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2018年8月24日(金)

『FF14』吉田氏&祖堅氏インタビュー! 『MHW』コラボの手応えなど【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 ドイツ・ケルンで開催中の“gamescom2018”の会場にて行われた、『ファイナルファンタジーXIV』プロデューサー兼ディレクター・吉田直樹氏と、サウンドディレクター・祖堅正慶氏への複数メディア合同インタビューをお届け!!

『FFXIV』は、ゲーム内だけでなくゲーム外でもさまざまなイベントが精力的に行われているのも特徴の1つ。今回は、近々で行われるそれらのイベントにもついてお聞きした。さらに、新たなコンテンツが実装されたパッチ4.36の手応えにも言及しているので、お見逃しなく!

『FFXIV』
『FFXIV』

――まず、もう間もなくで『新生FFXIV』5周年ですね。おめでとうございます! この5周年という区切りを迎えることへの感想と、これからの抱負をいただけますか?

吉田直樹氏(以下、敬称略):欧州のメディアの方にもその質問をいただいたのですが、意外とないんですよね(笑)。

祖堅正慶氏(以下、敬称略):僕らは毎日全力で開発しているので、“5年だから”とかは考えたことがないですね。とにかく、目の前のことを一生懸命やるだけなので。次の5年についても、とくに考えていません。毎日、追いかけ回されているので。今週末はオーケストラコンサートもありますから、今できることを全力でやっているだけです。そして、気がついたら5年経っていただけの話ですね。でもプロデューサーという立場では違うんですかね?

吉田:本当は、もうちょっと5年だからこそというのがあるのかもしれないですけど、内心では「5年だからどうした」みたいなところもあって。『旧FFXIV』からすれば8年ですし。正直、一応プロデューサーとして「5周年です!」とは言っていますが、これと言ってとくには……。正直、僕らはファンフェスティバルの準備に追われているので、そっちで死にそうです(笑)。

 そういったことよりも、僕らにとってもプレイヤーさんにとっても重要なのは“『FFXIV』の次の展開”といった部分ですよね。しかし、グローバルスタンダードなMMOという意味では、機能として足りない部分はなくなってきていると考えています。そのため、ほかのMMOが追いつけない部分としても今力を入れている“ハウジングでのロールプレイ”や“楽器演奏”などの『FFXIV』でしかできないこと、もしくは“『FFXIV』の世界に住むこと”を充実させたい。

『FFXIV』

 次のフェーズは、そういった要素を伸ばしていき、さらに“『FF』のテーマパーク”をより完成させたいという思いが強いです。新しいコンテンツ、新しいシステムはもちろん作っており、それは今までどおり成長していきます。次の5年は、それと同時に、『FFXIV』の世界を広げるという期間でありたいですね。

――今回はgamescomでのインタビューとなりますが、会場を見てどのような印象を受けましたか?

吉田:じつは、ほぼインタビューブースから出ていないので会場全体の雰囲気はまだつかめていません(苦笑)。ただ、人の入りが例年に比べて爆発的に増えていますね。ブース作りをしている際の印象ですが、各ブースの作り方やゲームの見せ方がゲーマーに楽しんでもらおうと工夫をしています。遊んでくれる人をエキサイトさせるかという部分がとくにフォーカスされているので、見習うべきところが年々増えていっていると感じました。

祖堅:僕自身はgamescomに参加するのは初めてなのですが、E3と比べて規模が大きい感じがします。事前の補足や情報がなく、ここにきて初めて分かることが多くて、この会場に足を運ぶこと自体が楽しいというイベントになっていますね。

吉田:やっぱり、来ることに価値があるよね。

祖堅:空き時間には、ついついBlizzardさんのブースに行ってしまいましたね(笑)。

吉田:ブースじゃなくて、グッズショップですけど。僕と2人で行って、「『ディアブロ』のTシャツかっけー!」とか言っていました。現時点で、唯一行った場所がそこですね(笑)。

――グッズショップでは、Brizzardさんのところが一番混んでいますね(笑)。ちなみに、gamescomはE3と開催期間が非常に近いですが、ゲーム開発者にとってgamescomはどういう位置付けになるのでしょうか?

