News

2018年8月23日(木)

セガ×立命館大学映像学部×SOU・SOUのコラボ立案者を直撃。連携授業の一環のはずが海外ファンにも大反響!?

文:たく坊

 セガゲームスと立命館大学映像学部×SOU・SOUの産学連携プロジェクトとして発表されたコラボ企画商品『高砂足袋 いろは底 SONIC×SOU・SOU』・『足袋下(普通丈) SONIC×SOU・SOU』について、本企画の製作者にインタビューを行いました。

“SONIC×SOU・SOU”
▲手前左から中村さん、若林さん、宮崎さん。

 本プロジェクトは、立命館大学映像学部が、セガゲームスとの授業の一環として開始された企画です。“ソニック・ザ・ヘッジホッグ”を大学生のアイデアでプロモーションする”というテーマのもと、同学部の受講生が日本の伝統的な履物である足袋に注目し、京都を中心に展開するブランドSOU・SOUと協力して『ソニック』シリーズ初のコラボレーション足袋の発売が決定しました。

 インタビュー対象者は、セガゲームス国内アジア事業部副事業部長・宮崎浩幸さん、立命館大学映像学部教授・中村彰憲さん、SOU・SOU代表取締役・若林剛之さん、立命館大学の学生たちです。

 本企画商品は8月23日より一般販売が開始されます。なお、インタビュー中は敬称略。

立命館大学とセガゲームスが連携する授業で本企画がスタート

――本企画は、中村さんが考案したのでしょうか?

中村:映像学部の授業の一環なんですけど、昨年の9月の最終週から、1月の第1週まで“プロデュース実習”という企画コンペなど企画コンペを行う授業をやっていました。もともと81人の学生が、約10人1チームからなる8チームにわかれていろいろ企画を考えるんです。

 まず大きな企画案を提示して、そこで第1回審査をセガさんに行っていただいて、その2つの大きな案をもとに、またそれぞれ40人くらいの2チームを再編成して最終提案をしてもらおうという感じになっています。それで最後に選ばれたのが本企画でした。

 企画が1月に決定して、4月までの間はセガさんとSOU・SOUさんと、商品デザインなどのビジネス的な部分をしっかりを詰めていただきました。だいたいその時までには、7月の中旬から下旬に商品が出るめどが経っていたので、それを踏まえて学生にそれをどう盛り上げていくのかを考えさせました。そして実行したのが、4月から現在までの状況ですね。

“SONIC×SOU・SOU”
▲『高砂足袋 いろは底 SONIC×SOU・SOU』
“SONIC×SOU・SOU”
▲『足袋下(普通丈) SONIC×SOU・SOU』

――Twitterなどの宣伝は学生さんが考案したのですね。なぜTwitterを利用しようと思ったのでしょうか?

学生:最初はインスタグラムで考えていたんです。やはりおしゃれなデザインですし、ファッション系はインスタグラムから発信されているものが多いような印象があったので。

 しかし、インスタグラムの企画を出した時に、セガの広報担当の皆さまから「もっと購入層を意識した企画にした方がいいんじゃないか」とアドバイスをいただきました。

 購入層を意識すると、『ソニック』が前面に出ているデザインなのでファッション重視の方よりもどちらかというと『ソニック』のファンの方が注目するのではないかと。Twitterのフォロワー数や『ソニック』の話題のツイート数を調べてみたところ、インスタグラムと比べてTwitterの方が圧倒的に多かったので、そちらを選択しました。

――なるほど。購入層の意識ということですが、『ソニック』は海外のファンがかなり多いと感じていますが、その点はどうお考えでしょうか?

学生:京都で企画をやるにあたって、京都は大学が多い、学生が多いというイメージがあり、若者を中心にやっていこうとも思いました。しかし『ソニック』のことを考えると、海外の人気がすごいことは、調べてても話を聞いていてもわかったので、海外の人をメインターゲットにすることは、企画段階で考えていました。

 実際、商品を買った人がYouTubeで動画などをあげてくださり、コメント欄のところに、日本語よりも外国語が多くコメントで流れていて、やはり海外の人気はすごいことを実感しました。そのため、海外の人をターゲットに当てることはあながち間違いじゃなかったというか、そちらに焦点を当ててよかったということはありましたね。

――本企画の商品について、足袋以外のグッズを出すことは考えられたのでしょうか?

