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2018年9月28日(金)

杉山イチロウ&箕星太朗クリエイター対談。純愛と写真・動画撮影が融合した『LoveR』への情熱を語る【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 角川ゲームスより2月14日にPS4で発売される『LoveR(ラヴアール)』。本作は『トゥルーラブストーリー』『レコラヴ』など、恋愛シミュレーションゲームを作り続けて22年のキャリアを持つ杉山イチロウ氏と、何人もの可憐なヒロインを描き続けてきたイラストレーター箕星太朗氏がタッグを組んで贈る、完全新規の恋愛SLG。そのテーマはRomance(恋物語)とRecord(記録)で、プレイヤーは6人の女の子と出会い、恋が芽生えていきます。

『LoveR』

 今回、杉山氏と箕星氏の2人にインタビューを行う機会を得たので、その模様をお届けします。2人の恋愛SLGの巨匠が、本作にかける熱量を感じていただけると幸いです。なお、9月28日の電撃PlayStationでは、箕星太朗氏のキャラクターラフスケッチも掲載しているので、そちらもお見逃しなく!

SweetOne発表から1年の反響

――杉山さんの新ブランド、SweetOneの発表から1年経ちますが、この1年、ユーザーさんの反響はいかがでしたか?

杉山イチロウ氏(以下敬称略):ゲームの詳細もわからない状態なのに、じょじょにTwitterアカウントをフォローしてくださるユーザーさんも増え、とても有りがたい限りです。

箕星太朗氏(以下敬称略):ちなみにどうしてSweetOneなのですか? もしかして自分の名前をもじりました?

杉山:いえいえ、たしかに名前は連想できますが(笑)。“一番大切なもの”とか“一番甘いもの”という意味で名づけました。

――Twitterでは、優美菜が色々なゲームの情報を流す形で情報を発信していましたが、こちらの反響はどうでしたか?

杉山:以前は、角川ゲームス全般の情報を流していたんですけど、春ごろからは、昨日収録があったよとか、そういう報告をすることが多くなりました 。

箕星:だから僕は、どこからポロリするかわからないので、自分の発言で何か結びつかないよう、一切つぶやかないようにしていました(笑)。SweetOneが発表されて以来、Twitterで優美菜がときどき絡んできていたんですよ、RTしたり(笑)。

『LoveR』
▲主人公の妹、優美菜(ゆみな)のデフォルメイラスト。SweetOneの発表以来、Twitterで情報を発信している。

杉山:優美菜もそうですが、僕自身も箕星さんの個展におじゃましたり、お花を贈ったりと、箕星さんとのお付き合いはTwitterで発信していました。でも、この作品に箕星さんが関わっていることはバレなかったですね。

――優美菜のデフォルメイラストを見て、「イラストレーターが箕星さんだ!」とはならなかったんですね。

杉山:全然バレなかったです。ただ、箕星さんは角川ゲームスで何度もお世話になっているので、なんとなく箕星さんじゃないかって空気はありましたね。

2人の運命的な出会いとは?

――今回のゲーム制作において、イラストレーターが箕星さんに決定したのはどういった経緯だったのでしょうか。

杉山:これが数奇な運命なんです(笑)。箕星さんのことはゲームクリエイターとして当然知っていて、『LoveR』の前にも「何か一緒にやれないか?」とコンタクトを取ろうとしたこともあったんです。そのときは叶わなかったのですが、角川ゲームスに入ったとき、ぜひ箕星さんと仕事がしたいので、会わせてくれとお願いしたんです。それで、別のゲームの打ち合わせにきていた箕星さんのところに乱入して、その場で企画書を出したんですよ。

箕星:数奇な運命といえば、僕もちょうどその数日前に、イシイジロウさんと『トゥルーラブストーリー』の話ですごく盛り上がっていたんです。杉山さんを差し置いて、「一緒に『トゥルーラブストーリー』をリブートしたい」とか「角川に話をすればなんとかなるんじゃない?」とか盛り上がって(笑)、ちょうど打ち合わせでその話をしていたら杉山さんがいらっしゃって、「あれっ、ご本人だ!?」と(笑)。

杉山:そんな流れで引き受けてもらった感じですね。

――まさしくお互いに惹かれあった感じですね。

箕星:実は当時、もう恋愛ゲームを作る気はなかったんです。でも、僕のなかで『トゥルー ラブストーリー』ってまさしく原点で、一番影響を受けた作品だったので、「これならやりたい」ということで即決しました。

――いざ一緒にやるということになったとき、箕星さんから何か要望したことはありますか?

