13日(水)
2019年発売予定の『デッド オア アライブ6(以下、DOA6)』の開発者インタビューを掲載する。
『デッド オア アライブ6』は、打撃、投げ、ホールドの3すくみが特徴の3D対戦格闘ゲーム『デッド オア アライブ』シリーズ最新作。“激闘エンターテインメント”をかがけ、新たなシステムやこれまで以上の描写を実現したタイトルになっている。
本作のプロデューサーとディレクターを兼任する新堀洋平さんに、『DOA6』の見どころをうかがった。新システムやグラフィックスなど開発のこだわりをたっぷり語っている。
▲『DOA6』のプロデューサー兼ディレクターの新堀氏。『DOA5』ではディレクターを務めていた。 |
――まずはこれまで長くリリースされてきた『デッド オア アライブ5(以下、DOA5)』のシリーズ作品ではなく、新作『DOA6』として開発を始めた経緯を聞かせてください。
ご存知のとおり『DOA5』は、関連作品も含めて約7年に渡って運営を続けてきたタイトルです。その結果として基本無料版だけで1,100万人以上のユーザーさんに遊んでもらっています。
一方で7年という月日は長いもので、ユーザーさんからは「新しい『デッド オア アライブ』を見たい」という声も増えてきていました。そこに加えて、私自身も新しいものを作りたいという考えもあり、開発がスタートしました。
▲新しい『DOA』として、カスミやハヤテなどのコスチュームは一新されているのがわかる。 |
――新たな『DOA』を作ることに対して、社内の反応はいかがでしたか?
昨今、弊社はe-sportsに力を入れようと考えています。『DOA』の新作であればe-sportsにふさわしいだろうという声をもらっています。また、グローバルに展開していく作品としても『DOA』は適していることもあり、背中を押してもらっていますね。
――チーム内のモチベーションはいかがでしょう。
もともと好きなメンバーが集まって作っているので、そこまで大きく変わらず、楽しみつつやっています。
――これまでのようにディレクターに加えて、プロデューサーを兼任されるのは、単純にやることが増えるわけで大変だと思うのですが……。
ええ、もちろん大変です(苦笑)。いっぽうで、タイトルで売りたいポイントと、作りたいポイントを一緒にして考えられるので、わかりやすいのがいいですね。
――新作を作るに際して、特に変えた、変えようとしている部分はどこでしょうか。
1つは新しいビジュアルの実現に不可欠な、ゲームエンジンの刷新です。実はこれまでの『DOA』シリーズは、初代『DOA』から受け継いできた古いゲームエンジンをどうにか改修しつづけて使って開発していたんです。ですが、さすがに今の世代のゲームにはついていけなくなってきたので『DOA6』ではゲームエンジンをいちから作っています。そのおかげで物理演算ベースでのライティングができたり、細かい表情を作れるようになったりと、主にビジュアル面で恩恵を得られています。
そしてもう1つ、『DOA6』は今まで以上に遊びやすいシステムを用意しました。これまでに展開していた『DOA5』もカジュアルな対戦格闘に仕上げたつもりだったのですが、多くの人が触れた基本無料版の反応を見ると本当にライトに対戦格闘を遊ぶ人にとってはまだ複雑、もしくは操作が難しいものでした。
そこで今回は新しくSボタンを用意して、気持ちよく戦いやすい必殺技を割り当てています。
――画面の体力ゲージの下に、見慣れない青いゲージがあるのですが、こちらはなんでしょうか。
先ほどのSボタンとも紐づく要素なのですが、『DOA6』では“ブレイクゲージ”というゲージを用意しています。
▲体力ゲージ下の青いゲージがブレイクゲージ。 |
――ブレイクゲージはいわゆる“必殺技ゲージ”のような認識でよいのでしょうか?
はい、そうですね。ブレイクゲージはガードを含めて、攻撃を当てたり当てられたりすると溜まるゲージです。このゲージを消費して、“ブレイクブロー”と“ブレイクホールド”という新アクションを使用できます。
――それぞれの新アクションについて、どのようなものか教えてください。
まず、→+Sボタン(操作キャラクター右向き時)で繰り出せるブレイクブローは、当てると専用の演出に移行してもう1発追撃を行うアクションで、単純に大ダメージを与えられます。さらに、技の出始めに相手の上段攻撃と中段攻撃を受け流す効果があるのも特徴です。
『DOA5』の“パワーブロー”に似ているように思われそうですが、コマンドが簡略化されていることとパワーブローのように相手を吹き飛ばす方向を選ぶ必要がないこと、さらにはコンボにも組み込めて、守備的にも使えるのが特徴です。
▲ザックのブレイクブローがジャン・リーにヒットし、さらに追撃を行う。相手の打撃をさばきつつ、こちらの打撃を入れるという強力な攻撃だ。 |
一方の←+Sボタン(操作キャラクター右向き時)で出せるブレイクホールドは、上中下段どの攻撃でも取れるホールド技になります。ブレイクブローと比べると初心者は強さを実感しにくいシステムかと思いますが、『DOA』シリーズをプレイしている人であれば、強力なものであることがわかってもらえると思います。
▲ブレイクホールドのダメージは、通常のホールドよりも少ないとのこと。 |
――ブレイクゲージは攻めている側と守っている側、どちらがより多く貯まるのでしょうか?
