2018年6月15日(金)
E3 2018の“PlayStation E3 2018 Showcase”で発表され、大きな話題となったカプコンのPS4/Xbox One/PC用ソフト『バイオハザード RE:2』。1998年に発売した『バイオハザード2』のフルリメイク版となる本作について、制作陣にお話を伺いました。
『バイオハザード RE:2』は、世界を虜にしたサバイバルホラーの傑作『バイオハザード2』をすべて一新し、キャラクター、背景の構成はもとより、物語も一から再考証を行ったタイトルです。2019年1月25日に発売予定となります。
インタビューにお答えいただいたのは、本作のプロデューサーの神田剛さんと平林良章さんです。お2人に、リメイクに至った経緯や、気になるゲーム内容、新しい要素などについて、可能な限りお聞きしました。
▲神田剛さん(写真左)と平林良章さん(写真右)。インタビュー中は敬称略。 |
――早速ですが、発表の時の皆さんのリアクションを見た印象はどうでしたか? みんなが『バイオハザード2』だ! とわかった時の反応がものすごかったのが、会場でも感じられました。
平林:計画通り……。じゃなくて、目を潤ませながら「よかった」と感じました。
神田:皆さんのリアクションは予想していたところはもちろんあるんですけど、でもその瞬間までドキドキでしたね。
――最初がネズミの視点で始まるという、発表時のトレーラーが秀逸だと思いました。
平林:ケビンジュニアですね(笑)。新しいメンバーとしてここにいますよ。
平林:あのトレーラーの流れは、竹内(※『バイオハザード』シリーズ開発統括の竹内潤さん)のアイディアです。
――レオンの声が聞こえたり、PlayStationが出てきたりとどんどんわかっていく仕掛けになっていて、見ていたファンの反応もおもしろかったです。
平林:PlayStationはトレーラーに出そうと決めていました。『バイオハザード2』が98年にPlayStationから始まったというのは、僕らチームとしてもしっかりと心にあるものなので。
今回も、20年前にPlayStationで生まれたから、SIEのカンファレンスで出したいです! と話をして、発表させていただいたんです。ちなみにトレーラーには、本体だけじゃなく箱も出ているんですが……。
神田:ロケーションがアメリカなので、アメリカの外箱を用意しなくてはならなくて、SIEAの方から送ってもらったんです。それを3Dスキャンして入れてあるんですけど、箱が一瞬しか出ていなくて、送ってくれた人から「箱出てる!?」って聞かれました(笑)。
――本体はわかりましたが、箱は探してみます(笑)。レオンが出てきたシーンも、0.1秒くらいで歓声が上がっていましたよね。みんな反応が速くて驚きました。
平林:多分、レオンの肩のマークで気づいたんでしょうね。マークがR.P.D.なので。
――レオンの姿も、今の技術で作られた新しいレオンという感じがしました。
神田:実際のアクターをスキャンして作っています。あと、コスチュームについても、オリジナルのレオンの制服って、肩パッドが入っているようなちょっとファンタジーな感じがしてしまって……。なので新しく作っています。
平林:クレアについても、昔の衣装が悪いわけではないですが、バイカーにしては露出が多かったので(笑)。
昔の衣装のモデルも作ってはいるのですが、リアルなモデルには肩パッドの衣装がおかしく見えてしまうのでお蔵入りになりました。とはいえ、せっかく作ったものなのでどこかでお見せできればなと思います。
――ちなみにですが、ゲームにはケビンジュニアモードがあったりするんでしょうか?
平林:残念ながらないです! 彼は、このE3のためのスペシャルゲストです(笑)。でも、トレーラーで反響があったので、何か考えたいですね。
――『バイオハザード RE:2』の開発に至った経緯を教えてください。
神田:『バイオハザード2』のリメイクについては、もともと海外のファンからのラブコールがすごかったんです。実は一度、2015年8月に海外向けにリメイクを発表する動画を公開しています。そこから、開発をスタートした感じです。
その時は「リメイクします!」という発表のみでしたので、ゲーム画面などは今回のE3が初お披露目です。
――本当に新作のように感じましたが、わずか3年くらいでの開発だったんですね。
神田:はい。そこは、『バイオハザード7 レジデント イービル』での“RE ENGINE”などの財産の共有ができたのが大きいです。時期的にはちょうど、RE ENGINEがまとまってきた後期でした。
平林:RE ENGINEはアセットベースで繰り返しをスピーディに行えるのが大きな特徴なので、『バイオハザード RE:2』の開発にもそのメリットが高い形で使えています。
神田:ただ、やるべきことはたくさんありましたね。
――それはどういうことですか?