箕星:下校モードがないと聞いたときは、入れてほしいといいました。自分のキャラクターといっしょに下校したかったんです(笑)。

杉山:下校モードは『フォトカノ』まではあったんですが、『レコラヴ』でやめたんです。でもユーザーさんからも下校が欲しいという要望は聞いていたので、これはやるしかないなと。僕のタイトルをずっとプレイしてきてくださった方は、下校モードがすごく好きなんですよね(笑)。

箕星:僕らの世代は、アレにすごくハマりましたよ。当時、僕はまだ業界に入りたての素人同然でしたが、職場では隣の先輩が普通にプレイしていましたから(笑)。

杉山:それから、女の子との距離感を描きたいという話もいただいたので、最初に撮れるのは写真だけで、仲良くなると動画も撮れるという形になりましたね。あとは、“一度原点に返ろう”的な気持ちもありました。

『LoveR』

箕星:そこは僕にとっても大きかったですね。

杉山:箕星さんとは初めていっしょにお仕事をするので、僕がずっと連作してきていたものは一度リセットしてゼロからやりましょう、みたいな話もいただいていたんです。それもそうだなと思って、タイトルも雰囲気も変えました。

――ちなみに『LoveR』というタイトルはどのような経緯できまったのですか?

杉山:こちらからいくつか案をお送りして、箕星さんに感想を聞いて、みたいな流れをくり返していました。

箕星:最初は“少女R”という案があって、響きがミステリアスで好きだったんですが、ダメだったんですよね。

杉山:インパクトがあって、いいタイトルだと思ったんですけど、すでに近い商標を取られていたんです。それで原点に帰って、『トゥルーラブストーリー』の“Love”を使おうと。“Lover”だと恋人って意味もあるし、ダブルミーニングで“R”っていうキーワードも使えるということで。

箕星:各キャラクターの物語は“R”で始まる単語がテーマになっているんですよね。

杉山:全体的なテーマとしてRomance(恋物語)、Record(記録)というイメージがありつつ、各キャラクターにもReflection とかRefrain とかテーマがあって、それに沿った物語になっています。

――では逆に、杉山さんから箕星さんに何か要望はありましたか?

箕星:そこは信頼いただいていたので、まず“こんな感じのキャラクターですよ”と各キャラクターの概要をテキストでいただいて、それで絵を描いて、見ていただいて、というやりとりでまとめていった感じです。

――箕星さんもシナリオはすべてお読みになったのですか?

箕星:読みました。全部プロットを読んでから入っているので。

杉山:逆に絵からインスパイアされることも当然あって、それでストーリーも揉まれています。ただ、話のテイストは、これまでの僕の作品と変わってはいないですね。純愛です。

――テーマは今回も純愛ということですが、ちなみにお2人の考える純愛はどういうものですか?

杉山:そういえば、純愛論は語ったことがないですね。

箕星:僕は個人的には青春路線が好きなので、あまり激しいエロは苦手なんです。

杉山:僕は『トゥルーラブストーリー』の頃から比べれば、サービスが増えている気はします。『キミキス』では“電源入れて15分でキス”というのがシナリオとして課したハードルでしたし、そのあとはいつでもどこでも動画が撮れるとか、どんどんサービスが増えていったんです。今回はそれを抑えて、ピュアな部分をパワーアップしている感じかなと思いますね。

箕星:サービスとは違うのですが、仲座ろみという女の子のイベントで、かなり衝撃を受けました。これ本当にいいんですかって(笑)。「自分が描いたキャラクターがこんなことするなんて!」みたいな。

『LoveR』
▲仲座ろみ(なかざろみ)。4月に転校してきた、ダンスが得意な少女。勝ち気で、自分に絶大な自信を持っている。

杉山:打ち合わせでも「これすごいですね!」って散々いわれました。でも、まったく問題ないです(笑)。

箕星:プレイしてのお楽しみなんですが、衝撃を受けると思います。多分恋愛SLGでは初のシチュエーションだと思います。一生懸命真面目に、彼女のためを思ってしていることなんですが、傍からみたら変態そのものという(笑)。

杉山:僕のなかで純愛って、女の子を幸せにするってのが基本なんです。それでいえば純愛だと思います。ただただ助けようとするんです、ピンチのとき。その助け方にちょっと問題があって(笑)。

箕星:恋愛SLGの匠の業の深さを知りました。匠だからこそできる技ですね。変態にみせず、純愛っぽく。僕は純愛だとはあまり思えないですが(笑)。

杉山:たしかに最近は、長年一緒に作っているスタッフに、これ純愛だからっていうと、苦笑いされるんですよね……。「また始まったぞ」みたいな顔をされるようになっています(笑)。

ピュアの概念とゲームの難易度には深い関係が?

