2018年9月18日(火)
数多くのRPGを手掛けてきた、ゲームクリエイターの馬場英雄氏。そんな彼がスクウェア・エニックス・グループのもとで立ち上げた“スタジオイストリア”。その発足発表から約1年半の沈黙を破り、9月10日に開催された“PlayStation LineUp Tour”にて、新規RPG映像が全世界初公開となった。
だがこれは、タイトルとしての発表ではなく、あくまでスタジオイストリアとして取り組みを伝えるという、これまでにないアプローチとなる。そこで映像を公開した真意、そしてスタジオイストリアが目指すRPGのカタチを、代表取締役である馬場英雄氏の言葉から探っていこう。
▲株式会社スタジオイストリア代表取締役。前職のバンダイナムコエンターテインメントでは、『テイルズ オブ』シリーズの総合プロデューサーとして活躍。 |
――スタジオイストリアの理念には、ギリシャ語で“物語”を表現する言葉であり、お客様へ物語と新しい遊びの体験を提供し、製品を通じて“強いメッセージ”と“人生の応援歌となる物語”を作り続ける職人集団としてありたい、とあります。このメッセージからは、“物語を作り続ける=RPGを制作するスタジオ”であるという印象を受けましたが、やはりRPGの制作が中心となるスタジオなのでしょうか?
馬場:厳密には“RPGだけを作らなくてはいけない”というわけではありません。スクウェア・エニックス・グループの企業理念に“物語を通じてお客様の人生の幸福に寄与していく”という言葉がありますが、これは物語を通じ、何かしらのメッセージを感じていただくことで、作品の価値をさらに高め、心に残るエンタテインメントを提供していこう、ということです。そのグループのなかで、新たに独自のコンテンツ作りをしていく会社としてスタジオイストリアを発足させるにあたり、まずは何を大事にしていくのかを考えました。
企業理念自体は私がこれまでの仕事で大事にしてきたものと、イコールではあったんです。さらに「物語を大切にするだけでなく、物語を通してエンタテインメントとして、お客様に遊びと一緒に何らかの感動であったり、楽しみだったりをしっかり届けていくコンテンツ作りの集団にしたい」という意味で、スタジオイストリアと社名を付けさせていただきました。ですが、ジャンルでいえばRPGだけに限りません。私がこれまでに手掛けてきたコンテンツの多くがRPGでしたので、みなさんは馬場=RPGというイメージが強いとは思いますが。
――かつてはアクションゲームもたくさん作られてきましたよね?(笑)
馬場:でも、20代の頃でしたからね(笑)。アクションやアクションRPGなど、いろいろとやりましたけど。
――ということは、最初はスタジオのカラーを出す意味でも、RPGというジャンルでしっかりとした1本を作りたいという思いがあると?
馬場:そうですね。私個人的な思いもありつつ、スタジオイストリアを発足し、スクウェア・エニックスに移籍するに伴って、スクウェア・エニックスの社長である松田(洋祐氏)のほうからも「まずは私が持っている、培ってきたノウハウや資産を、スクウェア・エニックスにないノウハウとして、独自性をもってやってほしい」と言われました。
そこで、まずは自分たちが強みとしてやってきた「“RPG”でしっかり応えられるものを作ろう」と考えました。このスタジオイストリアとしての取り組みを、今こんなゲームを作っていますよ! とお披露目するのにいいタイミングではということで、“PlayStation LineUp Tour”でスタジオイストリアが今、何をやっているのかをご覧いただこうとなりました。
――2017年の2月に公式サイトがオープンしてから、スタジオとしてはひさびさに大きな動きになりました。これまで馬場さんが注力されてきたこと、苦労されている点、発見や喜びなどあればぜひ教えてください。
馬場:昨年にスタジオを発足しまして、弊社は2期目になりますが、まずこの1年間に関しては会社の組織、さらにはプロジェクトの土台作りを行っていました。ある程度の方は知っているとは思いますが、やはりゼロからのスタートになりますから。これはコンテンツ作りだけがゼロスタートなだけでなく、組織そのものがゼロスタートなんです。だから、人材を集めながら、我々がやろうとしているものを形にしていくにはどうしたらいいのか、日々研究を進めていった部分があります。
たとえば経験上シリーズものならば、1作目が終わると「じつは水面下で次のタイトルをガリガリと制作を進める」というのが基本でした。ゆっくり、と表現するのは少しミスマッチかもしれませんが、上記の点から必然として時間をかけて準備を進めてきた形です。そんななか、SIE様から「PlayStation LineUp Tourという企画が9月にあり、スタジオイストリアで作っている新しいコンテンツをこの場で披露しませんか?」とありがたいオファーをいただきまして。「ぜひ考えさせてください」となり、どういう形でスタジオイストリアの“今”をお見せするのがベストなのか模索しました。
ただ、誤解をしていただきたくないのが、ゲームタイトルの初出、発表ではなくて、あくまで"スタジオイストリアがこの1年強の間に、じつはこんなことをやっていた"ということを、みなさんにお知らせしたという点ですね。
――ゲームタイトルを発表するのではなく、スタジオとしての取り組みをああいった形で発表するのはあまり例がありませんよね。
馬場:異色ですよね。
――そういった発表をするにあたって、緊張や不安などはありましたか?
