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2018年9月20日(木)

『NieR:Orchestra Concert』レポート&齊藤陽介氏、ヨコオタロウ氏、岡部啓一氏インタビュー【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 9月17日、パシフィコ横浜にて『NieR(ニーア)』シリーズのオーケストラコンサート“NieR Orchestra Concert 12018”が開催されました。そのゲーム性や世界観はもちろん、心を強く揺さぶる音楽でも高い評価を得ている『ニーア』シリーズ。その初オケコンということで、会場には多くのファンが詰めかけ、この記念すべきお祭りを堪能していました。

『NieR Orchestra Concert』

 ここでは、電撃PlayStationと電撃オンラインで長らく『ニーア』シリーズの記事を担当してきたライターと編集の2人が、そんなニーアオケコンを拝聴しての感想を、座談会形式で振り返ってみようと思います。

<NieR Orchestra Concert 12018:セットリスト>

『NieR:Gestalt&Replicant』
1:夏ノ雪 Snow in Summer
2:イニシエノウタ Song of the Ancients
3:光ノ風吹ク丘 Hills of Radiant Winds
4:エミール Emil
5:掟ニ囚ワレシ神 Gods Bound by Rules
6:愚カシイ機械 The Wretched Automatons
7:オバアチャン Grandma
8:魔王 Shadowlord
9:Ashes of Dreams
10:カイネ Kaine

『NieR:Automata』
1:遺サレタ場所 City Ruins
2:遊園施設 Amusement Park
3:美シキ歌 A Beautiful Song
4:顕現シタ異物 Alien Manifestation
5:「塔」 The Tower
6:依存スル弱者 Dependent Weakling
7:双極ノ悪夢 Bipolar Nightmare
8:追悼 Mourning
9:終ワリノ音 The Sound of the End
10:Weight of the World

Encore:全テヲ破壊スル黒キ巨人 The Dark Colossus Destroys All

<取材者>
タダツグ(ゲームライター)……電撃PlayStation/電撃オンラインにて『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズ、『ニーア』シリーズの記事編集/ライティングを担当。疲れているとき、お風呂に浸かりながら『双極ノ悪夢』を口笛で吹くのが最近のリラックス手段。好きな『ニーア』キャラはエミール。

サガコ(ゲームライター)……『ニーア』シリーズをはじめとする、ヨコオタロウ系コンテンツに心を乱され続けているライター。今回のコンサートでは公式パンフレットの取材・文を担当。好きな『ニーア』キャラはニーア。

『NieR Orchestra Concert』

長年の夢が叶った……叶ってしまったオケコンを終えて

タダツグ:“NieR Orchestra Concert 12018”……ニーアオケコン、終わったな。

サガコ:終わったね。終わってしまったね……。

タダツグ:イチ『ニーア』ファンのライターとしてはさ、すぐにでも記事にしてこの感動をみんなに伝えたい! ファンのみんなと共有したい!! と思う反面、なんだろう、言葉にしがたい格別の想いがあるんだが……。

サガコ:わかる。始まる前は「ついに夢が叶った!」とテンション上がってたけど、今となってはね、感情が飽和してる。極上の音楽を堪能させてもらった満足感と、それに負けないくらいの喪失感。「夢が終わってしまった……」っていうのかな、この不思議な気持ち。とにかく心を揺さぶられてしまって、いろいろ無理だわ。むーりー。

タダツグ:あなた、コンサート中もずっと「無理!」って泣きながらつぶやいてたもんな(苦笑)。サガコは『ニーア』シリーズの音楽には別格の思い入れがあるから、その気持ちも強かろうよ。とはいえ、それだけ感情に突き刺さってきたこのオケコンについて、新鮮な心持ちのうちに振り返っておくべきだろう。

サガコ:記事を読んでもらった時期によっては、ニコニコ生放送のタイムシフトで振り返ることもできるわけだし……というか、まだ見ていない人はぜひニコ生でこの感動を体験してもらいたいしね。その一助になるのであれば、私はなんだって語りますよ!