――ちなみに恋愛での“ピュア”の概念は、年代ごとに違っていると思いますか?

杉山:うーん、情報の入り方が20年前とは全然違うので、やはりアグレッシブになっていると思います。それで『レコラヴ』をやったときは、いきなり動画を録るってハードルをクリアするために、明るく楽しいって路線に持っていったんですね。

箕星:僕なんかは、いきなり動画を撮られたら、やはり心理的に抵抗があるんじゃないかって思うんですよ。

杉山:もちろん断られることもありますよ。ただみんな寛容で、「録らせて欲しい」といわれれば録らせてくれる。恋愛レベル的に引っ張って、低レベルでは、なんか機嫌を悪くされるというのも、時代にあわないのかなと。

『LoveR』
▲本作では動画撮影は仲良くなってからのお楽しみ。まずは学園を自由に移動して女の子と会話し、写真を撮っていく。

箕星:一昔前のゲームだったら“動画を撮る”という選択肢を選んだ瞬間、導火線に火がつきますよ(笑)。

杉山:そういう意味では難易度は下がりましたね。『トゥルーラブストーリー』だって、1周目、2週目では親友エンド(編注:誰とも恋愛できないエンディング)が普通でしたし(笑)。

箕星:確かに昔は、女の子とのエンディングはハードル高かったですね。

杉山:今は、スマホアプリの影響もあってか、ゲームはどんどん手軽に、簡単になっている傾向を感じます。そのぶんこの作品では、“写真を撮る”ということにこだわれるようになっていますので、そっちのゲーム性を楽しんでもらえればと思います。

――写真の撮り方には、ユーザーごとに個性がでそうですね。

杉山:だいたいみんな、下に潜り込みますけどね(笑)。『LoveR』はピュアなので、より能動的にというか、自分でエロい写真を撮っていこうみたいな流れにはならないようにしています。もちろん、風でスカートがめくれたりとかはあるんですけど(笑)。

6人のヒロインたちが生まれるまで

――6人のヒロインについて、デザインで気をつけたことや苦労したことなどがあればそれぞれ教えてください。

箕星:メインヒロインの莉里愛(篁莉里愛)は、今回主人公から見て年上なんです。ツインテールでお姉さんぽく見えるにはどうすればいいかに挑戦して、結構うまくいったのではないかと。

杉山:あがってきた絵を見たとき、このデザインは発明だなと思いました。ツインテールにも見えて、ロングのようにも見える、見方によって印象が変わるところまで考えていただいて、これはすごいなと。あとは新体操部なので、髪を結わえるところまで加味していただきました。

箕星:僕からオーダーしたことが1つあって、ツインテールを後ろでなくて、前にたらして欲しかったんです。後ろだと幼く見えるので、そこはこだわったところだったんです。

『LoveR』
▲篁莉里愛(たかむら りりあ)。理事長の娘で、新体操部に所属する才色兼備なお嬢様。明るく気さくで、芯が強い。

杉山:彼女はキャラクターモデルを作ったあとも、箕星さんに監修してもらい、僕たちがまた手直しをして、というプロセスを何度もやったので、かなりいい感じになったと思います。物語も王道的ストーリーなので、好きになってくれる人は多いと思います。

箕星:幼なじみの南夏(日向寺南夏)は主人公と仲がいいので、ちょっと“雑”な感じになっています。ヘアピンつけて女の子っぽいけど、なんか雑でしょ?(笑)

杉山:でもスポーツ一直線ではなく、中身はちゃんと恋する女の子って感じです。彼女は髪のボリュームが横に大きかったので少し細くしていただいたくらいですね。声の伊藤かなえさんは『フォトカノ』のメインヒロインだったんですが、今回キャスティングのとき、スタッフの1人が伊藤さんを推してきたんです。それで改めてオーディションさせてもらったら、南夏にものすごく合っていて、さすが伊藤さんだと。そのまま決まりました。

