2018年10月4日(木)
現在ネット上で大きな反響を呼んでいる日常4コマ『専門学校JK』。そのきっかけは本作を描いた漫画家・ほっけ様による、自身のアカウントからの告知マンガのツイートだった。
親戚やご家族に夢見がちの方がいらっしゃれば、是非この漫画をおススメしてください。 pic.twitter.com/2IWHtL8vDd
ぬこー様@ほっけ様 (@nukosama) 2018年9月30日
※告知マンガにある「キンドルに限り半額セール中」という表記は誤り。『専門学校JK』1巻半額セールは、kindleだけでなく、10月中旬ごろまで主に以下の電子書店(全20ストア以上参加)にて実施中。→Amazon、BOOK☆WALKER、アニメイト、楽天、紀伊國屋、eBookJapan、BookLive!、ブックパス、Reader Store、Google、mibon、セブンネット、ヨドバシ、Rentaほか。
告知マンガは、「ニコニコカドカワ祭り2018」により第1巻が50%OFF(半額)となっていることを知らせる4ページのカラーコミック。半額とはいえ、電撃PlayStationの付録「デンプレコミック」や電撃ツイッターマガジンで連載され、すでに完結している本作が、なぜ今になって注目され、売れているのか?
今回の盛り上がりを仕掛けた張本人とも言える著者・ほっけ様に、現在のお気持ちや制作秘話、今後について話を聞いた。ラストには、このインタビューのために描き下ろされたヒット大感謝イラストと、代々木アニメーション学院の公式コメントも!
──ほっけ様さんのマンガでの告知ツイートが、SNSやネット上で大きな反響を呼んで、Amazonの「コミック・ラノベ・BL」ランキングでも2日間連続1位、10月3日現在も5位以内をキープしています。率直に今のお気持ちは?
本当にうれしいです! でも正直、現実味がありません(笑)。
──ここまで大きな反響を得られるとは思ってなかった?
あのツイートは、200人くらいにリツイートしてもらえれば十分かなーぐらいの気持ちだったので。最初にリツイートや「いいね」の多さに気づいたときは、「えっ、なんか炎上させちゃった!?」って思って、すごく冷や冷やしてました……。
──そりゃ驚きますよね(笑)。今回、こういった宣伝をやってみようと思った経緯って、どういったものだったんでしょうか?
昨年9月の第1巻発売にあわせて、KADOKAWAさんには宣伝用の動画まで作ってもらって宣伝していただいたんですが、あまり売れ行きがよくなかったんです。なのである意味、贖罪感覚で(笑)、自分のほうでも宣伝をがんばらないと! と思ってやりました。今回の電子版50%OFFのフェアをきっかけに、とにかく1冊でもいいから多くの人に読んでもらいたいっていう、そんな一心でしたね。
──たしかに、第1話と第2話を動画にしたものが、YouTubeやニコニコ動画にアップされているんですよね。声優さんの声もバッチリついて。
そうなんです。代々木アニメーション学院(以下、代アニ)に通っている、現役の声優科の生徒さんたちがノーギャラで協力してくれました。収録時のスタジオも代アニさんが無償で使わせてくれて。観てもらえればわかるんですけど、生徒さんたちみんな、役作りもしっかりやってくれて、すっごく上手だったんです。今回なんとか本が売れたので、カツ丼ぐらい全員にごちそうしてさしあげたいです(笑)。
──(笑)。たしかに動画の声優さんはみなさん演技がうまくて、声もキャラにピッタリで、作品の雰囲気がよく出ていますね。でも、今回の告知マンガ4ページのツイートのほうがバズッたと……つまり反響が大きかったわけですが、これってご自身では何が原因だったと感じてますか?
『専門学校JK』が、これまでにあまりなかった「ハッピーエンドでもバッドエンドでもない結末」であることを、ツイートした告知マンガで明らかにしているんですが、そこに興味をもっていただけたのかなと。完結している作品だったというのが大きかったのかもしれません。あと「~ダークサイドが描かれてとる」っていうネガティブなアオリもよかったのかな?(笑)
──でも、最後に「半額セール中じゃ!!」ってキャラに言わせてますよね? 普通は商業感が前面に出すぎると、リツイートや「いいね」がされにくいという傾向がありますが……?
そこは本当に謎なんです。あまりに堂々と宣伝しすぎて、逆にみなさん、気にならなかったんでしょうか?(笑) あと僕のミスで販売先のURLも表記しなかったから許されたのかも……?
──たしかにテキストのほうには、タイトルも、ハッシュタグも、URLも一切ありませんでした。つまり画像をクリックしてみないと、どんなマンガなのかがわからない形にはなっていましたね? もはやマンガを読まざるを得ないというか。
ああ! なるほど! じゃあやっぱりURLを入れないのは正解だったのか……。
──狙ってたわけじゃなかったんですね(笑)。でも、テキスト文のなかの「夢見がちな方」というフレーズは、あの告知マンガの重要なテーマになっています。やはり『専門学校JK』は「夢見がちな方」に読んでほしいという思いだったのでしょうか?