タダツグ:となると、まずは『NieR:Gestalt&Replicant』パートからか。今回のコンサートは前・後編に分かれていて、前編が『NieR:Gestalt&Replicant』パートに、後編が『NieR:Automata』パートになってるわけだが。バックに流れる映像の演出やフォント、加工などがそれぞれのタイトルらしさを追求していたのが印象的だった。

サガコ:ヨコオタロウさん本人が映像演出に関わっていて、現場大忙しだったっていうね。でも映像が主張しすぎず、オーケストラにも聞き入ることができるという絶妙なバランスでございました。

『NieR Orchestra Concert』

タダツグ:これは前編・後編とおして言えることだけど、曲のチョイスも最高だったよな。これをオーケストラで聴きたいって曲が、バッチリ選抜されていたと思う。

サガコ:あれも聴きたい、これも聴きたいって気持ちになりつつも、相当な満足感だったのも事実。パンフレットを読むと、選ばれし楽曲たちの細かい魅力が詳しく語られているのでオススメだぜ!

タダツグ:露骨な宣伝だな!

聞き慣れた楽曲がオーケストラアレンジでまったく別の印象に!

サガコ:それにしても“夏ノ雪”から始まる導入、本当に震えた。あんなに豪華なコーラスと演奏で『NieR:Gestalt&Replicant』のサウンドが聴けるなんて、8年前は思ってもみなかったわけで、コーラス聴いた瞬間に鳥肌立った。

『NieR Orchestra Concert』

タダツグ:俺は“イニシエノウタ”がめっちゃ印象的でさ。なんだか、底知れぬ不気味さを感じたんだよね。

サガコ:不気味さ?

タダツグ:そう。あの曲、個人的には癒しの曲なんだよ。自分にとってはもちろん、たぶんニーアにとってもそうだったんじゃないかなって思ってて。だからこそ、魔王の城でかかる“イニシエノウタ 運命”にはガツンと頭を殴られるような衝撃を受けたんだけど、今回はそれ以上だった。アレンジの妙っていうか、オーケストラによって音の幅が増えたぶんデボルとポポルが内に秘めていた想い……妄執のようなものを感じて戦慄したんよ。映像演出もそれに拍車をかけていた。

サガコ:ああ、黒文病的な描写というか、天使文字が画面を黒く塗りつぶしていく映像とか流れてたもんね。じつに不穏であった。

タダツグ:音の旋律だけを聴いていたなら、ここまで入り込むことはなかったかもしれんね。そりゃあ、戦慄せざるをえないっていうか。

サガコ:ダジャレだ……。

タダツグ:(しれっと)サガコさんはどうだった。印象的だった曲。

サガコ:選べというのか、私に!! うーん……うううーーーん……おや、こんなところにニコニコポイントが落ちている……1回、まるっと配信見直してきていいかな!?

タダツグ:サガコよ、お前は目の前の〆切を見つめなさい。

サガコ:ぐぬぬぬ……どれもよかったんだけど、強いてあげるならコンサート初登場だった“掟ニ囚ワレシ神”はやっぱり印象に残ったよ。元々の楽曲も好きなんだけど、今回のオーケストラでは生のコーラスの圧力がすごかったんだもの。リズムが早くて疾走感もあって、ひたすらカッコいいなあと思いながら聴き入っておりました。

タダツグ:俺は“光ノ風吹ク丘”のアレンジも好きだな。元々奔放というか、空間の広さを感じさせてくれる楽曲ではあったんだけど、オーケストラアレンジでさらにその奥深さが増した感がある。これぞ「RPGのフィールド曲だよな!」って思ったんだよね。

サガコ:わかる。もっといえば“スクエニのRPGのフィールド曲”って感触があった。

タダツグ:王道ファンタジーのフィールド曲なんだよなぁ……。

サガコ:そしてやっぱり“Ashes of Dreams”からの“カイネ”だよね。この部分は、申し訳ないけれども私のなかではどうしたって別格になってしまう。すでに“Ashes of Dreams”の時点で涙が出て来てたんだけど、そこから“カイネ”につなげる演出が神過ぎた!