『LoveR』
▲日向寺 南夏(ひがでら ななつ)。主人公の幼なじみ。口は悪いが、気の置けない仲で、どんなことでも話せる間柄。

箕星:オーディションのセリフで伊藤さんが「ななつのななつ」っておっしゃるんですよ。

杉山:台本にはちゃんと「まなつのななつ」って書いていましたよ。

箕星:「杉山さん! アンタ、少女に何ちゅーこと言わせるんや!(笑)」と聞き違いをしていたというオチなんですけどね。

杉山:クリスタ(生野・C・香澄)は、写真を通じて知り合う中学生ですね。体が弱くて、よくマスクをしているんです。なので、マスクをして喋るシーンでは、石見さんにもマスクをしていただいて録りました。結構リアリティがありますよ。

『LoveR』
▲生野・C・香澄(いくの・クリスタ・かすみ)。大人しく物静かな帰国子女。カメラ好きだが、撮る写真はなぜかすべてモノクローム。

 それと、ろみ(仲座ろみ)は、一回どーんと違うキャラクターにしていただきましたね。いろんな髪型をお願いして、最後にこれに落ち着いた感じです。彼女のストーリーは時間がかかったので、結構難しいキャラクターでした。

 あと、凛世(姫乃樹凛世)は、実は『レコラヴ』にモチーフとなったキャラクターがいるんです。けど、新規のキャラクターとして1から作っていて、ストーリーも全然違います。絵柄自体は全然違いますけど、なんとなく前作の面影があるのはさすが箕星さんだなと思いました。

箕星:このゲームは恋愛シミュレーションなのに、凛世って小学5年生なんですよ。そこはイケナイ大人の視点でみたくないなと思っていて、デザインするときも気をつけました(笑)。

杉山:一部のイベントシーンでは、何でもないポーズでも結構背徳感みたいなものを感じるかもしれないです。

『LoveR』
▲姫乃樹凜世(ひめのぎりんぜ)。いつもひとりでいる初等部の少女で、新体操部所属。クラスメイトの子どもっぽい行動が苦手。

箕星:僕の中では幼い、初恋かどうかわからないような淡い気持ちを抱いてくれるようにデザインしたつもりなんです。なので、ちゃんと躊躇してください。声かけるときに(笑)。

杉山:シナリオ的にもちょっとアプローチしづらい雰囲気にしたのですが、逆に背徳感を増してしまった気もして……。でもストーリーは純愛なんで、間違いないです! そういうところは気を配って書いています。自分でいうのも何ですけど、いい話ですよ(笑)。

箕星:妹の優美菜は、ポニーテールということで悩みました。私が担当した他の作品でも、髪型がポニーテールの女の子は多くて、描き分けが厳しいんです(笑)。かわいいポニーってなんとなく決まってくるじゃないですか。

『LoveR』

杉山:髪型のバリエーション的に、ポニーは1人欲しいなって。ちなみに最初は小学生にするつもりだったんです。でも主人公の年齢に近づけた方がいいという話を箕星さんからいただいて、高校一年生になりました。

箕星:妹が成長してきたときの、どこか複雑な気持ちが欲しかったのもありますね。無意識に体をくっつけられてドキッとしたりとか。それには小・中学生だとちょっと幼すぎかなと思って。

杉山:おかげさまで、アグレッシブなキャラクターになりました。歴代の妹で、一番お兄ちゃんが大好きですね(笑)。相当アタックしてきますので、楽しみにしていてください(笑)。

等身大の箕星さんキャラクターは据え置き機では初!!

――今回はPS4ということで、グラフィックの方もかなりこだわっているのでしょうか?

杉山:ブルーム、ライトシャフト、被写体深度などなど、プログラマーも張り切ってたくさんの要素を実装したので、それを駆使して箕星さんのイラストに近づけています。

『LoveR』
▲被写体深度の実装により、人物にピントが合うように。
『LoveR』
▲箕星氏による教室のイラスト。

 作り込みには本当に終わりがなくて、今も調整中です。光源の位置や背景の明るさで雰囲気も変わるので、作りながら驚きの連続ですね。箕星さんの指示もいただき、イラストの色合いに近づけることができたので、なんとかまとまってきたな、とは思います。

――箕星さんは具体的にどのような指示を出されたのですか?