馬場:緊張ということは全然なかったですね。通常は、ある程度ゲームが製品として出来上がったタイミングで初公開の1報、2報と情報を出していきますが、我々の場合はまだまだ未完成で、現状こんなものを作っていますよという情報です。「作品の方向性はこうだよ、こんな絵作りだよ、キャラクターはこんな頭身だよ」と、言葉にはしませんが、映像を見ていただいて情報を読み取ってもらおうかなと。
それで「こんなゲームを作っているのか。いつ頃に発売されるのかな? 楽しみだな」と感じてもらえることが重要だと思っていましたので、不安というよりもむしろどんな反応があるのかなと楽しみにしていました。
――スクウェア・エニックス=RPGの雄、という方程式が、ユーザーのなかではあると思います。あえてそこに飛び込んで勝負をしようと思われた理由をぜひお聞きしたいです。
馬場:私も長らくRPGを作ってきましたが、やはりこのまま当時携わっていたシリーズを作り続けていくという考え方も、もちろんありましたよ。トップとしてまかされている以上は、作り続けていかなくてはなりませんので。一方で40代半ばを過ぎて、現場で一緒にスタッフたちとゲーム作りをしていった場合、あと何本作れるのかなと考えたりもしてました。シリーズを作り続けてそれで終える……というのも、1つのクリエイティブ人生ではありますが、やはり新しいことにチャレンジしてみようかなと。
そんななか、スクウェア・エニックスといいご縁がありまして。前職の環境は、RPGを制作するチームが私のところにしかありませんでした。なので、大変なのは十分わかってはいたのですが、周りにRPGを作る部門がたくさんある環境で、刺激を受けながらゲーム作りをやるというチャレンジを、もう1回ゼロスタートでやってみる価値があるのではと思い、あえて新しい道を歩み出す決意をしました。
――実際にスクウェア・エニックス・グループで活動を始めて感じたことはありますか?
馬場:スクウェア・エニックスに移籍する前から、ディビジョン(部門)のリーダークラスの方々とはいろいろコミュニケーションはとっていたんです。そして実際に入社してみると、企業が変われば風土も違うし、やり方もアプローチの仕方も違うし、考え方や価値観がいろいろあるんだなとあらためて感じました。
先ほども言いましたが、前職ではRPGを作るチームは私のチームしかありませんでしたから。そういう意味でも、同じ社内にRPGを作っている部門がゴロゴロありますからね。そういった方たちとたまにやり取りをするのですが、やはり新鮮ではあります。さらにもう一点、みなさんある一定のルールなどを守りながら、そのなかで自由にクリエイティブな仕事をしているという点が、とても新鮮でいい環境だと感じております。もちろんそのぶん、チームが持つ責任は大きなものになりますが、クリエイターとしてやりがいはとてもあると思います。
――先日の発表では「こんなことを、こんな形でやっています」ということを発表されたわけですが、ここまでの苦労感で、当初想定していたよりいかがですか? 思った以上に大変でしたか?(笑)
馬場:ひと言では語れませんが、正直想定以上ではありますね(笑)。
――ゼロベースで人を集めて、作り方もどう作るかも考えるなど、こちらが想像しているよりもいろいろ苦労がありそうですね。
馬場:私が今まで手掛けていたRPGは、ある程度のシリーズという方程式が出来上がっていました。例えば「お客様がこのようなものを求めているから、シリーズのなかではずしたらいけないよね」「変化は求められてはいないけど、進化はしなくてはいけないよね」と。
じつは進化でなく変化になると、「違う、僕たち私たちの好きなシリーズじゃない」と、お客様と我々とで乖離が生まれてしまいます。だから“変化ではなく進化”という方程式に当てはめながら、その進化の部分でどこをどう研ぎ澄ませていくのか、そしてお客様が常に求めるものと我々が提案するものが、いかに近くできるのかということを模索しながら制作を続けていました。
――たしかにシリーズのファンも、あまり変化は求めない部分はありますね。「これはそのままでいいのに」とか(笑)。
馬場:今回はそういった方程式も含めて、1作目から作り上げるわけなので本当に模索ですね。ただ、ベースの部分にはこれまでの経験がしっかりあります。例えば「物語のコンセプトはこうで、主人公の生きざまはどうで、キャラクターたちの成長はどういう曲線で上がっていくのか」などですね。あとはお客様に遊んでいただいて届いた「ここは楽しかった、ここがもうちょっとだった、ここが全然つまらない」などの意見も、本来は1作目を発売してシリーズ2作目を作るならばどうすればいいのかと考える部分ですが、その経験を生かして反映できるのではないかなと。
また、今まで私もそうでしたが、シリーズという部分で常に言い続けていることがあります。シリーズは続けなくてはいけないという部分がある反面、次があるだろうという保証というか、心の中で甘えがあるんですね。今回は2作目、3作目を作っていくうえでのタイトル作りでもありますし、松田からも「シリーズ化するための組織づくりをしてくれ」と言われています。
