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2018年9月14日(金)

『FFXIV』パッチ4.4吉田直樹インタビュー! 次元の狭間オメガやアプリ情報などに注目【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクター・吉田直樹氏に、来るパッチ4.4について語ってもらった。次の大きなうねりの第0話を描くメインストーリーや、“四聖獣奇譚”第3弾となる“朱雀征魂戦”、最終章となる“次元の狭間オメガ:アルファ編”などなど。そんなコンテンツ山盛りのパッチ4.4についてプレイヤーが気になるであろうポイントを、吉田氏にぶつけてきた。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

ついにガレマール帝国へ?! ……その序章となるメインストーリー!!

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――まず、パッチ4.4のタイトル“狂乱の前奏曲”には、どういう意味が込められているのかを教えてください。

吉田直樹氏(以下、敬称略):じつは、パッチ4.4と次のパッチタイトルは対になっていて、次回のタイトルには“前奏曲”に対する“何か”がくる形になっています。そういう理由で、“前奏曲”という単語が先に決まっていました。それに合わせる単語として、今のシチュエーション・これから起こることをどう表現しようかと考えたときに、“狂乱”でどうですか? という提案があり、それで決めました。日本語は、単語に複数の意味を込められる言語ですし、これでしっくりくるなと。…… “狂乱”という単語そのものが『FF』に付けるタイトルとしては、ちょっと表現として強すぎるという問題点もあったのですけれど(苦笑)。最近だと、“狂う”という言葉自体を使わない風潮がありますし。ですが、それでもこの後の状況を鑑みると、やはり“狂乱”がピッタリかなと考えた結果です。

――なるほど。ちなみに英題は“PRELUDE IN VIOLET”となっていますが、パッと見、邦題と英題でリンク性が薄そうに感じました。こちらは、どういった意図でこのタイトルにしたのでしょうか?

吉田:“狂乱”はとてもふんわりした単語で、日本語だといろいろな意味に受け取ることができるんです。しかし、英語にはそのものズバリを指す、もしくは近いニュアンスの言葉がありませんでした。どうするかと考えていたときに、英語チームから「イメージ的にガレマール帝国を連想しつつ不安感を示す色として、“VIOLET”が含みを持たせられるのでは」という提案がありました。

 

時期的に「次のFFXIVの展開の色はなんだろう?」という話題が出る頃だろうというのもあって、『蒼天編』の青でもなく、『紅蓮編』の赤でもなく、かつガレマール帝国のイメージも含んだ色を使いたいなと。ガレマール帝国の将軍たちが身に着けている鎧は、パッと見は黒ですが、完全な黒ではなくて少し紫が混じっていたりするんです。そういう理由もあって、“VIOLET”でいこうということになりました。

――今回のメインアートにはガレマール帝国の面々が押し出されていますが、やはり帝国を中心とした物語が描かれるのでしょうか?

吉田:『旧FFXIV』から続く、ガイウスの話や“イシュガルドとドラゴン”というキーワードにある程度の決着を付け、ガレマール帝国に支配されていたアラミゴ・ドマの解放を終えたことで、『旧FFXIV』から引き継いできたものがある意味減ってきました。今回、いよいよその総本山に踏み込むという決意を持って作っています。

 あのメインアートは当然ウェブバナーなどでも使っていくので、本当はもっと色気を出した方が広告としてはいいと思うのですが(苦笑)。オッサンばっかりですからね……。アルフィノも不安そうな顔していますし。悩んだところではあるのですが、逆に目立つかなという考えもあって、思い切って帝国サイドで固めてみました。

――トレーラーを拝見しまして、だいぶのめり込んで見てしまいました。物語の今後の展開がまったく想像つかないのですが、今回はどのような位置づけになるのでしょう?

吉田:パッチ4.4は、次の大きなうねりに向かう新シリーズの第0話の位置にあたります。『紅蓮のリベレーター』が完結してから、次の章へ向かうインターミッション……前シリーズと新シリーズが両方クロスオーバーするような形になっていて、展開の起伏が激しいメインストーリーが展開されます。ぜひ、時間に余裕のあるタイミングで一気に見ていただきたいです。かなり強烈な事実だったり、キーワードだったりが出てくるので、「この先、ますますどうなるのかわからなくなった」という感じになるとは思います。

――トレーラーの最後のほうで何かを詠唱していましたが、あれはアルフィノの声ですよね?