箕星:初期の背景はわりと陰影がハッキリしていたのですが、僕が描くキャラクターはそんなに陰影の強いキャラクターではないので、立たせた時にちょっと違和感があったんですよ。僕は淡い画面が好きなので、2まわりくらい、背景の明度を淡くしました。

 今のPS4の画面って凄くて、フォトリアルなグラフィックでは他のタイトルとの勝負はできないので、もっと絵に見えるような、手作り感を出せればなとは思っていました。

杉山:絵作りにはプログラムが絡んでくるので、グラフィッカーだけで完結できないんですよ。プログラマーに絵の知識がどんどん増えていきました(笑)。画面の絵作りにグラフィッカーとプログラマーが、あーでもない、こーでもないといろいろ打ち合わせをして、ここに至っているという感じです。作業としてはけっこう複雑になってしまいました。

――箕星さんのイラストが等身大で再現されるというのは初めてのことですか?

箕星:コンシューマーゲームでは初めてですね。今回は据え置き機ということで、やっとテレビを通して見れるのが嬉しいですね。

杉山:僕もずっとPSPとPS Vitaでやってたので、据え置き機は久しぶりです。PS4だと、できることがいっぱいあっていいですね。作業は大変ですが(笑)。

――等身大キャラクターをフルポリゴンで表現するうえで、キャラクターデザインに気をつけたことはありますか?

箕星:まずは制約とかはまったく考ずに描いて、そこから調整していきましたね。ただ、動いて魅力的になるようには意識しました。

杉山:ゲームの仕様とか3Dの仕様は、デザインの段階では考えたらダメだと思うんですよ。ゲームの方が近づけていかないと。

箕星:とくに髪の毛の垂れ方にこだわりがあって、そこは制約は考えないですね。あとは目、手あたりです。

杉山:手は難しいですね。360度どこから見てもきれいに見えなきゃならない。何度も調整を繰り返しました。

箕星:あとは、僕は女子高生ものをたくさん描いてきたので、制服のネタがもうないよと(笑)。

杉山:制服の表現にもこだわってらっしゃったので、スタッフは踏ん張りましたよ。

箕星:制服がボディラインにフィットしているのが嫌なんですよ、最初はボディスーツのようにピッタリしていて、それはやめて欲しいとお願いしました。制服の写真をたくさん送りましたね(笑)。

――莉里愛は現実だとかなりの巨乳ですよね。

杉山:彼女はかなりでかいですよ。制服の上からでもわかるくらいですからね(笑)。でも今回はリアリティを重視しているので少し控えめにしました。前作は明るい恋愛をしていて、「どーんとサービス!」みたいな感じでしたが。

箕星:彼女は下品に見えないラインのおっぱいの描き方を意識しています。チラ見しちゃうラインですね。そのへんを再現してほしいなと思ってオーダーしました。

――ちなみに箕星さんは、ほかの衣装もデザインされたのですか?

箕星:衣装は、ジャージとかスク水とか学校関係だけですね。あとは校章もやっていて、これは結構よくできたと思います。制服のボタンにもちゃんと校章を入れていただきました。

『LoveR』

新たな会話は、音声認識が鍵?

――今回は告白後もゲームが続くそうですが、告白後はゲームシステムは変わるのですか?

杉山:会話システムがちょっとかわりますね。

箕星:その辺は、僕は知らないので楽しみです。

――箕星さんはシステムはご存じではないのでしょうか?

杉山:お話してないんですよ。「前に仕様書全部送りましょうか?」と聞いたのですが、「膨大だからそれはいいです」と。その辺はキャラクターデザインに影響しないし、支障はないので。

箕星:僕はシステムにもアイデアを出す方なんですが、『LoveR』に関してはほとんど杉山さんに信頼をおいています。杉山さんのゲームのファンとして、このゲームを楽しみたい気持ちもあるので、あまり知りたくないんですよ。

杉山:それと今回は新しい会話システムを用意しています。

箕星:どんな感じになるのですか?