そうですね! ぶっちゃけ、代アニさんに限らず、こういったアニメ・エンタメ系専門学校には、夢と現実の割合が10:0な状態で入学しようとする子が多いんです。で、きっとそういう子たちってほぼ間違いなくツライ思いをすることになるので……。なので本当にこれ読んで、ちょっとでも現実を知ってもらえたら、学校も学生も両方幸せになれるのかもなって思って。なので本当に注意喚起的な意味で「夢見がち」という目につくワードを入れてみました。
──なぜここまで、アニメ系専門学校にお詳しいかというと……代アニのイラスト科の講師をされているんですよね?
そうなんです。広島校で2年、大宮校で1年、東京校で1年、合計4年、正社員契約でやらせてもらってました。最後の年には科の責任者の仕事も少しだけやらせていただきました。『専門学校JK』の連載がはじまってからは、非常勤講師としてのんびりやらせてもらってます。ただ僕、マンガ科の講師と思われがちなんですけど、じつはずっとイラスト科なんです。……と言いつつ今だから言えますけど、イラストの仕事は未だにすごく少ないんですけどね(笑)。
──(笑)。でもそうやって長く学院に勤務されていたから、いろんな生徒さんを見てきたということですよね。やはり大宮たちには実在のモデルがいるんでしょうか?
はい! どの子も僕が担当した生徒さんがモデルになっています。もちろん容姿や性別はバラバラですけど。その中には夢を叶える子もいたんですが、ほとんどは大宮たちみたいに無難なところに落ち着きます。ちなみに昨年はアプリ系のゲーム業界が好景気だったので、ゲーム制作会社に就職して活躍している卒業生が多いようです。イラスト、マンガ、アニメーターなどの描画系コースの生徒は、100%思い描いたとおりではないかもしれませんが、他のコースよりも割と夢を叶えてる人が多いようです。
──なるほど。作中で八丁堀ちえがゲーム会社に就職しているなど、そういった点もリアルに描かれているわけですね。でも、普通に夢を叶える生徒たちより、大宮たちのように、少し挫折して現実を見ることになる生徒たちのほうを描こうと思った理由はなんだったんでしょう?
基本、マンガって主人公がいろいろがんばって夢を叶えたりするのが王道だし、それが気持ちいいと思うんですけど、この作品の題材でそういう展開を描いてしまったら、読んだ人が勘違いしてしまわないかなという不安がありました。現実を知っている以上、嘘も描きたくなかったし。なので連載当初から結末はリアルなものにしようと決めていましたね。
──でも、キャラクターたちはどこか楽しそうなエンディングを迎えていますよね?
そうなんです。夢見がちでも、有言不実行でも、そして夢が叶わなくても、そんな子たちのほうが人間らしくて魅力的なのかもしれないですよね。夢を叶えるだけが楽しく生きる方法じゃないし、答えは1つじゃない。それを大宮や岡山たちで描きたかったところはありますね。とくに、こういう実在の学校を題材にしてやるからには。
──読んでいると、見方によっては「代アニって楽しそうだな」とも思えてきます(笑)。
そう言う意味では、生徒さんたちのエネルギーは高いし、実際楽しいところですよ。うまく言えないですが(笑)。
──ネットの反応を見ていると、岡山みにぃの人気がすごいようです。ほっけ様さんのお気に入りのキャラは?
もちろん岡山さんです。自分が岡山県出身なので、いろいろとこだわりが詰まったキャラです。女子の岡山弁はかわいい(笑)。
──岡山だけは声優になる夢を叶えると思っていましたが?(笑)
途中までは自分の中でも完全にそういう流れでしたね……。でも「いや! 声優はそんなにあまくない!」と思い直して(笑)、あのような結末に決定しました。
──話は変わって、これは今ネット上でも多数挙がっている疑問ですが、代々木アニメーション学院さんは本当にこのマンガを監修してらしゃるんでしょうか?(笑)
はい! ネームの時点で必ず一度、社長さんにご確認いただいております! ガチです!
──作中には「そんなこと言っちゃっていいの?」と思えるぐらいの、学校や業界の闇に踏み込んでいる描写やセリフもたくさんありましたが……社長さんから本当にOK出てます?(笑) 怒ったりはしていない?
セクシー描写には厳しかったですが(笑)、ほかはほとんどOKでした。それどころか「もっとはっちゃけていいよ?」とか「読者さんに楽しんでもらうためでしょ? どんどんやんなよ!」っていう感じでしたね。毎回「おもしろい!」っておっしゃっていただいたのが、とても嬉しかったです。
──素敵な社長さんですね! では1巻&2巻のなかで、ほっけ様がお好きな4コマを3本だけ挙げるとすると……どれでしょう?
