2018年8月28日(火)
2018年にスクウェア・エニックスから発売予定のサバイバルアクションゲーム『LEFT ALIVE(レフト アライヴ)』。『フロントミッション』シリーズと世界観を共有するということもあり、国内外で大きな注目を集めている本作は“さまざまな選択を迫られるゲーム”になるという。
今回はドイツ・ケルンで行われた“gamescom2018”の会場にて、橋本真司プロデューサーと鍋島俊文ディレクターにインタビューを実施。最新版のデモを交えながら語っていただいた。
――『レフト アライヴ』は約1年ぶりの露出となりますね。『フロントミッション』ではなく、新規タイトルとなった本作について改めて教えてください。
橋本真司氏(以下、敬称略):まずは2010年に発売した『フロントミッション エボルヴ』から、8年という間が空いてしまったということが挙げられます。あと、鍋島にディレクターとして来てもらったことや、コジマプロダクションに所属している新川洋司さんに時間を作っていただけたので、「これは新しいタイトルにした方がいいのでは」という話になりました。
『フロントミッション』の設定や過去の歴史的な部分は踏襲しつつ、鍋島の『アーマード・コア』をやってきたノウハウを活かし、新川さんの創る新しいイメージを融合させたのが本作になります。去年の東京ゲームショウに出させていただいてからちょうど一年弱なんですが、最新のデモ映像を世界に先駆けてこの“Gamescom 2018”に持ってきました。来月には、さらに新しい情報をお届けしたいと思っています。
鍋島俊文氏(以下、敬称略):1年ぶりになってしまったので、まずはざっとストーリーを解説します。ある国境に面した街に軍隊が突然攻めてくるというところから物語が始まります。それに巻き込まれてしまった3人の主人公たちはその街で孤立してしまいます。
本作は、その街からの脱出を目指すという内容になっています。ゲーム自体はいわゆるTPSをベースにしていて、シューターっぽい遊びがベースになってはいるのですが、一般的なシューターとは違ったところが色々とあります。
シューターではあるのですが、“シューターもできる“というのが正しいかもしれません。単純に敵を撃って殺していくというのではなく“銃は持っているけど弾があまりない”みたいなギリギリな状態が続くので、いかに弾を使わずに、シューティングせずに状況を打破していくかっていうのがキモになるゲームデザインになっています。
攻略方法によってはシューターにもなるし、トラップを使ったトラップアクションみたいな遊び方もできます。あるいは、そもそも敵と戦わないステルスゲームのような、プレイヤーの判断によっていろんな選択ができるのをメインのコンセプトにしてゲームを作っています。
また、本作では、アイテムのクラフトもできますが、突然戦争になったという極限のシチュエーションですので、有用なアイテムがゴロゴロ手に入るというよりは、布とかを手に入れ、組み合わせていろんなものを作っていきます。
――さきほどウォッカと布を組み合わせて火炎瓶を作りましたね。クラフトはメニュー画面からいつでも行うことができるのでしょうか?
鍋島:はい、メニューを開いてクラフトできますし、十字キーを使ってリングコマンドのようなものを呼び出してから作ることもできます。
クラフトは落ちているアイテムで様々な物が作れますので、そういう試行錯誤というか戦略が重要になってきます。例えば、戦闘時のシチュエーションとして、主人公が持っているものがハンドガンと限られた銃弾だとします。そんな状況下でも敵はどんどん攻めてきます。まともに撃ち合いをするには、圧倒的に不利な状態です。
なので、クラフトした火炎瓶を使って敵の侵入を食い止めてその隙に罠を張るという、アイテムをメインに使った攻略をして切り抜ける。火炎瓶みたいな原始的なアイテムだけではなく、手に入れた素材によってはもうちょっとハイテクなアイテムもクラフトできます。敵の位置が分かるレーダーみたいな物も作れるので、この先に敵が待ち構えているというのを把握してから、改めて戦略を組み立てる事もできます。
探索をして弾をきちんと集めていけばシューターとして攻略することもできるし、逆に弾が全然手に入らない、あるいはシューティングがあまり得意ではない場合は別のアイテムを使い、ステルス的なアクションとして一切敵と戦わないで切り抜けるということもできます。
攻略を選択できる要素をゲームに詰め込んでおり、色々と試行錯誤して考えて進んでいくゲームデザインになっているんです。そういう意味では、ゲームの難度は比較的高めだと思います。
――シチュエーションに応じた処置が必要になってくるというと、初見で敵と遭遇したときとかはかなり慌てることになりそうですね。
鍋島:そうですね。漫然と戦って勝てるゲームではないので、試行錯誤を楽しんでもらえればと思います。
――トライアル&エラーをプレイヤーに試してもらうゲームなんですね。
鍋島:トライアル&エラーもそうですし、角ひとつ曲がるのにもある程度緊張感を持ってやってほしいといいますか。何も考えずに進んでいくと突然ピンチになるみたいな組み立てにしています。
――ヴァンツァーでの戦闘もあるんですよね?
