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2018年8月8日(水)

『アトリエ オンライン』楽曲を手掛けたACEが作品への想いを語る。オープニング曲はサビを100個作った!?

文:ライターM

 NHN PlayArtとコーエーテクモゲームスが2018年サービス予定のiOS/Android用アプリ『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』。本作の開発者インタビューをお届けします。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

 『アトリエ オンライン』は、『アトリエ』シリーズ(コーエーテクモゲームス ガストブランド)の世界感やゲームシステムをモチーフにした完全新作のRPG。シリーズが持つ魅力を採用しながらもスマホなどで気軽に楽しめるようゲームシステムが設計されています。さらに、オンラインへの対応により多人数での冒険、調合、協力要素などを楽しめます。

 今回、楽曲を手掛けられた音楽ユニット・ACEのCHiCOさん、工藤ともりさんと、池田康隆プロデューサーへのインタビューを行いました。開発時のこだわりや苦労した点、さらに先日のベータテストの反響などを聞いてきたのでご覧ください。

 なお、インタビュー中は敬称略。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』
▲左から池田さん、CHiCOさん、工藤さん。

プロフィール

音楽ユニット・ACE

CHiCOさん(作詞家/作曲家/ヴォーカル/音楽プロデューサー)
工藤ともりさん(作編曲家/音楽プロデューサー)

NHN Play Art

池田康隆さん(『アトリエ オンライン』プロデューサー)

ACEと『アトリエ オンライン』との出会い

――ACEといえばこれまでにも数多くのゲーム関連の楽曲を手掛けていらっしゃいますが、『アトリエ』シリーズはどのようなゲームなのかご存知でしたか?

工藤:実際にプレイしたことはなかったのですが、知り合いの作曲家を通じて楽曲自体は聞いたことがありました。当初はイメージ的にすごく女の子っぽいゲームなのかなというイメージでした。「女の子がかわいい」ということと、「ゲームに登場する“調合”ってなんだろう?」という感じでしたね。

CHiCO:私も“調合”でいろいろ作っていくというところまでは知らなかったです。キャラクターや衣装からはすごくカワイイというイメージを受けて、当初は育成ゲームなのかなと思っていました。

 友人が『アトリエ』シリーズの作曲を手掛けているので、コンサートなどで聞いたことはありました。印象としてはとにかくカワイくて人気があって、ものすごくファンだという知人もいたので気にはなっていました。

――昨年タイトルが発表された際、お2人がサウンドを担当されるというアナウンスを受けて周りの方々の反応はいかがでしたか?

工藤:「あ、やるんだ!?」という感じで、結構連絡が来ました(笑)。

CHiCO:『アトリエ』シリーズにかかわっていたお友だちのアーティストさんともコンタクトとったり、なにか一緒にさせていただいたら、なんて思ったり。

工藤:反響は大きかったですね。各方面の演奏者の方々からも「参加させてほしい」という声をいただきましたし、『アトリエ』というコンテンツがすごく大きいことを痛感しました。

CHiCO:SNSのダイレクトメールで届いたんですが、その中には音楽をミキシングするエンジニアさんもいらっしゃって、「自分は『アトリエ』シリーズの楽曲をこれだけ聞き込んでいるのでぜひとも力に」という感じの熱いアピールもありました!

工藤発表会ではシリーズ20年の歴史なども流れて、改めてコンテンツの大きさに圧倒されました。

――『アトリエ』シリーズといえばサウンドを重視したタイトルとしてもおなじみですが、今回はどのような経緯で担当されることになったのでしょうか?