吉田:『FFXIV』の場合と、その他のプロジェクトの場合で意味合いが変わってきます。『FFXIV』の場合は、同じ1つのゲームではありますが、E3はアメリカのプレイヤーに、gamescomはヨーロッパ地域のプレイヤーにと対象を明確に分けているので、開催期間は近いですが意味合いが異なります。また、それぞれの地域での光の戦士とのコミュニケーションの場でもありますね。

逆に、完全新作リリース直前のタイミングでは、ちょっと迷いはするのでしょうが、地方別でPRは変えると思います。ですが、E3の場合はアメリカのメディアがあまり取材にこないので、そこで差別化しますね。また、イベント自体の勢いでいえばgamescomのほうが圧倒的に上だと思うので、もしかしたら“今後は大きな発表をする場所もこっちで”という会社も増えてくるような気がします。

――プレイヤーベースで考えると、ということですね。このgamescomで、お2人が注目しているブースはなんですか?

祖堅:やはり、個人的にはBrizzardさんですね。『Call of Duty Black Ops4』はE3で触っちゃったので。ですが、とにかく会場がデカすぎて、何処から見ればいいかわからない感じです。

吉田:E3と情報が変わらない場所はおいておいて、『フォートナイト』などの巨大なコミュニティを抱えている企業が、どういう盛り上げ方をしているだろうというのは注目しています。また、ステージアクティビティでゲームじゃないイベントを行う企業も増えてきていて、最近そういうところが変わってきたと感じていますね。『FFXIV』のブースも、昔は単純に試遊台で遊ぶものだったのが、ステージを使ってやるものになり、今ではそれを越えて「ゲーム内でやるようなエモートをステージ上でやろう」といった“この場にきたから楽しめるもの”にシフトしています。『FFXIV』に限らず“どうやって見ている人をゲームでエキサイトさせるか”という部分において、日本は世界から完全に遅れているので、そこは毎年興味を持って見ているところですね。

――たしかに、『フォートナイト』のブースは遊園地みたいになっていました。

『FFXIV』

吉田:そうらしいですね。なので、『フォートナイト』ブースはなんとしても自分の目で見ようと思っています。

――これが終わったら、すぐに東京ゲームショウの時期になりますが、『FFXIV』としての予定はありますか?

吉田:TGSでは、そんなに大きなことをやる予定はないです。ブースの出典はありますし、バトルチャレンジをやろうとは思っています。ですが、その前に予定されている“14時間生放送”で出せる情報のすべてを集約してしまうので、出す情報がなくて出がらしみたいになりそうですね(笑)。ステージはやりはしますけど、どちらかと言えば“プレイヤーのみなさんといっしょに『FFXIV』で遊ぼう”みたいなテーマでやろうと思っています。

――TGSに行けば吉田さんに会えるという感じですか?

吉田:そうですね。ビジネスデイは仕事が忙しいので一般日だけになりますが、会場にいようと思います。

祖堅:まずはその前に、今週末にドルトムントでオーケストラコンサートがありますから、僕らは今それに集中しています。

吉田:別に、俺はしゃべるだけだから……。

祖堅:集中してくださいよ! 間違ったら大惨事ですよ。

吉田:本来、俺がそこでしゃべる意味がわからないって話だからね?

祖堅:オーケストラコンサートをヨーロッパでやるのは初めてじゃないですか。待ち焦がれたプレイヤーさんが最初に見たいのは、俺じゃなくて吉田直樹がいいと思うんですよ。

吉田:……プロのMC雇おう?

