2018年6月14日(木)
SIE WWSプレジデント・吉田修平氏が語る“これからのSIEのキーワード”とは? 【E3 2018】
米国・ロサンゼルスにて、現地時間6月12日~14日に開催されているコンピュータゲームの祭典“Electronic Entertainment Expo 2018(E3 2018)”
その会場で、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント(SIE WWS)の吉田修平氏にインタビューを実施。E3公開タイトルや今後のSIEに関する話をうかがった。
▲SIE WWS プレジデント・吉田修平氏。 |
――『PlayStation E3 2018 Showcase』は昨年までとかなり演出が変わっていましたが、どのような意図によるものなのでしょうか?
吉田修平氏(以下、敬称略):かなりテーマパーク的な演出になっていましたね。毎回同じでは面白くないですし。今回のShowcaseでは、SIEが発売する4つのタイトルを中心にご紹介しつつ、ユーザーさんに“深く考察すること”を楽しんでいただくことを意識しました。メディアの方にもゲームの中に入ったような気持ちになって、昨今のゲームが持つ壮大な世界観を感じてほしいというのが狙いです。
――最初は戸惑いつつも、途中からは参加者みんなが楽しんでいるようでした。最初に公開された『The Last of Us Part II』の映像はかなりショッキングでしたが、あのまま発売されるんでしょうか?
吉田:凄惨な世界の中、あのシチュエーションでキャラクターたちが何を考え、どのような行動をとるのか……開発スタジオであるノーティドッグがきちんと表現したい、ということだと思います。レーティングを意識した“大人に向けたエンターテインメント”ですね。まだ断片的な映像ですが、キャラクターたちの心の痛みが感じ取れる作品になるのではないでしょうか。
▲『The Last of Us Part II』 |
――戦闘シーンのキャラクターの動きは決まったものなんでしょうか?
吉田:開発と話をしたのですが、基本はAIによるものだそうです。今回のトレーラーのために作ったものではありません。死体を蹴るとか車の下を覗き込むといった行動も、キャラクターが独自に行なっているようですよ。
――車の下を覗き込んだのはゲーム的な演出じゃないんですか!? すごいですね! 前作ファンとしてはジョエルが登場するかどうか、気になるところなのですが……。
吉田:そこは私も知らないのでお楽しみに(笑)。今回Showcaseで発表された映像は事前にチェックせず、観客の皆さんと同じ立場で見させていただいたんです。だから私自身、驚きがたくさんありました。
――発売が待ち遠しいですが、いつ頃になるんでしょうか?
吉田:それはまだ言えません(笑)。
――『Ghost of Tsushima』では戦闘シーンが初めて公開されました。実際の日本にあるものを研究されているように感じました。
吉田:これまで開発中のバージョンをいくつかプレイする機会があったのですが、アクションやカメラワークがどんどん増えていくんです。1対1のシーンでカメラが横からのアングルに切り替わるなど、いろんなシチュエーションが楽しめるように工夫してますね。
――剣術の“型”が意識されていたり、攻防のある戦闘には引き込まれました。
吉田:最初にタイトルを発表したときに、ユーザーさんから「いろんな時代の武具が混じっているのでは?」と言われたことがあるんですが、開発を担当するサッカーパンチの狙いとして、海外のスタジオが開発してるからといって日本のユーザーさんが見たときに「変じゃない?」と思われるものにはしたくない、いう気持ちをものすごく強く持っています。
▲『Ghost of Tsushima』 |
日本文化の研究やJAPANスタジオの人との交流、現地取材などしながら開発を進めていますね。ただゲームはエンターテインメントでもあるので、“日本の美”と感じられる情景や季節などは『対馬』という舞台に限らず、表現しているようです。時代に関しても“カッコいい侍”という皆さんが持つイメージやシーンをふんだんに取り入れようという考えで制作を進めています。違和感を感じさせず、かつ“リアル”であることに縛られすぎない、ということですね。
E3で出展している『Ghost of Tsushima』はメディア向けに日本語にローカライズしたバージョンを用意しているんです。ゲームのイメージに合わせて、ユーザーさんからもメディアの方からも日本語のものがほしい、という要望が多くあったんです。そこで我が社が誇る(笑)ローカライズチームががんばってやってくれました。
――映像美といえば『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』もついに新規映像が公開されました。
吉田:ゲームらしい部分も見られましたね。DECIMAエンジンによる部分かもしれませんが、『Horizon Zero Dawn』的なビジュアルもチラッと感じましたね。
▲『DEATH STRANDING』 |
――吉田さんはどのような印象を持たれましたか?
