2018年9月22日(土)

『東京クロノス』はノベルゲームに入って空気感を共有する感覚を味わえる。岸上さんのコメントも【TGS2018】

文:伊藤誠之介

 9月20~23日に開催されている“東京ゲームショウ2018(TGS2018)”において、VR/ARコーナーのMyDearestブースに出展されているVRミステリーAVG『東京クロノス』を試遊。その感想と、開発スタッフのコメントをお届けします。

『東京クロノス』

 『東京クロノス』は、誰もいない渋谷の街に閉じこめられた8人の高校生が、1人ずつ消失していくという謎に挑むVRミステリーAVG。本作は2019年初頭に、Oculus Rift/Oculus Go/HTC vive/PS VRで発売予定となっています。

『東京クロノス』

 本作は、映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』モーション監督の柏倉晴樹さんが監督を務める他、小説家の瀬川コウさんがシナリオを、イラストレーターのLAMさんがキャラクターデザインを、そして電撃文庫でおなじみの三木一馬さんがプロデューサーを手がけるなど、豪華なスタッフが集結しています。

 会場で試遊できたのは、物語のプロローグとなるパートで、総プレイ時間は5分ほど。ゲームがスタートすると、主人公の櫻井響介(声優:上村祐翔)はなぜか、誰もいない渋谷の街に1人で立っています。

 渋谷駅前にやってきた響介は、自分と同じように渋谷の街にいた、幼なじみの桃野夕(声優:木戸衣吹)と出会います。

『東京クロノス』
『東京クロノス』

 やがて2人の前に、同じ高校の二階堂可怜(声優:石川由依)や東国ユリア(声優:柚木尚子)も姿を見せます。彼らはなぜここにいるのでしょうか? そしてなぜ、彼ら以外の人々は誰もいないのでしょうか? 

『東京クロノス』

 操作としてはコントローラをクリックして、キャラの会話とテキストで進行する物語を読み進めていくというもの。会話しているキャラを見るために周囲を見渡す必要はあるものの、インタラクティブな要素はなく、ノベルゲームの体裁となっています。

 特徴的なのはテキスト表示で、視線を上下左右に動かすと文章も追随して、適切な位置に移動されます。セリフと地の文の違いなどもわかりやすくなっているので、VRの画面でも快適に文字を読むことができるようになっています。

『東京クロノス』
『東京クロノス』
▲周囲を見回して視線を動かすと、画面上のテキストもそれに合わせてちゃんと移動してくれます。

 一方で、キャラクター同士が会話する際には、しゃべっているキャラにはポーズ変更などの動きがあるものの、他のキャラは完全に静止しています。

 画面写真を見ると、まるでアニメの世界に入り込むようなイメージがありますが、実際にプレイするとそうではなくて、まさにノベルゲームの画面の内側に入り込んで、その空間をキャラクターと共有しているような感覚を味わえるのです。

『東京クロノス』

 ある意味リアルな空間ではないため、違和感を覚える人もいるかもしれませんが、個人的には誰もいない渋谷の街の雰囲気とあいまって、非常に新鮮で心地よく感じました。

 全体的に、VR特有の酔いや疲れなどをあまり感じない落ち着いた作りになっていて、長くじっくり遊ぶことになる本作にはピッタリだと思います。このあたりの絶妙な感覚はぜひ、実際に味わってもらいたいところです。

 TGSの会場では、『東京クロノス』総合プロデューサーの岸上健人さんにお話を伺うことができました。

『東京クロノス』
▲『東京クロノス』仕様のOculus Goを装着した岸上健人さん。

――今回試遊できたのは、物語のプロローグ的なパートなのでしょうか? 

 本編の冒頭となるプロローグですね。実際のゲームでも、演出などは変更になるかもしれませんが、ストーリー的にはこのままです。

 今回の試遊版にも、本編の伏線がけっこう入ってるんですよ。なにしろミステリーですから。なのでこの時点からすでに、ゲームを楽しめると思います。

――試遊できたのは5分ほどの内容でしたが、製品版のプレイ時間はどれぐらいになるのでしょうか? 

 10時間ぐらいを想定しています。シナリオが文庫本3冊ぐらいのボリュームなので、もうちょっと長くなるかもしれません。

――試遊してみて、まさにアドベンチャーゲームの画面の中に入り込んだような感覚が味わえたので、驚きました。

 アドベンチャーゲームをVRでやるというのを、ド直球で作っている感じですね。製品版には分岐などもありますよ。

――会話の際に、話していないキャラクターが完全に静止しているというのは、ノベルゲームの会話での、キャラクターのバストショットのような演出を意識しているのでしょうか? 

 実は完全に止めたままにするのか、それともちょっと動かすのかは、開発スタッフでも意見がわかれているんです。もっと動いてもいいんじゃないか、という意見もあって。

 でもずっと動いている場合は、いろんなパターンを用意しておかないと、むしろプレゼンス(※VRの世界をリアルだと受け止める感覚)が下がるんですよ。

――徹底してリアルにやるのか、それとも静止させるぐらい割り切るか、といったところですか? 

『東京クロノス』

 今のところは、割り切ったほうがいいんじゃないかと思いながらやっていますね。あとはテキストの表示をすごくこだわっています。真上を見ても、ちゃんとテキストがついてくるので。

――TGSの会場での、来場者のリアクションは? 

 これまで作った作品の中でも、ぶっちぎりで反応がいいですね(笑)。特にクリエイターさんからの反響がスゴイです。「VRでアドベンチャーゲームをどう作るか悩んでいた時に、これがひとつの答えだと思った」と、いろんな人から言われました。

――製品の発売に向けて、今後の展開は? 

 10月6~8日に徳島で開催されるマチ★アソビでも、『東京クロノス』を試遊できます。あとは11月にニューヨークで行われる“Anime NYC”というイベントにも出展します。

 発表からクラウドファンディング、TGSと、ここまでは理想的な形で来られましたが、開発の大変なところはまさにここから。皆さんに楽しんでもらえる作品になるよう、がんばります! 

――ありがとうございました。

■東京ゲームショウ2018 開催概要
【開催期間】
 ビジネスデイ……9月20日~21日 各日10:00~17:00
 一般公開日……9月22日~23日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

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