杉山:簡単にいうと、音声入力をメインにした会話システムです。PVのなかでもご紹介しましたが、フォトセッションのときも「こっち見て」とか「笑って」という呼びかけに応じて女の子たちが動くんです。

『LoveR』

箕星:「OK、グーグル」や「Hey! Siri」的な?(笑)

杉山:そうですそうです(笑)。話しかけると、恋愛レベルによって、はにかんだり、嫌がったりと反応が変わってきたりします。

箕星:これも据え置き機だからこそですよね。外で声を出すのは厳しいです(笑)。

杉山:家でも、家族のいるときは厳しそうですね。もちろん声を出さなくてもコマンドで選ぶことも可能です。余談ですがプログラマーが音声入力のチェックしているとき、「かわいいよ」とか「愛してる」とか囁いてる声が聞こえてくるんです。個人ブースでもない普通のオフィスで恥ずかしいことさせて申し訳ない、罪深いことをしてしまったなと反省しています……が、慣れると気持ちいいんですよ(笑)。

1人ごとのボリュームは大幅にアップ

――ツイッターで、1000個セリフを書いて、400個没にしたというお話がありましたが、これは本当ですか?

杉山:告白後の会話システムに関して、自分で作った仕様でセリフを1000個書いた時点で、もっとこうした方が面白くなるというアイデアを思いついてしまったんです。それで、ごそっと捨てて、書き直しました。

箕星:まさに焼きあがった壺を割る匠みたいな(笑)。

杉山:気が付いてしまった以上、やるしかないなと。おかげでスケジュールがガタガタになりましたが。

――セリフのボリュームも相当なものなのですか?

杉山:1キャラクターにつき4000~5000くらいのセリフが入っていますね。『レコラヴ』は攻略キャラクターが多かったのでトータルだと『レコラヴ』の方が多いですが、1キャラクターあたりのセリフ量は本作の方が多いです。フリーイベントや、下校イベントなどのトータルのバリエーションも増えています。ストーリーじゃない部分のボリュームもかなり増えていますよ。

箕星:これに関しては僕はユーザーの立場なので、みなさんとともに楽しみにしてます(笑)。

――同じくTwitterでの話ですが、優美菜がときおりつぶやく謎の詩は何なのでしょう?

杉山:あれは過去作と今作をあわせて、今までの登場キャラクターの誕生日に、その子についてつぶやいているんです。名前はでてないですけど、過去作のファンは、誕生日だということは気づいてくださっているようです。

箕星:よく覚えてますね。

杉山:スケジュール帳に書いています。そうでないと、キャラクターの名前すらなかなか思い出せない時があるので (笑)。とくに初期のストーリーとか覚えてなくて、ファンの人に「あのシーンよかったです」っていわれても、覚えてなくてリアクション困ったりしたこともあります。自分のシナリオで相手に印象を残しておいて、僕はそれを覚えてないってどうなんだって話ですが(笑)、もう何人分書いたかわからないので。

箕星:何人分の恋をしたんだよって感じですね。

杉山:さすがに『キミキス』くらいまでは覚えていますけどね。『トゥルーラブストーリー』は怪しいですね。あれはそもそも一本筋のストーリーがなくて、主人公のパラメーターでいろんなイベントが起きて、ユーザーさんのなかで1つの話を作る形だったので。

――優美菜の話がでたついでに、『優美菜の泣くぞバッジ』というのがありますが、これは彼女のセリフなのですか?

杉山:主人公があんまり構わなかったり、そっけない態度をとると、そういって拗ねるシーンがいっぱいあります。お母さんにいいつけるぞ的なノリですよ。背伸びして兄にアピールして、そっけない態度をされると「泣くぞ」というのが、彼女のコンボです(笑)。

『LoveR』
▲優美菜の泣くぞバッジ。Twitter公式アカウントをフォローし、特定のツイートをRTした方に、定期的にプレゼントされている。

――それでは最後に、期待している読者にメッセージをお願いします。

箕星:杉山さんの作る恋愛SLGは、もはや伝統文化で世界遺産に認定したいくらいだと思っているので、そこに参加させていただいて良かったです。非常に楽しくやれたのですが、中身のことはあえて知らずに通したので、あとはユーザーとして、みなさんと一緒に楽しみたいと思っています。

杉山:箕星さんという新しい出会いがあって、原点にかえって恋愛SLGを作るという、新たなスタートがきれたタイトルだと思っています。なおかつベースとなるスタッフが10年以上一緒にやっていることもあり、そのみんなとの次の一手という意味あいもあります。まとめ上げていくのは大変ですが、すごくワクワクするものを目指していますので、ぜひご期待下さい。

※画⾯写真はすべて開発中のものです。
(C) 2019 KADOKAWA GAMES

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