平林:リメイク作で大切なポイントになるのは、みんなの“思い出”だと思うんです。開発チームや僕らはもちろん、ファンの皆さんそれぞれに『バイオハザード2』の思い出があって……。だけど、すべてを完全にコピーしてリメイクしたいわけではなかったんです。
一番大切な“思い出”を、どう最新技術で作って、最新のゲームプレイの体験として提供できるか。まずはそこのピックアップからだったんですが、これがまぁケンカになるんですよ(笑)。
――それぞれの“思い出”が違いますからね。
平林:そうなんですよ。例えば、一番思い入れがある敵も「絶対ワニ(アリゲーター)だろ!」と言う人がいれば違う人もいて。
実は一度、開発中にワニを不採用にしたことがあったんです。そうしたら、チーム内で「ワニがいないのはどうなの!」と議論になって。最終的にワニは復活しています。
『バイオハザード2』から何が残っていて、何がないのかは皆さんも気になるとは思うんですが、我々もチームの中でこれはないとまずいとか、これはもっといい形にできるんじゃないかとか、試行錯誤しています。
神田:懐かしくもあり、新しいというコンセプトを今回は非常に大切にしています。何を取捨選択するのかについては侃々諤々ありましたが、我々の思い、新しさ、深みの部分を大切にした新しい『バイオハザード2』を作っています。
――なるほど。物語も再考証して新しくなっているとのことですが、どのようになっているのでしょうか。
平林:例えば、人との出会いの部分などですね。マービンとの出会いの前にエリオットに出会う別の流れがあったりだとか。ストーリー性に深みを出すため、一度崩して組み立てて……という感じです。
――ストーリーの大枠自体の変更などはあるんですか?
神田:オリジナルをリスペクトして作っているので、大枠は変わらないと思っていただいて大丈夫です。解釈がまったく違うゲームになるかというと、そうではないです。
平林:『バイオ』サーガ自体がありきですので、例えば今回『2』で新解釈をしてしまうと、この後の話がどうなってしまうのかという問題がありますよね。サーガの連続性を皆さんに楽しんでいただけなくなるのは避けたいです。
神田:ただ、新しさというところに関しては、先ほどストーリー性の深さだったりとか、新しく探索できるエリアも増やしてますし、新しさを感じてもらえる要素というのはしっかりと入れています。
――先ほどゲームもプレイさせていただきましたが、オリジナル『バイオハザード2』を遊んでいる人ほど驚くんじゃないか? ってくらい変わっていました。
平林:いろいろ変わっていて「あれ?」ってなりますよね(笑)。『バイオハザード2』を遊んだことがない人はもちろん、遊んだという人にも新たな気持ちで遊んでほしいです。
――演出も違っていたり……あと、ゾンビがすり抜けられなくなっていますよね?
神田:ちょっとテクニックが必要ですが、すり抜けることもできますよ。それと、ゾンビとのインタラクションなんかも増えています。
平林:フラッシュグレネードとか手榴弾的なものを、ゾンビの口の中にねじ込んで爆発させたりもできます。
――それはおもしろいですね。そういうアクションは気軽に狙えるものなんでしょうか。
平林:フラッシュグレネードなどは装備すると、ナイフと同じ操作で構えて投げることができます。それをせず手に持っている状態でゾンビに噛まれると、その時にボタンが表示されて、押すだけでアクションができます。
他にも、ゾンビに捕まえられたら、はがして逃げるとかもできますね。
――そういうこともできるんですね。
平林:もし、ゾンビに近づかれると100%掴まれてしまう仕様の場合、銃を撃つしか選択肢がなくなり体験の幅が狭まってしまいます。そうするとどんどんシューターのような気持ちになってしまうので……。今回は逃げるという選択も選べるように作っています。
――プレイヤーがいろいろできるようになっている感じですね。難易度はどのようになっていますか?
平林:難易度は今も調整を続けていますが、基本的にはフレキシブルな難易度になります。プレイする方のプレイスタイルによって、裏側で難易度を上げ下げするので、プレイしているその人が一番ハラハラ、ドキドキしてもらえるような塩梅を目指しています。
――今回、ところどころに打ち付けることができる“板”を持っていけますよね。
平林:そうですね。リメイク版での新たな要素になります。
――あのシステムは嫌な予感がするのですが……。きっと、ゾンビがどんどん入ってくるシチュエーションがあるということですよね。
平林:その通りですね(笑)。前はシャッターが用意されていましたが、そういうことですね。E3でプレイしていただいた範囲では効果は見えませんが、もうあと1時間くらいプレイしてもらうと、板の効果がわかってくると思います。
――板を打ち付けられる場所は多いのでしょうか?