シリーズが続くのかは1作目にかかっているので、そういった意味でもどうすべきかを模索しなくてはいけません。あとは今のゲーム業界のトレンドでしょうか。トレンドをすべて入れていこうとすると、二番煎じ、三番煎じになり「我々の独自性はどこになるのか?」となりますから。
――これまでいろいろなアイデアの引き出しが馬場さんのなかで積み上がっているとは思いますが、今のトレンドも考えながら違う方程式を作るのは大変ですね。違う脳を使っている感じです(笑)。
馬場:いろいろアイデアはありますよ。こんなことができたらいい、こんなことをしてみたいと。そのなかから今回のタイトルにゲーム性で合う、合わないのかを判断する必要があります。RPGの場合は物語、キャラクター性、ゲーム性が大事で、とくにゲーム性の操作については煩雑過ぎて難しすぎるのはダメなんです。物語が好きでプレイしているお客様は、そこで躓くと一気にコントローラを置いてしまいます。
それはボタンの配置だけでなく、バトルやメニュー画面周りもそうですね。この部分は私が手掛けていた前シリーズと、どうしても比較されてしまうのかなと。「あのときはこうだったけど、これはこうだよね」と。それはもう仕方がないと私は思っていて、我々ができる最大のことを考えてやるしかありません。
ですが、見つめているお客様がいる土壌は同じです。やはり物語が好き、小説が好き、映画が好き、活字が好き、そういう方にメッセージを発していきたいと思っています。そういった部分も含め、今までは今まででいろいろな難しさがありましたが、違う意味で大変さがあります。
――実感……、という感じですね(笑)。あとは比較という表現は正しくないかもしれませんが、スタジオイストリアとしてのブランドだけでなく、スクウェア・エニックスのRPGとしても見られる物差しが付いてくると思います。とくにスクウェア・エニックスのRPG=ビジュアルがハイクオリティで、ボリューム感があるという共通認識がありますよね。スクウェア・エニックスのRPGとして求められる部分を満たしながら、自分がやりたい"スタジオイストリアらしさ"も両立させることはやはり大変ですか?
馬場:その認識は私のなかにはあります。スタッフのなかでそれを共有する必要はありませんが、会議ではたまに言いますね。スクウェア・エニックスのブランドが付く以上、さまざまなお客様が「スクウェア・エニックスはこんなゲームを作るよね、スクウェア・エニックスのクオリティはこうだよね」という企業イメージがあると思います。プラットフォームはいろいろありますが、コンシューマで作る以上そこは応える必要があるかなと。でも「スクウェア・エニックスのゲームはこうだ」と、いざ言葉で説明しようとすると難しいですよね。でもあると思います。私も前職で外から見ていて漠然とありましたから(笑)。
――そういったなかで、今回公開された映像ではスクウェア・エニックスのタイトルらしい美しいビジュアルに、すごく目が惹かれました。
馬場:スクウェア・エニックスとしてはずかしくないゲーム作りと考えたとき、1つ特徴を持とうと考えました。『ドラゴンクエスト』とも『ファイナルファンタジー』とも違う、今までのスクウェア・エニックスにないものを作ろうとなったときに、水彩画のような表現を考えたんです。
私は暖かく、優しい世界観を作るのが好きなので、そんな世界観のゲーム作りをするときに3Dポリゴンなのに、2Dの絵を描いたようなタッチにも見えるグラフィック、厳密には描くではなく“塗った”ですね。そういう部分での絵作りでの差別化というか、進化の部分を研ぎ澄ませながら「お、スクウェア・エニックスがおもしろいことをやっているじゃん」「なんだか絵作りが今までと違うよね」というところから、はじめの一歩を踏み出していきたいなと。
――ではどんな部分に注目して動画を見てほしいですか?
馬場:基本的には全部ですが、今回は企画を立ち上げた時から水彩画で描くゲームという大きなコンセプトに基づいて絵作りをしています。ただ、水彩画とはいっても、通常の水彩画は薄く線を引いて、ラインを整えて、そこに色を落としていく形ですよね。
その際、キャンパスに描くと水なので色がにじんでいきます。最初はそんな表現の技術テストをおこなって、実際に作れてはいたんです。でも、実際に3D空間に出したときに輪郭がないものだから、距離感がわからなくなり、ここに物があるという認識ができなってしまいまして(苦笑)。
――溶け込みすぎて2Dに見えてしまうと?
馬場:そうなんです。ただ、3Dなのに水彩画の表現ができているんですよ。すごくおもしろかったのですが、実際に遊んでもらうには成立しないなと。なので、塗り感は残しつつも、にじまないような調整をしました。動画の冒頭で水滴が1滴ポチャンと落ちて、ふわーっとにじんで、そこにテキストが浮かんだあと、線画に色が着いていき水彩画が広がっていくような感じになってゲーム画面になります。
そういった表現も通じて「水彩画のような絵作りをしているよ」というのを、短いながら演出としてお伝えしています。動画を止めて見ていただくと、水彩画の雰囲気がけっこうわかりますよ。この表現については今回スタジオイストリアで独自のシェーダーを開発していて、ある一定の段階まで度出来上がっています。
――馬場さんの言葉を頂いて、ようやく動画の意図がしっかり伝わりました。風景にだんだんと色が付いていくのは、ゲーム中での塗りをそのまま出しているのでしょうか?
