2018年6月15日(金)
2018年に発売されるPS4(PS VR必須)用ソフト『Déraciné(デラシネ)』の、開発者インタビューをお届けします。
『デラシネ』は、SIE JAPANスタジオ、フロム・ソフトウェア、宮崎英高ディレクターという、PS4用ソフト『Bloodborne』と同じ開発体制による、完全新作のVRアドベンチャーゲームです。“古典的アドベンチャーゲームを、最新のVR技術で描く”というコンセプトのもと、温かくもどこかミステリアスな物語が展開します。
本作のディレクター・宮崎英高さん(フロム・ソフトウェア)とプロデューサー・山際眞晃さん(SIE)にゲームの特徴や開発経緯などをうかがいました。
▲宮崎ディレクター(写真左)と山際プロデューサー(写真右)。 |
●『デラシネ』デビュートレーラー
――本作の概要を簡単に教えてください。
宮崎英高さん(以下敬称略):本作はVRのアドベンチャーゲームです。かなり古典的な、クラシックなテキストよりのアドベンチャーゲームのようなものをVRで再現しています。VRを使用した新しい感覚を与えられたら、というところが制作の基の部分になっています。
なので、一般的なVRゲームと違ったアプローチをしているのではないかと思います。すごく静かなアドベンチャーゲームにデザインされています。
本作は、時の止まった世界でプレイヤーは妖精になるストーリーが展開します。VRでこういったゲームを作ろうと思った着想は、僕がVRが触れた時に確かにそこにキャラクターがいる感覚がすごくあって、それが衝撃的だったのです。顔が近づいてきたらよけてしまうような感覚です。
そのキャラクターがしゃべったり、動いたり、あるいは触ろうとしたりすると、「ああ、これは違うんだな」と、実在するものではないのだなと感じてしまうのですが、先に感じた実在感があるゆえに、かなり強く衝撃を受けました。そして、この感覚がとても独特で、VRならではの体験だと思ったんです。
“実在する”とういう感覚と、“実在しない”という感覚をうまくコンテンツに落とし込めないかなと何となく考えていていたところが、本作を作るスタート地点でした。時が止まっている、見えないという設定は、実在感と非実在感を隔絶した感じを再現するための舞台装置となっています。
このようなことをやりたくて、本作は作られています。ここまでがイントロダクションという形です。
僕自身、この作品について考えていた時に、商品化ができるのかと思っていましたが、PS Awardの表彰式のあとに山際眞晃さんとお話する機会がありまして、ありがたいことに興味を持っていただいて、本作のプロジェクトがスタートしました。
――特徴的な作品だと思うのですが、開発についての経緯をお聞かせください。
宮崎:先ほどお話しした着想があって、SIEさんに許可をいただけたということが1つとしてありまして、もう1つは、我々フロム・ソフトウェア的にいくつかの意図がありました。
まずは、VRテクノロジーを何らかの形で触れておきたかった点があります。少し触るということではなく、実際に開発してみなければわからないことはたくさんあると思うので、しっかりと触れたかったのです。
2点目は、フロム・ソフトウェアとして多彩なゲームを作りたいというところです。幅のある、多様性のあるタイトルを開発していきたいという話がありました。
フロム・ソフトウェアでは、過去に『エコーナイト』といったアドベンチャーゲームを出しているのですが、『エコーナイト』のような方向性で何かのタイトルをできないのかという話がありましたが、現代では難しいという結論に至りどこかでチャンスをうかがっていました。
3点目は規模感の多様性も欲しかったというところがあります。すべて大規模タイトルになってしまうと、どうしてもチャレンジできない部分が出てきてしまうので、比較的小規模なプロジェクトでチャレンジャブルなものをやることが社内にあれば、多様性が生まれるのではないかと思いました。
4点目としては、フロム・ソフトウェアの作品には意欲作のようなものもあり、すべての人が賛同してくれるようなタイトルではないのですが、僕自身が意欲作を作るフロム・ソフトウェアが好きで、こういった部分を残していきたいという意図もありました。
この4点を合わせると結構マッチしていて、綺麗にまとめられるのではないかという結論に至り、プロジェクトがスタートしました。なので、今までとはまったく違うものになっています。
――本作が発表されて生の反応を見る機会はあったと思うのですが、その反応を見ていかがでしたか?
宮崎:メディアさんの反応は別にして、僕はユーザーさんの反応は見ないことにしています。メンタル的にも弱いので(笑)。なので、タイトルの発表直後や発売直後は、普段見ない政治のニュースなどを見て、あとで統計されたデータを客観情報にしたものを見るようにしています。山際さんはいかがですか?