吉田:さあ、どうでしょう……。ただ、最後の最後に「今ふたたび霊災のとき」というフレーズが入っています。新生して現実時間で5年、ゲーム内の時間軸で “第七霊災”が発生して5年と少し前、奇しくも第七霊災から『新生編』までのストーリー上の空白期間も5年ということで、また“霊災”というのが1つのキーワードかなと思います。何度もトレーラーを見直していただくと、なんとなくヒントがあるかもしれません。今回のトレーラーは、本当によくできたと思っています。

――BGMも鳥肌が立つほどにすばらしかったです。

吉田:じつは、gamescom 2018のインタビューで話していた“祖堅(祖堅正慶氏。サウンドディレクター)のお気に入り曲”は、トレーラーには使われていません。まだ、隠し玉の曲がありますよ。

――コンテンツ自体も膨大ですしね。ストーリーの話になりますが、前回のストーリーではアルフィノを操作して進行するロールプレイモードがありました。こういった新しい体験を用意した経緯を教えて下さい。

吉田:ここまで運営を続けてきて、“複数のキャラクターが、同じ時間軸であるけど別の場所で活動する”というシチュエーションが増えていきました。これは、登場人物のキャラクター性が上手く立ってきたというのが大きいと考えています。

 例えば、エスティニアンも『紅蓮編』メインストーリーの脇で活動していましたよね。そんな彼らには彼らの、その時なりの物語が存在しています。僕らはゲーム体験を大事にしたいので、「一方その頃、というカットシーンが多くなってきたなあ」という”見るだけの要素”にちょっと危惧がありました。

 以前からたびたびお話していますが、『FFXIV』は“MMOである前に、RPGとしての『ファイナルファンタジー』”なので、ストーリーをもっと深く体験してもらうために、同じ時間軸で別の活動をしているキャラクターを操作できたほうがゲームとしておもしろいのではないか……と。そういう発想が、ロールプレイモードを作った根本的な理由になります。シナリオチームからの打診があり、システム開発が行われました。『蒼天編』では「4人旅が楽しかった」という感想を多くいただきましたが、“それに加えてさらに、彼らを操作できたらよりおもしろいだろう”というストレートな理由ですね。

――今後の使い方の展望としてはいかがですか?

吉田:このシステムは、基礎システムとしてベースから開発してきましたので、もちろん今後も登場する可能性があります。“あのシステムがどう発展していくか”というのも、この先見ていただけたらと。

 ただ、扱ったことがないジョブを突然操作させられたりするので、操作に戸惑う可能性があるというのが大きな懸念点です。そういう意味もあって、難易度はあまり上げられないですね。アルフィノのアクションが2つしかないのも、そのためです。いきなりフルアクションの召喚士や黒魔道士をやれと言われてもムリですし(笑)。そこは、バトルのバランスとの兼ね合いが難しいところではありますが、引き続き挑戦していきたいと思います。

――メインストーリー上で“永久焦土 ザ・バーン”を訪れるそうですが、ここは前回の終盤でアルフィノが訪れた場所という認識でよろしいでしょうか?

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

吉田:そうです。前回、アルフィノたちが戦闘したであろう場所にも行っていますね。

――このエリア、当初はダンジョンというよりもフィールドとして登場する場所だと思っていました。

吉田:基本的には、エーテルが完全に枯渇した超巨大な地域で、“何者も生きていけない”場所です。エリアとしてはとても広大ですが、いきなりパブリックフィールドとして加えるわけにもいかないですし、何もないといわれるところだし、コンテンツが作れないのです。ですから、今回はきっちり目的を持ってダンジョンとして訪れ、その場所の雰囲気だったり、なぜエーテルが枯渇した大地になっているのかだったりを、あらためて感じてもらえるようにしています。

 今までにも、世界設定として言葉の端々には出てきてはいるものの、すべてを覚えている光の戦士は少ないと思います。とはいえ、“この地域を見たガレマール帝国初代皇帝ソル・ゾス・ガルヴァスが蛮神殲滅を国是として掲げた”など、世界設定的に重要な土地でもあるのです。ですので、メインストーリーで扱うことで、そのあたりを体験とともに提示しようというのが、“ザ・バーン”をダンジョンとして追加した理由でもあります。

――焦土というだけあってランドマーク的なものを作りにくいかと思いますが、そのあたりはどう表現していったのでしょうか?