馬場:ここについては演出として見せています。ただ、こういった水彩画の雰囲気はいろいろな箇所で強く出していきたいなと。たとえばメニュー画面が出ると、パパパッと筆で絵が塗られたようなエフェクトが出たり。最終的にそうなるかはわかりませんが、今はそういったデザインにしようと考えています。
――水彩画の表現の手応え的にはいかがですか?
馬場:最初の企画の段階で「こういう絵作りをしたいんだ」と打ち出したイメージに近づいてきたので、だいぶ手応えは感じています。
――キャンパスに絵を描いたような表現をとありましたが、奥の方に見える山々なども、キャンバスに乗っているような表現なのでしょうか?
馬場:厳密にいえば画面全体がキャンパスに乗っている表現になっています。ただ、なかなかわかりにくいですけど(笑)。初期段階ではすごく強調した表現にもしてみましたね。
――キャンパス地のザラっとした布目がわかるような感じですか?
馬場:そうですね。例えば画用紙とか、油絵で使うキャンパスの形にするなど試しました。ただ、こういったことをあまり過度にすると、邪魔になり過ぎてしまいます。ゲームは何十時間も遊ぶものですから。
――たしかに所見のインパクトは「カッコイイ!」となりますが、それが続くと疲れちゃうこともありますね。
馬場:そうですね、最初は「フォトリアルはスゲー!」ってなっていたのに、遊んでいくとだんだん普通に見えてきますし(笑)。
――贅沢ですよね(笑)。
馬場:ただ、我々も独自性というか、新しいチャレンジの部分ではいろいろなことをやっていきたいと考えています。これもすべてゼロからで、1つ1つ作っています。トライアンドエラーですが、ようやくここまで来られたかなと。
――ちなみに、名称としては“イストリアシェーダー”と呼んでいいのでしょうか?(笑)
馬場:正式名称は付けてはいないです。自分たちがこの作品では勝手にそう呼んでいるだけなので(笑)。
――いわゆる“なんとかエンジン”ではないと?
馬場:エンジンはあくまでUnreal Engine4を使っています。あくまでビジュアルとしての表現方法や、キャンバス、水彩画っぽく表現する仕組みを“イストリアシェーダー”と呼んでいます。わかりやすく言うと、この仕組みををUnreal Engineで動かしています。表現の1つにトゥーンシェードがありますが、あれはアウトラインを黒くバリっと入れます。
今回はそういう方向ではなく、あくまでも水彩画ですね。それでゲームを表現するにはと考えています。でも、境界線のラインがないと物の認識がしにくくなるので、そういう意味で薄いラインを輪郭に引くなど、いろいろ試行錯誤しています。公開した映像の表現も最終形態ではありません。現時点でこんな方向性もありではないかなというものです。
――キャッチコピーの“新たな旅立ちはここから始まる”に込めた想いなどを教えてください。
馬場:これには2つ想いがあります。1つ目は制作中のコンテンツに対してで、ゲームのキャラクターである主人公たちの冒険が始まるということ。彼らは我々が生み出しているキャラクターですから「君たちの冒険が始まるよ」と呼び掛けている意図です。
もう1つは今回すべてがゼロスタートですので、いろいろな経験を持ったスタッフが集まってきています。スクウェア・エニックス・グループで新たなスタジオとして発足し、そこで新しいチャレンジをしているわけです。参加しているクリエイター一人一人の新しいスタートでもあり、旅立ちがこのタイトル、スタジオイストリアという会社から始まるという想いをメッセージとして、この動画の最後に入れさせていただきました。
――みなさんの決意みたいなものが込められているわけですね。
馬場:そうですね。
――発表ではハードがPlayStation 4と発表がありました。
馬場:ハードに関してはいろいろな選択肢があります。我々が作ろうとしているコンテンツと、そのコンテンツを遊んでくださるお客様がどのハードで遊びたいだろうかなど、さまざまなところを考えました。
それで「我々が一番表現したいと思えるハードは何だろう」と考えたときに、PS4ならば独自のシェーダーでの表現がより可能で、それ以外にもいろいろできそうだったんですね。あくまで自分たちがやろうとしている表現を突き詰めるうえで、開発に合うという視点でハードは選択しています。
――公開映像ではファンタジー世界を舞台にしているであろうと予想できますが、やはりご自身のなかでRPGの舞台として一番なじみがあるからでしょうか?