調整中の部分ではありますが、現状では攻撃を受けた側よりも攻撃を当てた側がほんの少しだけ多くゲージがたまるようになっています。また、ホールドを成功させた時は、打撃や投げよりも多くゲージがたまるようにしています。基本的には攻めていた方が有利だが、攻められている側もやられっぱなしではなく、相手の行動を読んでホールドを決めて必殺技で逆転を狙うような“諦めない闘い方”ができるように調整しています。
――1ラウンドでたまるブレイクゲージの目安はどの程度になりますか?
ブレイクゲージは1ゲージまでしかたまりませんが、ラウンド終了時に残ったブレイクゲージは次のラウンドに引き継がれます。それを加味して総合的に考えると、1ラウンド平均で1.5ゲージ相当くらいまでたまるバランスにしています。もちろん戦い方や接戦具合にもよりますが。
――『DOA』といえば、打撃とホールドと投げの3すくみが中核にありますが、“ブレイクスロー”はないのでしょうか?
実は、強力な投げ技としてブレイクスローというシステムを考えたことはありました。ですが、通常の投げ技との差別化の難しさや、要素が多すぎることによって初心者の混乱を招きかねないことにより、現状では用意していません。
今後『DOA6』の開発を進めていくうえで、しっくりしたものを作れればブレイクスローというシステムを改めて搭載するかもしれません。
――他にSボタンを使うシステムはありますか?
Sボタンを4回連続で入力する“フェイタルラッシュ”という連携があります。フェイタルラッシュは、1発でもヒットすれば基本的には続いていく一連の攻撃がすべて連続技になっているのが特徴です。
▲キャラクターに応じた華麗な技で、連続攻撃をたたき込むフェイタルラッシュ。 |
――受けた側はホールドができないということですか?
そうですね。フェイタルラッシュがヒットすると“フェイタルスタン”という状態になります。これは『DOA5』のクリティカルバーストに近い、ホールドができないよろけ状態。そのため、フェイタルラッシュは当たりさえすれば4回の攻撃がすべて決まります。
また、このフェイタルラッシュは本来は1発目から3発目までがフェイタルスタンを誘発して、4発目で相手を吹き飛ばしてフィニッシュという流れなのですが、途中で止めることもできます。そのため、フェイタルラッシュを3発目までヒットさせてそこから相手を浮かせてコンボをさらに継続するといったことも可能です。
――かなり大胆なシステムに思えます。
フェイタルラッシュ導入の1つの目的は、先ほどもお話したように格闘ゲーム初心者に気持ちよく遊んでもらうことにあります。難しいことを覚えなくてもSボタンをポチポチポチポチと4回押してもらえば、カッコいい連携で十分なダメージを相手に与えられる。まずはそこから『DOA6』を楽しんでもらえればと思います。
さらに、ブレイクゲージがたまっている場合はフェイタルラッシュの4発目が自動でブレイクブローに変化するので、極端な話、Sボタンだけでも『DOA6』の気持ちいい部分を体感できるのです。
――非常に強力なシステムに思えるのですが、フェイタルラッシュやフェイタルスタンの欠点をあえてお話いただけますか?
フェイタルスタン中でも、ブレイクホールドだけは出せるようになっています。そのためゲームに慣れた人であればフェイタルラッシュを受けたらブレイクホールドで反撃するとか、ブレイクホールドを読んでフェイタルラッシュを途中で止めるといった読み合いが発生するようにしています。
また、フェイタルラッシュの1発目の攻撃は、ゲーム全体で見るとそこまで発生が早い技ではなく、しかも上段打撃になっています。そのため中級者以上の対戦ではハイリスクハイリターンな技という位置づけになると思います。
フェイタルラッシュは1発目がヒットしないと続く技が出ないので慣れたプレイヤーに対しては絶好の反撃ポイントになるようにしています。決して上級者同士の対戦バランスを崩すようなシステムにはしていませんので、その点はご安心ください。
――『DOA』はシリーズを通してキャラクター表現へのこだわりが強い作品だと感じています。本作ではキャラクター表現について、どういった点に力を入れていますか?
