2018年9月22日(土)

『Ghost of Tsushima』日本の美を追求した侍アクションが追い求めるものとは? 開発陣インタビュー【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 1274年に起こった蒙古(モンゴル帝国)による対馬襲撃を題材として、一人の侍の物語を描く『Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)』。E3で公開されたプレイデモでは、広大なオープンワールドのようすや、モンゴル軍の兵士との戦闘、ステルス要素などさまざまなプレイシーンを見ることができ、大きな反響を呼んだ。

 日本を舞台としたオープンワールドゲームということもあり、日本のみならず世界中から注目を浴びている本作。この記事では、開発を担当するSucker Punch Productionsのクリエイティブ/アートディレクターのJason Connell氏と、SIEでプロデューサーを務める片見龍平氏へのインタビューをお届けする。

『Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)』
▲片見龍平氏とJason Connell氏(以下、敬称略)

――日本人からすると、日本を舞台にゲーム化をするのであれば戦国時代などが候補にあがると思うのですが、蒙古襲来というエピソードを選んだ理由を教えてください

Jason:その疑問はもっともですね。実際、よく聞かれます(笑)。まず侍のゲームを作ろうと決めたときから、日本の歴史や映画、フィクションなどを調査したのですが、その中で元寇に対する記述が目についたんです。

 そこまで多くの情報があったわけではないのですが、その中のひとつに、80人の侍が迫りくるモンゴル軍に対して佐須浦で突撃していったという記述があって、それがすごく侍らしいと感じたんですよ。それに触発されたのが、本作を作るに至ったきっかけですね。

 もう一つの理由は、仰ったとおり戦国時代などに比べてほとんどゲーム化されていないということです。だからこそ取り上げてみたいと思いました。アーティストとして、人がやっていない分野をやってみたいという意欲もありますからね。

――E3で公開されたデモ映像では、かなり日本らしさを感じられて驚きました。このような日本らしさを演出するためにどのような工夫を行ったのでしょうか?

Jason:そう感じてくださると、とても嬉しいです。当然、自分の出身地でもなく、慣れ親しんでいない文化のゲームを作るとなると、それについて多くの相談できる人を雇ったりしなければなりません。片見さんのように、チームの中にも助けてくれる人を入れることも重要です。らしく見えるのは、彼らから学んだことがうまく反映されているのでしょう。

 それに加え、実際に取材旅行を行いました。ガイドに対馬のさまざまな場所を案内してもらいました。景色を見たり、博物館に行って当時の物を観察したり、日本の歴史にまつわる美術品を見せて頂いたり。対馬に限らず、日本のほかの地域にも取材に行きました。それによって日本全体の植生や空気感、文化について、実体験として体得していったことで、日本らしさを感じる感覚を培っていったんです。

『Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)』

――超能力を駆使して暴れまわれた『インファマス』シリーズに比べ、本作では緩急のついたアクションが特徴的だと感じました。この体験から、プレイヤーに感じて欲しいものなどはありますか?

Jason:まさにその通りです。本作では静と動の対比を表現したいと思っていて、しじまと激発のような一瞬のアクションという点を意識しています。プレイヤーに感じて欲しいところは2つあって、1つは侍になりきってほしい。時代劇などにあるような理想的な侍になって、それを体験してほしいんです。侍の言動や刀の持ち方、あるいは敵に対する威圧など、すべてにおいて“侍になりきる感覚”を体験して頂きたいと思っています。

 もう1つは、オープンワールドを探索するという感じを味わってもらいたいですね。中世の日本を探索するというか、冒険するような楽しい気分を味わってもらえるように作っています。

――デモでは、襲い掛かってくる敵を一太刀で斬り伏せたり、敵の攻撃をいなしてカウンター気味に斬り捨てたりといったアクションをしていましたが、あれはイベントでの演出ではなくプレイヤーが行えるアクションなのでしょうか?

Jason:E3のデモで公開されたアクションシーンは、基本的にすべてプレイアブルな状況でのアクションとなっています。あのように戦うこともできますし、倒す順番を変えたり、ステルスで全員を静かに倒していくといった戦い方も可能です。

片見:侍になりきっていただくにあたって、プレイヤーがすべてをコントロールできるというのを非常に重要視しています。なるべくゲームがそれを阻害しないように心がけて開発していますね。

Jason:デモの最後に、紅葉の下で2人が決闘するシーンがあるのを覚えているでしょうか。あれも実はコントロールできるシーンなんですよ。ムービーのように見えるシーンでも、プレイヤーがカメラを動かすことができるようになっています。

 あのシーンでは、決闘が進むにつれてカメラの位置がどんどん下がっていくという演出を加えていて、それによってより映画のような臨場感を演出し、決闘を盛り上げているんですが、その状態でもプレイヤーがカメラを含めてコントロールすることが可能です。

『Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)』

――『インファマス』のカルマシステムのように、プレイヤーの行動によって善と悪で分かれたり、ストーリーが変化したりといったことはあるのでしょうか?