吉田:そこは「永久焦土って、どう作りますか……そもそもモンスターはいるんですかね?」と、開発メンバーも苦労していたようです(笑)。「エーテルの枯渇なので、人間にとって一番きつい環境なんだろう」「深海にも生物がいるように、そこにも耐えうる生物はいるんじゃない?」みたいな話をしていました。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――前回追加された“風水霊殿 ガンエン廟”は、遊んでいてすごくプレイしやすいダンジョンでした。そういう意味でのデザインとして、今回追加される2ダンジョンはいかがですか?

吉田:“ザ・バーン”のプレイフィールとしては、“ガンエン廟”より“獄之蓋”に近いかもしれません。“ガンエン廟”は、ここ数年のダンジョンのなかでもトップクラスのデキだったと思います。今回もきちんと雰囲気とバトルが噛み合ったデザインになっていると思います。

 ただし、プレイフィールとしては“草木汚染 聖モシャーヌ植物園(Hard)”のほうが凝っているかもしれないですね。“ザ・バーン”はメインストーリーにガッチリ絡んでいるので、ダンジョン担当者もやりにくい部分があると思うんです。その反動か、“聖モシャーヌ植物園(Hard)”はだいぶ遊んでいますね(笑)。こっちの3体目のボスの調整は、めちゃくちゃ苦労しましたし……。

――それは強さ的な意味合いでしょうか?

吉田:アイデアはすごくおもしろくて、BG班もキャラモデル班も協力してよく作っていたのですが、バトルのチェックをしたときに、「これは……やりすぎだよね?(笑)」と。僕がダンジョンのチェックをするときは、説明を受けずに初見の状態で挑むんです。一度全滅したあと、ギミック予想をして、パーティメンバーにそれを説明して再トライ、というのが通常の流れです。

 今回も流れはそうだったのですが、僕が無意識的にフィールドマーカーを置き始めちゃったんです。そのときに、「マーカー置きだしたら、ダンジョンとしてはダメだろ(苦笑)」と。その様子を後ろで見ていた担当者も、「吉田さんがマーカーを置き出した……。ダメだなこれ」と察したみたいですね。とてもおもしろかったのですが、2回くらい調整してもらいました。余談ですが、メンバーもランダムマッチングに近い状況を作るために、あまり敵視を安定させられないたけお(鈴木健夫氏。リードアーティスト)がタンクをやり、僕は本気で高火力……みたいな感じでやってます(笑)。

――ストーリーとしては、ドマ町人地の復興もひと段落しますが、すべてが終わったあともプレイヤーが足を運ぶような仕掛けはあったりしますか?

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

吉田:そんなに強くは入れていません。せいぜい、「お小遣い稼ぎをしたい人は定期的に寄ってね」くらいですね。あとは、そこでしか売っていないものもいくつかあります。ただ、雰囲気はすごくよくできたので、スクリーンショットを撮るのが好きな方々は、けっこう足を運んでもらえるかと思います。

ジョブ調整や“朱雀征魂戦”など、バトル関係も見どころ満載!!

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――今回、黒魔道士と侍の攻撃能力を大幅に引き上げるとのことですが、具体的にどのような変更が行われるのでしょうか?