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

工藤:以前別のお仕事でご一緒させていただいた方がいまして、その方を通じてご連絡いただきました。

池田:ACEさんにお願いした理由としては、個人的にACEさんのサウンドが好きだったというのもありますが、ゲーム音楽の作り方に対する熱意が尋常ではないというウワサが一番だったのかもしれません(笑)。

CHiCO:本当ですか?(笑)。

池田:そもそも楽曲は外部製作するべきかも含めて、どうしようか悩んでたころがありました。『アトリエ』シリーズは楽曲も評価されている重要なパートですから、いきなり『アトリエ』シリーズの楽曲未経験の方にお願いしても相当なプレッシャーになるのではないかと思っていました。それゆえ、企画当初はシリーズをずっと手がけられてきた本家の方にお願いするのがいいのかなということも含め、いくつか作曲家の候補を頭の中で想像していたんですね。

 でもACEさんの“尋常じゃないこだわり”にもとても興味があったので、一度お話してみようと思って、楽曲製作のお話を提案してみました。そしたら、ものすごいやる気もありますし、話をしていてすごくこだわりがあって妥協しないだろうなと感じ、「あぁ、確かにこれは尋常じゃなさそうだな……」って思って(笑)。それで、20年の節目のタイトルをお任せできる、ACEさんならやり遂げていただけるだろうということで、楽曲の依頼をさせていただきました。

――尋常じゃないとは……どのようなことなのでしょうか!?(笑)

工藤:尋常じゃないとは恐れ多いですが、やっぱりなるべく納得した形のものをお届けしたいと思っていますので、曲がほぼ出来上がった段階でも、「本当にこの曲でいいのか」「もう一曲作ってみようか」と出来る限り粘ってこねくり回すタイプです(笑)。

池田:曲そのもののこだわりも強いのですが、つねに情報収集とアイデアが半端ないです。「え? そんなこと聞くの?」とか「そこ気になる?」とか、とにかく周辺情報の収集が凄いですし、得た情報にあわせて曲を調整するんです。例えば、先日のクローズドベータテストの時もそうだったのですが、テスト開始一週間くらい前に「僕たちもテスト版をプレイして気になったところがあったのでこうしました」って言って、ブラッシュアップしたデータが送られて来るんですが、なぜか曲が増えているんですよ(笑)。「え? 今? うそやん!」みたいな。

 楽譜ではもう1年くらい前にできているモノをギリギリまで突き詰めるという姿勢が本当にすごいと思います。「この曲はこうしたいです」とバージョンが変わって、差し替えのデータが送られてくることもありますけど、今はもうそれがACEクオリティなんだなと思って、「わかりました。やりましょう」って腹をくくっています。

――それはメーカーから具体的なオーダーをしたわけではなく?

池田:すでに完成したモノなんですけど、「ココに手を加えました」というのが送られてくるんです。新たにレコーディングし直すところまでやっていただけるのでひとつの楽曲に対してのこだわりは噂どおり、“尋常ではない”ですね。結果的に、楽曲はコーエーテクモゲームスのガストブランドにも太鼓判をいただくものができ上がりました。

CHiCO:恐縮です(笑)。

――それは完成した楽曲を聞き直して必要性を感じられたのか、それとも納品の段階で心残りがあって手直しされているのでしょうか?

CHiCO:両方ありますね。

工藤:音を完成させることはなかなか難しいということと、実際に絵に合わせてみると色合いのちょっとした感じでも音楽が違って聞こえるように思えるということの、双方のせめぎ合いといったところですね。

CHiCO:あとは、ディレクションでいただいていた言葉がある日突然「あ、こういうことかも?」って腑に落ちて気がつくこともあります。

 ブラッシュアップについては、ケルト音楽のイメージで温かな雰囲気を出したかったので、生楽器でたくさん録音させていただきました。すでに納品した楽曲でも「この楽器は生で録音できていなかった」という部分を新たに録音し直します。すると今度は「この部分がバランスが悪くなってしまった」という部分を調整することもありますし、生楽器なので奏者によって個性が違うこともあって、譜面で打ち込んでいたモノがよくも悪くも違うモノになってしまう可能性もあって、そこからさらに調整したりもしています。

曲作りへのこだわりとは?

――『アトリエ オンライン』では何曲くらい作曲されたのでしょうか?

