2018年6月14日(木)
米国・ロサンゼルスにて開催されている“Electronic Entertainment Expo 2018(E3 2018)”にて、PS4/Xbox One/PC『デビル メイ クライ5』のインタビューが実施された。
本作はカプコンが贈るスタイリッシュアクションゲーム『デビル メイ クライ』シリーズの最新作。『デビル メイ クライ4』から数年後の世界を舞台に、悪魔退治を生業とする青年ネロたちの活躍が描かれる。
インタビューに応じているのは、岡部眞輝プロデューサーとマシュー・ウォーカープロデューサー。先日発表された時の感想や開発経緯、アクションへのこだわりなどを聞いている。
なおインタビュー中は敬称略。
――新作を発表されて、かなり反響があったと思うのですが、ご覧になってどのような心境でしょうか?
岡部:マイクロソフトのカンファレンスで発表した後、YouTubeやTwitterでみなさんの反応を見ていました。トレーラーを発表した時、最初は何かわからないようにして、カプコンのロゴが出て、そのあとネオンサインで“Devil May Cry”って判るような流れを作っていたんです。
リアクション動画では、まさに最初は「なんだろう」って感じで、カプコンって名前が出て一瞬ザワってなった後に、“Devil May Cry”のネオン管が出てきて一気に爆発してくれるっていう、短時間で狙い通りの展開ができて最高でした。
あと、最後にダンテを登場させて「ヒャッホウ!」っていうシーンがあるんですけど、そこでネロとダンテが帰ってきたことが一気に伝わるトレーラーになっているんですが、それをリアクション動画がまさにそのまま受けとめてくれたのも最高でした。
――そのようなトレーラーを作るのは楽しいのでは?
岡部:トレーラーはいろいろと試行錯誤があったんですけど、かなりおもしろかったですね。やはりああいう映像作っている時が一番楽しいっていうのはありますね。
カンファレンスにはマシューも出ていたんですけど、コアファンと、シリーズをあまり知らない人と、まったく知らない人で、主人公が最初に登場した時にこれはネロなのかダンテなのかっていう感じになって。でもやっぱり最後まで見てもらうとダンテってわかるし、最初にネロか誰かわからないってTwitterで盛り上がってくれるのもわりと想定の範囲内だったので、とても楽しかったです。
――カンファレンスのバックステージの様子をもう少し教えてください。
マシュー:カンファレンスのバックステージで待機していたのですが、先ほど岡部がお話したカプコンのロゴが出た時と、“Devil May Cry”のネオン管が出た時のリアクションがすごかったです。想定通りにヒットして素晴らしい反応をいただきました。
岡部:マシューと伊津野(※伊津野英昭ディレクター)が登壇するので、僕らは開場の前に通しリハーサルができたんですけど、3日間ほどんと通しリハーサルをやり続けました。台詞とかも調整しながら、伊津野が「English is Hard. MATT You do it!」と言ってかなり受けたのが最高でしたね。
マシュー:ホントですよね。普通は、あんな大人数の前で発表するのはそうとう緊張すると思うんですけど、伊津野は全然緊張していなくてそれどころか、やっと発表できるってすごいワクワクしていました。
岡部:実はマイクロソフトのカンファレンスの時、日本のストリーミングでは同時通訳が入ったんですけど、マシューが伝えたい感じと若干違う感じだったんですよ。
マシュー:そうなんです。良三さん(※同社の辻本良三さん)は「カプコンとしては『4』の続編で、オリジナルスタッフが開発に参加しているってもっと言ってほしかった」と言っていたのですが、「オレは英語でそう言ったよ!」と返しました(笑)。
岡部:そこは残念でしたが、伊津野もリアクション動画を見ていました。彼も思い入れがすごくあるタイトルなので、感動していましたね。
マシュー:ニコニコ動画のコメントを全部見て、さらに感動していたようです。
岡部:ずっとピークの状態が続いている開発だったので、やっとファンに伝えることができた感動がありました。また、開発メンバーも朝の5時から20人くらいがライブでストリーミングを見ていて、オリンピックの地元応援団みたいな感じになっていました(笑)。
僕はリハーサル2日目くらいで演出を全部チェックできたんですけど、あの瞬間は涙腺が弛みましたね。あの時が一番感動しました。
――開発期間はどれくらいなのでしょう?