吉田:その2ジョブに関しては、単純に攻撃能力を底上げしているので、けっこうストレートな調整になっています。黒魔道士は主力アクションの数値が変わっていて、しっかり撃ち続ければストレートにそれが火力に反映されます。侍は複数のコンボルートに数値の底上げが行われています。

 これらの意図としては、“印象を変えていきたい”という部分が強いです。数値的に現状でも目標値は満たしていると思っていますが、それでも印象が優れないのであれば、ベース攻撃能力をもっと引き上げようという意図になります。「このジョブはシナジーがないけど、とにかく強い!」という声が出てくれればいいな、という方向へ調整しています。

――「上手な人は本当に飛び抜けているが、普通の人はほかのジョブとかわらない。であれば、シナジーがあるジョブのほうがいい」というイメージを持つ人がいるのは事実かもしれません。

吉田:現状の侍と黒魔道士は、「ちょっと火力高すぎるのでは?」と言われるくらいがちょうど良いのかもしれませんね。この2ジョブを使いこなしている方は、「随分思い切ったなぁ」と思うくらいにはなっていると思います。黒魔道士の場合は、現状のタンクのみなさんがスタンスを切る傾向が強いため、“ディヴァージョン”だけでは敵視抑制に苦労するかもしれません。“ルーシッドドリーム”もセットしたほうがより確実かもしれないです。

――もともと腕のある光の戦士の人は、今以上に敵視に気をつけておかないと、でしょうか。

吉田:タンクが防御スタンスであれば、十分に敵視は稼げるのですが、今は「スタンスは切るもの」という風潮が強まってきているのが事実です。ギリギリで敵視を維持しつつ、火力も出したい! というのが、今の風潮に感じられています。もちろんその上で、「敵視が飛んだらそもそもタンクの恥!」と言ってくれる人もいるのですが……。

――そういう意見も多いですね。

吉田:とはいえ、DPS側もしっかり敵視抑制をすべきですので、腕に自信のある黒魔道士の方は、”ディヴァージョン”と“ルーシッドドリーム”を両方セットしておくのが安心かと思います。ロールアクションの枠も10個まで増えますしね。

――“四聖獣奇譚”の“朱雀征魂戦”が実装されますが、バトルのコンセプトを教えてください。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

吉田:ひと言では難しいです。「周りと足元をよく見て!」という感じでしょうか……。トランプの“スピード”に近いかもしれないです。

――その場その場の判断が重要になるのでしょうか?

吉田:めくられたものを瞬間判断して……。その瞬間判断が立て続けにあるわけではないですが、感覚的には “スピード”に近いと思います。今までやってないタイプではありますね。

――“極朱雀征魂戦”の難度は、これまでの4.Xシリーズの極蛮神戦でいうとどれの印象に近いですか?

吉田:人によっては、一番難しいかもしれないです。方向性だけなら、“極女神ソフィア討滅戦”に近いかもしれません。

――なるほど。いずれにせよ、“次元の狭間オメガ零式:アルファ編”の攻略には、“極朱雀征魂戦”で武器を手に入れてから挑むのがいいのでしょうか?

吉田:そうですね。少なくとも、禁断マテリア装着をした新式武器か“極朱雀征魂戦”の武器かの2択になるかと。

――“四聖獣”も残るは青龍だけかなといった感じですが、ストーリーはそろそろクライマックスに向かうのでしょうか?

吉田:今回が“四聖獣奇譚”第3弾ですが、ストーリーの中間・折り返しですね。この次が盛り上がり的に大きいものになります。

――“朱雀征魂戦”後半の楽曲は、光の戦士としても馴染み深い声優・南條愛乃さんが担当したそうですが、これはどういった流れでオファーすることになったのでしょうか?

吉田:南條さんが祖堅に、ご自身のソロ楽曲をピコピコ音化してほしいとお願いしたことがあったそうです。それに対して、祖堅が「すぐにできるからいつでも作ってあげるよ。その代わりに俺からもお願いがあるんだけど、蛮神の曲を歌ってみない?」と返したみたいで。その後、僕にも「南條さんにお願いしたいんだけど」という話がきたので、「権利関係がクリアできるならいいんじゃない?」と。それからは、あれよあれよという間に決まっていきましたね。