工藤:現在進行形ですが、納品しているのは30曲程度でちょうど半分くらいですね。

池田:基本的なオーダー方法としては、マップ、バトル、ダンジョン、シナリオといった感じで依頼させていただいています。マップによって、見た目やシチュエーションが異なるため、“リブルム”はバラと現実っぽく、“エルレウム”は海と静けさに合わせたようなBGMという感じでお願いしています。さらにそこに合わせてシチュエーション単位でイベントシーンというようにオーダーさせていただきました。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』 『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』
▲リブルムの様子。
『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』
▲エルレウムの様子。

――印象に残っている楽曲や苦労した楽曲はありますか?

CHiCO:最初に作った草原フィールドの昼と夜かな? どのプロジェクトでも最初は全容を把握できていなかったり、作品にとって一番必要な音がわからなかったりする状態。そのために、一曲目は基準点になることが多く、毎回緊張しますし苦労します。

――最初の楽曲が上がってきた時はいかがでしたか?

池田:ACEさんが作る楽曲では、『ゼノブレイド』とか『エミル・クロニクル・オンライン』といった雰囲気を想像していたのですが、『アトリエ』らしさやニュアンスをしっかり汲んでいるうえに、なおかつオリジナルに仕上げていただいた楽曲になっている点がさすがだなと思いました。一番印象に残っているのはアカデミーのホーム画面のBGMですが、曲の始まり方から鳥肌が立つぐらいの衝撃で「ACE尋常じゃねぇ~」って言いましたし。ただ、先ほども話しにありましたが、これもまたすごく見直されて時間を経る度に見直しされて重厚になっているんですよね。

CHiCO:見直す! すごく見直すよね。

――具体的にどのようなことがありました?

池田:まずシナリオとビジュアルコンセプトをもとに作曲されたものが納品されて、「OKです、これで行きましょう」というのがあります。

 次に、できあがったゲームをさわられて、「やっぱりこうしたい」っていうのがあってもう1回調整されたものが送られてきます。

 そこからさらに、シナリオやSEが入ったバージョンを確認されて、「この長さはこうした方がいい」というアイデアが送られてきて、それにするのです。

――素人考えであるのですが、開発側としては助かる一方で、大変そうという一面がありそうですが……。

CHiCO:すみません、本当にそうだと思います(笑)。

池田:ボクらとしてはいいのですが……正直な話、少し効率が悪い作り方をされているという印象です(笑)。

工藤:その通りです(笑)。

――ただ、その工程があるからこそ、聞いたユーザーも腑に落ちるというか、よりマッチしたサウンドで遊べるわけですね?

工藤:そこを目指しています。ただ、ついやりすぎて疲れてしまって、すべてを忘れるためにも作品として世に出てから1カ月くらいは放置するんですよ。あまり客観視できなくなってくるので、研究したり反省したりはその後になります。

――それくらいに心血を注がれていると。

工藤:他の作曲家の方、企画などされている方全般そうだと思いますが、46時中曲のことを考えていますし、曲が思いついたらボイスメモに残したり、ずっとそればかりやっています。僕の場合はボイスメモをひたすら作って、よかった部分を切り取って組み合わせたりして作曲していきます。長いモノでは30分くらい歌いまくっているので、ひととおり聞き直すだけで丸1日かかったりします。

――30秒ではなくて30分なんですね!?

工藤:はい、ただこの作り方は本当に効率が悪いんですよ(苦笑)。

CHiCO:私はミーティングで決まったらだいたいそこで終わるんですけど、工藤くんの場合は「本当にこれでいいのか?」ってずっと問い続けているので、翌日になったら決まったはずの曲がまったく変わっていることも多いんですね。「昨日決まったじゃん」ともとの曲に戻しても次の日になると、今度は別の何かを足した曲になっていたりと、そんな繰り返しが行われています。

工藤:すみません、気をつけます(笑)。

OPテーマ『金色のレシピ』ではサビを100パターン用意……したのだが!?