タダツグ:ナビゲーターを務めるエミール役の門脇舞以さんの、これ以上はないっていう演技な!

『NieR Orchestra Concert』

サガコ:それ!! エミールがカイネを、白の書を、そしてニーアを想って叫ぶ声と、屈指の名曲“カイネ”のイントロが重なり合った瞬間の化学反応たるや! そしてそれを、まさかのサプライズ出演をはたしたエミ・エヴァンスさんが歌いあげるっていうね。あんなん泣くわ。むしろ、客席のほぼ全員が泣いてたと思う。

タダツグ:俺も泣いた……。ハープの音色がものすごく印象的で、あれだけでこのコンサートに来た価値があったとさえいえる、屈指の名演出だったね。

サガコ:うう……思い出しただけで泣きそう。

勇壮なバトル曲こそオーケストラアレンジが冴える!?

タダツグ:さて、お次は『NieR:Automata』パートだ。こっちは全体的に、スピード感のある楽曲、それに即したアレンジが多かった印象。まぁ、メインが戦闘曲だったからってところもあるかな。

サガコ:『NieR:Automata』パートはグワッと攻めてくる感じだったよね。フィールドやダンジョンの曲ももちろんあるんだけど、やっぱり『NieR:Automata』はアクションRPGとしてゲームそのもののクオリティが格段に上がっていて、そのぶん常に大なり小なりゲーム性があるというのかな……戦い続けている印象が強いんだよね。2Bや9S、A2らヨルハ部隊の面々が、機械生命体を相手にひたすら戦うことから逃れられない物語だったから。

タダツグ:そういう意味でいえば“遊園施設”って本当に異端だよね。そもそも原曲が、パレードを思わせつつも不気味さをもの悲しさを備えた楽曲なのに、オーケストラになってその不気味さがさらに際立っていた。

『NieR Orchestra Concert』

サガコ:確かに、なんだか生音ならではの不安定な魅力が増していたかも。キレイでもあったし、あの曲だけはほんの少し“戦い”から離れてるイメージがあって好きなんだよね。これは“遺サレタ場所”もそうなんだけど、廃墟感……そして壊れた遠い未来のイメージがとても印象的でした。そしてそこからの“美シキ歌”のカッコよさたるや。

タダツグ:ボーヴォワール戦の楽曲ね。中盤のコーラス部分とかちょっと時代劇っぽく感じるアレンジが入ってて、最初は違和感……だけどすぐに勢いが理解できてきて、とにかくカッコいいのよな。あれはオーケストラアレンジならでは。原曲と受ける印象がひと味もふた味も違ったわ。

サガコ:そういう意味では“双極ノ悪夢”もすごかった。“これぞボス曲!”っていうか、金管楽器が奏でる音の波に圧倒された。バトル曲はオーケストラになると、ホントに魅力全開でパワフルだなあって。

タダツグ:映像演出もカッコよかったよね。あと、俺は“追悼”にも圧倒された。ゴスペルっていうの? それともアカペラ? とにかく、中盤まで生コーラスだけで成立させて、めっちゃ神々しく歌い上げてくれてた。会場が一瞬、教会だったと言っても過言ではないと思う。あんなの二度と聴けないかもよ。

サガコ:そしてやっぱり外せないのは、2B役の石川由依さんの語りから入る“Weight of the World”でしょ。くぅ、ナインズ……(涙)。

『NieR Orchestra Concert』

タダツグ:『ニーア』のもう1人の歌姫、ジュニーク・ニコールさんの熱唱もあって、会場を感動の渦に巻き込んでたよね。エミさんもジュニークさんも、ものすごく気持ちが入ってた。背中にオーケストラを、そして目の前にはたくさんのファンの視線を集めて、たった1曲を最高のパフォーマンスで歌い上げる……やっぱり泣けますわ。涙腺崩壊ですわ。

サガコ:笑顔と涙が混ざっちゃって、ホントにね……最高でした。最高。

タダツグ:あーっ、マジで時間が巻き戻らねえかな!? あのコンサートの空間に帰りたいっ! 幸せだったあの時間に!!

