2018年6月30日(土)
ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。本記事では、PC用ソフト『Smoke and Sacrifice』のプレイレポートをお届けします。
『Smoke and Sacrifice』は、我が子を生贄にすることを強いられた母親が、その残酷な行為の裏にある真相を求め、異様な煙が満ちた地下世界を探索するアクションRPGです。
プレイして一番おもしろく感じたのは、装備や道具、食糧をすべて自前で調達して地下世界を生き抜かねばならないサバイバル性。オーソドックスではありますが、素材を集め、必要なアイテムをクラフトし、徐々に行動範囲を広げていくゲームサイクルがクセになります。
本作はSteamのストアページに“日本語非対応”と表示されていますが、リリース後のアップデートで対応が完了しており、プロパティから日本語を選ぶことが可能です。また、海外向けにはNintendo Switch版も配信されています。
▲日本語のテキストは、一部におかしな翻訳がないわけではないですが、全体としては問題なくゲームを進められると思います。 |
本作で最初に衝撃を受けたのが、ゲームではめずらしい“母親が主人公”という設定とストーリーです。しかも我が子を生贄に捧げるという……なぜそんなことになったのか、ソフトを買う前から物語の行く末やダークな世界観が気になっていました。
主人公のサチが暮らす世界は、凍土に覆われており、“太陽の樹”という謎の装置の恩恵によってわずかに人の住める土地を維持している状況です。
▲ゲーム開始後にちょっと村の周囲を歩くと、いきなり主人公が凍ってびっくり(笑)。 |
▲これが太陽の樹。人々に耕せる土地をもたらし、生活を守っています。 |
人々の住む村には、太陽の樹を崇める信仰があり、その司祭たちが指導者となって村を治めています。そして、司祭らの執り行う“初子の儀式”……。
この儀式は、初めての子どもが生まれたら太陽の樹に生贄として捧げ、村の繁栄を願うという風習です。
生贄に捧げた子どもは死ぬわけではなく、太陽の樹が別の場所で育てているという話を聞けるものの、当然、サチには何の慰めにもなりません。
しかし、この時の彼女には他になす術もなく、「ごめんなさい、かわいい坊や」と涙して村の風習に従います。
▲あふれる涙をこられきれず、我が子に謝りながら祭壇に捧げるサチ。 |
それから7年後、物語は大きく動き出します。太陽の樹に異常が発生し、凍土に生息する巨大な化け物“バグベア”らが村に押し寄せて来たのです。
▲村を治める司祭らにバグベアの襲撃を知らせるため、サチは神殿に走りますが……。 |
混乱の最中、サチは、生贄を捧げる祭壇が地下世界につながっているという秘密を知ります。そこは、人に害をなす煙が充満し、異様な光景が広がる世界。ですが彼女は、我が子に再会できるかもしれないという希望を胸に、危険な地下世界を探索していきます。
▲謎の人物の助けを借りながら、サチは、太陽の樹と生贄にまつわる真相を確かめるため地下世界へと降ります。 |
地下世界にどんな真相が待ち受けるのか? サチは我が子と再会できるのか? そこは実際のプレイで確かめてほしいところですが、ストーリーを通じて感じたのは、“母は強し”だなと。
ゲームプレイからも、武器や道具は自給自足で困難を乗り越えていくサバイバル体験の泥臭さに、子どものためになりふり構わない“母親の強さ”を想像してしまいました。
主人公のタイプとしては異色ですが、とても印象に残るキャラクターですね。
▲世界観やストーリーのダークさが、サチの母性を浮き彫りにしている部分もあります。 |
プレイヤーがサチを操作して冒険する地下世界は、時間の概念があり、煙の充満する時間帯と煙の晴れる時間帯が交互に訪れます。
煙の中を歩いていると徐々に体力が奪われるため、煙から身を守るためのランタンが必須。まずは、ランタン作りに必要な素材の確保とアイテム作成から手をつけることになります。
サチは裸一貫で地下世界に降りたので、必要なものは何でもクラフトするのです!
▲ランタンの光源は、地下世界のいたるところに生息する不思議な虫。捕まえるのにはネットを作る必要があります。 |
フィールドを覆う煙は、体力だけでなく、サチの視界も奪います。ランタンで煙を晴らして、徐々に地下世界の姿を明らかにしていくプレイ感は、探索の醍醐味と、本作の世界観を味わえるポイントかと思います。
基本的にはクエストに従ってプレイすれば物語を進められますが、フィールドにはレシピや宝箱も点在しているので、寄り道が好きな人であれば、地下世界の隅々まで探索してみたくなるでしょう。
▲フィールドで見つかるレシピは、書き写すためのアイテムが必要となります。また、クエストからレシピを手に入れるケースも多々あります。 |
▲地図は探索した場所が埋まっていきます。宝箱やレシピなども表示されるので、後から取りに行く時に便利。なお、公式サイトでは全マップが公開済みです。 |
極寒の雪原地帯や漏電する工場地帯、灼熱の溶岩地帯など多彩なフィールドが存在し、それぞれの場所で特徴ある素材集めやバトルを体験できるのもいいところ。キノコを食べて凍ったり、果実を採集して爆殺されかかったり、ユニークな体験ができます。
なお、煙に覆われる時間内は“煙の幽霊”という強敵が出現するので要注意! この敵を見かけたら、序盤はさっさと逃げるのが吉です。他にも巨大なタイプの敵は危険なので、見かけたら用心し、装備の状態を確認しておきましょう。
ちなみに、すべての装備品や採集道具には耐久値があります。レベルやスキルの概念がなく、キャラクターの強さが武器と防具に依存している本作では、装備の耐久値が死活問題なので、プレイのいい刺激になるはず。
▲装備品は修理できますが、アップグレードすると耐久値がMAXに戻ります。覚えておくとお得です! |
そしてサバイバルに欠かせない(?)食糧ですが、これは本作だと回復アイテムの扱いとなり、空腹度などのステータスはありません。ただし、体力の回復手段が飯オンリーなので、食糧の確保が命綱になるという部分でのサバイバル感はあります。
▲食材は、時間の経過でだんだん腐っていく(耐久値が減っていく)ので、保存期間を気にせず持ち歩くには調理が必要です。 |
▲宝箱は収納ボックスの代わりにもなって、ここに保存した食材は耐久値が減らなくなります。 |
装備の耐久値に注意を払い、時に死の危険を感じながら、バトルや採集で素材を集め、主人公の強化と地下世界を生き抜くのに必要なアイテムを作る。そのサバイバル性が、未知の世界を探索してワクワクする気持ちと相まって、ほどよいドキドキ感を楽しめるゲームになっていると思います。
▲ストーリーの節目ではボス戦もあります。 |
なお、本作はサバイバル性の強いゲームですが、拠点を築き上げるような要素はないので、その点はあしからず。また、リソースは実質的に無限でアクションの難易度も高くないので、ハードコアなゲームを期待すると、ちょっと物足りないかもしれません。
逆に難しいゲームは求めていないけど、サバイバルや探索のおもしろさと雰囲気を楽しみたい人には、丁度よいゲームだと思います。
クリアまでは20時間ほどで、ストーリーを優先して必要な探索だけで終えればもう少し早くエンディングに到達できるはずです。手軽に遊べてそれなりのボリュームを堪能できるゲームを探している人は、プレイしてみてはいかがでしょうか。
Smoke And Sacrifice & (C) Solar Sail Games.Licensed by Curve Digital.
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