まず、肌の質感が大幅に進化しています。これは先ほどお話した新しいゲームエンジンの力で、肌に落ちる影や光をリアルタイムで表現できるようになったことが大きいです。単純にビジュアルの表現力が増したので、全体の雰囲気やキャラクターの表情が豊かになり、キャラクターが生きているような雰囲気を『DOA5』以上に感じられるようになっています。
前作まではキャラクターはつねにカワイイカッコいい見え方をさせていましたが、本作では物理ライティングになっているのでいろいろと苦労はあります。
――というのは?
キャラクター都合のライティングではなく、あくまでも画面全体の演出に注力しているのでリアリティは増していると思います。その結果として現実世界同様にキャラクターがこちらの意図しない見え方になる事もありえます。あえてそれを残すか調整するかなどの選択が必要です。
▲新エンジンの採用によりキャラクターは骨格から作り直されているが、見た目の印象はなるべくこれまでのキャラに近づけたという。 |
――カッコよく見せるために、どういった工夫をしていますか?
『DOA6』は“激闘エンターテインメント”というコンセプトを掲げていまして、キャラクター同士の戦いをどう描くかに注力しています。人だかりがあったり、木箱があったりといったリアリティのある空間での戦い。そこに加えて戦いの最中、服が破けていったり身体が傷ついていったりという、表現も含めて激闘感を演出しています。
キャラクターの表情は豊かになり、気持ちよさとカッコよさが一体となった表現をしています。“E3 2018”時点では高いところから落ちるなど、フィクションに寄った『DOA』らしい表現がなく、もの足りなく感じる人がいるかもしれませんが、そういった演出については今後公開していきます。
▲かすみのキーアート。ほほには汚れや擦り切れた傷が見られる。 |
――ブレイクブローでは顔のアップが入りますね。
あれはやりたかったことの1つ。今回は豪快に気持ちよく攻撃したかったんです。殴られるような描写は見たくない人もいるかもしれませんが、そういうところを含めて激闘を見せていこうと。
――人がいる場所に吹き飛ばされると、押し戻されるのに驚きました。
ああ、“ランブルデンジャー”ですね。周りで見ている興奮した観客が、ちょっとこちらに干渉してくるんです。攻撃をしてくるようなことはないのですが、飛ばされたのに押し戻されることによって、さらに攻撃がつながることもあり、予想外の展開が生まれることもあります。
――試合のテンポに変化はあるのでしょうか?
あまり感じないようにしていますが、特別な攻撃が当たった時にちょっとスローになったりと、どちらかといえば少し遅くしています。3D格闘ゲームでテンポが速いと初心者はついていけないんですよね。ただ、全体が遅いままだと退屈に感じられる人もいるので、気持ちよさはそのままにメリハリを出すようにしています。
――映像表現にあたって、スピンオフ作品の『デッド オア アライブ エクストリーム3(以下、DOAX3)』から学んだものはありますか?
『DOAX3』からは肌が濡れる表現を参考にしました。物理ライディングを利用してきれいに汗が描けるようになったのが『DOAX3』なんです。汗で濡れている部分の透明感や光り方は『DOAX3』で培った技術を踏襲しています。
――『DOA5』や『DOAX3』といえば、“やわらかエンジン”のインパクトが強かったと思います。本作でも“やわらかエンジン”は採用されているのでしょうか?
『DOA6』ではカッコいい絵作りを目指しているため、“やわらかエンジン”は採用していません。また、幅広く展開していくうえでセクシーすぎる表現は枷になることがあることも関係しています。
――気持ちはわかるのですが、“やわらか”な部分に期待するユーザーさんも多いと思います。
もちろん、その点は我々も承知しています。ですが、それはもはや簡単なことではありません。今は私を信じていただきたいです。
――登場キャラクターについてもお聞かせいただけますか。
“E3 2018”のトレーラーに、かすみ、リュウ・ハヤブサ、ハヤテ、ジャン・リー、エレナ、ザックが登場しています。この6人以外については、今後のトレーラーで随時ストーリーとともに公開していきます。E3バージョンには少し意味があり、キャラクターの選定などに少しだけストーリーのヒントも含まれているので、ぜひ予想を楽しんでもらえればと思います。
もちろん既存のキャラクターだけではなく、完全新規キャラクターも用意しているのでその点も楽しみにしていてください。
――進捗はどのような感じでしょうか?
ハッハッハッ……実はまだまだですね。ビジュアル面もまだ未完成ですし、技についてもこれから。
――最後に記事をご覧の読者へのメッセージをお願いします。
『DOA5』から7年がたち、『DOA』シリーズは新しいスタートを切ります。まだまだ言えないことが多いのですが、今まで以上にエキサイティングな内容になっているのは確実です。ぜひ、今後の情報に目を向けてもらえればと思います。応援、よろしくお願いします。
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