――最初の楽曲の他に、印象深かったり苦労したりした曲はありますか?

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

CHiCO:例えば、夜の曲は、暗さのバランスを気を付ける必要があり、いつも難しいと思っています。『アトリエ オンライン』でもイラストを見るとわかるように、夜にしか咲かないキレイな花があるので、そのワクワク感みたいなモノも残しつつ夜の雰囲気を出せるような気持ちで作りました。あとは私はOPテーマの『金色のレシピ』がやはり思い入れがあります。

工藤:ボクがイントロとAメロBメロを作ったのですが、サビが全然できなくてスタジオで100パターンくらいボイスメモにアイデアを入れました。そこに、CHiCOさんが来て鼻歌で「ふんふふ~ん♪」とサビを歌って、一発で作ってしまったんです(笑)。

CHiCO:OPを作る時に池田さんから今までの『アトリエ』シリーズのOPを順を追って全て聞かせて頂きながら、それぞれの歴代の曲を詳しく説明頂きましたので、イメージがあったんだと思います。

池田:『アトリエ』シリーズを遊んでいる人はもちろん、知らない人に対しても外すわけにはいかなかったので、最終的には「ストレートに王道なイメージで」とお願いしました。

CHiCO:ACEの話し合いで“王道”ということと、月並みですけど“みんなが口ずさめるいい曲にしたい”ということを思っていました。

 最初に2人が選んだ曲を提出したんですけど、「悪くはないけどそこまでよくもないから、これではないような気がするよね」という感じだったんです。案の定、池田さんの反応も「うん、まあ」みたいな微妙な感じで(笑)。

池田:そうですね。恐縮ですが、曲を聞いた際に、引っ掛かりみたいなものはあったので、そこは素直に伝えさせていただきました(笑)。

CHiCO:それが信頼できるんですよね。私たちの腑に落ちていない感じがちゃんと伝わっていて「バレてる!?」って(笑)。

 そうしたら工藤くんの方が密かに曲を作っていました。ある日「ちょっとイイのできちゃったんだけど」と呼ばれたんですよ。イントロ、AメロBメロと聞かせてもらったらすごくよくて、「イイじゃん!」と伝えました。ただ、サビがまったくできていなかったので、サビ以外を頭から聞かせてもらって鼻歌でそのままつなげて歌ったら、「アレ? コレでいいんじゃない!」となりました。

工藤:100回の作曲よりも1回の鼻歌の方がよかった。そういう時もあります(笑)。

――作曲の際、背景やキャラクターイラストなどをご覧になったと思いますが、気になったことはありましたか?

工藤:“アカデミー”という設定ですね。雰囲気や制服の感じをうまく出したほうがいいなと考えました。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』 『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』
『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

CHiCO:ミーティングで「学校とかアカデミーという感じを入れたいね」と相談しました。いろいろと音を探した結果、最終的にど真ん中でシンプルな鐘のような楽器“チューブラーベル”が入っています。

工藤:変な鐘の音をいっぱい探して参考にしました。最近だと動画サイトでも世界の鐘の音とかが結構見つかるんですよ(笑)。

CHiCO:学生時代にスイスで暮らしていたこともあるのですが、向こうは朝と夕方に必ず鐘が鳴る。ただ、あちこちの鐘が重なり合ってえらいことになるんですね。

 工藤くんから“鐘の音” を入れよう”と聞いた時には「もうスイスしかない!」と思ったんですけど、いざ調べてみたらアカデミー感が皆無でした(笑)。

――先ほどケルト音楽をイメージしたということでしたが、あえて選んだ理由などは?

