2018年8月28日(火)
『エースコンバット7』河野ブランドディレクターにインタビュー。片渕監督とのやり取りや物語に迫る
ドイツのケルンで開催されていたコンピュータゲームの見本市“gamescom(ゲームズコム) 2018”にて、PS4/Xbox One/PC用ソフト『ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN(エースコンバット7 スカイズ・アンノウン)』の開発者インタビューが行われた。
本作は、シリーズ累計1,400万本以上の出荷本数を誇るフライトシューティングゲーム『エースコンバット』シリーズの最新作。ストレンジリアルと呼ばれるシリーズ共通の架空世界を舞台に、実際の航空機メーカーにライセンス許諾を受けた本物の戦闘機をリアルなグラフィックで操作できる。
シリーズのブランドディレクターである河野一聡さんには、現在の進捗や公開された情報、開発で心がけていることなどを伺った。
――2015年12月にアナウンスされ、いよいよ発売日が決まりました。現在の心境は?
ファンの皆さんをお待たせして、ご心配をおかけしました。それを感じていたので発表した瞬間、一瞬だけ安心というかホッとしました。ただ、その後の反響、リアクションがすごくて、いままで以上のプレッシャーを感じています。
――印象的だったファンの声は?
ようやく発売日を発表できたことに、本当に喜んでいただけているのがわかりました。発売を延期してしまったことについては、「しっかりしたソフトを出してほしい」や「数年でも待つ」という応援が届いていました。それに甘えるわけではないのですが、支えてくれるファンの皆様の言葉に後押しされてここまで来られました。確認した反応の中には「思ったより早かった」というものもありました(苦笑)。
――会場に出展されていますが、感触はいかがですか?
取材が多くて実はまだいけていないんです。ただ、広報チームから今回のトレーラーが好評だったこと、ファンの皆様に喜んでいただけていることを聞きました。
――改めて本作のコンセプト“空の革新”を教えていただけますか?
『エースコンバット』のナンバリングタイトルなので、基本のゲームプレイや手触り、自分がエースパイロットになっていくコンセプトは変えません。そこを守って、新しいタイトルで何を進化させるのかを考えた結果、環境の変化を提供するべきだろうと。遊び場、環境をどう新しくするかに注目しました。
今のハードでは雲をボリュームで表現できる。まず見た目でこれまでと差別化できる。そして雲の中に入ると、気流があったり、水滴がついたり、アイシングしたり、自然現象でゲームプレイに変化を与えることができる。見た目とゲームプレイがしっかり因果関係を持てているのは大事だし、記号的でなく、自然に折り合うのは優れたアイデアだと思いました。
環境を新しくするということを、雲を中心にやろうと。あと、最終的に感じたのは、これらの自然現象をゲームに入れた結果、いままでとは違う空を作れました。これまでは見た目に雲があっても、宇宙空間のように手触りは何もなかった。本作では影響力のある雲の近くに行くと、気流で流されたり、機体が振動したりします。空のテクスチャー感、手触りがあることが作れたので飛行すること自体の臨場感が増しています。
――トレーラーでもかなり話題になっていました。
ただ、実際は雲に入ると危険なので、そもそも入りません。雲に入ったからといって、戦闘機のコクピットがあそこまで水滴を帯びて凍ることはないかもしれません。それはゲーム的な表現です。
なぜそれをするかといえば、プレイヤーに「雲に入りました、敵から見つかりにくいです」とポップアップでメッセージを出すのは、昔の技術力がない時代なら成立したのですが、現代のゲームではそぐわない。それであれば自然現象でサインを送ることでプレイヤーは「雲に入ったな」と意識せずとも自然に判断できるように学習していく。見た目の美しさを表現しているだけではなく、ゲーム内の状況を送っている記号になります。それらを考えながら自然にさりげなく緻密にゲームを組んでいくのが『エースコンバット』のスタイルだと思っています。
――こちらも改めてになりますが、本作の世界観についてご説明いただけますか?
本作は『エースコンバット5』から約10年後の世界。そのため、『5』との関係性は少なくともあります。ただ本作から新しく入られる方もいると思うので、物語は『7』だけで理解できて完結するように作っています。
――先日、脚本を手掛けられた片渕須直さんに作品をお見せになったとのことですが、いかがでしたか?
