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2018年6月26日(火)

ハクスラを突き詰めた『MU LEGEND』開発&運営陣インタビュー。LV65までをチュートリアルとした理由は?

文:長雨

 Webzen Japanが運営するPC用MMORPG『MU LEGEND(ミュー レジェンド)』の開発&運営スタッフへのインタビューをお届けします。

『MU LEGEND』

 本作は、2004年から続く人気MMORPG『MU-奇蹟の大地-(以下、MU)』の後継作であり、シンプルな操作で爽快感あるバトルが楽しめるハック&スラッシュ形式のMMORPGです。

 サービス開始から約1カ月が経過したことをうけて、開発プロデューサーであるhong sung jin氏、企画チーム長のkim sang hyeon氏、日本運営プロデューサーの金子忠将氏に、作品へのこだわりや今後の展望をうかがいました。

『MU LEGEND』
▲左からkim sang hyeon氏、hong sung jin氏、金子忠将氏。

ユーザーがスムーズに遊べるシステム作り

――日本でのサービス開始から1カ月が経過しました。現在の率直な感想はいかがでしょうか?

金子忠将氏(以下、金子):おかげさまで、サービス開始からたくさんのお客様に遊んでいただいています。しかし、1カ月経ったことで問題点も見えてきました。昨日も丸一日改善点の会議をして、より皆さんに楽しんでいただけるアップデートや仕様調整を進めています。

hong sung jin氏(以下、ホン):韓国サービス、グローバルサービスに続き、日本でもサービスを開始できてうれしいですね。大きな不具合もなく、安定してサービスを提供できていてよかったです。

kim sang hyeon氏(以下、キム):韓国とは違った形で日本のユーザーの皆さんが遊んでいるので、見ていて楽しいです。また、これからどんな形で展開していくかも気になっています。

――最近では、MMORPGだった作品の新作がモバイル向けアプリとして多く配信されています。そんな中、あえてPCを選ばれた意図は?

ホン:モバイルでたくさんのゲームが開発されていますが、『MU LEGEND』のテーマであるハック&スラッシュを表現するには性能的に足りない部分があります。ハック&スラッシュを最大限に活かせるハードとして、PCで開発を進めている状態です。

――ちなみに、韓国のゲーム情勢的はどうなっているのですか?

ホン:やはり韓国でもモバイルの方が強くなっていて、タイトルもたくさんあります。ただ本作のようなハック&スラッシュなど、ジャンルによってはPCオンラインゲームの形を採る作品もあると思います。

『MU LEGEND』

――本作はハック&スラッシュとMMORPG要素がうまく融合していると感じました。開発で特に意識されたことはありますか?

ホン:ハック&スラッシュなのですが、もともとはMMORPGをベースにしています。『MU』は、どこで何をすればいいのかわからないというガイド不足の面もありました。『MU LEGEND』ではそういうことがなく、ユーザーさんが自然に次のコンテンツに進めるように注意して作っています。

――ユーザーになじみのある各種UIや進めやすいクエストも、遊びやすさを追求してのことでしょうか?

キム:そうですね。ユーザーの皆さんが戦闘の楽みやすいように、「攻撃しているのか? 攻撃されているのか?」といった状況が一番わかりやすいクオータービューを採用しました。ボスを倒すところまではある意味チュートリアル的な部分なので、早く成長できるようクエストもスムーズにしています。

――クエストとは逆にボスを歯ごたえのあるものにしているのは、どんな意図があるのでしょうか?

キム:ボスを強大にしているのは、倒した時の爽快感や達成感をより高めるためです。ボス戦はそれなりに高難度かもしれませんが、動きやパターンを研究しながら遊ぶ楽しみもあると思います。

『MU LEGEND』

『MU』のIPを生かしつつより楽しさが伝わりやすいハッシュ&スラッシュへ

――世界観を同じくされている『MU』と本作は、どのように差別化を図っているのでしょうか?

ホン:IPこそ共通していますが、世界観は『MU』の1,000年前と大きく違っています。また、ジャンルがハック&スラッシュになったことが1番の違いですね。韓国版では“カオスキャッスル”が登場していますが、『MU』のいいとこ取りをしつつ、本作にあわせて発展させています。逆に、アイテムや成長要素は『MU』を遊んでいた人になじみ深いものを多く取り入れています。

――カオスキャッスルは、いつごろ日本版に実装される予定ですか?