山際眞晃さん(以下敬称略):クローズドで出展したので一般のユーザーの方は触れていないのですが、メディアの方に触っていただいて、結構楽しんでプレイしていただいているように感じました。そういう光景を見ると興味を持っていただけたのかなと思います。
宮崎:そうですね。メディアさんの反応を見ている限りだと、新しいことにチャレンジすることに賛同していただけたのかなと思います。
本作は情報が断片的で、それを集めて解釈して、謎を追ってストーリーを進めるという点が強調されているタイトルです。この部分が好きな人にはすごく刺さると思います。
――具体的なゲーム内容はお話できないと思うのですが、どのような体験ができるのでしょうか。
宮崎:VRゲームというとVRならではの刺激のあるものが大半だと思うのですが、本作はVRゲームとしては変わったアプローチをしています。
詳しくはお話できませんが、皆さんの想像をいろいろな意味で裏切っていくものになっていると思うので、そこを気に入ってもらえたらうれしいです。
――プレイヤーができることでゲーム内のキャラクターたちに干渉して手助けをしていくことが、ゲームの目的なのでしょうか?
宮崎:基本的なシステムのラインとしてはそうです。妖精として世界から隔絶されているがゆえに、間接的に干渉することでかかわっていきます。かかわることで物語も変わっていきます。
――感情にフォーカスしたような印象を受けましたが、そのあたりは意識したのでしょうか?
宮崎:ゲーム自体はいくつかの感情を感じてほしくてデザインされています。隔絶されている存在だからこそ、たまに変化が起こるとうれしくなるような。感情自体がテーマだと考えたVRタイトルなので、とても制作が難しかったです。
ユーザーさんには、難しく考えずに素直な気持ちでプレイしていただけたら、楽しめるのではないかと思っています。
――本作のゲームプレイにはPS Moveモーションコントローラーが2本必要ですが、この遊び方を採用した理由をお聞かせください。
宮崎:本作は探索がメインになります。コントローラーが1本だと探索行為の体験が劣化してしまうので、2本にさせていただきました。1本だとやはり単純になってしまいますし、自分が妖精としてそこにいる感覚が薄くなってしまうと感じました。
山際:作っていく過程で、もちろん1本でもプレイを検証したのですが、どうしても世界感に浸るという体験が薄くなりました。また、やれることもどんどん追加していった結果、両手があったほうが楽しめると思ったのです。
宮崎:実在感・非実在感をテクノロジーの限界ではなくて、世界観として感じてほしいと思っています。両手がないと没入感をあまり感じられないですし、テーマに合わないと感じました。
そもそもVRの実在感・非実在感を世界観に落とし込んだものを製作しているので、没入していただかないと意味がなくなってしまいます。そういったことからコントローラーは2本使うことに決めました。
山際:ユーザーさんには負担がかかって申し訳ないと思いますが、ぜひ遊んでもらえたらうれしいです。
――今回キャラクターに関する情報が発表されていないのですが、今後発表される予定はありますか?
宮崎:現状では決まっていませんが、僕個人の意見だと、ゲームをプレイしたうえで自分たちで知ってほしいと思っています。
山際:ストーリーを追いかけていくゲームなので、キャラクターの詳細を全部出すということは考えていません。皆さんの反応も含めて、そのあたりは検討したいと思っています。
宮崎:キャラクター自体はフロム・ソフトウェアらしくはないと思います。ただ、僕ら開発陣は本作のキャラクターが結構好きなので、ユーザーさんにも好きになってもらえたらうれしいですね。
――ちょっと小耳にはさみましたが、女の子がすごくかわいいということを聞きましたよ。
宮崎:はい。すごくかわいい子を目指しました(笑)。実は世界観を決めていくうえで、選んだ題材は古典的な少女漫画なんです。舞台やキャラクター像、設定は結構参考にしました。
フロム・ソフトウェアとしても、こういったキャラクターを作る機会があまりなかったので、新たなチャレンジができて楽しかったです。
――最後に、記事を読んでいるファンへのメッセージをお願いします。
山際:やっと発表できて、とてもよかったと思っています。いろいろと多様な意見をいただいて、とても励みになっています。発表までどのような反応があるのかドキドキしていたのですが、好意的な意見をいただけたので非常にうれしいです。
皆さんの期待にに応えられるようなゲームになっていると思うので、ご期待ください。
宮崎:近年のフロム・ソフトウェアのゲームは難しいからと敬遠している方はいらっしゃるかと思いますが、本作はそういった難しさはないと思っています。
フロムの王道とは異なっているかもしれませんが、ぜひ遊んでみてください。
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※本作のプレイにはPlayStation Move2本が必須です。
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