鍋島:本作は街が敵に占領されたところから物語が始まるので、ヴァンツァーも敵として登場してくることが多いです。自分は人間なので、見つかったら100%死ぬみたいなシチュエーションなことが多いのですが、場合によっては敵のヴァンツァーを奪って対等に戦える、メカアクション的な遊び方をするシチュエーションもあります。
ちょっと特徴的な点としては、今まで『フロントミッション』にあった機体のパーツを組み替える要素はないんですが、敵を倒すと武器を落とす仕組みになっていて、それを拾って換装していけるようになっています。
強い武器を持った敵が現れたらピンチなのですが、倒してしまえば自分が使えるので逆にチャンスでもあったりします。ちなみに人間でヴァンツァーと戦うこともできるようにはしてあります。めちゃくちゃ難しいですけど(笑)。
――人間対ヴァンツァーのシチュエーションは基本的には逃げると。
鍋島:できることなら戦わないほうがいいけど、どうしても戦わないといけないシチュエーションっていうのもあって、そういうときには攻略ができるようにしてあります。
鍋島:本作の主人公の最大の目的は自分が逃げ延びることなのですが、その過程で主人公のほかに生き延びている人とか戦場に隠れている人がおり、そういった生存者を救出するというのもひとつの目的として提示されています。単なるゲームの駒としてのNPCではなく、NPCにはそれぞれに個別のバックボーンがあって、良い人もいれば、そうでもない人もいます。
今回のデモのシチュエーションでいうと、お父さんと娘が敵から逃れて隠れているんですが、お父さんは結構偏屈で主人公が逃げるように説得しても「俺は軍隊が助けに来てくれるまでここを動かない。お前もそうするよな?」みたいなことを娘に言っていて、娘は困惑しているという場面です。
それに対して会話のやり取りの中で選択肢が出てくるので、展開によっては2人とも付いてきてくれますが、娘だけというようなパターンもあります。
――助けてあげることは自分の脱出において負担になると思うのですが、なにか見返りはあるのでしょうか。
鍋島:助けてあげることにはそれなりにリターンがある場合もあるし、ない場合もあります。それは僕の中でのこだわりみたいなところで、“リターンがあるかどうか分からないけど、それでもリスクを冒して助けてあげますか?”っていうエモーショナルなことをやりたかったんです。だからNPCを単純な駒にはせず、ある程度キャラクター性を持たせています。
“会話で選択する”だけではなく、プレイヤーの行動自体が選択になっているリアルタイム性の高いイベントもあります。敵兵が3人の民間人を殺そうとしているシチュエーションに遭遇、そのまま見ていると一人一人射殺されてしまいます。そうなる前にうまく敵を倒せれば救出できるし、リスクを冒したくなかったり、そもそも弾がない場合だと介入する事ができず、民間人を助けられない場合もあります。
さっきのような会話で選択肢を選ぶみたいなタイプもありますし、行動自体が選択になるっていうイベントもたくさん用意しています。大きなゲームのコンセプトとして“選択のゲーム”というように位置付けているので、攻略の仕方やイベントでいろんなゲームプレイを選択できるんです。
どういう道筋を選ぶかによってゲームのストーリーがちょっとずつ変わっていって、最終的にこういう結末になりますというのがこのゲームのキモですね。
――主人公が3人いるというのは、どういった経緯があったからなのでしょうか?
鍋島:今までの『フロントミッション』はシミュレーションのイメージが強いと思います。それに対して本作をどういうゲームにしようか考えたときに、自分としてはアクションゲームを作ってきたキャリアが長いので、得意なところで勝負がしたいという気持ちがあって、アクション性の高いゲームにしようと思いました。
一方で“『フロントミッション』らしい”ところもちゃんと継承しないといけないので、アクションでありながら“らしい”ところを盛り込めるところはなんだろうと考えたんです。
『フロントミッション』って設定や世界観が非常に作りこまれていて、すごく密なものになっているので、ストーリーやキャラクター性というところをきちんと提示して、そこで、複雑な人間関係だったり、それぞれにバックボーンを持っていたりだったり、絡み合う感じが“らしさ”に繋がっていくんじゃないかと思い、1人ではなく、何人かの主人公で並行してゲームを進めていく感じにしようとしました。
――『アーマード・コア』のノウハウは、やはりヴァンツァー戦などに活かされている感じでしょうか?