金子:まさか、ここでその話が出てくるとは。ほかのコンテンツとの兼ね合いもありますが、早めに入れられますかね?(笑)。

キム:頑張ります(笑)。

金子:『MU』ユーザーの方になじみ深い要素といえば、“祝福の宝石”を使用した時に鳴る「キーン」というドロップ音。そう言うクセになる部分は、本作にも引き継いでいます。

 他にも、『MU』では人物名の入ったアイテムがありましたが、本作ではその人物がキャラクターとして存在しています。例えば“ルネディルのメロディハープ”。本作ではルネディルはエルフの女王として登場しています。すべてではありませんが、そういう風に『MU』の要素を感じられるのはファンにとってうれしい要素ではないでしょうか。

『MU LEGEND』

――そもそもジャンルをハック&スラッシュにされたのはなぜでしょうか?

ホン:『MU』はいろいろな操作をしなくてはならず、コントロールが難しい部分がありました。ずっと遊んでくれている30代や40代のユーザーの皆さんに、続編の世界観に浸りつつ爽快感のあるプレイをしてもらうのはどうしたらいいだろう、といろいろ考えました。その結果、一番簡単で戦闘の楽しさを体験できるのはハック&スラッシュだろうという結論になりました。

――『MU』を遊んでいたユーザーが大人になり、昔ほどゲームをプレイする時間が少なくなっていると思います。そういう部分も考慮しているのでしょうか?

ホン:そういう部分もありますね。MMORPGは無限成長や競争など、どうしても時間がかかって疲れてしまいます。本作では短い間でもプレイしたら楽しく、確実に成長しているのがわかるように設計しました。

ホン:最初はコンテンツをいい状態に発展させることを考えたので、まだイベントや運営的なサービスに足りない部分があります。韓国でも対策を立てながら実装しているので、日本でももっとユーザーさんが楽しめる環境を作っていきたいと思います。

――具体的には、どのような対策をされる予定でしょうか?

金子:ちょうど、6月15日の公式生放送で急きょ決定したことがあります。本作ではさまざまな能力があるアーティファクトを入手でき、それを装着するとキャラクターを強化できます。しかし、これによって課金ユーザーと無課金ユーザーで大きな差が出てしまっているので、アーティファクト入手の敷居が低くなるような調整を今後入れていきたいと思っています。

 アーティファクトの製作やレベル上げができる“ルパの迷宮”の獲得経験値や報酬、難易度の下方修正をなるべく早く行います。そこは、開発チームにも約束してもらっていますし、さらに開発側でひとひねりを考えてくれているそうなので、楽しみにしていただきたいです。

――ひとひねりの内容も気になりますね。

金子:1日1回しか入れないけど、素材を多く獲得できるダンジョンを追加してもらうという話も出ています。まだ韓国にも実装されていないので、実現するかわからないですけど……。

――日本先行のコンテンツが実装されると、韓国と日本で別の流れが生まれそうですね。

金子:基本的な流れは一緒なのですが、アップデートの順番を入れ替えることはあると思います。ユーザーの皆さんの声は私もチェックしているので、それを取りこみながらいい方向に進めていけたらと思っています。

『MU LEGEND』

――ユーザーの声といえば、公式サイトの掲示板で“アイテムのまとめ売り機能がほしい”、“強化効率を上げてほしい”などの要望が寄せられていました。こちらに対応する予定はありますか?

キム:“アイテムまとめ売り”は韓国で始まっていて、今後日本でも実装予定です。この機能が入れられなかった理由は、アイテムの構造上いろいろなシステムに影響してしまうため、アイテムをまとめるということができませんでした。

 日本でアップデートする時も、その問題を解決しなければいけないので今すぐとはお約束できませんがなるべく早く実装できるようにがんばります。

金子:“強化の成功率”に関しては、日本ではすでに緩和した状態で実装しています。韓国では4~7段階目の強化に失敗すると一段階下がる仕組みだったのですが、日本では下がらなくなっています。こういったところは、ストレスなく遊べるように調整していますね。

 また、日本運営からも“セットしたスキルを削除できるようにしたい”など、いくつかの要望を出させていただいています。通常スキルと移動がどちらも左クリックのため、移動だけに使用したいという意見はずっとありますが、そこはシステム的に難しいとのことです。

ホン:最後に、“ムービー音量が大きくてびっくりする”という意見が寄せられていますが、開発でヘッドホンを付けずにプレイしていたので気がつきませんでした。びっくりさせてごめんなさい、すぐに修正します!

金子:他にも、寄せられている要望や意見はつねにチェックし、「修正するべきか? 修正可能なのか?」を精査しながら、可能な限り対応を進めている状況です。

『MU』のストーリーとのリンクも

――先ほどルネディルのお話もありましたが、破壊神・セクネウムなど『MU』の要素がストーリーに深く関わってきたりするのでしょうか?

キム:本作にも『MU』でおなじみのキャラクターが登場しますが、ストーリーの視点が少し違っています。今回はプレイヤーが『MU』で太古の英雄とされていた人物を助け、本当の英雄にしていくという形になっています。

――『MU』を知っているとより楽しめる要素はありますか?