 ちなみに、南條さん曰く「私、ピコピコ音まだもらってないんですけど。出し抜かれた感がスゴくあります」と話していましたね……(笑)。南條さんにお願いしている、『FFXIV』webラジオ“エオルゼアより愛をこめて”の先週末と今週末(第201回、202回)に配信するものに僕が出演していまして、そこでもそのあたりの経緯と彼女のコメントがあります。そちらも合わせて聞いていただけたらと。

――過去の『FFXIV』では聞いたことがないタイプの楽曲でしたね。

吉田:トレーラーにサビの部分が流れていましたが、祖堅の引き出しの多さにあらためて驚きました。今までのテイストとは全然違うジャンルで、人によってはアニソンぽくも聞こえたりしますし。

――前回の“ツクヨミ討滅戦”の後半曲も、スクウェア・エニックス外の方にお願いしていますよね。外部の方の歌が続いていますが、今後も外部の方にお願いする流れがあったりするのでしょうか?

吉田:いえ、そういうわけではありません。前回は、単純にスクウェア・エニックス内部に「このキーの高さと切なさを出せる人がいないんじゃないか」という話から、サウンド部メンバーの人脈からできそうな人を探しただけだったそうです。そういうレベルの話なので、祖堅が知っている歌い手の中で社内に心当たりがあればその人間を使うでしょうし、そうでなければ外部の方にお願いすると思います。

『FFXIV』の楽曲に関しては、ルールは“権利がクリアできない人は絶対使わない”ということだけなんです。これは『FFXIV』の映像に合わせるのであれば自由に使ってもらっても構わないようにしたいという考えからですね。あとは、サウンド予算内にハマるのであれば問題ないです(笑)。

 ただ、社内の他部門の人を使うと、その人の休日出勤の対処や評価にどう反映するのか、といった問題が出てきます。こんな感じで、僕の立場からするといろいろあるので、あまりやりすぎないようにとは言っています。とはいえ、“THE PRIMALS”とかも大事になっていて、もうそろそろノリだけでは作っていられないんですよね……。

――メインストーリーや“四聖獣奇譚”と同じように、注目しているプレイヤーが多いであろう“次元の狭間オメガ:アルファ編”ですが、これが“次元の狭間オメガ”シリーズのクライマックスになると思います。『FFI』のカオスが出てきたことにはかなり驚きましたが、ストーリー的にいったいどうなっていくのか気になります。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

吉田:振り返りになりますが、オメガが時間凍結から再起動後に神龍を捕捉して、自己修復しつつ自己強化をしていくために、次元の狭間でトーナメントを始めたというのが、“次元の狭間オメガ”のきっかけです。光の戦士とアルファ、そしてガーロンド・アイアンワークスの面々は、アルファグループとしてトーナメントを勝ち上がってきました。しかし、トーナメントということは、当然ほかのブロックから勝ち上がってきているグループが存在しているわけです。そのトーナメントの頂上決戦が今回のステージになるわけですね。

――カオスと戦うのは、その一環なわけですね。となると、残りのボスが気になるところですが……?

吉田:1つだけ言えることがあるとすれば、今回のオメガは“プライム”ではないです。オメガのサイズは普通に戦える規模のものだったので、プライムにする必要はないな、と(笑)。

 以前の放送でも触れましたが、僕は最後のストーリーをチェックしていて不意にポロッと泣けたんです。『FF』シリーズを通してさまざまなオメガがいますが、『FFXIV』なりのオメガの解釈を出して、その結果レイドのなかでもいいデキの話になったかと思います。あとは、ネロとシドのいろいろな決意とか、アルファという存在がなぜ生み出されたのか、オメガの自己強化は果たしてどこまで進むのか、バトルだけでなくそのあたりにも注目してほしいです。高難度版である“零式”に行く方たちは「初週に1層・2層まではクリアしたい!」と思っている人も多いと思いますが……パッチ当日は是非ストーリーを見ていただけるとうれしく思います。

――ちなみに、“零式”の体感的な難度は“デルタ編”“シグマ編”と比べていかがですか?