馬場:正直に言えば学園ジュブナイルのように、いろいろなファンタジーの物語の方向性はあります。どれがいいかというのは正直ありません。ただ、プレイヤーの頭のなかではいろいろと楽しく補完できるコンテンツを作りたいという想いがありまして。我々が中学生、高校生の頃にファミコンがあって、それはドット絵で色数も限られた世界でした。
あの当時、キャラクターのプロモーションのイラストはあまり多くはありませんでしたよね。ゲーム内でお姫様と言われても、2頭身のキャラクターなので「このお姫様はどんな顔をしているんだろう」とか、想像するわけじゃないですか(笑)。もちろん、作り手側はあの環境のなかで最大限の表現はしていましたが、そのあとはプレイヤーが「こんな人なのかな」「この主人公はこうなのかな」とか、想像する余地がありました。その想像もみなさんそれぞれ違うし、それはまた楽しいことだったと思います。そういう楽しさをコンテンツ内に残しておく余裕があったほうがいいかなと。
そのなかで、ファンタジーは誰もがなんとなく「ファンタジーはこうだよね」という共通認識があると思います。SFならば誰もが『スターウォーズ』を思い浮かべるように、ファンタジーも『北欧神話』や『指輪物語』などが原点にあるのではないでしょうか。現実ではない世界のなかで、自由に考える余地のある世界観で、物語を作るというのは作り手として楽しいんですよ。だから、ファンタジーというのを題材にした物語づくり、世界観づくりはやっていきたいなと。お客様も現実逃避ではありませんが、プレイ中に少し現実から離れられますから。
――世界観はファンタジーですが、馬場さんはこれまで遊んだ全員が理解しやすい、心に染みるような話作りをこれまでもされてきました。今回の物語はそういった、これまでやってきたことのある種延長戦上の作り方になるのでしょうか?
馬場:そこは基本的にそう考えていただいていいと思います。逆に言うと、移籍しましたスクウェア・エニックス・グループから私に求められている、期待されている部分はそこだと受け止めています。まったく違う変化球で、今までやってきていないものを作ってみたいという気持ちもありますが、それが今求められているのかと考えたときに、それは違うなと。企業として、いちユーザーの視点として考えたときに、まずは私がやってきたことをベースに、その延長線上に考えて物語づくりはやっていきたいと思います。
――物語づくりで馬場さんが一番大事にしている部分はどんなところでしょうか?
馬場:ここはすごく難しいところですね。アンケートや発売後のお手紙をお客様からいただいたなかで驚いたのが、ゲームを進めていくなかでここの戦いが終わるとクリアだと理解したうえで「この人がラスボスだからここでプレイを止めます」と、エンディングを迎えないで止める方がけっこういらしたことです。
どういうことなのかを分析すると、キャラクターの成長や物語などを踏まえて、彼らとの冒険を楽しんで“ロールプレイング(主人公になりきる)”をしてくれているんですよ。そう遊んでいただくのがRPGだから、作り手としてはうれしいですよね。「一緒に楽しんできたこのキャラクターたちのこの冒険を終わらせたくない、終わってほしくない、だからラスボス前で止めるんです」ということなんです。
それって物語を扱っているからこそ、そういうことが起こりえるのではないかなと。物語にメッセージを込めて、かつ主人公になりきってもらう。プレイヤーが「そうなんだよ、お前のその考えはわかる」となったときに、我々も「よし!」となります。「物語として普遍的によくあるよね」「こういうことは起こりうるよね」「こういう悩みはわかるよ、あったあった」とかですね。
――そういったメッセージ性の部分で手応えを感じたお仕事はありますか?
馬場:前職で手掛けたあるタイトルの一つで、“選択”をキーワードに物語を描きました。生きているとさまざまな選択がいくつもありますが、選択はそのタイミングで1つしか選べませんよね。結局人生は選択の繰り返しで、どうなっていくのかは自分自身もわかりません。ただそれこそが人生なのではないかと。それをお客様にメッセージとして伝えたかったんです。
あの作品ではシステムとしても選択という要素を入れましたが、物語ではものすごい葛藤シーンも入れました。プレイヤーも主人公になりきってもらって「どうする? どうする?」と自分が置かれた状況もわかるし、相手の状況もわかるし、世界の状況もわかるし、最終的に何を選べば正しいのかと考えていただきました。
――そのように作品ごとにテーマを用意してきただけに、今回の作品にも強いテーマやメッセージ性は盛り込まれているのでしょうか?
馬場:あります。シナリオを構成する要素は固まっていますし、それをベースに物語は基本的に作っています。骨格はほぼ出来上がっていて肉付けの部分もある程度できあがってきてはいますが、ゲームシステムの部分で修正はまだまだかけていく予定です。ですが、物語の大きな柱を変えることは基本的にはありません。
――物語づくりという部分では、馬場さんがしっかり舵をとられていると?
馬場:自分で脚本を書いているわけではありませんが、今回の物語で描きたいテーマ、主人公像などは基本的にある程度固めてからシナリオライターに渡し、実際に作り上げていくという流れです。シナリオ担当にお願いしてからは、基本の流れからずれていなければ大きな変更は行いませんので、そこは私が手掛けてきたRPGと作り方は大きくは変わっていません。
――となると、プレイしてほしいターゲット層も、前職で手掛けられていた作品と同じく若い世代になるのでしょうか?