鍋島:自分がこれまで作ってきたゲームでは、人間よりもメカが主体のものがほとんどだったんですが、それだけにそこについてはしっかりしないといけないなと。『フロントミッション』のヴァンツァーを踏襲しつつ、自分なりに「こういった形がいいんじゃないか」っていうのを作り上げています。
――人間が戦うゲームをあまり製作してきていなかったとのことですが、そういった意味では本作はかなり鍋島さんにとってチャレンジ性の高い作品になっているのですね。
鍋島:そうですね。環境も変わりましたし、新たな会社で橋本さん含めさまざまな人と出会って、新しいチャレンジができる場所に来たので、今までとまったく同じものを作ってもそれはそれで意味がないかなと思っています。そういった意味で『レフト アライヴ』で新しいことをするということが実現できたんだと思います。
――昨年になりますが、情報が初めて出たときの反響はどういったものが多かったですか?
橋本:僕も驚いたのですが、『フロントミッション』という声よりも『メタルギア』の新川さんと『アーマード・コア』の鍋島さんっていうのが結構出てましたよね。反響から新しい作品を期待しているのかなと感じたので、タイトルも今回のように変えて良かったのではないかなと思っています。
鍋島:新川さんにキャラクターのデザインをやっていただいたので、海外の方の反応は大きかったなと。最初は主要の3人だけ描いてもらう想定だったのですが、その3人にまつわるキャラクターもデザインしていただいたり、モデリングの監修とかもやっていただいたので、みなさんが思っているよりもガッツリ協力していただいている感じです。
橋本:ドラマの重さや、奥行きは結構出たかなと思います。いろいろキャラクターが登場しますよ。
――このほかにもストーリーに絡んでくるキャラクターはたくさんいると。
鍋島:はい、もちろんです。先ほどもお話しましたが、『フロントミッション』の魅力として重厚なストーリー、設定が挙げられます。単純に“戦争が起きました、逃げましょう”というのではなく、それはただの発端。実は戦争が起きた背景にはいろんな謎とか陰謀があって、物語が進むとそれがだんだんと明らかになっていく構成にしてあります。
――お話を聞いているとストーリー的に、『レフト アライヴ』が序章であるようなイメージにも思えてきました。
鍋島:お話自体はちゃんと完結していますので、安心してください(笑)。
橋本:完結はしますが、政治の世界はいろんな側面があるんだなと感じる部分はあると思います。
鍋島:『フロントミッション』もそうだったのですが、フィクションですけどそれなりに現実味のある物語にはしています。なので“世界を救って終わり“みたいな話ではないですね。ひとつの物語として完結しているけれど、悪が全て滅んで終わりみたいなものにはなりません。
――アクションゲームとしても『フロントミッション』としても、かなり作りこまれているということですね。
鍋島:そうですね。初めてこのゲームで『フロントミッション』の世界観に触れる人もいるでしょうし、これまで『フロントミッション』作品をずっとやってきた人もいると思います。そこで両方の人に対応できるような作りにしたいっていうのがあって、『フロントミッション』の知識がなくてもこのゲームの世界がどうなっているのかは分かるように作ってあります。
一方で、これまでのシリーズとの世界観のつながりは当然あって、そのあたりの絡みをファンの方が楽しんでもらえるものを目指したつもりです。
――かなり歯ごたえがありそうで楽しみです。
鍋島:そうしないと実現できないようなゲーム性のものですし、自分が作ってきたゲームはそういうタイプのものが多いんですね。人を選ぶかもしれないですけれども、好きな人がドハマりしてくれるようなゲームになっていればいいなと思ってます。
――開発の状況的にはどんな感じですか?
鍋島:機能的なものとかはほぼ全部入っていて、今はレベルデザイン的なバランス調整をやっています。
――では最後に、来月に改めて発表の場がありますが、日本のユーザーさんに対して一言いただけますでしょうか。
橋本:もう25年ぐらい『フロントミッション』シリーズに関わってますから思い入れも深いですし、新しいメンバーとともに新章を迎えて『レフト アライヴ』という形で出せることが幸せです。結構尖った作りになっているので、これが万人受けするとは思ってないのですが、このいろんなソフトが出ている時代に“尖って引っかかるゲームを作りたい”というのが今回のテーマだったので、ぜひトライしてほしいなと思ってます。
鍋島:『フロントミッション』シリーズの一員として作っているので、ゲームのスタイルは全く違いますが、今までの『フロントミッション』のファンに納得してもらえるタイトル、仲間として認めてもらえるタイトルに仕上げたいです。その上で興味を持ってもらえる人、新しくファンになってくれる人をできるだけ増やしたいなと思っています。
スクウェア・エニックスの中では結構変わったタイプのゲームじゃないかなと思うので、こういうのもアリだねと各方面に認めてもらえるものを作ることが、自分としては一番のチャレンジだと思っています。残りそんなに長い期間お待たせすることにはならないといいな……と思いながら、頑張って作ります。よろしくお願いします。
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