CHiCO:最初にいただいたオーダーでケルト音楽というのがありました。

工藤:シチュエーションもその地方の感じが出ていて、ケルトらしさもあるかなと。今までの『アトリエ』シリーズもわりとケルト楽器を使っていますよね。

CHiCO:『金色のレシピ』も従来の『アトリエ』シリーズのように、ポップとケルトのミュージックを合わせたいいバランスになっていると思います。BGMはそれよりもう少しケルト色が濃い目になっています。

工藤:ケルト楽器は音を奏でると一瞬でどこか異国の世界に連れて行ってくれる楽器だと思っていまして、スマホの画面はコンパクトだと思うのですが、世界観を大きく見せたいという気持ちを込めています。また、リアリティを追求するために、ケルト楽器はなるべく生楽器で録音しています。

――いま出た“リアリティ”とはかけ離れますが、もしもご自身が錬金術を使えるとしたら、何か叶えてみたいことはありますか?

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

CHiCO:これはちょっと難しいですね(笑)。『アトリエ オンライン』公式サイトのツイートにハッシュタグで“音の錬金術士”なんて書いていただいたりもしたので……そうですね、錬金でなんでもこなせる頭脳とかいいですね。

――人体錬成ですか!?

CHiCO:できないですかね(笑)。じゃあ、脳を活性化させる薬で!

池田:ドーピングですね。

(一同笑)

工藤:ボクは……なんでしょうね、“音の錬金術士”になれるものならなりたいって日々思うんですけど、今は単純に体力回復薬がほしいですね(笑)。

『アトリエ オンライン』クローズドベータテストの反響は?

――改めてのお話になりますが、本作開発の経緯をお聞かせください。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

池田:もともとの企画自体は4~5年くらい前になります。つながりとしては別タイトルで『アトリエ』とのコラボをやらせていただいたのが最初でした。『アトリエ』シリーズはずっとプレイさせていただいていて、何かしら『アトリエ』とやりたいとずっと考えていて、それを動かせたきっかけが約2年前で現在に至ります。

――シリーズの中でも特にハマったタイトルは?

池田:やはり一番印象深かったのは『マリーのアトリエ』です。『マリーのアトリエ』はROMが擦り切れるぐらいやりまくって、最後は音が飛び飛びになりました。でも、一番やり込んだのは『アーランド』シリーズ3部作で、だいたい800時間くらい遊んだんですけど……。

――オンラインゲームならまだしも、買い切りのタイトルで800時間というのはなかなかすごいですね(笑)。

池田:これは時代と言いますか、最初に据え置きのPS3版がリリースされて、その後にPS Vitaで移植版が発売されたじゃないですか。持ち運びできるところが画期的すぎて、延々と遊んでいました。そういう点でも『アトリエ』は携帯ゲーム機との相性がものすごくいいと思っているんですよ。それで、スマホでもやりたいというのがずっとありました。

――御社が得意とするPCブラウザではなくスマホだったのですね。

池田:そうですね。企画書を製作していた時点ですでにブラウザゲームよりもスマホで遊ぶことがトレンドになっていたという、時代的背景もありました。

――シリーズの例にならうと、サブタイトルにある“ブレセイル”とはゲームの舞台となる異世界、もしくは地方の名前かと思われますがいかがでしょうか?

池田:完全に創作になるのですが、“神々の吐息=ブレスアイル”のように、海に囲まれた1つの舞台をイメージしたのが最初のきっかけになっています。

――そこに主人公たちのアカデミーなどがあると。

池田:はい、そうなります。

――今回はオンライン前提のタイトルになっていますが、ストーリーがしっかりあったうえでの遊びとなるのでしょうか?

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

池田:そうですね、メインシナリオは一応、完結する作りになっています。それとは別軸でやり込み要素を用意しつつ、季節イベントや新キャライベントなど継続して遊んでいただける要素がほぼ毎月追加されていく形になります。

――『アトリエ』シリーズの特徴の1つである“調合”のシステムはどのようなものになるのでしょうか?