吉田:今回は、最終調整にかなり悩みました。トーナメントということは、相手はここまで勝ち残ってきた猛者ということになります。たとえ1層だとしても、“シグマ4層よりも弱すぎる”となるのはどうなのかなぁ、と……。それでも、ひとまず1-2層はいつも通りに落ち着いたと思います。そこから先はフィナーレでもあるので、デルタ編やシグマ編に比べると、やや難しいと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。得意不得意が分かれるであろうことと、早期攻略は軽減アビリティの使用順位やタイミングなど、きっちりとした役割分担が必須になると思います。オメガという存在の完結に相応しい内容になったと思いますので、思い切り挑んでみてください。

――“禁断の地 エウレカ:パゴス編”は、プレイヤー内でも評価が分かれている印象です。開発チーム的には、その反応を見ていかがですか?

吉田:結果的には、”アネモス編”を楽しんでくださった、様々なタイプのプレイヤーの方すべてにはお応えできなかったと思っています。主に理由は二つで、ノートリアスモンスター(NM)を出現させ、それらに集合して狩りを行い、ゆっくりと時間を使いつつも、自由にレベルを上げていく……という遊び方のテンポを変えてしまったこと。そしてもう一つは、「先鋭化させよう」としてしまったことです。 その結果、“アネモス編”でみなさんが生み出したプレイスタイルを“パゴス編”に入れ込むことがあまりできませんでした。

 当初の“エウレカ”のプレイ予想としては“レイドに行く人もいれば行かない人もいる”と同じで、好みが真っ二つに分かれるだろうと考えていました。 “狩りをしてレベルをひたすら上げて、積み上げていく”という遊びは、プレイヤーが先鋭化していくと思っていたのです。事実、”アネモス編”の最初の声もそういった傾向が強かったと思います。しかし、公開から約2週間で “ノの民文化”が出来上がり、いろんな遊び方で“アネモス編”を遊んでくれるようになりました。幸いなことに“これはこれでおもしろいじゃん!”というコンテンツと扱っていただけたのです。

――開発の想定とは、大きく違った状況が生まれたわけですね。

吉田:ここで大きく響いたのが開発速度です。じつは”パゴス編”は、”アネモス編”の公開よりもかなり前から開発を進めていました。次の”ピューロス編”もそうなのですが、規模が大きいため公開よりも半年以上早くから開発を行っています。僕と開発チームは、「プレイスタイルが先鋭化するだろう」と想定して“パゴス編”を作っていたために、その“広くカジュアルに遊べる”という余地が薄れたものが”パゴス編”になってしまったのです。ギリギリのタイミングである程度数値調整は行いましたが、システムはやはり先鋭化したものになりました。カジュアルさや気楽さ、ゆっくり遊べるといった感覚を求めていた方々には、期待に沿えず申し訳ありませんでした。

 とくにエレメンタルレベルを上げるという手段が“効率良く敵を狩り続ける”というもので、“突然変異”や“環境適応”という新しい遊びを入れていたものの、そこに到達する前に“アネモス編”との違いが大きすぎて楽しめないプレイヤーの方々の不満を積もらせる結果になりました。

――なるほど。そのギャップを埋めるために、NMの経験値を増やしたんですね。

吉田:“雲海探索ディアデム諸島”のときは、下げる方向に調整してみなさんを萎えさせてしまいました。また、段階を踏んで変えても人の印象は大きく変わらないので、今回は一気にNMの経験値を跳ね上げて“アネモス編”とはサイクルが違えど、“NM狩りでもエレメンタルレベルを上げられる”という部分は、早々に復活させようと考えました。ここは、“アネモス編”が好評だったからこそ出てしまった不満点でしたので、これからも必要な部分があれば、調整・緩和をしていく予定です。

 今回の先鋭化を避けるためにも、“アネモス編”のフィードバックの多くは、次に控えている“ピューロス編”のほうに活かされており、“プレイフィールをとにかくアネモス編に寄せる”をコンセプトにして最終調整を行っています。ロゴスアクションという新要素もあるので、新たな刺激はありつつ、ワーワー遊べるコンテンツに仕上げたいと思っています。その次に控えているエウレカコンテンツも、同じ遊び口を踏襲していくつもりです。

――“パゴス編”自体の根本的な調整は今後あるのでしょうか?