馬場:どちらかというと、私がコミュニケーションを取らせていただいたお客様より、若干高くはしています。ボリュームゾーンは20歳から25歳くらいで考えています。今までは思春期を迎える、感受性が豊かな男の子、女の子にむけて「人生はこんなことがあるよ、こんなことを考えなきゃだめだよ、こんなことがあったらどうする」というのを軸に描いてきました。
今回はどちらかというと、学生の頃は自分の意識で自由にできる環境だったのが、ある程度決められた社会のルールのなかで、いかにそのなかで自分らしく生きていくのかを、メッセージとして伝えたいと考えています。そうなると、ちょうど社会人になる頃、社会人になって数年目の方々が該当するのかなと。その歳の方々は、社会人になってたぶんちょうど一回大きな壁にぶつかる頃だと思うんですよ。
例えば怖い先輩にぺしゃんこにされて「なんでこんなことを言われなきゃいけないんだろう」とか、「なんでこんな理不尽なことを言われなきゃならないんだろう」など、さまざまあると思います。でも「最終的には自分のためになるかもしれないよ」「自分のために言っているのかもしれないよ」という違う視点での応援メッセージも込めたいなと。もちろん、そこまで細かくは描きませんが、そういうのも含めて今までよりは年齢層高めの方に軸を置いた物語を作っています。もちろん、若い子も遊んでもらえるようにしていますよ。
――ちなみに、今回伝えたい想いのようなものは、すでに馬場さんのなかでは固まっているのでしょうか?
馬場:正しいという事は何だろうという事があります。それは根本的には心のなかにあると思います。もちろん、善悪というのは、人間の道徳の中ではあるのですが、正義は人によって価値観が変わりますよね。だからこそいろいろな教えの道徳があったり、正義がぶつかり合って争いから戦争が起きたりしています。これはどちらがいいのか悪いのか、本当の根本のところを知り得ない限りわかりませんよね。
ただ、今飛び交っているさまざまな情報には、意図的なフィルターがかかっているのではないかと思うときが多々あります。情報のその本質は難しく、なかなかわからないと思うんです。だから、動画でも「正しく生きよ」という言葉を出していますが、そういう部分もしっかり描いていきたいなと。
私は今の情報社会において、100%の事実が流れているとはまったく思ってはいません。「その事実は本当にごく限られたものなのか? 本当に正しいものはどれだけあるのか?」。そう考えたとき、とある存在がとある存在に対して託している言葉があり、それを受けたとある人たちが、その言葉を受けてどう生きていくかということを、ファンタジーの世界で描こうと思っています。
――となると、そこはキャラクターの頭身や映像にも影響を与えていますか?
馬場:それはあります。
――映像のキャラクターを見ると、これまで作られてきた作品に比べても大人な印象ですね。まあ、彼は間違いなく主人公だとは思うんですが(笑)。
馬場:どうでしょう(笑)。まあ、頭身という部分はゲーム表現の1つなので、じつは頭身が高かろうが低かろうが、そこにいい悪いはないんです。ただ、頭身が高いか低いかで、伝えられる表現力が変わってきます。あとはシナリオにも正直影響してくる部分もありまして、頭身を低くするとどうしても我々も遊び心が生まれてくるんです。かわいらしい見た目だと、ゆるされる発言などもありますからね(笑)。頭身が高くなると「こんなことを言うかな?」と違和感と疑問が生じるんですね。そういった部分でいえばだいぶ違います。
――あの頭身だから紡がれる物語、セリフなどがある程度決まってくると?
馬場:そうですね。あとは衣装回りもそうですね。例えばこの衣装を作ってみようとなったときに、悩まずに作れるものになるべくしていきたいと思ってます。もちろんさまざまなキャラクターを描かなかければなりませんので、すべてがそういう衣装になっているという事ではありませんが、「この世界にこの服があって間違いないよね」というのは、設定としてそこはしっかり考えていこうと。「これはどういうこと?」という疑問は、今回デザイン面で生まれないように作っています。
――とはいえ、キャラクター面ではある種尖ったキャラクター群をたくさん配置するのもRPGとしてのおもしろさであり、馬場さんの作品のおもしろさでもあると思います。そのあたりは期待して問題ありませんか?
馬場:もちろんそうですね。その部分は各キャラクターのパーソナリティをしっかり見ていただければ、今まで私がやってきたキャラクター表現、物語表現は感じていただけると思います。見た目のインパクトよりも、人間性の部分ですね。最終的にお客様がキャラクターを好き、嫌いになるという部分は、見た目やかわいいという外見だけではないと思っています。
プレイが終わったときに「彼の生き方はすごかった。サブキャラだけどさ」「コイツは筋の通ったことしか言わない」「結局は戦ったけれど、アイツの言っていることは正しかったな」となれば、そのキャラクターを好きになってくれているんですね。
――ここまでのお話をうかがうと、馬場さんがこれまで作られてきた作品が好きだった方は、期待して間違いないタイトルだと感じました。これまでの経験を大事にして、その延長でスクウェア・エニックスというRPGのトップブランドでそれがどう表現されるのか、とても期待が高まります。難しいことばかりでしょうけど(笑)。
馬場:もちろん、生半可なモノづくりをしているわけではありません。冒頭にも苦労はひと言では言えないとお答えしましたけど、それが正直な気持ちです(笑)。これはもう遊んでいただいて、合うか合わないかはお客様しだいですので。とはいえ、今までやってきたことは大切にしていきたいですし、私としても財産ですから。そこはそことしてありつつも、ただ同じことではなく、それをベースに新しい表現、新しい提案、新しい喜び、感動を届けていきたいです。
――現在はグローバルを見据えた作りのビジネス展開がスタンダードとなっていますが、日本のRPGのよさを貫いて、そういうのが好きな海外の方にも売っていくというやり方と、海外のファンも最初から視野に入れた作り方という2通りあると思いますが、スタジオイストリアとしてはどんなスタンスで行かれるのでしょうか?
