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2018年8月23日(木)

『イレブン イレブン』は第一次世界大戦を2つの視点で描く。油絵調の描写やユーザーへの配慮を解説

文:kbj

 ドイツのケルンで現地時間の8月21~25日に開催されているコンピュータゲームの見本市“gamescom(ゲームズコム) 2018”にて、バンダイナムコエンターテインメントから2018年に発売されるPS4/Steam用ダウンロードソフト『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』の開発者インタビューが行われた。

『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』

 本作は、油絵テイストの独特なグラフィックが印象的な追体験型アドベンチャーゲーム。国籍の違う2人の主人公の視点から、第一次世界大戦を舞台にした、繊細なストーリーが展開する。終戦記念日“11月11日”をテーマに、戦争の現実や人の“愛”と“絆の力”を描いていたタイトルだ。

 話を伺ったのは、バンダイナムコエンターテインメントのLionel Lovisaライン・プロデューサーとAardman StudioのDan Eferganクリエイティブ・ディレクター。開発経緯や描写など、こだわっているところを語ってもらった。

『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』
▲左がDanクリエイティブ・ディレクターで、右がLionelライン・プロデューサー。

 第一次世界大戦を描くことになったのは、クリエイティブ・ディレクターをつとめるYoan Ganiseさんが描きたいと強く考えていたためだという。第一次世界大戦開戦から100年を描いた『バリアントハート ザ・グレイトウォー』を作ったため、Yoanさんは終戦100年の作品を描きたいと強く願った。その熱意に動かされたようだ。Yoanさんには戦争に行っていた親族がいて、そこから得た経験や情報は、物語の中にエピソードとして盛り込まれている。

 ただ、戦場自体をメインに描くのではなく、主人公2人の異なる目線で戦争を描いた作品になっているのが特徴。ローカライズは開発と同時進行で行われていて、すでに日本語も搭載されているのを見て取れた。

 主人公は2人いて、戦争の現実をカメラに残そうとするカメラマンのハリーと、行方不明になった息子を捜す技師のクルト。どちらも戦争に直接参加する立場になかったが、異なる理由から戦争に加わるという。

『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』
▲ハリー

 互いのストーリーはクロスしている。序盤はプレイするキャラが入れ替わっていくが、ステージ中ではどちらのキャラを先に操作するか選ぶシーンがあるという。

 他にも、猫を操作する場面を確認できた。実はこの猫には特別な意味があり、敵でも味方でもない、第3者による視点を入れたかったとのこと。人間同士は争っているが、猫から見るとどちらも同じ人間にすぎないという意味が込められるそうだ。

『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』
▲クルト

 プレイヤーの行動によって、物語は変化していく。誰を撮影するのかや、人を助けるのかなどによって分岐し、大きく6つの結末が用意されていると、Lionelさんは説明した。

 本作を語るうえで外せないのは、油絵調のグラフィック。3Dモデル自体はシンプルな構造をしているが、場所によって大きいブラシや小さいブラシを使いわけて色を塗るという複雑な仕組みをしている。

『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』

 開発当初はエンジンによって、ペイントさせることが簡単にできるだろうと考えていたというが、人間は方向や強さ、ブラシの向きなどいろいろと頭を使いながら作業していることがわかったと、Lionelさんは笑いながら説明した。

 そもそもなぜ油絵なのかといえば、第一次世界大戦当時の絵画の手法として使われていた方法の1つだったため。これまでのタイトルとの違いも出せるために採用されたとのこと。

 ゲーム中のクリックできる場所には、アイコンが表示されている。これには2つの理由があり、ターゲットであるカジュアルなユーザーが迷わないようにするためと、独特のアートスタイルによって、フラストレーションを感じないためだ。

 カジュアルなユーザーへの配慮は戦場にも存在。飛びかう弾丸に当たれば倒れてしまうが、そこでゲームオーバーになったり、ペナルティがあったりするのではなく、すぐ直前から再開できる。弾丸に当たったのに動けるのはリアリティに欠くが、物語を楽しんでもらうタイトルで、ストレスを感じる作りにしたくないための配慮のようだ。パズル要素も登場するが、“朝飯前”という難易度に設定されているとのこと。

『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』

 ターゲットにしているのは、普段からそこまでゲームをやらない、カジュアルな層だという。ちょっと変わったタイトルを探しているような人や、本作でしか味わえない体験を求めている人にさわってほしいようだ。

 開発する際に、もっとも重視しているのはすべてのバランス。遊んだ人の気持ちを動かすゲームなので、曲、アニメーション、演出の1つが狂うと感覚がずれてくる。気持ちよく遊んでもらうためにどのようなバランスにするかを、心がけていると2人は語った。

 キャストに演技力のある有名な俳優を起用したり、人気オーケストラによる曲を取り入れたりしているのは、クオリティ面でのバランスを考えてのことだという。

『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』
▲最後にメインビジュアルのように向き合って撮影してくれた2人。

Memories Retold & (C)2018 BANDAI NAMCO Entertainment Europe.

データ

▼『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』
■メーカー:バンダイナムコエンターテインメント
■対応機種:PS4
■ジャンル:AVG
■配信日:2018年
■価格:未定
▼『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』
■メーカー:バンダイナムコエンターテインメント
■対応機種:Steam
■ジャンル:AVG
■配信日:2018年
■価格:未定

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