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2018年10月6日(土)

劇場版『若おかみは小学生!』舞台あいさつに高坂希太郎監督たちが登壇。監督が追加したかったシーンとは?

文:てけおん

 上映中の劇場版『若おかみは小学生!』の追加舞台あいさつが、10月5日に実施。高坂希太郎監督をはじめとした制作陣が登壇しました。

劇場版『若おかみは小学生!』

 本作は、令丈ヒロ子さんが執筆、亜沙美さんがイラストを手掛けた小説『若おかみは小学生!』を原作にした作品です。事故で両親をなくし、祖母が営む温泉旅館・春の屋にやってきた少女“おっこ”が、ユーレイのウリ坊に頼まれ“若おかみ”として奮闘し、成長する姿が描かれていきます。

 この日の舞台あいさつには、高坂希太郎監督、齋藤雅弘プロデューサー(DLE)、豊田智紀プロデューサー(マッドハウス)が参加。MCはライターの前田久さんが担当しました。では、そんな舞台あいさつの模様をお届けしていきましょう。

劇場版『若おかみは小学生!』
▲左から前田久さん、豊田智紀プロデューサー、高坂希太郎監督、齋藤雅弘プロデューサー。

 最初に手ごたえを聞かれた高坂監督は「原作のファン、そしてかつて原作のファンだった人に向けて作り、なんとか形になりました」と語りました。本作の監督を依頼された時に、これまで児童文学に触れてこなかったことや、目の大きなキャラクターに接点がなかったことから少し抵抗があったようで、「なんで私が『若おかみ』に? という感じでした」と苦笑い気味に話し、会場のファンを笑わせていました。

 このように、最初こそ乗り気ではなかったものの、制作していくうちに『若おかみ』という作品にほれ込んでいったとのこと。

劇場版『若おかみは小学生!』 劇場版『若おかみは小学生!』

 また『若おかみは小学生!』という作品は、劇場版とTVシリーズが制作されましたが、元々はTVシリーズの流れを受けて劇場版を作る――という構想もあったそうです。しかし、それはさまざまな事情があって難しいということで、豊田Pは「高坂監督には、普通に1本(の映画を)作ってくださいとお願いしました」と振り返っていました。

 それからおよそ1年程度を経て、TVシリーズの話が動き出したそうで、豊田PはTVシリーズの制作チームに「劇場につながるとかはまったく考えずに違うものを、高坂監督の作品を食ってしまうくらいおもしろいものを作りましょう」と話したそうです。

 TVシリーズと劇場版では、一部のキャラクターのみ演じている声優が同じになっています。このキャスティングについては、高坂監督とTVシリーズの増原光幸監督、谷東監督が一緒に決めていったとのことです。

 続いて、本作が公開後に「子ども向けだと思ったら大人も泣ける」などの評判とともに人気が広がっていったことについて話していくことに。高坂監督は「奇跡のような作品です。令丈ヒロ子さんの助言や吉田玲子さんの脚本、齋藤Pの“最後にひとつ盛り上がりがあったほうがいいのでは?”という言葉など、いろんな人の言葉があって完成しました」とコメント。「自分ひとりで野放図に作っていたら、まったく違う作品になっていたでしょう」とも口にしていました。

 斎藤Pは、「おおむね高坂監督が目立つフィルムであることを尊重したいと思っていました」と語りつつも、「作品完成間際に高坂監督から“シーンを追加したい”と言われ、それは必死で止めました(笑)」と笑い交じりに話していました。

 ちなみに高坂監督が追加したかったシーンは、ウリケンが登場するシーンとのことで、マーベル作品の映画のように、エンドクレジット後に入れたかったそうです。しかし、本作には90分の尺制限があったため断念したのだとか。

 Q&Aコーナーでは観客の1人から「監督が追加したかったシーンを含めたディレクターズカット版の可能性は?」との質問があり、斎藤Pは「皆さんのご支援があれば(笑)」と答えていました。

 制作にまつわるエピソードとしては、シナリオの段階では稲田老人と孫のえりかが出る予定だったことも明かされました。こちらも尺の制限で難しかったため、木瀬一家に稲田老人の要素をミックスした形にしたそうです。他にも、藍竜の登場も考えられていたらしく、有楽町マルイのイメージボードに藍竜が描かれているのは、その名残だと話していました。

 イメージボードと言えば、エンドロールで印象的に使われていますが、最初の想定では、エンドロールは黒バックに梅の花びらが舞う映像だったそうです。しかし、撮影監督の加藤道哉さんから、女児向けの作品としては、黒バックのエンドロールは重たいのでは? との意見とともに、イメージボードを使ったエンドロールを見せられ、今の形に落ち着いたようです。

 別の観客からは、絵コンテ・原画をまとめた出版物やサントラがほしいとの要望も飛び出していました。斎藤Pは再び「ご支援いただけるのであれば……」と話していましたが、出版の話はすでに出ているようですし、斎藤Pは挿入歌の『ジンカンバンジージャンプ!』について言及していたので、今後の動きに注目したいところです。

 他にも、劇場版でとても印象的なキャラクターだったグローリー・水領について話す一幕もありました。高坂監督は彼女にある“仕掛け”をしていたことを明かしました。シーンによってノーメイク、濃いメイク、ゆるいメイクを使い分けており、それに気づいた観客の反応を見て、“しめしめ”と思っていたそうです。

 さらに、風呂場のシーンでは眉をなくそうかとも考えたそうですが、それは女性のスタッフ陣から猛反対され、見送ったとのことでした。

 司会の前田さんは、ユヴァル・ノア・ハラリさん著作の『ホモ・デウス』の原書が登場したことに驚いていました。これは“未来について思考をめぐらす”真月のキャラクター性を表現するためのチョイスで、高坂監督はかなりこだわりがあったようです。

 ただ、こちらは許可を取るにあたっていろいろと大変だったことが斎藤Pから語られました。まずは日本語版の出版社に連絡するも、映画に登場するのは原書のため、出版社は許可を出す立場にありません。そこで、ハラリさんの連絡先を教えてもらい、直接交渉することになったそうです。

 しかし、ハラリさんからはなかなか返事が来ず、ビデオ編集の最終日にようやくOKが出て、無事映画に収録されたそうです。このシーンについては、許可が取れなかった時のため、実際に上映されているものを含めて3パターン作っていたことが豊田Pの口から明かされました。

 最後は、登壇者を代表して高坂監督が訪れたファンに感謝の言葉を述べて、舞台あいさつは終了しました。さまざまなこだわりを持って作られ、高い評価を受けている本作。まだ見ていない人は、劇場でご覧になってみてはいかがでしょうか。

劇場版『若おかみは小学生!』 劇場版『若おかみは小学生!』
劇場版『若おかみは小学生!』 劇場版『若おかみは小学生!』

■劇場版『若おかみは小学生!』作品概要
【スタッフ】(敬称略)
原作:令丈ヒロ子・亜沙美(絵)
監督:高坂希太郎
脚本:吉田玲子
音楽:鈴木慶一 他
【キャスト】(敬称略)
おっこ(関織子):小林星蘭
ウリ坊:松田颯水
真月:水樹奈々 他
アニメーション制作:DLE、マッドハウス
配給:ギャガ

(C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

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