2018年9月23日(日)
東京ゲームショウ2018にて、ソニーインタラクティブエンタテインメントが発売予定のPS4専用ソフト『アッシュと魔法の筆』のメディアセッションが行われた。プレゼンテーションでは、開発元・Pixel Opusのドミニク・ロビリヤール氏が、自ら体験版をプレイしながら本作の魅力を語ってくれた。
ある日、絵が好きな心優しい少年・アッシュは、“描いたものに命を吹き込む”魔法の筆を手に入れる。プレイヤーは、そんな彼を操作して壁にさまざまなを描き、災害によって廃れた港町・デンスカに光を灯していく。
本作の物語では、いじめられっこであるアッシュが寂れた港町を魔法の筆でよみがえらせ、絵の中の“かいぶつ”たちとふれあい、そしてその過程を経て成長していく心情が描かれる。
▲本作のクリエイティブディレクターを担当している、ドミニク氏。彼が着ているTシャツには、本作で描くことができる“かいぶつ”がプリントされていた。 |
ちなみに、英語版の原題『CONCRETE GENIE』は、文字通りコンクリート(壁)にジーニー(日本版では“かいぶつ”)を描くことに由来。もともとは開発ネームだったが、いつしか思い入れ深いものになっていたので、そのまま製品名になったとのこと。
本作の軸となるのが壁に絵を描く“ペインティング”で、これはDUALSHOCK 4を使った直感的な操作で行える。描き方も非常にカンタンで、パレットから描きたいパーツを選び、描きたい壁にポインタを合わせてR2ボタンを押しながらコントローラーを動かすだけで幻想的に輝く絵が出来上がっていく。
開発チームが制作する際に気をつけたのが、"誰でもキレイな絵が描けること"で、現実では絵心がない人でもゲーム内では美しい絵が描けるようにシステム面でも配慮が為されているという。
また、ペインティングで描けるものは、町の各所にあるスケッチブックのページを拾うごとに増えていき、最終的には100以上のパーツを描くことが可能になる。これらのパーツは、ファンタジー的な雰囲気のものもあるが、基本的にはオーガニックなアイテムにフォーカスしている。これは、町をよみがえらせる・命を宿らせるというテーマに沿ってパーツが選ばれたのが理由とのこと。
本作で描ける絵は、2つの分類に分けられる。1つは、植物や太陽といった風景。そして、もう1つが原題にもある“かいぶつ”だ。“かいぶつ”は、町の中の特定ポイント――アッシュが子どもの頃に地面に描き残したチョーク画がある場所――でのみ描ける絵で、命をもって動き回る特別な存在。
彼らは、自分のAIを持っており、謎解きを手伝ってくれたり、ときには遊んでくれたり、逆にアッシュに絵のリクエストをしたりと、遊んでいくことで“かいぶつ”との関係性が深まるような作りになっている。
ごきげんになると手をたたいて喜ぶなど、“かいぶつ”自体も感情豊かで、なかには目立ちたがり屋でスポットライトのなかで歌を歌うといった行動をする姿も見ることができた。
もちろん、“かいぶつ”たちのリクエストをどう使うか・どこに置くか、そもそも叶えるかどうかもプレイヤーの自由で、それでゲームが進まなくなるということはない。また、それに対してドミニク氏も「自分たちの個性を出した、好きな絵を描いてほしい」と語っていた。
▲ステージによって描ける“かいぶつ”が異なり、種類ごとに色、性格や性質、パワーにも個性があるとのこと。 |
横長に“かいぶつ”の身体を描くと、自動的に四本脚の“かいぶつ”になり、逆に縦に長く描けば、二足歩行で両手を持った“かいぶつ”になる。角や尻尾も自由自在で、角から角を生やすということも可能。
本作の大きな目的は、魔法の絵を描いて町の暗闇を払うこと。“かいぶつ”がごきげんになると、“スーパーペイント”をするためのパワーを魔法の筆に充填してくれる。
それを使って、町の各所にある青黒い壁(普通のペインティングでは絵を描くことができない)にペインティングすることで、その区画を照らすことができるようだ。ちなみに、スーパーペイントで絵を描くと、普段より大きくダイナミックにパーツが動く様子を見られる。
また、町の中には“かいぶつ”の力を借りなければ対処できないギミックも登場。プレイヤーは、“かいぶつ”をその場所までうまく誘導して、ギミックを解いてもらうことになる。プレゼンテーションでは、赤い“かいぶつ”が炎で“赤い布”を燃やして新たな道をひらく様子が披露された。
町なかにはいじめっこたちがうろついており、彼らにつかまると魔法の筆を奪われて隠されてしまう。そのため、アッシュは彼らから隠れ、避けながら絵を描いていくことになる。そのときに役立つのが、パルクールのようなアクティブさのあるアクションだ。体験版では、壁を登り、屋根を駆け、電線を伝って、町中を縦横無尽に駆け回る様子を見ることができた。
ちなみに、ゲーム内には開発チームの面々が飼っている猫たちが登場。プレゼンテーションでは、ドミニク氏の飼い猫が登場した。□ボタンでインタラクションすることもできる。
▲いじめっこにつかまると筆を奪われ、どこかに放り投げられてしまう。見つからないよう隠れつつ絵を描いていくことに。 |
この作品は、VFX(ビジュアル・エフェクツ)を担当しているアシュウィン氏が描いた、とても小さな男の子が、壁の中に大きな“かいぶつ”を描いて、いじめっこに立ち向かうという絵からアイデアを得たそうだ。
ドミニク氏は「プレイヤーがゲームで絵を描くことで、アッシュの絵でもあるけれどプレイヤーの絵でもあることを表現し、プレイヤーがアッシュの気持ちになって共感をしながらプレイできるものを作りたかった」と語っていた。
また、舞台に寂れた港町を選んだ理由として、デザイナーのなかに中国の漁港村出身の方がいたことをあげていた。“自分が育つにつれ町が元気を失っていき、工業化とともに貧しく暗くなっていってしまった”という経験。
さらに、ドミニク氏の出身地であるイギリス・ブリストルでは、元気がなくなった町をアートでよみがえらせようという運動が盛んであること。その2人の気持ちをゲームの中で表現するには、漁港村が合っていると考えたとのこと。
全18人という小さな開発チームでありながら“E3 2018”で7つの賞を受賞するなど、さまざまな国・メディア、そしてユーザーから熱い期待が寄せられている本作。
「今までのリアクションがとてもポジティブなものばかりで、そういう意見を聞くとユーザーの期待に応えないとという気持ちになりました。予想外の状況ですが、本当に感動しています。みなさんに“ありがとう”という気持ちを伝えたいですね」というドミニク氏の言葉とともに、本セッションは幕を閉じた。
(C) Sony Interactive Entertainment LLC.
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