サガコ:そんなあなたのために、ニコ生のタイムシフトがあるのよ! 10月10日の水曜日まで視聴できるわ!!

タダツグ:露骨な宣伝、再び!!

サガコ:まあ、でも今回は本当にオススメしちゃうなあ……宣伝といわれようとも、なんといわれようとも、このオーケストラコンサートはさあ、すごく……すごくステキだったもの。

タダツグ:そうだな、すごくわかる。胸張ってオススメしたくなる、そういうコンサートだった。

サガコ:……帰りたい!! 2018年の9月17日の朝の、物販の列が長蛇になる前の、いろんな商品が売り切れる前のパシフィコ横浜に帰りたい!! 帰して! あの感動をもう一度ぉぉ!!

タダツグ:そんなあなたのためにタイムシフトがぁぁ(以下、ループ)。

 ……そんなわけで酒を飲んでもいないのに、ただひたすらコンサートの余韻に酔いしれてトークを重ね、そして粛々と原稿を書く作業へと我々は移行した。おそらくは今頃、多くのファンもこの幸せな余韻を噛みしめているのではないだろうか。

3人のキーマンに訊くオケコンの感想と『ニーア』のこれから

 今回、コンサートが終了したタイミングで『ニーア』シリーズのキーマンであるプロデューサーの齊藤陽介氏、ディレクターのヨコオタロウ氏、サウンドコンポーザーの岡部啓一氏に話をうかがうことができた。お3方とも、今回のコンサートに格別の思い入れがあったようだ。

『NieR Orchestra Concert』

――本日の感想は?

齊藤:ずっとやりたいと思っていたオーケストラコンサート。10周年を迎える前に実現できてうれしい。あとはもうここに居る3人のうち、誰が一番先に死ぬかレースを楽しんでいただくよりほかないなというくらい、大きなことがやれたと思います。

ヨコオ:僕は声を大にして何度でも言います。

「今日は大事な本番だというのに、岡部さんが1時間半も遅刻しました!!!!」

――(一同爆笑)

ヨコオ:今回はまず「オーケストラを中心にやりたいから」という岡部さんの意向がありました。音楽と映像、主従でいったら映像は“従”にあたる部分。音楽に映像を合わせるんですね。これがものすごくたいへんな作業でして、岡部さんが大遅刻してる間に僕は7時半から現場に来て! ずっと映像の合わせの調整を現場のスタッフさんとやり取りして! 本当にたいへんだったんです!! そんなわけで本当にいいコンサートで、いい冥土の土産ができたなと思います!!

齊藤:でも岡部さんが遅刻したのは、本番に備えて台本を読み込んだ結果だから。今までこんなに台本読むことなかったから。ねっ?

岡部:そうです、そうなんです。前日、台本を読み込んでいたら緊張しだしてドキドキしだして、ぜんぜん眠れなくなっちゃったんです。

ヨコオ:小学生か!!

岡部:遠足の前の日みたいになっちゃって。いつの間にかウトウトしだして、気がついたら電話が鳴ってる。電話とったら、スクエニの音楽出版の人の声が聞こえて……。

――うーわー……(笑)。

齊藤:集合時間の30分後に電話をかけたんだよね。

ヨコオ:(岡部さんが)来ない、来ないぞって現場がザワザワしだしたころに電話かけたら、起き抜けのものすごく不機嫌な声で電話に出てね。お前、ふざけんなよと(笑)。

岡部:「あぁい? はぁい? なにか?」みたいなヒドい受け答えをしているうちに、少しずつ覚醒して意識が戻ってきて、血の気がね……本当にご迷惑をおかけしました……。あらためて、今回はいろんな意味で、いろんな方々にお世話になって、成功できたんだなと思っておりますっ! オーケストラコンサートは僕の夢でもあり、みなさんの夢でもあったので、今は本当に感無量です。ありがとうございます!! 挨拶以外の時間は客席からずっと見て、聴いていたんですが、『NieR:Gestalt&Replicant』からの成長をファンのみなさんと同じような気持ちで感慨深く体験させていただきました。僕もちょっと泣きそうになっちゃいました。

――お気に入りの曲や、ポイントは?