馬場:前者ですね。我々の場合は“Made in Japan”にこだわりたいと思っています。海外にもいいゲームがたくさんあり、AAAタイトルで売れているタイトルはすごく売れています。でも、それをマネしたところで二番煎じ、三番煎じで「これってあれだよね?」となるだけですよね。ちゃんと自分たちは何が強みなのかを考えるべきで、自分たちの強みを最大限詰めたコンテンツ作りが、本来我々のやるべきことだと考えています。
それを海外にお届けするやり方でいいのではないかなと。自分たち日本人の独自性のある強み、これは漫画だったりアニメだったりさまざまありますが、そういう環境で育ってきている我々が作るコンテンツは、海外では作れないと思っています。だからこそ、我々が無くしてはいけませんし、研ぎ澄ませていかなくてはならないと思っています。
少し乱暴な例えかもしれませんが、日本で食べるお寿司と海外で食べるお寿司とではやはりどこか味は違うと思うんです。それは材料であったり味付けの素材であったりの違いで、どちらがいい悪いではないですよ。同様にイタリアで食べるパスタと日本で食べるパスタでは、やはりなにかしら違うと思うんですね。“本場”という言葉がありますが、日本で作ったものをお届けするやり方でいいのではないのかなと。
――たしかに今は『ニーア オートマタ』や『ペルソナ5』など、日本向けに作られたRPGが海外でも売れてきている市場が作られつつあります。
馬場:海外市場は無視できないので、海外でもしっかり売っていかなくてはいけません。でも自分たちがやろうとしていることを捻じ曲げて「なんだか作りたいものがよくわからなくなっちゃったけど、とりあえず海外に売れるエッセンスを詰め込みました」という作品だと、お客様も楽しんで頂けないと思うんです。
「この人たちはトレンドを取り入れた結果、こんなわけのわからないゲームになっちゃったんだな」と。とくにゲームユーザーさんは目の肥えた方が多くいらっしゃいますし、小手先でやっても仕方がないです。頭身もそうですし、表現の仕方もそうですし、さまざまありますけど、そのなかでどういう風に作っていくのか、作り手の想いと覚悟が大事なのではないかと思います。
――ちなみに、現在いろいろなスタッフを集めていますが、スクウェア・エニックスにはいろいろなディビジョンがあり、開発チームがたくさんあると思います。そういうところから人が来ることはあるのでしょうか?
馬場:協力していただいたり、参加していただいたりしている方はいますが、多くはないですね。私も移籍するときにスクウェア・エニックスのみなさまと作れたらいいなという思いはありましたが、各ディビジョンでも、当然それぞれに手掛けるものがありますから。
――現在もスタジオイストリアではいろいろな職種で募集されていますが、今回の動画は「この方向性で作り始めましたよ。だから興味を持った方はぜひ」というアプローチなのでしょうか。それとも、これくらいまで制作が進んでいるので「このコンセプトに賛同しない? そういう方がいたら来て」というアプローチなのでしょうか?
馬場:どちらかというと前者ですね。今回は「こういうものを作っているよ」というコンセプトをお見せした段階なので、それを踏まえて「ああ、こういうゲームを作ってるんだ」「こんなことをイストリアはやっているんだ」と知っていただいて、人材を幅広く募集したいなと。ピンポイントでこの職種、というわけではなくて、広い間口でいろいろな人材に応募していただきたいという思いがあります。
なにせゼロから立ち上げている部分もあるので、これからさまざまなことが起こるでしょう。そう考えると、忍耐があって、やり切るんだという強い想いを持った人材が必要ですので。だから、足りている足りていないは別として、さまざまな職種で募集を出している感じです。
――どんな人に応募してほしい、来てほしいというのはありますか?
馬場:まずはしっかりとクリエイターとして、自分がやりたいことを持っている方です。ただ、当たり前ではありますが、それだけではダメなんです。それだけだと、自分よがりになってしまいますよね。あくまでも自分たちは会社で、組織に属していますから。自分が作りたいものだけを作るならば「自主制作をしてください」となるんですよ。「そうじゃないんだよ、君がやりたいことはわかった。だけどもチームとして目指しやらなくてはならないのはこれなんです」というなかで、自分が自己実現したいものを、いかに入れられるのかを考えられる方を求めています。
「これをやりたい」「これをやらせてくれ」だけではダメですよと。チームで進むべき道はあるわけですから。正直に言うと、ジャンルでいえばRPGを作ってきた方々に来ていただきたい思いはあります(笑)。ただ、それだと間口が狭まってしまうので、限定はしてはいません。あとは昨今、コンシューマでゼロスタートの新規IPをシリーズ化目指してがんばるプロジェクトはなかなかないと思います。私を含めていいチャンスなんですよね。このチャンスにぜひ「よし、俺もやってやるか!」と思ってもらえる方に、まずは来ていただきたいです。技術面ももちろん必要ではありますが、まずは覚悟ですかね。
――スタジオイストリアで一緒に仕事をすると、こんなことが得られる的なものはありますか?