キム:基本的には、『MU LEGEND』のみで完結して楽しめるようになっています。ただ『MU』で最大の敵となるクンドンが、本作では英雄なんですよ。そのため『MU』を遊んでいる人は、最大の敵が目の前にいるのに気がつかない……そんな切ない展開も楽しめると思います。

ブレイダーは見た目で損をしている!?

――現在4つのクラスを選択することができます。それぞれのクラスの特徴やおすすめスキルを教えていただけませんか?

キム:それでは、ダークロードからいきましょうか。他のMMORPGならタンク(防御役)やヒーラー(回復役)などロールが決まっていますが、ダークロードは両方こなせるキャラクターです。他のキャラを指揮したり、復活させたり、成長後はダメージディーラー(攻撃役)の役目もこなせるのでパーティプレイが好きな方に向いています。おすすめスキルは“レストリクト”で、これは欠かせないですね。

金子:周囲の敵を一箇所に集められるスキルです。

キム:本作では職業の役割が1つに決められていません。編成によって、いろいろな役割をこなせるのがポイントになっていると思います。

――ブレイダーはいかがでしょうか?

キム:ブレイダーは簡単操作で、爽快感を楽しめます。成長も早く、スピードも速いですし、MMORPGになれていない人でもダメージディーラーとして活躍できます。スキルに関しては、敵を突破して進める“真空斬”がおすすめですね。

金子:かなり強いクラスですが、日本ではイマイチ人気がないんですよね。性能はすごくいいので、使う人が増えてほしいです。

キム:ハンサムじゃないからじゃないですか(笑)。韓国では、PvPでもPvEでも活躍するので一番人気があるクラスです。

――ウォーメイジについて教えてください。

キム:全クラスの中で一番バランスがよく、韓国では冗談交じりに「開発が楽しく遊ぶために作ったクラスでしょ」と言われています。見た目から魔法系の印象を持たれますが、実は魔法剣を装備して殴るのが強いです。おすすめスキルは、自分が無敵状態で敵にダメージを与えられる“ブラッドシーカー”ですね。

――ウィスパラーの特徴やオススメスキルは?

キム:唯一遠距離攻撃ができますが、操作がもっとも難しいキャラクターだと思います。広い範囲に攻撃できるうえに攻撃力も高いので、腕に自信がある方は1人で大ダメージを出せると思います。おすすめスキルは“セレスティアルアロー”です。

金子:ドバババッと矢を放つスキルですね。唯一の女性キャラなので使う人は多いですが、操作性は難しいかもしれないですね。まあ、いろいろな意味で“女性は難しい”ということで(笑)。

――ゲームに慣れていない方が使うとしたら、どのクラスが一番遊びやすいですか?

キム:やはり、ブレイダーですね。やることがシンプルでわかりやすいですし、ミスをしても周りに気づかれにくいです(笑)。ダークロードも使いやすいのですが、ミスが伝わりやすいので、野良で遊ぶ時などはブレイダーが気楽に遊べます。

金子:ダークロードは回復ができるのでありがたがられますが、そのぶん目立つし責任が重いんですよね。でも、日本版はある程度バランスを調整された状態でリリースされているため、おふたりが言っているほどの大きな性能差はないと思います。

――ちなみに日本と韓国の各クラスの人口はいかがですか?

キム:韓国ではアップデートによって人気がコロコロ変わりますが、現在はウォーメイジに人気が集まっています。一時期はウィスパラーが弱いというイメージもありましたが、最近では強さが認知されて人気が上がってきていますね。

金子:日本での使用率はウィスパラーとウォーメイジとダークロードが横並びで、越えられない壁があってブレイダーです(笑)。説明があったように強くて使いやすいクラスなのですが、やはり外見で避けられている印象があります。

――プレイスタイルでも、両国で違いはあるのでしょうか?

金子:ダークロードはシールド&メイス、またはハンマーを装備できますが、韓国ではどちらの使用率が高いですか?

キム:普通は片手武器2つを持つ組み合わせが多いのですが、ダークロードだけは両手武器(ハンマー)を持つ方が多いです。そのため配信から1年間、戦闘力1位のキャラクターはずっとダークロードが占めています。そして、ダンジョンやパーティによって、武器を考えるユーザーさんが多いらしいです。

金子:日本も同じようになると思っていました。でも、上位のユーザーさんはシールドメイスが多くて、よりロールプレイを重視してタンクとして遊んでいる方が多い印象ですね。

キム:武器を強化するのは大変なので、最初から両手に武器を持つというのは難しいかもしれません。今後はどちらが効率的かということで、変わっていくかもしれませんね。

今度も既存コンテンツをより深く、つねに新しい要素を探求

――好きなコンテンツのアンケートで“キャラクターや装備の育成/強化”が約45%、“ダンジョン攻略”が約19%と上位を占めています。この数字は多いと思われましたか、少ないと思われましたか?