ヨコオ:今回は文字の演出を入れさせていただいて、前半の『NieR:Gestalt&Replicant』はオーソドックスに哀しいイメージでまとめたんですが、後半の『NieR:Automata』では少し趣向を変えてパワフルな感じにしたいなと。とくに“双極ノ悪夢”を盛り上げたいと思っていたのですが、構成を思い描いたとおりに音楽がハマって、すごくよかったなと思いました。

齊藤:私は今回のコンサートのベスト・ワンという意味では“カイネ”ですね。これはね……昼公演で泣いて、夜公演はガマンできるんじゃないかと思ったんですけど、夜も泣きました! 昼夜、通しで泣きました。岡部さんばっかり褒めるとヨコオさんがやきもちを焼くので(笑)、今日の最高のテキストは、ポッドの合わせ技のセリフ。あれでまた泣きましたね。やっぱりこの2人は天才だなって改めて思いました。

ヨコオ:岡部さんが「オーケストラを立てたいから、動画とかをあまり使わない方向で」って言われた結果、静止画と文字でがんばりきりました…!

岡部:僕は逆に動画を使わないほうが少しでも作業がラクになるのかなと思って、提案したんだけど……。

ヨコオ:ただただ、たいへんでした! 岡部さんのお気に入りは?

岡部:デモの段階からオーケストレーションの音楽を聴いていたんですけど、毎回状況によって音が違っていて、毎回お気に入りがちょっとずつ変わっていくんですね。今日のコンサートで個人的な好みをいうと、あまり人気ある曲ではないかなと思うんですけども“塔”という曲がありまして。

ヨコオ:誰が作った曲?

岡部:もちろん僕です!!(笑)

ヨコオ:自画自賛か!!

岡部:原曲とかなり違うアレンジにしていただいていて、原曲よりもものすごくいいものにしてもらったと感じていて。ほかの方のお力を借りて、すごくいいものにしていただいたなと今日のコンサートで思いました。

――映像を作るプロセスは?

ヨコオ:CD用の音源を聴いてから製作をはじめました。動画をなるべく使わないなどの制約があったので、本番当日の朝に最終データが完成しました。それくらいがんばって作ってもらって、あまりにもたいへんで、3人くらい(精神的に)死にました。

岡部:音楽に映像をつけるときって、クリック(メトロノームのようなタイミングの指標)を聞きながらそれに合わせてやるものなんですけど、オーケストラならではの生の音の揺れを大事にして、映像も揺らしながらやりたいという要望の結果、映像もリアルタイムで合わせるというとんでもないことになってしまいました。

齊藤:手動ですからね、本番でも。

ヨコオ:1本の動画にはまとめてあるんですが、スピードコントロールは本番で音楽を聴きながら、それに合わせて調整してたんですよ。本当にたいへんで、オーケストラがものすごく盛り上がって、想定していたよりもゆったりになったりすると、こっちはもう「あああ…っ」って手足が震えるような緊張感でスピード調整して……。逆に速くなっても合わせなくちゃならないしで、ずっとハラハラしていました。だからアンコールの“全テヲ破壊スル黒キ巨人”では唯一映像がなかったので、ものすごく安心して見ていられました。みなさんに喜んでいただけたのなら、それはスタッフさんのがんばりの成果ですね。

――岡部さんの大遅刻以外に、ハプニングは?

岡部:これといって大きなハプニングはなかったんですが、オーケストラはリハやゲネプロ……やるごとにちょっとずつテンポ感が変わったり、演奏のダイナミズムのつけ方も変わったりで「オーケストラって本当に生き物なんだな」とあらためて感じました。僕自身はその変化をおもしろく、興味深く聴かせてもらっていたんですけど、この変化そのものがハプニングだとすれば、映像にとっては毎回の演奏がハプニングのようなものだから、合わせるのは本当にたいへんだろうなと思いながら見ていました。

――次の夢や、野望は?