祖堅:それは『FFXIV』っぽくない。

吉田:ずっとこう言ってるんですよ……。

祖堅:『FFXIV』だから、吉田直樹が一番前に出るべき。

吉田:そんなこんなで、燕尾服を抱えてここまできたので、この週末はオーケストラコンサートに出ます。いわゆるオーケストラコンサートの本番の人たちであることに加え、今回はPAなしの生音のみです。僕らも聴くのは楽しみですし、まずそれでヨーロッパのみなさんに楽しんでもらったうえで、帰国したらすぐ「14時間生放送」ですよ。まずはそこまでかな……。

――その“14時間生放送”ですが、見どころを教えてください。

吉田:メイン放送は、いつもとはちょっと違う5周年っぽいものになっているかなと思います。いろいろな方からお祝いのお言葉もいただいているので、合間合間にメッセージをはさみながら進めていこうかと。基本的には、プロの司会もおらず、おもしろいバカなおじさんたちがワーワーやっているだけの放送なので、『FFXIV』を遊びながらなんとなく昼間から酒を飲みつつ見てもらえるといいかなと。

 また、ちょっとだけ開発パネルみたいなものをやろうと思っていて、“1つの集落がどう作られていくのか”という部分にフォーカスした企画をお話をする予定です。ここは若手から這い上がってきた開発者がプレゼンすると思うので、それは生暖かく見てください。話の内容はスクリーンショットも多めでおもしろいですよ。新しい切り口の企画として注目していただけるとうれしいです。

祖堅:僕はサブ放送のほうで、いろいろ虫食わされたりすると思います……。サブ放送のほうは、そんな大した放送ではないので、メインをしっかり見てください。サブは、なんか『FFXIV』をプレイしながら、「バカな開発者ばっかりいるな」という感じで見てくれたらうれしいなって思います。

――イベントといえば、ねぶた祭りにも出典して驚きましたが、そのきっかけを教えてください。

吉田:さっぽろ雪まつりを担当してくれていた広告代理店のほうから、宣伝チームに「ねぶた祭りもウチがやっているんですけど、協賛としてどうですか?」という話がきたんです。なので、5周年という区切りのタイミングであり、予算も問題なさそうだったので“お祭り”ということも含めてやってみようかと。もしかしたら狙われているのかもしれないですけど、僕は北海道出身・函館育ちなんで、青森も身近な場所の1つなんです。函館と青森は近いですし、もしかしたら「吉田にこの辺のことを持ちかければ、企画が通る」と思われているのかなとか(笑)。

『FFXIV』を一緒に盛り上げられる場所としてはエオルゼアカフェなどがありますが、日本全国、世界中にいる光の戦士たちをフォローするには数が足りません。場所も首都圏が多く、地方までは手が届きませんから。ですが、ねぶた祭りに出れば、青森近隣の人たちもきて『FFXIV』の神輿を中心に、伝統ある祭りと『FFXIV』の両方を楽しめるかなという思いがあって、参加のお願いをしたんです。そうしたら、あれよあれよという間に“ねぶた名人”が神輿を作ってくれるという話がまとまり、僕らは「ウソでしょ!?」と驚き、現場に行ってみたら名人のご子息が光の戦士ということが判明したりしまして。驚きが多すぎて、もう意味がわからなかったですね(笑)。“前ねぶた”はレギュレーションが厳しくて小さめなはずなのに実物はすごく大きくて、「前ねぶたを超えていませんか!?」と聞いたら「歴史に残る最大サイズを作ってみた」と言われました。そこでも“ヒカセンパワー”を思い知りましたね。

このように、ゲーム以外のところでも、いろいろなことをやっていくのがプレイヤーのみなさんへの恩返しかなと思っているところもあるので、今後も機会があればいろんなことをやりたいなと思っています。

コラボを含むコンテンツが2つも実装されたパッチ4.36の手応えは?

――先日のパッチで実装された、“禁断の地エウレカ:パゴス編”についてお聞きします。“アネモス編”に比べると装備の強化難度が高く感じましたが、これは“アネモス編”がカンタンすぎたという開発チームの認識によるものなのでしょうか?