池田:基本的には『アトリエ』シリーズにあるものをベースにしていますが、原則として見た目はわかりやすく、けどシステムは奥深く、というポリシーで実装しています。調合自体も1ボタンでやりやすくしていますし、できあがるものは純粋に品質だけで強さを管理していたりと……ややシンプルさを持たせたうえで、特性の継承や特性のランクアップでやりこみもできるとか、ですね。ガストブランドとも協議の上、『アトリエ』シリーズの“調合”システムとかけ離れたものにならないように気を付けています。

――マルチというところでは、冒険に出かけるところを他のプレイヤーと協力できる感じでしょうか?

池田:そうですね。アカデミーから出かける際の全体マップ表示時に、ボタン1つで“一人で遊ぶ”か“みんなで遊ぶ”を選んで自動的にマッチングするようになっています。

――バトルも協力できるのでしょうか?

池田:フィールドで誰かが戦っていると特殊なアイコンが表示されるので、参加の意思を表明することでバトルに合流できます。

――先日までクローズドベータテストが行われていましたが、こちらの反響はいかがでしたか?

池田:NHN PlayArt内で実施した他のタイトルと比較しても、想像以上によかったなと思います。参加率がすごく高くて、当選者の90%以上の方に参加いただけましたし、アンケートの反応もすごくよかったです。そういった点も含めて『アトリエ』シリーズファンの方々に遊んでもらえたのかなという印象です。

――やはり『アトリエ』シリーズ経験者が多かったのでしょうか?

池田:未経験の方も多く参加いただいております。テスター応募の時にシリーズのプレイ経験の有無をチェックさせていただいて、あらかじめ当選枠を分けて抽選で選ばせていただきました。

――意見の中で特に多かったのは?

池田:調合についての意見が一番多かったです。反応は完全に賛否両方がありまして、シンプルでいいという意見と、複雑にしてほしいという意見です。シリーズを遊んだことがない方からは「調合がちょっと難しい」という意見が多かったと感じています。これは社内のテスト結果でも同様の意見になりました。

――調合システムに対して、サービス実装時にフォローされる予定はありますか?

池田:チュートリアル的なものがほとんどなかったので、そこを充実させます。あわせて調合やアイテム自体も「これはいったい何に使うのか?」など含めてわかりやすくなるようにテコ入れをします。それ以外でも調合を中心としたクエストや依頼も少ないので、足していきます。

 その他のご意見としても、ボイスの対応とか、男性キャラをもっと増やしてほしいという意見がありました。今回は女性キャラをフィーチャーした露出になっているんですけれども、その結果もあってか男性主人公にもスポットを当ててほしいと意見が出たのだと思います。

――『アトリエ』シリーズというと、親父キャラやイケメンキャラは欠かせませんからね。

池田:安心していただきたいのですが、テスト段階では登場していないだけで、もちろんこの後にちゃんと控えています。男性キャラが序盤は登場が少ないので、その部分も指摘されたのかなと思います。

――クローズドベータテストを終えて、楽曲についてACEのお2人にもユーザーから反響は届きましたか?

工藤:好意的なご意見をいただいています。

CHiCO:妖精郷の曲がよかったというコメントを、SNSで直接いただきました。あれは生ボーカルで私も一緒に歌っているんですけど、公開したものはメインの部分をアニメやゲームをはじめ、スポーツイベントのテーマソングなどを担当するシンガーソングライターのカノンさんに歌っていただいたんです。彼女は日本人で唯一、ローマ法王に献歌をしている人なんですね。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』
▲妖精郷の様子。

池田:え? そんなすごい方に歌っていただいていたんですか!? その情報は僕も知らないから、もっと出した方がいいですよ(笑)。

CHiCO:確かに。スタジオでレコーディングしている時も、「もう、はい、ありがとうございます!」みたいな感じで、「ああ、これは妖精だ~」って。

――スピリチュアルな感じがしますね。気になるOPテーマ『金色のレシピ』が本日公開されましたね。

池田:個人的に『フィリスのアトリエ』のOPが世界観や全体像がまとめられていると思っていたので、それにあわせたような雰囲気で『アトリエ オンライン』も全体像が分かるような歌詞や構成にしていただいています。近日公開するOPアニメも、それにあわせて歌詞を構成していただきました。

 シリーズのファンからすると少し物足りないかもしれませんが、歴代『アトリエ』シリーズを彷彿とさせることを意識しました。そこはブレないようにしたいというのがコンセプト通りに作れました。

――楽曲とビジュアルがあわさった様子をご覧になっていかがでしたか?