第1巻の7時限目の「スランプ」と「ついに…」ですね。「ついに…」の左手デバイスとやり直しキー連打のあとのオチが1番好きです。あとは、第2巻の講師が合同本はやめろと忠告する「同人のオキテ」でしょうか(※)。
──なぜこの3本を?
全部自分が直接、生徒と経験したことなので(笑)。やり直しキー連打する子、多いですよー!
──まさに今、売れているこの作品と今の若い人たちの思いとで、何かリンクしているものって感じたりしてますでしょうか?
たぶん今の若い人たちは多かれ少なかれ、以前に「夢を目指した人」が多いんだろうなと思うんです。もちろん若い世代じゃなくても、人間って夢を目指した経験のある人ばかりだと思いますし。「目指した」ということは、イコール「叶わなかった」わけで……。だからこそ、夢に関して叶わずに終わるという、現実に近い描き方をしている『専門学校JK』に共感してもらえるところがあったのかもしれないなと思っています。告知マンガも、その点をあおる作りにしていましたし。
──今回の告知マンガがいい例ですが、最近は作品を売り出すときには作家自身の宣伝力も問われていると言われます。それはご自身でも感じてらっしゃいます?
そうですね。最近、作家さんがよくSNSで「売れなくて困ってる! 買って! 打ち切り迫られてるの!」みたいなことを言ってますが、でも実際、それがいろんな人に読んでもらえるきっかけになっていたりしますよね。読んでもらうためになんでもやっていかないとと思ってますね。なりふり構ってはいられないです。生きるために(笑)。
──出版社の宣伝やプロモーションのあり方も見直すべきところにきていますよね……。出版社や編集者に望むことって何かあります?
漫画家ってメンタル弱い人多いと思うので、モチベーション高めてくれるのならそれで十分です! おだてられればなんでもやります(笑)。
──(笑)。『専門学校JK』は、作品としてはすでに完結しているわけですが、今回の盛り上がりを受けて、連載を再開する……なんていうお考えはあります!?
となると『専門学校SS(卒業生)』ですかね! でも、さすがに社会に出てからを描くと、生々しすぎて誰も笑えないマンガになるかもしれません……。岡山が失踪しないまま、みんなで一緒に卒業するまでを描くifの物語とか、あるいは、さらに強烈な新JKたちの入学からの成長を描く新シリーズとかも考えられますね。代アニはネタになる人材の宝庫なので(笑)、やろうと思えばあと10巻分ぐらいは十分描けると思います。いずれにしても、1巻と2巻がもっともっと売れて、また描けるようになったらいいなとは思います。やはり思い入れのあるキャラと作品なので。
──今後のほっけ様の活動についても教えてください。
はい! 今後はSNS向けにも創作マンガを投稿しようと思っておりまして、空いた時間でコツコツネームを描いてました! 出来しだいTwitterにアップするので、よかったらチェックしてやってください! あ、あと『専門学校JK』のお礼のマンガもこれからアップします。そちらもぜひ!
──最後に。今も電子版1巻50%OFFのフェアが続いています。購入してくださった方、まだの方、それぞれに向けて、ファンのみなさんに、ひとことずつメッセージをお願いします。
はい! 購入してくださった方のAmazonレビューやSNSの感想はすべてチェックしております! 本当に感謝です! まだの方、ぜひ1巻だけでも読んでやってください! いろいろしゃべりましたが、基本はギャグ4コマなので(笑)楽しく読めますし、少なくとも岡山さんはかわいいです! 感想を「#専門学校JK」でツイートしてくだされば必ず読みます! そして今まで応援してくださったファンの方々、今後も今以上におもしろいものを描けるよう精進いたしますので、期待してやってください。ありがとうございました!
ぬこー様という別のペンネームと、代々木アニメーション学院 東京校のイラスト科非常勤講師という肩書きを持つ漫画家。代表作は『専門学校JK』(全2巻・KADOKAWA刊)、『無常のふでこさん』(一迅社刊)など。岡山県出身の元水泳選手。ほっけ様は、現在一緒に暮らす猫の名でもある。
※インタビュー中で、ほっけ様が挙げた好きな4コマ3本と編集部が選んだ秀逸な2本──計5本を本日よりランキング形式にて、電撃ツイッターマガジンにてヒット記念の再ツイートを行います! 電撃ツイッターマガジンは10月5日より、図書カードNEXTが抽選で20名様に当たるフォロー&リツイートキャンペーンも実施します!
代アニをモチーフにした『専門学校JK』が大変な盛り上がりを見せているとのことで、誠におめでとうございます! また、大変嬉しく思っております! SNS上で話題になったほか、Amazonでも2日連続1位を獲得したとのことで、このマンガと代アニの底力のようなものを感じました。
ほっけ様さまとKADOKAWAさまにご協力いただき完成した『専門学校JK』は、実際の代アニ学生がモデルとなっております。一人でも多くの方に読んでいただき、少しでも代アニに興味を持っていただけたら幸いです。そして、アニメ・エンタメ業界で活躍する夢を全力で叶えたい方、代アニはいつでも大歓迎いたします!
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