『FFXIV』

吉田:“アネモス編”が緩すぎたとは思っていないです。というのも、“アネモス編”はちょっとおもしろい遊ばれ方をしたコンテンツだと思っていて。初動で先行した人たちはすごい勢いでモンスターを狩ってエレメンタルレベルを上げ、最終的にレベルキャップに近づいた辺りでNMを倒してカンストさせていました。それと同時に、アネモスクリスタルが集まっていって武器が強化されるという流れだったと思います。それを受けて“NMを順番に狩ってレベリングもしながら武器を育成するという”後続のパターンが定着したのですが、それでレベルを上げた人たちは雑魚狩りをほぼしていないと思います。そういう前提があるので、この大きく分けた2派はプレイの感覚が違うんですよ。

 今回の“パゴス編”も同様で、先行した人たちは自分たちで試行錯誤しながらChainをつなぐことを考え、突然変異や環境適応をどうしたら効率よく対応できるかなど、謎も解きながらやっています。しかし、“パゴス編”はいわゆる“ノの民”の人たちもスタートラインが同じなので、彼らは最初からNMを待っているんですね。その2つのグループで感想が大きく違っていて、人によっては「武器の強化をするのにザコ狩るの?」という反応になっているんだと思います。

“パゴス編”では、エレメンタルレベルを上げる方法の最高率がまだ固まりきっていません。やはり、Chainを続けて突然変異や環境適応をうまく使うというのが、今回の種ではあるのですが、それがプレイヤーのみなさんに広まる前に先行している人たちがカンストしはじめて、“ただChainで狩る”という初動の印象で根付いてしまって、悪いイメージが広まってしまったのかなと。

――なるほど。

吉田:なので、先日のHotfixでは、NM自体のエレメンタル経験値を大きく引き上げました。これによって、前回ほどの効率ではないにしろ、経験値稼ぎにも使えるようになったはずです。ただ、武器強化に関しては、先人たちの努力を否定するべきではないので、そのままになっています。今回は、そういう鍛え方をしてくださいということですね。

 これは開発側の話なのですが、今回の“エウレカ”のバトルコンテンツのディレクションをしている人間が、「吉田さんが『旧FFXIV』のケアルガの消費MPを調整した時、ゲームとしては真っ当な調整なはずなのに不満が多く出たというエピソードを思い出しました」と話していました。“アネモス編”から“パゴス編”への推移で、急激な変化を付けすぎたのかもしれません。

 今回のエレメンタル経験値について、「段階踏んで戻しますか?」と聞かれましたが、“雲海探索ディアデム諸島”の経験もあったので「ほどよく調整しても意図が届かないこともあるから、ドラスティックに変えられるときは変えないとプレイヤーの印象に変化はないよ」「いずれ3倍に増やすのなら、1回で変えたほうがいい」という話をしました。これで、またプレイフィールが変わると思います。しかし、“ゲーム内でゲームを新しく作る”のは本当に難しいですね。だからこそ、僕らも挑戦のしがいがあるので、引き続きフィードバックを受けつつ、いろいろな遊び方ができるコンテンツを目指して作っていきたいと思います。

――少し攻略的な話になってしまいますが、“しあわせうさぎ”がほかのNMの出現に影響しているという噂があります。その辺りは実際どうなのでしょうか?

吉田:その答えは言いません。まだ、実装からそれほど時間が経っているわけではないですし、そもそも正解を答えちゃうのは違うかなって。これが“エウレカ”でなければいいんでしょうけどね(笑)。『FFXI』でも、NMの出現方法はプレイヤーのみなさんが探し出していたものですから。ただ、トリガーがわかりづらい、確証が得にくいという部分があるのは理解しているので、そこを「もうちょっとどうにかできないか」という話はしています。今のところ、答えを言う段階ではないですね。

 また“アネモス編”の話になってしまいますが、当時のこの時期はまだ試行錯誤していたタイミングなんですよ。“アネモス編”の完全解明されている状態をベースに考えているから、解明されていない状態に不満が出てきているのかなと。難しいところですが、ワーワーしている状況もあのコンテンツの楽しさの1つだと考えていますから。

――『モンスターハンター:ワールド』とのコラボはかなりの賑わいをみせていますが、実装し終えての感触はいかがですか?