吉田:まだまだ謎に包まれていますが、“逆ステルス(敵が隠れている)”みたいなところとか、ゲーム性が気になるものがいろいろありましたね。今『ダークソウル リマスタード』をプレイしてるんですが、透明な敵の足跡を頼りに探す、というのを思い出しました。
――9月7日に発売になる『Marvel’s Spider-Man(スパイダーマン)』はついに実機に触れる機会が訪れました。
吉田:発売バージョンに近い、非常に良い状態のものを公開することができました。E3のSIEブースでは50台近い試遊台を用意しています。プレイしていて本当に楽しいんですよ。オープンワールドの街をスイングで移動しながらシームレスにバトルに移行するところや、自由度の高さはぜひ感じてほしいですね。同じシーンでもプレイヤーによってまったく異なる展開になりますし、楽しんでもらえると思います。
▲『Marvel's Spider-Man』 |
――見ていてとりあえず飛び回ってみたい、と思いました。
吉田:クモ糸で飛び回るだけでも楽しいですし、街の中にさまざまなミッションが点在しているので、メインストーリーがなかなか進まないかもしれません(笑)。ついつい横道に外れたくなるんですよね(笑)。Showcaseで公開した映像はヴィラン総登場でストーリーにフィーチャーしていましたが、その後の実機プレイでは自由に街を探索するようなシーンをプレイいただいています。一本道のゲームではないということを感じていただければと思います。
――ストーリーはゲームのオリジナルになるのでしょうか?
吉田:そうです。これはマーベルさんの新しい取り組みで、ゲームも映画などと同じように1つのクリエイティブとして取り扱っていこう、というものです。マーベルさんはゲーム業界に対しても非常にリスペクトしていただいて、我々としてもそれならばぜひ一緒にやりたい、と協力体制を組ませていただきました。本当に理想的な関係が構築できたと思います。
映画の公開などに合わせる必要もないので、ゲームのための新しいストーリーを一緒に考え、じっくり作り込むことが出来ました。インソムニアックゲームズの提案も好意的に受け入れてくださり、本当にやってよかったな、と感じています。これだけ大きな業界の方たちとのお付き合いは難しいかもしれない、と感じていたのですが、まったくの杞憂に終わりました(笑)。
――今後の展開も考えられる、ということでしょうか?
吉田:今の手応えからすると、良い作品が作れ、かつユーザーさんにも支持されるものになると思いますので、そうなると期待したいですね。参考にしたいのは『バットマン』のゲームですね。『バットマン』の世界の中でオリジナルのゲームを作られた手腕は、ひとつの雛形になるかと思います。
――『スパイダーマン』ほどのコンテンツになると、関わる人もお金も莫大なものになりますよね。
吉田:そうですね。今のAAAタイトルは制作費に100億とかかかることもありますが、ヒットタイトルの販売本数は全世界で1000万本を越える規模になります。非常に大きなビジネスになっていますね。
――各メーカーさんがE3で発表したタイトルで、吉田さんが気になるものはありましたか?
吉田:各メーカーさん、力が入ったタイトルをたくさん公開されていて、いちユーザーとしてもいち業界人としても、非常に気になっています。『アサシン クリード オリジンズ』が大好きだったので、UBIさんが今回発表された『オデッセイ』は楽しみです。ベセスダさんの『Fallout 76』やEAさんの『アンセム』も興味深いですね。あと、スクウェア・エニックスさんの『THE QUIET MAN(ザ クワイエットマン)』! 実写で喋らなくて、いったいどうなるんだろう!? と(笑)。
――PlayStation 4(PS4)の普及やタイトル充実でプラットフォームとしては成熟してきた、と感じています。来年に向けて、次のSIEさんのステップとして“マルチプレイ”や“オンライン”など、『キーワード』はどんなものになるとお考えですか?
吉田:我々が力を入れて取り組んでいるのは、ストーリーやキャラクター、世界観を深く掘り下げた大きなタイトルですね。『God of War』や『Horizon Zero Dawn』のようにオープンワールドで高いゲーム性と、深いストーリーや世界観を持つタイトルを揃えるようにしています。他社さんのタイトルにも見られると思いますが、『世界を楽しむ』がひとつの大きな流れであり、キーワードかと思います。
――フランチャイズとしてゲームを超えた展開を考えられるくらい、壮大な世界観を持つタイトルが作られているようにも感じます。
吉田:我々が作り込んでいるゲームの世界やキャラクターを評価していただけるのはとても嬉しいですし、そこから何かが生まれるのであれば、非常に楽しみです。実際、さまざまなお声がけもいただいてますし、ゲーム以外のメディア展開が実現したらよいと思っています。昨年からSIEタイトルのゲーム音楽コンサートを開催しておりますが、クリエイターも非常に喜んでいます。今年もまたJAPANスタジオのコンサートを企画しているようなので、楽しみにしてください。
――最後にフロム・ソフトウェアさんとJAPANスタジオが制作するPlayStation VRの『Déraciné(デラシネ)』について少し教えてください。
吉田:まだ詳細はこれからになりますが、とても変わったタイトルです。ディレクターの宮崎英高さんは深い考察に基づいた考えをお持ちで、「VRにこんな使い方があるんだ!?」とびっくりさせられました。まったく他にないタイトルになると思います。
▲『Déraciné』 |
――ありがとうございました。
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