中村:もともとコンペの段階で、“『ソニック』か『ぷよぷよ』を用いて京都を盛り上げる”というテーマでやっていたので、いくつものアイデアは出ました。和菓子であるとか、京都をテーマにしたコラボとか、京都の場所を使ってイベントをやるとか。

 本当に多種多様のアイデアが出てきたんですが、その中である程度選別して、『ソニック』側と『ぷよぷよ』側のチームにわかれて企画提案をし、最終的に本商品に絞り込まれたという流れでした。それ以外には最初の段階ではファッションショーをするといったアイデアも出ていたんですけど、それは予算・時期・タイミングという視点で採用せずに、現段階でやっているSNSに落ち着きました。

“SONIC×SOU・SOU”

生徒が直々にSOU・SOUへ電話をかけて交渉するやり取りも

――SOU・SOUさんが企画の話を受けた時にはどういうやり取りがあったのでしょうか?

若林:最初は2017年の12月でしたっけ……?

中村:学生たちが企画を実現する前に、どの程度できるのか確認するように指示を出して、1つのグループのメンバーが電話で相談したのが12月の23日だったかと。

――学生さんが直接電話をかけられたのですね。

中村:マニュアルではないですけど、交渉の流れを伝えています。単純に学生という立場でお話するとサークルと間違えられるので、授業という枠組みで担当する教員がいることと、ちゃんと企業と連携していて、そのコンペで優勝したら実現できることを伝えるように指示していました。

 その交渉も、メールだけで終わりにするのではなくて、メールを送ってからすぐ電話をするとか、そういうところも全部細かく、マニュアルになっています。交渉そのものを学ぶ実習の一環でもありましたので。

――大学側からお話を聞いた時、若林さんはどう思われましたか?

若林:僕が電話を取ったわけではないですが、スタッフから報告を受けて、「前向きに検討しましょう」と指示をしたと思うんですね。初めてお会いしたのは、セガさんとなんですけれども、実際にお話を聞いて「そんなにややこしい話ではなく、おもしろそうな話だな」と思ったので請け負いました。

中村:最終案が決まった段階で、すぐにセガさんに訪問していただいたという動きはすごい大きかったと思います。そこが例えば4月のギリギリになってから行った場合、「1月くらいに聞いた話だけど何もなかったな」と感じられるところだったと思うんです。

 それをアポイントメントを取り、すぐに訪問していただいた。そういうところも実現に向けてセガさんが動いてくれていて、こちらとしてはうれしかったですね。

宮崎:やるからには必ず着地をさせるというのは最低条件ですよね。いい企画なので形にしたいし、我々にとっても学生さんにとっても、おそらくSOU・SOUさんにとっても、やりきったというところまでは絶対にもっていこうという意識でした。

“SONIC×SOU・SOU”

――足袋のデザインについて、『ソニック』が前面に描かれていますが、これは企画段階から考えられていたのでしょうか?

若林:その最終デザインは、こちらサイドで考えた感じですかね。こういう図案にして、こういう形でこういう生地にするのは提案させていただきました。

宮崎:『ソニック』の素材はセガから出しています。セガがデザインすると、OEM生産というただ発注しているだけになってしまい、コラボでもなんでもなくなってしまうんですよ(笑)。そのためSOU・SOUさんの方で作ってもらいました。

PVの方針は“MVのような、映像だけで伝わる”こと

“SONIC×SOU・SOU コラボレーション足袋”PV(ショートバージョン)

――PVを作るにあたって、全体的な方針はあらかじめ決まっていたのでしょうか?

