2018年9月21日(金)

『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』を試遊して高まる期待。人間味あるドラマに心揺さぶられる【TGS2018】

文:キャナ☆メン

 9月20日~23日に千葉・幕張メッセで開催中の東京ゲームショウ2018において、インディーゲームコーナーに出展されているアドベンチャーゲーム『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』をプレイしたので、その感想をお届けする。

『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』

 先日の発表会で国内向けの詳細が語られた本作は、ベネズエラのSukeban Gamesが手がけたサイバーパンクバーテンダーADV『VA-11 Hall-A』の続編。人工島セント・アリシアを舞台に、バーテンダーのサムやヤクザのレオンといった新たな登場人物たちの物語が描かれる。

 Sukeban Gamesブース(9-B60)で出展中の体験版では、サムとして客にカクテルを振る舞い物語を楽しむバーテンダーのパートを試遊できる。なお、試遊できるものは開発中のバージョンであるため、製品版と内容が異なる点は留意してほしい。

『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』
▲Sukeban Gamesブースの写真。

人間味あるドラマが描かれる物語の味わい

 体験版は随所に作り手のテイストが盛り込まれ、短い時間の中でも濃いゲーム内容をプレイできた。

 まずはゲーム開始早々。店を訪れた女性客にバーテンダーかと問われ、サムは「あなたがお客さんなら」と洒脱な切り返しをする。その短いやりとりにジルの姿を思い浮かべ、馴染みの店へ久しぶりに戻ってきたような気分になった。

 体験版で相手をする客は、パルカという名の漫画家で、彼女はある悩みを抱えてバーを訪れる。サムとプレイヤーは、バーテンダーという“聞き役”としてパルカの相談に乗り、相手の気分に合わせたカクテルを出すことで、彼女の荒んだ心をやわらげるのだ。

『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』

 会話の内容は試遊を楽しみにしている人のため伏せるが、酒が進むにつれパルカの口から吐き出される本音は、現代のSNS社会と通じるものがあって、深く考えさせられる内容である。

 それに対して、サムも本音でパルカに語りかける。サムの性格はどこか大人びていて、相手を包むような優しさを備えているように感じられた。彼女に8歳の息子がいることが、そのアイデンティティに影響しているのかもしれない。

 本音と本音のキャッチボールで繰り広げる2人の会話は、人それぞれが内に抱えて口にできない本音を代弁するかのようにも感じて、心を揺さぶる。体験版のたった1つのエピソードでも、人間味のあるドラマを感じることができた。

『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』

 また、会話の中で気になったのが、サムが掲げるポリシーだ。それはあることを“禁止する”内容で、あえて禁止するからには、逆説的に強いこだわりがあるように思える。製品版では、そのポリシーが物語で描かれるドラマに強く関連するのでは、と感じる部分だった。

『N1RV Ann-A』のカクテル作り

 客に提供するカクテルを作る部分では、その材料が大幅に増えていることが特徴的。体験版にもかかわらず氷を含めて37種類の材料があって、アルコールの他、非アルコール飲料、チョコレートなどの固形物も充実している。

 ただ、カクテルを作る流れがシンプルなこと自体は変わらず、レシピに書かれた材料を入れてシェイクすれば完成。提供したカクテルによって、客の反応が変わってくる。

『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』

 前述の通り、相手の気分に合わせたカクテルを出す必要があり、レシピに書かれた説明文や特徴を見ながら、これぞと思うカクテルを作るゲーム性は健在だ。

 また、各カクテルにまつわるユニークなテキストは“トリビア”という項目で独立し、それを楽しむこともできる。例えばスクリュードライバーのトリビアは、「このカクテルを本物のドライバーでミックスしていただく際にはバーテンダーに気軽にご相談ください」で、思わず吹き出しそうになってしまった(笑)。

 体験版だと作れるカクテルの種類は限られていたが(体験版として考えると決して少なくない)、『N1RV Ann-A』は前作より多くのカクテルが登場するそうなので、がっかりする必要はないだろう。

『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』

 ちなみに、カクテルの名称は実在のものがベースになっていた。材料についても同様で、その種類の多さからもカクテル周りはリアリティが増して、よりバーテンダーの気分を深く味わえそうである。

製品版が待ち遠しくなるゲーム内容

 ちなみに、体験版ではサムの本名が“サマンサ”であることも語られていた。さらに、バーテンダーとしてのキャリアは、本人いわく「少年でいうと、もうそろそろ思春期に入る」ぐらい、数字で書くと12年くらいのようだ。

 TGS会場に足を運べない人にとっては、少々モヤモヤするプレイレポートになってしまったかもしれないが、キャラクターの“人間味”を強く感じる本シリーズの作家性やドラマは、あまり多くの情報を入れずにゲームの中で味わってこその体験があると思う。

 逆に言うと、『N1RV Ann-A』の体験版にも衝撃を感じるおもしろさが詰まっていて、心を揺さぶられるゲームになっていた。本作を試遊した今……製品版が待ち遠しくてたまらない。

■東京ゲームショウ2018 開催概要
【開催期間】
 ビジネスデイ……9月20日~21日 各日10:00~17:00
 一般公開日……9月22日~23日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

データ

▼『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』
■メーカー:PLAYISM
■対応機種:PS4
■ジャンル:ADV
■発売日:2020年
■価格:未定
▼『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』
■メーカー:PLAYISM
■対応機種:Nintendo Switch
■ジャンル:ADV
■発売日:2020年
■価格:未定
▼『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』
■メーカー:PLAYISM
■対応機種:PC
■ジャンル:ADV
■発売日:2020年
■価格:未定

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