岡部:実際チームがちゃんとできあがってからは3年くらいだと思うのですが、伊津野自体は『4』が終わったころから構想自体はあったようです。最初からRE ENGINEで最高のものを目指していました。
――今回は、カプコン社内の開発チームが作っているのですか?
岡部:そうです、大阪の開発メンバー主体でやっていて、オリジナルメンバーが作った『4』の正式な続編になります。伊津野率いる『DMC』チームという感じで、『DMC』を知っているスタッフが作っています。
――『4』が発売されてからずいぶんたちますが、『5』についてはどのようなゲームにしようと思ったのでしょうか。
岡部:まず、4K・60fpsというところの技術的な目標を立てて、どれだけ今のハードの特性を生かしたものを作れるかがミッションとしてありました。伊津野としては今回はフォトリアルなゲームにしたいというのがあったので、そのためのテクノロジーをアートディレクターも含めて探して、外部の開発の人たちとも協力してフェイシャルのスキャンだったりとか、衣装のスキャンだったりとかを全部やりました。
こだわったところは、すごいカッコイイキャラクターにしたいというところ。モデルの人選をする時には雑誌モデルのような人を集めました。あとは当然アクションをタイトなものにしないといけないので、開発のほうではアクションの“不気味の谷”にならないようにしました。
そこを気をつけたうえで『DMC』らしい操作、『DMC』らしいアクションも同時に作ることを目標にしていました。オリジナルスタッフがそれを達成するために頑張って、いい感じになっているんじゃないかなと。
――リアルを目指したということですが、苦労したことは?
岡部:リアルにしようとするとどうしても違和感が出てくるんですよ。見た目はリアルなのに動きがアニメ的になると、銃を取り出したりしまったりする動作や、剣を持ったりする動作が1つ1つおかしくなってしまうんですね。予備動作が増えるとそのぶんレスポンスが悪くなるのですが、そのレスポンスを悪くしないうえで、アクションを自然でスムーズに見せるのが1つの目標ではありました。
すべてに言い訳がきかなくなるので、そこを吸収したうえでさらに気持ちいいアクションにすることを達成できたののは、カプコンならではだと自負しています。
――期待に対するプレッシャーはありませんか?
岡部:勝手にできるわけではないんですが、「このチームにはできるだろう」という面子がそろっていたので、彼らにまかせれば勝手にできるくらいのイメージでした。それを達成するための人選や技術サポートを用意しました。そこを達成しなければ『DMC』にならないかと。
実は去年くらいから情報を公開しようというアイデアもあったんですけど、発売日とか開発状況とかも考えて一番いいタイミングはどこか探しました。また、『バイオハザード RE:2』のチームとあわせて、2本一度に公開されるがカプコンとしてもインパクトがあるだろうというのがありました。
シリーズそれぞれの開発の経緯を考えると『バイオハザード』シリーズと『DMC』シリーズは兄弟タイトルとも言えるですよね。兄と弟がわりと大きくなって戻ってきましたというようなイメージがあります。あと、“平成最後の最高峰アクションゲーム”になるのでは? と思っています。日本ではそういうキャッチが使えますね(笑)。
――発売は延ばせないですね(笑)。
岡部:そうですね、延びたら最悪ですので(笑)。
――ネロなんですが、結構見た目が変わっていることに加えて、右腕が義手になっていて、知らない相棒がいる……数年後の話とのことですが、その間にネロになにがあったのでしょう?
岡部:『4』からここに至るまでのギャップは、多くは語らないです。ただ、顔がなぜこのような感じなっているのか、新しいキャラクターのニコはなぜあそこにいるのかなどは、後々語られていくと思います。
今、すでに3体プレイアブルで出ることはお伝えしているんですけど、キービジュアルの真ん中は当然ネロ、あとダンテ、これは丸わかりだと思うんですが、あと1人は誰なのかと。
――全員男性でしょうか?
岡部:どうですかね? 実は今回、ネロのテーマソングのミュージックビデオを作っているんですけど、あれをじっくり見ると、ちょっとしたヒントがあります。たぶんわからないんですけど(笑)、メッセージを入れています。ここにつながるためのメッセージです。
――どちらかというと判明した時に、ああそういうことだったかとなるということでしょうか。
岡部:そうですね。今後もそういった隠し要素を続けていろいろなプロモーションの中に入れていきたいと思っています。これだけのヒントですべてがわかるというわけではないです。継続的に我々にお付き合いいただければうれしいです。
――デザイン的にすごく変わった理由は?