岡部:大きな夢はこうして叶って形になったので、あとはこれをさらにどれだけ多くの方に聴いていただけるかなっていうことを考えたりはします。

齊藤:“世界の岡部”ですから。国内に留まりませんから。

ヨコオ:最近本当に、海外公演を口にするようになって、チョー感じ悪いんですよね(笑)。もっとあるでしょ、盆踊りとか、和風とか。

岡部:演歌バージョンとかね(笑)。

ヨコオ:海外公演は夢を見すぎでしょう。

岡部:夢の話だから! 夢は何を言ってもいいんだから。

齊藤:そうだね、夢は持たなくちゃ。

岡部:オーケストラコンサートも言い続けたら、エラい人が動いてくれてなんとかしてくれたんだから!

――最後にメッセージを。

ヨコオ:お値段の高いコンサートにわざわざ来てくださってありがとうございます。昔から長く愛していただいて、グッズや本を買っていただいて、そういうみなさんの応援がこういったコンサートに結びついた……支えてくださったことが今日という1日に結実していると思います。今日は本当にありがとうございました!

齊藤:今回のコンサートはかなり大きなホールで企画して、正直どうなるんだろうと不安も大きかったんですが、昼夜満席で本当にありがとうございました。結果的にはこのキャパシティでもチケットが手に入らずに来られなかったファンの方がいるということなので……世界はちょっと言いすぎですけど、今度は東京だけではなくて、たとえばプラチナゲームズさんの本拠地である大阪などでもやれたらいいなと。

 そして地方開催がむずかしければ、それはそれとしてもっと多くの方にこの素晴らしいコンサートをお届けできるような形がとれたらいいなと。ぜひそのあたりにも期待していただきたいなと思います。

岡部:今日の夜の回は、ニコニコ生放送の配信でもしばらくの間、お届けできるということで、よりたくさんの方に見ていただけたらうれしいなと思っています。手前味噌ですが、とてもいい公演だったと思いますので興味のある方、この記事を見て「そんなコンサートがあったんだ」と知ってくださった方……いろんな方に配信を見て、聴いていただけたら、きっと楽しんでいただけると思います。

 本当にいろんな方のご協力、ファンのみなさんの応援が積み上がって成し遂げることができた、集大成のこのコンサート……1人でも多くの方に見てもらえたらうれしいです。そして見てくださった方、ご来場くださった方、本当にありがとうございました!!

まだまだ広がっていく『ニーア』の世界

 コンサート当日のロビーでは、すでに発売済みのグッズやフィギュア類のほかに、現在絶賛監修中の未発表アイテムや、発売予定のグッズ、複製原画などの展示も行われていた。撮影にも長蛇の列ができており、改めて『ニーア』シリーズの人気をうかがい知ることができた。

『NieR Orchestra Concert』
『NieR Orchestra Concert』
『NieR Orchestra Concert』

 また同日、『NieR:Automata』の前日譚といえる「舞台ヨルハ」の公式サイトが突如として更新された。未だ詳細は明かされていないが、真っ白な画面には“ヨルハ実験部隊”のエンブレム……そして“2019”“TOKYO”“OSAKA”。2019年に東京と大阪にて“舞台ヨルハ”の新たな幕が上がることは間違いない。

 ゲーム、音楽、小説、舞台……ますます広がりを見せる『ニーア』シリーズの今後に、期待をするなという方が無理な話。ひとまずは配信のタイムシフトを見て、今一度素晴らしかったコンサートの思い出と、あの素晴らしいオーケストラの音に浸ってみてはいかがだろうか。

 ニコニコ生放送では夜公演の模様のタイムシフト視聴が可能です。
(2018年10月16日(火) 23:59までご視聴いただけます)
販売期間:2018年10月10日(水)23時59分まで
2,500ニコニコポイント(税込 2,500円)
『NieR:Orchestra Concert』視聴ページはこちら

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Photo by Shinjiro Yamada

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