片渕監督には、かなり前に脱稿いただいていました。監督の頭の中にキャラクターがいて、自分がよく知っているやつらに会ったという感覚を覚えたそうです。ご自身が頭の中で思い描いていたキャラクターたちがそこにいたことに感動されたようで、涙腺がゆるんでらっしゃいました。僕としては監督が思い描いていた世界を形にする責任を達成できたと感じて涙腺がゆるみました(笑)。
――開発者冥利につきるのでは?
監督からお墨付きをもらえたことはもちろんありがたいですが、まだそこは第一段階。監督が考えるものを表現できたという、通過点です。開発チームとしてはしっかりとタイトルを作り、お待ちいただいているユーザーの皆様に作品をお届けして、お墨付きをいただいてこそ達成となります。
――ストーリーは単純な形で終わらないようにすると以前のインタビューでお話されていたのですが、そこはぶれずにできましたか?
そこはぶれていません。『スカイズ・アンノウン』というサブタイトルもそうですし、日本版では“願い、救い、痛み、恐怖、空はひとつにつながらない”というキャッチを入れさせていただきました。
本作のメッセージとして、1つの事実でも受け取り手によって事実は異なるというメッセージがあります。あの空には同じ戦争しか起こっていないのですが、それをとりまく人物の心情はすべて違う。それが“願い”、“救い”、“痛み”、“恐怖”です。空は1つにつながっていると言われているのに、そうではないという、プレイヤーが向かうべき空でもあります。
そのあたりの勧善懲悪では終わらないところまで物語は踏み込んでいます。
――物語にからむ登場人物はおおよそ何人くらいいますか?
メインどころは、5から6人ぐらいで物語の中心に絡むキャラクターはそこまで多くはありません。ただ、主人公は所属する部隊を転々とするため、顔ぶれも変わるし、雰囲気も変わります。
――プレイヤーが操作する主人公は、これまでのシリーズと同様にパイロットで間違いないですか?
ナンバリングタイトルで一貫してきたように、自分自身がパイロットとなってあの世界に、物語に入ります。
――コゼットは顔が汚れた様子も見られますが、パイロットの顔もあるのでしょうか?
コゼットの顔が汚れていることに、そういった声も出ているようですが、彼女はあくまでも王女です。本作の重要なキャラクターの1人で、王女として、いろいろなことに巻き込まれ、ご苦労されるようです(笑)。
――海上基地や巨大な対空兵器も見られました。こちらはプレイヤーが対峙する強大な施設ですか?
どうでしょうか?(笑) 敵に関しては、攻略の壁になるように現在ブラッシュアップしています。プレイバリエーションを増やしたいですし、大きな建造物を破壊するのはプレイヤーの楽しみだと思っていますので盛り込むようにしています。
――公開された映像で見てほしいところはどこですか?
細かく丁寧に作っているのですが、最後に「Can you hear me?」というセリフが連続するところと、音楽が相まって鳥肌が立ちます。トレーラーを観た海外の方の反応として、序盤で大騒ぎしたのに最後でほろりとするようなものを見かけました。世界共通の感覚、『エースコンバット』ならではの興奮とエモーショナルな部分をぜひ、観てほしいです。
――各キャラに日本語は乗るのでしょうか?
日本語ボイスは入っています。ただ、今回はここまでにさせてください。詳細についてはまた後日お届けいたします。
――MiG-21(ミグ21)bis Fishbedが公開されました。他にも、変わった機体、旅客機などは出るのでしょうか?
今回は戦闘機のみです。モデルをすべて作り直したので、押さえておくべき機体や人気のものを用意するのが最優先でした。期待されているような変わった機体はどうでしょう……最後の有人機と呼ばれるスターファイター(F-104)という機体があるのですが、それはこれから来る無人機との対比というメッセージを込めてプレイアブル機体として、入れています。
あとライバルのミハイがSu-30SMというマニアックなものに乗っているので、こだわりではありますね。バックボーンやストーリー、機能を含めてチョイスしています。
――プレイするに際して、ミッションエリアは決まっているのでしょうか? オープンワールドではないのですが、自由に動ける中でのプレイですか?
四方は決まっています。ミッションによってサイズが違うことはありますが、作戦範囲の中で自由にプレイできます。ミッションの中にはストーリードリブンで感情的な部分を強く打ち出すドラマ進行のものもあれば、少し大きめのエリアで補給ラインがしかれているものもあります。拠点をどこから攻めるのか、弾薬を使った場合、補給に戻るのか、撃ち尽くすまで粘るのかを判断することになります。そのようにバリエーションは用意しています。
――苦労しているところは?