吉田:『極リオレウス狩猟戦』では、当初8人で挑むコンテンツと考えていたのですが、『MHW』側の常軌を逸した作り込みを見て「このままじゃマズイ!」となりまして。急遽、4人で挑んで3回倒されたら失敗する今の形にしました。それ自体は、結果的に“ロールに縛られない”作りに仕上がり、戦士が流行ったり、召喚士4人がスーパータイムをたたき出したりと、ある意味でちょっと『モンスターハンター』っぽくなったかなと。また、「ロールフリーも、これはこれでいいね」という声が、とくに海外中心で多かったです。この点に関しては、新しいコンテンツのヒントになればいいですね。

『FFXIV』

 個人的な感想ですけど、僕らとしては当初想定していた規模の内容にしていたのですが、『MHW』側のコンテンツを見ていて「普通じゃない」と思っちゃいました。正直、くやしいです。回避やガードまで実装するんだったなと。加えて、ディスクリプションのおかげで部位破壊表現もできなかったので、ちょっとリベンジの機会を作りたいですね。

祖堅:カプコンさん側のデベロップメントチームと、スクウェア・エニックスのデベロップメントチームで、単純なファイルのやり取りをしないといけないじゃないですか。通常のコラボレーションというと、上側のデータのやり取りで終わっちゃうので、ファイルの量も多くないんです。なので、「こんな感じで実装すればいいんだろうな」という想像もつくんですが、今回のコラボに限って言うと異常でしたね。

 例えば、リオレウスの物理的な動作法則によってコールされるSEについてのアセットすべてが、何千とくるんですよ。これはもう、「なんのファイルだろう」と解析するところからでした。解析したからといって、『FFXIV』にそのままアセットをもってきて実装することはできないので、それを『FFXIV』に組み込むために、いろいろ工夫したり、サウンドエンジンを変更したりと、けっこうなコストがかかりましたね。手間がかかりましたが、開発側としてもやりごたえがあるコラボですごくおもしろかったです。

吉田:勉強になった点はすごく多かったですね。最後の方は、本当に『MHW』チームと『FFXIV』チームの意地の殴り合いみたいになっていたのですが、ちょっと向こうが加減を知らなかったなというのが感想です(笑)。ですが、お互いがフルスイングしたからこそ、すごく清々しいコラボになりました。そのおかげで、遊んでくださっているプレイヤーの方々も清々しく楽しんでもらえたと思います。『MHW』チームには感謝でいっぱいですし、10年越しの付き合いで8年越しの約束が実ったコラボだったので、今回に限らず何かゲームファンが喜んでくれるようなことができればまた盛り上がれるのかなと思います。「ゲーム業界ってスゲーな!」と思ってもらえる学生の方々も増えるかとも思うので、そういう気持ちで“デザインが”“遊びが”ではなく「こいつらバカだな(笑)」と思ってもらえることを、またやれたらなと思っております。

――『MHW』側のコラボについてですが、ベヒーモスは頭を攻撃すると敵視が発生したり、見覚えのあるギミックがあったりと、かなり『FFXIV』らしいものになっています。あれは『MHW』チームがそうデザインしたのでしょうか?

吉田:そうです。最初の企画書が届いたとき、『MHW』チームの藤岡さん(藤岡要氏。エグゼクティブ・ディレクター/アートディレクター)に「プレイヤーさんから“『モンスターハンター』は役割がなくて、それぞれ好きに戦えるのがいいんじゃないか”と言われる可能性があるから、そんなに『FFXIV』に気を使わなくていいよ」という話をしました。そのときは「わかりました」と言われたのですが、できあがったのは企画書そのままのものでしたね(笑)。あれは徳田さん(徳田優也氏。ディレクター)も言っていましたが、「一度、試してみたかった」ということらしいです。

 要は、『モンスターハンター』の中に役割とギミックという要素を入れ、“モンスターの狩りでありつつも、周りの環境をルール化して戦ってもらう”ということを1回やってみたかったそうです。そして、「これは『FFXIV』に関連つければ試せる!」と。このとき、藤岡さんが悪い笑いを浮かべながら「絶対に鼻を明かしてやろうと思ってた」と言っていたのが印象的でした(笑)。

――以前、『ファンタシースターオンライン2』にオーディンが出たことがありましたが、あのときも『FFXIV』側のシステムを再現していました。これもセガのチームが再現したのでしょうか?