岡部:理由の1つは今作はフォトリアルな表現にしようという方向性です。まず吉川さん(※キャラデザインを担当した吉川達哉さん)のデザイン画があって、次に実際のモデルさんを見つけないといけないという工程があります。
素晴らしいイラストがあってもその通りの人を見つけられるかという問題があります。でも、今回はほぼイメージ通りでしたよね。
マシュー:特にネロはね。
岡部:ネロの仕上がりがすごくよくて、ネットで「お父さんに似てきた」という声も見かけました(笑)。よく見てくれているなと。
マシュー:ネロのキャラがなぜシュッとしているのかというと、伊津野いわく、1つはダンテと比較してネロのほうが若いと一目でわかるように。もう1つはバージルの息子という関係性を入れたかったためです。
岡部:ヨーロッパのほうのキャプチャースタジオがあるんですけど、そちらに行って演出と体と衣装もイチから全部作って、それを全部キャプチャーしてゲームの中に入れています。
今回ちょっとだけPVで出ていますけど、ネロがなぜ腕をなくしたのか……なくした後に義手(デビルブレイカー)を手に入れて、そのデビルブレイカーを作っているのがニコという設定です。デビルブレイカーで遊びの要素が今回全然変わってきます。
あと『4』の操作性を受け継いでいるので、同じような操作は当然できたうえで、新しいギミックが入っています。詳細はて続報にご期待ください。ですが……。伊津野も自分で言っているんですけど、ロケットパンチに乗るところとか、中二感あふれる設定がいろいろ入っているので楽しみにしていてください。
マシュー:伊津野もよく言っていますが、ぜひトレーラーを見て、アクションに注目してほしいです。
岡部:改めて伊津野が詳しく話すと思います。僕たちは毎日のように今『デビル メイ クライ 5』の実際のゲームを遊んでいるのですが、日々よくなってきています。
――デビルブレイカーとはどういうものなんでしょうか?
岡部:悪魔との戦闘用の特別製の義手です。ゲーム中すごく壊れやすい設定になっていて、うまく使いこなさないとすぐに壊れてしまう。腰にデビルブレイカーのカートリッジがあって、ミッションが始まる前に何個か持って行けるんですが、どの順番で使うのかプレイヤーが考えることができます。
大事に使わないといけないのですが、壊れたら次のやつをガシャっとはめて使う。ステージ上にもいくつか置いてあったりするのでそこで補給したりとか、途中でニコが車でどーんと登場して、中のショップで買ったりとか。そういった感じで、義手の遊びというのはネロの大きな要素の1つになっています。
――義手を使って戦う悪魔も気になります。
岡部:PVにもあったと思うんですが、でっかい悪魔に対して、ドーンとやるだけで相手が吹っ飛ぶという。いいタイミングで遊んでもらうと、ああいった大きなアクションも楽しめるようになっています。
――新キャラクターのニコについては?
岡部:彼女もシリーズにかかわっているキャラクターとの関連性がちゃんとあるんですよ。
マシュー:具体的には『4』ですね。ニコはネロの相棒です。ネロがデビルブリンガー(悪魔の右腕)をなくしちゃって、デビルブレイカーを作っているのは、銃工(ガンスミス)のニコですね。2人で移動式デビルメイクライの事務所でいろいろなところを回って、悪魔退治をしています。
岡部:ちょっと話が逸れるんですが、ニコのモデルも実在しています。ある大手スポーツメーカーの広告にも出ているモデルさんです。
マシュー:ニコのスクリーンショットでいいものを出したので、ぜひ見比べていただきたいですね。
――ニコは人間なんですか?
岡部:僕の知る限り人間です。特別な力があるわけではなく、銃工(ガンスミス)の家系です。
――最後にメッセージを。
岡部:本当におまたせしました。10年ぶりの最新作になります。今回、伊津野が心を込めてチームとして作ったゲームになりますので、皆さんぜひご期待ください。よろしくお願いします。
マシュー:私は、もともと日本語を勉強したのは、子どものころからカプコンに入りたいと思っていたからです。『ストリートファイター』や『私立ジャスティス学園』が大好きですし、もちろん『DMC』も遊んでいまして、今回こういう機会に恵まれて涙が出るくらい感動しています。そして今回ファンの皆さんのリアクションを見て、感謝しています。
岡部:夏のゲームズコムでは初プレイアブルを出展するつもりです。よろしくお願いします。
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