Jason:今作では、まったく新しい体験を作ろうと思っているため、カルマシステムのようなものは導入していません。その代わりに、魅力的な多くのキャラクターや、夢中になれる物語を作ろうとしています。E3のデモではマサコという女性が登場しましたが、彼女はメインストーリーのキャラクターではありません。重要な脇役ではあるんですが、彼女の物語というのは単なるサイドミッションなんです。

 ですが、あれくらい濃密な物語を各サイドミッションに用意しようとしていて、サイドミッションをプレイする際にも、豊かなストーリーを味わってもらえるようにするというのが、今作の狙いとなっています。

――軸となるメインの物語には分岐はあるのでしょうか? それとも、一本しっかりとまとまった、濃密なストーリーが展開されますか?

Jason:最終的にこの作品で語ろうとしているのは、サカイ・ジンという主人公のひとつの物語です。プレイヤーによってストーリーが変化するということはなく、彼が侍から本作のタイトルでもある“ゴースト”にどのようになっていったか、という話を語りたいと思っています。

――ゴーストという名称や、デモで天井の梁の上からのステルスキルなどを見ていると、忍者的な要素も感じたのですが、そこは意識して組み込んだのでしょうか?

Jason:本作の主人公であるサカイ・ジンですが、彼は非常にストイックな侍らしい侍です。ただ、我々は『インファマス』シリーズにおいて、いろいろな戦闘や移動のやり方を開発してきました。

 その技術を生かして、侍らしく戦うこともできれば、忍のような感じでステルス主体の戦いもできるという、両方の戦い方ができるようにしたら、より戦闘のバリエーションも豊かになるし、プレイヤーの体験としても自分のやりたいようにやれて、幅が広がるのではと思ったんです。

片見:設定的にも、蒙古という日本の侍たちが目にしたことのない敵を相手にするにあたって、今までの方法が通用しなかったり、一人で大群を相手にしなければならなかったりと、そういった意味でいろんな技術を自分で発見して試していくということが重要だった、というのもありますね。

『Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)』

――これまで公開されている情報では、戦闘により焦点が当てられていますが、戦闘以外の遊びなどはあるのでしょうか?

Jason:残念ながら、現段階では公開されている以上のゲームプレイについてはお話することはできません。ただ、我々にとって重要なのは、侍の体験の一部としてこの世界を旅できるようにするということです。

 映画『用心棒』で主人公が投げた枝の倒れ方によって進む方向を決めたように、プレイヤーが好きなようにこの世界を探索できること、そして探索して楽しい、美しい世界を作り出すことを意識して作っています。

 例えば巨木があったり、五重塔のような建造物があったときに、そこに行って何があるか見てみようと感じ、それによって新たなストーリーが展開していくというような、プレイヤー自らが探索して発見できる楽しみを実現したいと思っているんです。ひとまずは、戦闘以外についても豊かな体験を用意している、とだけお伝えしておきましょう。

片見:せっかくのオープンワールドですし、とても絵作りがうまいチームですので、記憶に残る風景になるべく多く出会えるように開発しているので、ご期待頂ければと思います!

――絵がキレイと聞くと、フォトモードが搭載されているのかが気になってしまいます(笑)

Jason:これについても、現状で何か言えるかというと何も言えないんですが……ただまあ、『インファマス:セカンド サン』というのはフォトモードを実装した最初のゲームだと記憶しています。それに、今ではいろんなゲームにフォトモードが搭載されていますよね。とりあえず、私たちはフォトモードは大好きです、とだけ(笑)。

『Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)』

――キャラクターのカスタマイズ要素や成長要素などはあるのでしょうか?

Jason:Paris Games Weekで発表されたトレーラーと、E3のトレーラーをよく見てみると、ジンの衣装が3種類あることに気づいて頂けると思います。これについてもあまり詳しくは言えないのですが、侍になるという夢の一部には、いろんな格好いい服を着た侍になるということも含まれているのかなと思っていますし、我々の過去作品を見てもらうと、成長要素などを取り入れることに意欲的なスタジオだということもわかって頂けると思います。

――昨今、和風や侍といったモチーフのタイトルが多く出てきていますが、この作品がこの流れの先陣を切って出てきたイメージがあります。開発の現場として、侍ゲームの盛り上がりというものは感じていますか?

Jason:実に素晴らしいことだと思います。実力のある会社が作っているゲームばかりで期待もできますし、侍が好きな人にとっては最高の時代になりましたね! イチ侍好きゲーマーとしては、本当にいい時代になったと思います。多くの侍ゲームが出て、お互いに切磋琢磨するというのは業界にとって非常に健全なことだと思うので、個人的にはいいことしかないかなと感じています。

――最後に、楽しみにしている方にへメッセージをお願いします。

Jason:世界中のファンから期待してもらえているのは当然嬉しいですし、特に日本の方々にも注目してもらえているというのは非常に喜ばしいですね。本作の開発には非常に熱意を込めて取り組んでいるので、発売後、日本のファンの方々に楽しんでもらえたら、この上なく嬉しいです!

片見:侍ゲームブームで盛り上がっているなか、皆さんの期待を裏切らないように頑張りますので、いち早く手に取ってプレイして頂ける日を心待ちにしています!

データ

関連サイト