神田:選べるくらいには多いですね。『2』ではフラグを踏んだら必ずゾンビが入ってくるという強制イベント的な感じでしたが、今回は“板”の要素を足したことで皆さんが抗えるようにしました。
平林:最初は使いどころがわからないかもしれませんが、面倒くさがらないでしっかり板を使っていかないと……大変なことになりますよ(笑)。
僕もテストプレイをしていて、「なんでこんなにゾンビが多いの!?」って悪態をついていたら、ディレクターに「板の打ち付けをやってないからだよ!」って怒られましたから。
――それほど大事な攻略ポイントということですね(笑)。他にも新しい要素は用意されているんでしょうか?
神田:もちろん、他にもありますよ。プレイヤーが介入できるところで言えば、例えばガンパウダーで弾の種類を選んで作れるようになっていたり。
平林:オリジナルの『2』にあった武器のカスタマイズもあります。プレイヤーが自由にいろいろできるようにしていますね。
――アイテム枠はどうなるんでしょう。プレイしたものでは8枠あって、さらに下が空いている感じでしたが。
神田:どこかにアイテムポーチが用意されていて、それを取ることで枠が増えていきます。
平林:謎解きをしっかりやって進めば、結構リッチなアイテム持ちになれますよ。
――謎解きと言えば、会場でファンがプレイしているのを見ていましたが、それぞれプレイの仕方が違うなと感じました。謎解き1つにしても、それにこだわっている人がいたり、逆にスルーして先に進む人がいたりで。
平林:そうですね。大枠としては『バイオハザード2』なので、プレイしたことがある人は行かなければいけない場所などがわかっていると思うんです。ですが、そこに至るまでの寄り道みたいなものが、かなりちりばめられています。
――必ずしも謎解きはクリアしなくてもよい、という感じですか?
平林:皆さんがすべてをクリアしていかないと先に進めないゲームではありません。例えば、タイムアタックを何回もやっていく中で、人それぞれの攻略方法があるのも楽しみの1つだと思うので。絶対にこの方法で攻略しなければならない、という部分は減らしています。
――“RE ENGINE”を採用しているという点以外で、『バイオハザード7』から踏襲した要素はあるのでしょうか。
神田:『バイオハザード7』では、『バイオハザード』のルーツである“恐怖”を、原点として見直して作りました。そのため、クラシックなサバイバルホラーとしての体験がしっかりと作り出せて、皆さんに喜んでいただきました。
今回のリメイク版『2』でも、その流れはしっかり踏襲していて、クラシックなサバイバルホラーとしてのゲームプレイが体験できます。
また、『バイオハザード7』はFPSでしたが、『バイオハザード RE:2』はTPSで作っています。『7』でも『バイオハザード』らしい恐怖を感じてくれた方がたくさんいたと思いますが、今作でもその感覚は変わらず、新たな恐怖を楽しめると思います。
平林:初代の『バイオハザード』を最新鋭のゲームに翻案したのが『7』だと思っています。今作も『2』を最新鋭のゲームに置き換えたものなので、お互いが近いゲーム性なんだと思います。
また、メトロイドヴァニア(※)な、謎解きをしながらいろいろな場所を行き来しながら攻略するというのも、初期のころの『バイオハザード』的な遊び方ですよね。そういった遊び方は、『7』でもリメイク版『2』でも踏襲されています。
※メトロイドヴァニア:2D横視点のスクロール型探索アクションのこと。
――ちなみに、念のため聞きたいのですが“ラジコン操作”ではないですよね?
平林:『7』の操作を引き継いでいるので、ラジコン操作ではないです! もし、切り替えで実装してほしいなどありましたら、チームに持ち帰ります(笑)。
――では、最後に1つ絶対に聞きたいことがあります。“豆腐”は出てきますか!?
神田:でますね! “The 豆腐 Survivor”を収録しています。もちろん“The 4th Survivor”もありますよ。
平林:ディレクターに事前に、「絶対にそういうのが好きなメディアさんに聞かれるから」と、今回の『2』のMAXの技術を豆腐に詰め込んだと言っていいかと聞いておきました。まぁ、「平林さん、それはやめてくれるかな」って言われたんですけど(笑)。
とにかく、豆腐についても楽しみにしていてください(笑)。“RE ENGINE”の最新技術で、木綿なのか絹ごしなのか、どんな豆腐になっているのかを!
――わかりました(笑)。本日はありがとうございました。
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