吉田:システムが複雑に絡み合っているため、システム的な根本調整は、新たなエウレカを作るに等しくなってしまいますので、緩和調整が段階的に進むと思います。また、レア度の高い装備を落とすNMの出現頻度も、調整しすぎるとアイテムの価値を下げますので、その辺りは慎重に考えています。

――ちなみに、特定の装備に付いている“エウレカ専用効果”は、今後のエウレカでも効果があるのでしょうか?

吉田:はい、あります。

――パッチ4.45の “ピューロス編”では“ロゴスアクション”の導入が予定されていますが、具体的にどのようなことができるのでしょうか?

吉田:特定のモンスターを倒したり特定の行動を行ったりすると、とある結晶体が手に入るのですが、それをNPCに渡すと新アイテムへ変換してくれます。その新アイテムには、いくつかの種類があり、それらをミキサーみたいなものに入れて絞ると“ロゴスアクション”が出てくる……というイメージです。出てくる“ロゴスアクション”は、ミキサーに入れた新アイテムや、その組み合わせによって変化するのですが、これはランダムではなくパターンがあります。“ロゴスアクション”は全50種存在しているので、“ピューロス編”ではまずそれをコンプリートするつもりで遊んでもらえたらと思います。

 特定の“ロゴスアクション”を使ったほうがいい、という限定的なシチュエーションはいくつかありますが、”ピューロス編”では、極端にそれを前提としたバランスにはしていません。ロゴスアクションは基本的には何を使っても損にはなりませんので、とりあえず使ってみて、使い方を覚えていただくのが”ピューロス編”の役割です。その次に予定しているエウレカでは、おおよその要素をクリアしたあとに挑むパブリックフィールド版のレイドみたいなものが用意されています。クリア後の高難易度ミッションであるそれは、“ロゴスアクション”を使わないとどうにもならないため、挑戦する方は是非覚えておいてください。

――どのような効果が用意されているのでしょうか?

 “ロゴスアクション”の多くは全ロールで使用できますが、なかには近接DPSだけが使えるものなどもあります。特殊なものを例に出すと、DPSがとある“ロゴスアクション”を使うと、防御力やHPが格段に増え、一時的にタンクの役割ができる、などです。ほかには、“ロゴスケアル”を手に入れればどんなジョブでも回復アクションが使えるようになる、なんていうのもあります。“ロゴスアクション”は、使用可能回数が多いので、頻繁に付け替える、ということはあまり想定していません。

――使用回数があるんですね。

吉田:使用回数があるものと、効果継続時間が設定されたものがあります。触媒となる結晶体はボロボロ出ますので、あまり出し惜しみせず使っていただけます。また、“ロゴスアクション”は最大3つまで持っておけます。

――盛り上がる要素ではありますね。次の“禁断の地 エウレカ”で本格的に使っていくということは、あらかじめ“ロゴスアクション”を貯めておいたほうがいい感じですか?

吉田:“ロゴスアクション”自体を大量に所持しておくことはできませんが、抽出元になるアイテムはストック可能です。ひとまず今の時点では、ここまでとさせてください。

――“ピューロス編”の実装時期は、いつごろを予定していますか?

吉田:パッチ4.4リリースから、だいたい1カ月後以降をイメージしています。それより前倒しになることはありませんので、まずはパッチ4.4をお楽しみください!

――コンフィグのサーバー保存に関して、キャラクターデータのすべてが保存可能なのでしょうか?

吉田:基本的に、グラフィックスの設定以外は全部です。グラフィックスの設定は、PC間だけでなくPS4とPCでも違いますので、そこは引き継がないようにしています。

――コンパニオンアプリについてですが、今後のアップデートの予定などはすでに決まっているのでしょうか?

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

吉田:パッチ4.4のリリースに合わせてマネキンへの対応を行いますので、パッチと同時にアップデートが入ります。コンパニオンアプリはマーケットにアクセスできる機能がウリのひとつでもありますが、リテイナーが管理しているマネキンにも対応していないと、その機能も中途半端になってしまいます。そのため最優先で作業中です。

――リリース後の反応はいかがですか?