工藤:事前にこういう絵になるということは聞いていたんですけれども、実際に見たら単純にうれしいというか、ああいい感じだなと思いました。

池田:音ありきで映像を作りました。ボクらとしては、それにいつもと同様にしっかり作ったのですが、ACEのお2人がすごく気に入ってくださったのでよかったと思いました。

CHiCO:ちょうどこの歌の録音日にOPアニメを見せていただいたので、その日の収録はテンションが高い状況で臨めました。

『アトリエ オンライン』のこれからの動き

――『アトリエ オンライン』を楽しみにしている人に向けて運営開発の立場からひと言お願いします。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』

池田:発表からリリースまで長いことお待たせして大変申し訳ございません。現在は正式サービスに向けていろいろと準備中です。リリースに向けて開発一同、ガストブランドとも協力のうえ、頑張っていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

――先ほどの話だと、楽曲はまだ半分くらい残っているようですが……。

池田:サービス開始時のバージョンでの曲は納品が終わっていて、曲について今後のアップデート分を含めてになります。

――EDにもボーカルは入るのでしょうか?

池田:ED? ……ああ、そういえば作っていなかったですね。『アトリエ』シリーズはEDもアニメが流れますよね。それはまた別で何か考えるかもしれません。今聞いて「ああ、そういえばそうだ、作ってないので作らなきゃ」って思いました(笑)。

――ACEさんの楽曲がまた1本増えますね。

池田:増えちゃいますね(笑)。

――最近のアプリは、大まかなストーリーがありつつも節目を設けずエンドレスに続くタイプと、一定期間ごとに区切りを設けてしっかりとエンディングを入れつつ、新章が続いていくタイプがあると思いますが、本作はどちらのタイプになるのでしょうか?

池田:基本的にエンディングはあっても、『アトリエ』シリーズのような大きな年数の経過はありませんので、主人公は永遠にアカデミーの生徒でいられます。シナリオに節目はありますが、オンラインのよさとして永遠にシナリオを追加できますし、スピンオフとして特定のキャラの幼少期のイベントとか、数年後のシナリオを体験できることも容易です。あとは幸い、シルバーバーチが開発した “時空操作君”というキャラがいて、いろいろな時代や場所のキャラを出せる設定になっていますので、基本なんでもできると思います。

『アトリエ オンライン ~ブレセイルの錬金術士~』
▲時空操作君

――最初から想定して用意していたわけですね。

池田:やはり汎用性は大事だなと。しかしあくまでも世界観を壊さない落とし込みも重要だと思っていますので、そこはシナリオとマッチできている設定になっています。この点においてもコーエーテクモゲームスの監修を受けながらやらせていただいていますので、自由度はある程度もてるようにしています。1つの例となりますが、今発表している事前登録特典の“ロロナ”は、『ロロナのアトリエ』時代のロロナですが、『メルルのアトリエ』時代のロロナが出てきてもいいかなと思いますし、そこは今後のお客様の反応や、運営次第かなと思っています。

――ACEのお2人からユーザーに伝えておきたいことはありますか?

CHiCO:『金色のレシピ』はゲームの中で流れるのは一番だけですが、最終的にはフル尺で聞いていただける機会があればいいと思っています。

工藤:20年も続いている『アトリエ』シリーズに参加させて頂きまして大変光栄です。アトリエオンラインを楽しんでいただく一役になれるよう現在も精一杯絶賛制作しております。みなさんに楽しんでいただけましたらうれしいです。

※記載されている内容は、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。
※画面は開発中のものです。
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.

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