吉田:それは半々でしたね。あのときは、「完全再現したいんです」という話でギミック案と企画の動画をいくつかいただいたので、「このポイントは、もう1ギミック増やしたほうが濃くなりますよ」という感じで、こちらからも少しアドバイスをする感じでした。『FFXIV』のオーディンは“予兆を見て避けて攻撃する”というバトルだったことに加え、『PSO2』と『FFXIV』が似たような動きのできるゲームなので、コンテンツタイプ的に寄せやすかったという点もあります。

多くのプレイヤーが悩みに悩んだ“楽曲総選挙”について

――「光の戦士が選ぶ楽曲総選挙」が実施されましたが、お2人の個人的にお気に入り楽曲を教えてください。

祖堅:路線が違う内容で2つあるんです。1つは、単純に曲が好きだからという理由で「次回のパッチで実装させるどこかの曲」ですね。

――えっ!?

吉田:……つまり、まだ「楽曲総選挙」の対象ではない、超お気に入りの曲ができたってこと?

祖堅:できた!

吉田:ズルいよね、それ?「楽曲総選挙」の話を聞いているのに、まだ誰も聞いていない曲言うの?

祖堅:だって、できちゃったんだもん。

吉田:まぁ、ならしょうがない……。

『FFXIV』

祖堅:もう1つは、「天より降りし力」ですね。これはやっぱり『旧FFXIV』と『新生FFXIV』との境目で生まれた曲でもあり、「さあ、やり直すぞ!」と自分の心に火をつけるきっかけになった曲なので、思い出深いというか。曲がいい、悪いとかではなく、単純に思い入れがあります。

吉田:好きな曲はいっぱいあるんですけど……。どれか1つと言われたら、昔はPLLでも始まるときにも使っていた「希望の都」です。今でもステージイベントが始まるときに使われていますよね。オーケストラコンサートのオープニングの1曲目が「希望の都」で始まるのも、じつは僕のリクエストです。『FFXIV』を引き受けて「“新生”するぞ」と号令をかけたときに、当然楽曲も作り直しています。それを植松さん(植松伸夫氏。ゲーム音楽作曲家で、『FF』シリーズの楽曲を手がける)に再度お願いするわけにはいかないですし、祖堅が『旧FFXIV』にフラストレーションを抱えていたので「お前が書けばいい」という話をしました。

 ある意味、『FFXIV』の初仕事ですね。そのときに、祖堅から「イメージはどんな曲にしたいんですか?」と聞かれたんです。『旧FFXIV』は、「『FF』らしくない」「ゲームとして未完成だ」など、いろいろ言われていました。僕も遊んでみて、まさにそのとおりだと思ったものを立て直すからこそ、「まっすぐ王道ストレートを投げてほしいから、クラシックサウンドのド直球を。ラッパが鳴り響いて、すげぇゲームがスタートと思えるものにしたい」「もちろん、田舎町に行ったら寂れた曲が鳴っていてほしいけど、三都市ではまっすぐドーンとした“冒険の幕開け”を感じさせる曲を基本にしてほしい」とお願いしました。それから、何曲か同時にサンプルを渡されたんですが、その中の1つにあった「希望の都」を指して「言ってたのは、これでしょ?」と言ったのを覚えています。それが、そのままあの曲で「そうそう、これこれ」と(笑)。何のリテイクもできず、「もうあとは大丈夫だからよろしく」と言ってまかせました。

祖堅:ぜんぜん手直ししてないんですよ。

吉田:なので、僕にとって祖堅という音を作る人間と出会って、初めて自分のゲームデザイナーとしての・ディレクターとしての、「こういうゲームで、こういう曲が流れているゲームにしたいんだ」という構想に、祖堅が出してくれた答えの曲なんです。未だに『FFXIV』のイベントで一番最初に鳴り響いてほしいと思ってしまうので、僕にとってはすごく思い入れが強いんです。あの曲を聞いたときに、「あれ、これいけんじゃねーかな」と強く確信しました。

――『FFXIV』チームでは、すでに結果を把握されているかと思いますが、意外な結果だった曲はありますか?