中村:PVはPV班の生徒たちが担当しています。

学生:PV班は授業として始まった当初、2つに分かれていたんです。SNS班は形がほぼ固まっていたのでドンドン進んでいったんですけど、PV班がなかなか決まらず、統合してPVを作る班になりました。

 実際作るにあたっては、イメージとしてミュージックビデオ(MV)に近いような、映像だけで見られる作品にしたいという意識がありました。とにかく映像で商品を見せていく方針です。

 こだわったところは、どれだけ女の子をカワイく撮れるかと、どれだけ商品を魅せられるかというところでしたね(笑)。

――ターゲット層が海外ということを意識され、言葉を発さない映像にしたのでしょうか?

学生:企画の詳細についてはあんまり知らない状態で進めていたのですが、『ソニック』の人気は海外にもあり、京都自体が海外からの観光客が多いので、最終的に日本だけではなく海外の方も見られるものにしたいという思いはありました。

“SONIC×SOU・SOU”

――PVを制作されてみて、出来はいかがでしたか?

学生:僕は基本的に企画をたてて、実際の制作はここにはいない2回生や撮影するサークルが担当したんですけど、予想以上の出来栄えだったので、僕個人としてはすごいうれしい限りでした。

――プロの宮崎さんから見て、どう思われましたか?

宮崎:もちろん、SOU・SOUさんのあの店舗を訪れればちゃんといい絵は撮れるんですけど、アップも使っていて、伝えたいところを意識していたと感じました。言い始めたらキリがないんですけど(笑)。自分だったら色味をもうちょっと工夫するとかいろいろありますが、予算を考えたら大したものですよ。

 あとはスマホのサイズを意識して作られていると思いました。パソコンで見るよりスマホで見たほうが見栄えがいいですし、今はみんなスマホで見ちゃいますからね。

日本と海外で売れる比率のイメージは……?

――SOU・SOUさんはこれまでにアニメやゲームとコラボしたことはあるのでしょうか?

若林:ないですね。今回が初めてです。本コラボも僕がやろうと思ったわけではなく、セガさんと立命館大学さんが持ちかけてくれた話で、それを受けたという流れでした。

――数ある『ソニック』グッズでも足袋の商品は初ではないでしょうか。

宮崎:たまたま発売時期がスニーカーと被っちゃいましたけどね(笑)。『ソニック』のイメージって“COOL”なんですよ。でも、日本のグッズとかの海外のキーワードは“カワイイ”なんですよね。

 英語の文脈“カワイイ”という概念がすでにあいまいになって、なんでも“カワイイ”と言う。そのため本商品は、“COOL”と“カワイイ”が合致した商品だと思っています。スニーカーは“COOL”オン“COOL”という感じだけど、足袋は日本の文化みたいなところで、外国の方がそういう感情を抱くかなと。

――購入層のイメージで、日本と海外の比率は想像できますか?

宮崎:全然わかりません。ファンの方が探してきたというだけで、極端に言ったら海外に積極的に売ろうとしてないんですよ(笑)。

学生:PVのコメント欄は9割方海外からのコメントだったので、実際の注目度的には海外の方が高いというイメージです。

宮崎:PVからSOU・SOUさんのサイトに行って購入ができるんでしたっけ? あそこに導線があったらPVを見て買うかもしれないけど、PV見て、探して、買わなきゃいけない……。

学生:PVからSOU・SOUネットショップまでは飛べます。ただサイト内が全部日本語です。

宮崎:なるほど。そこに行っても日本語で操作しないといけない。ただ、最初から作れる量が決まっているので、そこまでゴリゴリに全世界に売っても仕方ない感じはしますね。

――足袋を普段から使われている方はいらっしゃるんでしょうか?

若林:そこまで多くないんじゃないんでしょうか。うちでも月間でだいたい1,500足くらいしか売れてないというか、入荷がない。国産でやっているからなんですが、それくらいしか作れないんですよ。

 某社の靴は年間400万足くらい売れてるらしいですけど、うちのこういうカラフルなテキスタイルな地下足袋だと2万足弱なので、一部の好きな人やそういう人が履いている状況だと思われます。売っているところもそこまでないですから、地下足袋は。

宮崎:東京はかなりの数のお祭りがあるし、狂ったようにおみこしを担ぎたがるから、お祭りとかで履くんではないかな(笑)。

“SONIC×SOU・SOU”

――話は変わりますが、もし中村さんが立命館大学映像学部教授という立場で、ハリウッド版『ソニック』にかかわるとしたら、どういったスタイルで制作したいですか?