馬場:我々はゼロからのスタートなので、1つの作品を立ち上げから参加して作り上げられることでしょうか。単なるいち組織のスタッフではなく、スタジオイストリアという会社があり、そこで今頑張って立ち上げているプロジェクトをみんなで作り上げた、初代のメンバーになるわけです。
これが『2』『3』とシリーズ化できたら、初期のメンバーとして勲章的なものが得られるのではないでしょうか。これはクリエイター人生のなかでそういうのは誰しもあると思うんですよ。あのシリーズを立ち上げていたメンバーだぞと。もちろん、私もこの作品が今後も続くように頑張らなければいけませんが。
――それらを含めて、今回映像を発表してのユーザーさんの声、ゲームクリエイターの方はどんな反応でした?
馬場:まず業界の方から「あ、発表したんだね、おめでとう!」と連絡をいただきました。なにせ、発表前は私からは一切のことを言えなかったので(笑)。のちのち知った方もいれば、リアルタイムで見てLINEなどでご連絡をいただいた方もいました。ただ、みんなが口をそろえて言うのは「タイトルは何なの?」でした(笑)。
あとは絵作りの部分でおもしろいねという言葉も頂きましたね。ただ、配信している映像は圧縮がかかっているので、細かい部分が伝わりにくい部分があるのですが、そこは仕方がないですね。とにかく業界の方々からは「やっとここまで来たね、おめでとう」と応援してくださる声を多くいただいてうれしかったです。
あとはお客様にしっかり届いていると感じたのは、やはり絵作りですね。日本も海外も「新しい、気になるアートスタイルだ」とけっこう言ってくださっていました。そここそが今回動画を出す一番のポイントだったので、ある程度伝わったのは大きかったです。
――現時点の進捗ですが、例えば骨組みはできていて、集めているスタッフはそこを肉付けしていくスタッフなのでしょうか?
馬場:骨組みの部分でいえば、ある程度出来上がっているのは出来上がっています。ただ、これはやはり作り変えて、パーツを新しくしたり、こうじゃないよねというのはまだまだやらなきゃいけない部分があります。今までは方程式があり「これでいいよね」という骨格を作って、あとは「こう作ろう」というのがありました。今回はゼロベースなので「ゲームとしての骨格を作ったけれども、バランスが悪いよね……」となったら作り直さなくてはいけない。その意味でもやはり軸となるメンバーはまだまだ欲しいですし、もちろんそれを形にするメンバーも欲しいです。
ですが、単に物量勝負で手作業をしてくれる方でいいというわけではありません。ブレインというか、アイデアマンたちは豊富に欲しいと考えています。おそらくこれは今であっても、今後であってもずっと求めていく人材だと思います。きっとほかのメーカーさんも同じことですから(笑)。
――そうなると、ちゃんとした初出はもう少しになりますか?
馬場:見えてはきていますが、いついつにというそこまで明確なものではありません。日本発信でも海外発信でもかまいませんが、日本市場をまず大きく考えたいという想いはあります。もちろん、海外もしっかりやっていきますが。次は正式なタイトルをしっかり決めて、正式に発表することになると思います。そこではキャラクターの紹介、世界設定、ゲーム性の概要などを徐々に公開していければと考えています。
――昨今の流れは、発表から発売までのPR期間を短くして、製品の発売までの期間を短くとるスタイルが好まれてきている感じですが、本作はいかがですか?
馬場:私はまだしっかり時間を取りたいと思っています。というのは、スタジオイストリアという会社の認知度がまだまだですから。もちろんスクウェア・エニックスというグループのブランドはありますが、まだまだ地道な活動をしていかなくてはなりません。今回はしっかり地道に時間をかけて情報を届けていくつもりです。やはり情報の伝達は時間が必要なので。
――それもあって初報はいつ頃なのかがとても気になります(笑)。
馬場:あとは記事展開や番組をはじめ、いろいろなやり方があると考えています。発売までどんな展開をしてくのかは模索していきたいですね。
――最後に今回の発表を受けて、スタジオイストリアに期待するファンへメッセージをお願いします。
馬場:今回9月10日の“PlayStation LineUp Tour”で、スタジオイストリアという会社が、「こんなものを作っているんだよ」ということをお伝えさせていただきました。このRPGは、私が今まで作ってきたさまざまなメッセージ、物語、そういったものを吟味しながら作っていくコンテンツになります。それらを軸に考えながら、ぜひ今後も注目していただきたいです。
また、現在は多くの仲間がスタジオに集まって、さまざまな思いを抱いて、新しい環境で制作を一歩一歩進めている段階です。まだまだタイトルの発表までお時間をいただきますが、長い目で期待していただきながら、楽しみにお待ちください。そして、スクウェア・エニックス・グループでもいろいろな取り組みをやっているので、グループとしての取り組みにも目を向けていただきながら、そのなかで“スタジオイストリアの出番がいつなのかな”と、楽しみに待っていただければと思います。よろしくお願いいたします。
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