祖堅:全部、意外っちゃ意外だったかな。

吉田:俺が大好きだった「嵐の中の灯火~怪鳥巨塔シリウス大灯台~」がギリギリで落選したのはショックでした……。「シリウス」好きなんだけどなぁ……。

祖堅:ギリギリもギリギリでしたね。でも、「国によって好みというものがあるんだな」というのが、すごくわかりました。ヨーロッパ地域だとこういう曲が好みで、日本だとこういうのが喜ばれるんだみたいに明確に分かれていて、すごく参考になりましたね。気になる結果発表は、もう少々お待ち下さい!

――ちょっと気が早い話かもしれませんが、紅蓮秘話第6話で最後に次の拡張を示唆するフレーズがあり、妄想を膨らませている光の戦士も少なからずいるようです。そんな彼らに対して、なにかひと言あればお願いできませんか?

吉田:ひと言といってもなぁ、拡張パックがあるだなんて僕らは正式に発表していないですし?(笑)

祖堅:僕らもわからないですね。

吉田:いや、だってファンフェスで何か発表されることをみなさん期待されているかと思いますけど、何が起こるかわからないですからね。「もう拡張パックは作りません!」みたいな、ね?

祖堅:“吉田直樹がファンフェスにこない!”という可能性もゼロじゃないし。

吉田:あぁ~、あるよね。“なぜか祖堅が基調講演にいる!”というのもあり得るからなぁ。……まぁ、ファンフェスに迫ってくるたびに、自分がミステリー好きなんだなと再確認するんですよ。ナゾナゾ的なフレーズを、本編や紅蓮秘話などに散りばめといて、何か発表があったとき“あとで答え合わせができるように”という遊びがけっこう好きでして。パッチトレーラーでもそうですが、ミスリードばっかりやりますから。この紅蓮秘話も、そのうちの1個かもしれないので、それを踏まえてパッチ4.4のメインシナリオを見ていただきたいと思います。「ますますわからないんだけど?」みたいになるかもしれないですけど(笑)。そもそも、パッチ4.4のタイトルに“VIOLET”という色を示唆する単語も入っていますし。

 パッチ4.3の『紅蓮のリベレーター』の物語が1つの区切りを迎えました。続くパッチ4.4は、テレビドラマでいうところの第4シーズンへの第0話にあたります。まずはトレーラーを見て「はぁ!?」となり、本編を見て「ハァ?」となって、ファンフェスを楽しみに待つ。このタイミングが最もテンションが上がる時期かなと思いますので、そうしていただけたらなと。ただ、くれぐれもミスリードかもしれないので、天邪鬼な『FFXIV』チームを信用しすぎないほうがいいですよ。

祖堅:よくネットで、「吉田を信じるな」と言われてますからね(笑)。

吉田:ひどいよね、あのフレーズ。「吉田を信じるな」って、人間として終わってるんだけど!?

――では、最後にひと言メッセージをお願いします。

吉田:“新生”してから5年。僕らにとっては、本当にあっという間に過ぎていきました。祖堅が最初に言っていましたが、目の前にあることを1つずつ全力でやってきて、気がついたら5年かという感じでしかないのですが、ただひたすらに全力で走ることが許されているのは、たくさんの人に遊んでもらえている、応援してもらっているからです。毎回、こうやって5年前に発売したゲームでも、こうやってインタビューにきていただけていることが、僕らの支えになっています。この5周年のタイミングで、改めてそのことを確認しました。

 ですが、ただ“これまでを繰り返せばいい”ではなく、5年を積み重ねてきたからこそできることがあると思っています。下地がしっかりできた今だからこそやれること、ほかのゲームにはできないことがたくさんあるとはずなので、それをやっていく未来でありたいなと。その未来が5年なのか10年なのか、何も決まっていないのでわからないですが、とにかく1人でも多くの人に遊んで盛り上がってもらえるゲームにしていきたいとがんばっていきますので、今後ともよろしくお願いします。

――ありがとうございました!

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