プレイヤーがどれだけ自由に動いても物語が進んでいく必要があるため、そこは毎回苦労しています。それをクリアするために、『エースコンバット』独自のノウハウがありますね。
プレイヤーが自由に判断してプレイする可能性を想定して、この場合はこの無線を再生する、こちらをしていない場合はキャンセルするといった進行をしていきます。その状況にあわせて、キューに入って再判断するという工程を行います。
――現状の開発進捗は?
進捗は95パーセントと言っていいと思うのですが、最後の5パーセントの仕上げが評価に及ぼす影響は5%ではないと思っています。なので気が抜けません。
それぞれのメンバーが演出を磨いたり、手触りを調整したり、無線を調整していたり、そしてオンラインの調整をしている人間もいます。最後の追い込みです。
――ゲームを作るうえで、どのようなことに注意して作られていますか?
物語、ビジュアル、音楽、ゲームプレイなど、いろいろな要素があります。それぞれを各々のスタッフたちが作ってくるのですが、統合して遊んでもらった時に「お客様が望んでいた『エースコンバット』になっている」と思ってもらう必要がある。最終的にそこにまとまっていくことに気を使っています。
「これは『エースコンバット』のスタイルではない」、「この雰囲気はいける」と判断しながら、期待して望まれている作品になるように作っています。
――それは開発チームの目標になるのでしょうか?
もちろん開発チーム全体としての意思、目標です。そのうえで、ブランドディレクターとして、『エースコンバット』がどうあるべきかという導きはしています。
――フライトコントローラの発売が発表されました。
本物に近い感覚で遊べるので、雰囲気は段違いに上がります。特にPS VRでの没入感は相乗効果で高まると考えていますね。ただ、プレイ自体は難しくなる可能性もあります。僕はそこまでうまくないですが、猛者は必ずいますね。いつも驚かされます。
――まだ伝わっていないけどアピールしたいことは?
間口は遊びやすく設定しているのですが、上級者が使いこなすとカッコいい操作ができる“ポストストールマニューバ”を用意しています。奥深さにもつながっているので、ぜひこちらに挑戦していただきたい。戦闘機が好きな人に、『エースコンバット』がここまでできるようになったことを喜んでいただきたいです。
あとVRコンテンツでしょうか。徹底的に一人称にこだわって制作しました。今回、「エースコンバットの未来のひとつの可能性」、お客様へのプレゼンテーションとしてつけさせていただきました。4倍に近い処理をよくキャンペーンに近づけてもらえたとエンジニアに感謝しています。根っこは同じだけれど、行き先が異なる『エースコンバット』の可能性を少し先取りしてもらえればと思います。
ああ、それと本作の目標地点として、『4』と『5』の中間くらいに落ちるように目標想定していました。実はシナリオを担当した片渕監督も同様に、雰囲気を『4』と『5』の間くらいにしたいと考えていました。僕自身はコンテンツとして、『5』の大陸間戦争という大きな規模ではなく、かといって『4』の独立軍と1つの国という小さな戦争ではない……設定やゲームバリューをいい落としどころにして、良質なものにしたいと考えていました。それは結果として達成できたと感じています。
――開発内部でもその手ごたえを感じていますか?
どうでしょう……それぞれの作業で必死ですから手ごたえまでは見えていないかもしれませんね。ただ、皆さんの期待は直接開発に届いているので気合は入れなおしていると思います。
――東京ゲームショウには出展されるのでしょうか。
はい。このイベントの後、8月25日~26日に実施するC3AFA TOKYOと、8月26日に行われる松島基地航空祭に出展し、TGSにも出展します。ぜひ楽しみにしてください。
※情報は発表日現在のものです。発表後予告なしに内容が変更されることがあります。
※画面は開発中のものです。
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データ
- ▼『ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN』
- ■メーカー:バンダイナムコエンターテインメント
- ■対応機種:Xbox One
- ■ジャンル:STG
- ■発売日:2019年1月17日
- ■希望小売価格:未定
- ▼『ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN』
- ■メーカー:バンダイナムコエンターテインメント
- ■対応機種:PC
- ■ジャンル:STG
- ■発売日:2019年2月1日
- ■希望小売価格:未定