キム:本作のテーマは、“さまざまな成長要素と無限の成長”です。そんな中、成長要素が45%もユーザーに支持されていることを知り、テーマが伝わっているなとうれしく思います。一方、成長の要素の1つとして、ダンジョン攻略があると考えていました。そこが低いというのはまだ伝わっていないということなので、強化していきたいです。

――韓国ではすでに、多くの新要素が実装されています。それぞれの特徴や、韓国での反響を教えてください。まず“勢力戦(大型PvP)”はいかがでしたか?

キム:多くのユーザーが楽しめるように、苦労しました。結果的には、たくさんの方に遊んでもらえています。開発側としては難しいのではと思っていたのですが、いざオープンすると皆さん戦略的にプレイしていて感動しました。日本ではどんなプレイを見せてくれるのか楽しみです。

『MU LEGEND』

――新クラス“エンファサイザー”は?

キム:ウィスパラーを上回る美しさで、とても喜ばれています。特にコスチュームが人気で、日本でもそうなるのではないかと期待しています。このクラスはスキルに特徴があって、敵を誘惑したり、ニワトリに変身させたりします。操作も簡単なので、ゲームを始めたばかりの方でも楽しめると思います。

『MU LEGEND』

――韓国では新ダンジョン“死者の奈落、炎魔の洞窟/氷魔の洞窟”も実装されていますね。

キム:韓国では実装されてしばらく経つダンジョンなのですが、他のダンジョンにない要素があるので、今でも多くのプレイヤーが挑戦しています。

『MU LEGEND』

――アップデートやイベントなど、今後の展望を教えていただけますか?

ホン:方向性としてはPvPなどではなく、最初のテーマである“無限の成長”を楽しめる要素を追加していきたいです。

キム:チーム内で企画のアイデアを考える時、いつも心に置く言葉があります。「すでにあるものはより深く、新しいものはよりバリエーション豊かに」。これを守り、既存のものをより深くするには何をしたらいいか、新しいものはなにかないか、つねに両方のアイデアを持っていけるようにしています。そのため今後の展開も、その方向で進めていくと思います。

 またクオータービューとMMOと結びつけるのが難しくて、まだまだ満足できていない部分、取り入れたい要素もあります。そこを改善しながら開発していきたいです。

金子:開発の方から話もありましたが、キャラクターの成長を本軸に進めていきます。とはいえ、本作はハック&スラッシュであると同時にMMORPGであることも忘れてはいけないと思っていて、新規ユーザーが遊びやすい施策も実施していくつもりです。

 既存ユーザーにストレスを与えないようなジャンピングも練らなければいけませんし、新規ユーザー向けのイベントもやっていけたらなと思います。

――最後に、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

ホン:韓国のユーザーからもレベル65になるまでは早いけど、それ以降どうすればいいのかわからないという意見が出ています。実はレベル65まではチュートリアルのようなもので、本番はその先に待っているコンテンツです。

 また、これはMMORPGですので、ゆっくり長い目で楽しめる設計になっていますし、すでに実装されている要素もあります。課金しても無課金でも楽しめるゲームを作っています。

――65からというと、定年後のセカンドライフみたいですね。

ホン:実際韓国でも、60歳以上が集まった騎士団があります。その方々が若いプレイヤーと遊んでいる姿を見て、簡単で楽しめるという作品の狙いがユーザーに伝わっているなと思いました。その楽しみが、日本のユーザーさんにも伝わったらうれしいです。

キム:本当に60代なので、チャットを見るとおもしろいです。

金子:日本でも50代、60代のユーザーは確認されています。そうなったら、いいですよね。

キム:補足なのですがユーザーさんが成長していく時は、悩まずに進めるようになっています。でもレベル65からは要素が多く、何を選べばいいか悩む方が多くなっているので、今後も改善していくべきところだと思っています。レベル65以降のプレイガイドなど、みなさんが楽しめる施策を考えています。

金子:僕も以前、今おふたりが話してくださったのと同じことを話していました。開発と日本運営と想いが一致していることを確認できて、安心したところがあります。それをどう実現していくかだと思うので、皆さんの意見をしっかり把握して開発に届けます。一緒に、『MU LEGEND』をよりよい方向にしていきましょう。

『MU LEGEND』

(C) Webzen Inc. All Rights Reserved. The MU LEGEND logo and Webzen logo are trademarks of Webzen Inc.

データ

▼『MU LEGEND』
■メーカー:Webzen Japan
■対応機種:PC
■ジャンル:MMORPG
■配信日:2018年5月16日
■価格:基本無料/アイテム課金

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