吉田:アプリというものの使用率は、日本が一番多いんだなとあらためて感じました。日本のプレイヤーの使用比率がもっとも高く、通信量が高い時間帯は、午前12時から午後2時までの昼休み期間と、午後6~7時のおそらく帰宅時、そして深夜です。学校や会社に行き、昼休みに「今日はどうする?」といった予定の話をして、帰るときに「もうちょっとでログインするよ」と報告し、ログインしたらゲーム内で会話して、寝る前にまた少しアプリをいじると。そういったサイクルが見えて、なかなか興味深かったです。

――わかりやすいですね。あと、ネット上でAndroid版はチャットにラグがある、ということが話題になっていましたが……?

吉田:実際にはラグではなく、挙動の見え方がiOS版と異なります。手触りにも直結する動作のため、ラグに感じられてしまっています。SNS系のチャットアプリケーションも、実際にはリアルタイムに送受信するのではなく、自分の端末で先に送信結果を表示しつつ、その間に裏でデータを送信しています。レスポンスを良く見せる工夫というわけです。iOS版はその表示処理をうまく巻き取れたのですが、Android版はOSのクセが強く、苦戦したために初期リリースでは手触りが異なる結果となりました。現在、優先的に解消の作業中です。もう少々お待ちください。

 それ以外にも、カレンダー・スケジュール機能と、先ほどお話ししたマネキンの対応が最優先で行われています。いずれにせよ、まだまだ機能が足りているとは思っていないので、『FFXIV』本体がそうだったように一歩ずつ、着実にアップデートしていくつもりです。

――では、最後にパッチ4.4へのアピールと、11月からスタートする“ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2018-2019”に対する意気込みをお願いします。

吉田:ファンフェスの意気込みですか……「準備で既に燃え尽きた……」が僕の今の本音です(笑)。という冗談はさておき、“14時間生放送”が終わって、僕たち開発チームから5周年気分は、すっきりさっぱりなくなりました。ファンフェス含め、次の大きなFFXIVの発展に向けて、全力で走りだしています。ファンフェスの方は、“ファンフェス番長”である室内(室内俊夫氏。グローバルコミュニティプロデューサー)が精力的に動いていて、グッズやら何やらすごく順調に決めていっていますよ。

室内俊夫氏:今のところ、順調でございます(笑)。

吉田:会場のフロアアクティビティも順調で、もがき苦しんでるのは、やっぱり僕ですね(笑)。

――“今回は、何のコスプレをするのか?”というのも気になりますね(笑)。

吉田:別に僕がしたいと言っているわけではないんですよ……。そういえば、先日のgamescomでも、「Tシャツ何を着るんですか?」とすごく聞かれましたっけ……。

 それはともかく、今回も前回のファンフェスがそうだったように、パッチ4.4を皮切りにファンフェスも含めて、全体の流れをストーリー調にしたいとは思っています。パッチ4.4があって、北米ファンフェスがあって、その次があって、欧州ファンフェスがあって、トリに日本ファンフェスが来る……これが一連の流れになるようにしたいのです。この期間は、現行のプレイヤーのみなさんにとって、もしかすると最も楽しい時期かもしれません。妄想が一番はかどるタイミングでもありますので、その流れをちゃんと作れるように、その期待感に応えていけるようにしていきたいと思います。誰もが想像していないサプライズもちゃんと用意していますので、そのあたりに注目していただければうれしいです。

 『新生FFXIV』は運営6年目に突入しました。“『FFXIV』にしかできない、こんなゲームにほかにない”という、次のステージへ進んでいきたいと思っています。その皮切りとなるパッチ4.4を楽しみにしていただけるとありがたいです。

 また、ちょうど『紅蓮のリベレーター』が完結して、新しい物語が始まる節目でもあります。セールもかかっていますし、新規にスタートするにはベストなタイミングだと思っています。今、本当にたくさんの方がエオルゼアの地に降り立ってくれていますので、次の大きな波にいっしょに乗っていけるように、フリートライアルからでも全然構わないので、ぜひ触ってもらえるとうれしいです!

――ありがとうございました!

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

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