中村:僕がハリウッドの映像に? そうしたら北原先生というCGの先生に入ってもらおうかな。彼はセガ出身なんですよね。

宮崎:え!? そうなんですか?

中村:そうなんですよ。もともとナムコにいて、そこからセガさんに行って、CGを勉強した先生がいるんです。以前、セガに在籍していて、アメリカの分科会“SIGGRAPH(シーグラフ)”に毎年作品を出していました。

 そういう大学側の教員とコラボレーションができたらうれしいですね。もしかかわれるのであれば、それが一番かかわる意味があると思います。もちろん無理だとは思いますけど(笑)。

――教員に元セガの方がいらっしゃることに驚きました。

中村:ナムコからいったん映画のプロジェクトで原案とデザインを担当し、もともとアーティストとしてナムコに在籍していたので、しばらくハリウッド映画でも活躍していたと。

学生:ネットで検索したら、セガには1992年から1999年まで、第3AM研究開発部に在籍しているとありますね。

中村:そこでSIGGRAPH(シーグラフ)で毎年入選するようなCGを、セガの人として出していたんですよ。それからフリーになって、愛知万博でも映像を展示しています。レトロフューチャー的な壮大な世界観をモチーフにするのが得意なので、うちの大学にいるコンセプトアーティストのCGとセガの世界観というものを、ステージなりでマッチングできたらおもしろいなと思っています。

宮崎:AMでコンシューマとは違うところだね。『バーチャロン』とか『クレイジータクシー』を作っていたころかな。

中村:CGだけですからねぇ。当時はCGの研究をかなり積極的にやっていたとか。

宮崎:“先進技術で時代の先取”が行動指針だった時代ですね。

中村:当時は一番、そういう雰囲気がありましたね。あの空気は何て言ったらいいのかわからないですけど。そういう時代のアーティストとして、新進気鋭の北原先生が活躍していたと。

――いろいろなつながりがありますね。本企画をきっかけに、今後どのような広がりを期待していますか?

“SONIC×SOU・SOU”

宮崎:産学連携というのはよく聞く言葉で、セガも開発系の部署はわりと産学連携、インターンにも来ていただいています。でもビジネス系のところではあまりやっていなかったところに、今回このような形でやれたので、チャンスがあればまたやってみたいです。だいたいこれくらいまではやれるだろうというレベルもわかりました(笑)。

 例えばパワーポイントの資料にしても、自分たちは洗練されたものを見すぎているので、学生さんが出すものは斬新でした。フォントにこんなに色を使っているとか、メインのカラーでフォントに色を付けているとか、驚きました(笑)。それらを含めて新鮮な経験ではあったので、今後もいろいろとやっていきたいです。

若林:僕も。お話をいただいて、できることであればなんでもやります。例えば今回のコラボ商品がすごくいい評判が出たとして、「そういう評価ならばこんなことしませんか」という風にはなるかもしれません。この先作ったものに対して動きがあるならば、なにかできたらいいなと思っています。

中村:おかげさまで企業さまにご協力いただいて、かつ学生もいろいろ尽力してきたので、このような形でいろいろなメディアさんにも扱っていただきました。すごいうれしく感じていて、それをきっかけに他の企業さんも「立命館大学はこういうことができるんだ」といろいろご提案いただけたら、可能な限り対応させていただくと思います。今回のような企業連携も、さらに続けていければと思います。

 本企画は、1月の段階で商品化まで決まっていても、セガさんと何かやっているということまでしか公開していませんでした。学生たちも全員知っていましたが、一切情報を流さずちゃんとした業界のルールに則って企画を進められたので、メディアのみなさんのご協力をいただけたのかなと思っています。どこかが先出ししてしまったら、こういうことは絶対にありえないので。

 それをやるために、一般的な企業がやるような行程を全部踏んでいるので、今後もこういう実践的な形で授業を行うことによって、産学連携の授業の付加価値を高めていきたいと思っています。

(C)SEGA

関連サイト