2018年11月6日(火)
フリューが2018年10月18日に発売した、PS4用完全新作アクションRPG『CRYSTAR ‐クライスタ‐』。アクションRPGで“泣きゲー”を描き評価を得ている本作の物語の見どころを、主人公・幡田零たち4人の代行者を中心にお届けします。
物語について紹介しますが、大きなネタバレはありませんのでご安心を! ただ、物語序盤のキャラクターについて触れているので、前情報なしでゲームをプレイしたい! という方は、少しネタバレも含まれますのでご注意ください。どんな物語が展開するのかの掴みを紹介しますので、気になったらぜひ『CRYSTAR ‐クライスタ‐』を遊んでみてください。
『CRYSTAR ‐クライスタ‐』は、“少女の涙”というキャッチーな表現をテーマに、“泣いて戦う”感動のストーリーが体験できる、フリュー初のPS4向け完全新作のオリジナル本格派アクションRPGです。
シナリオ・久弥直樹さん、キャラクターデザイン・リウイチさん、キャラクターデザイン&キャラクターモデリングリード・ntnyさん、インサートイラストレーション・ウエダハジメさん、開発・ジェムドロップ、BGM・削除さん、オープニングアニメーション制作・シャフトといった豪華スタッフが集結し、制作されています。
自分が殺した妹をヨミガエリさせるため、死者の世界で死者を刈る。『CRYSTAR ‐クライスタ‐』の情報を追っている人にとってはもはや当たり前の設定ですが、少し唐突感がある物語だとは思います。
そんな物語へとすんなりと導いてくれるのが主人公の零。リウイチ氏のイラストも相まって一見はかなげな印象を受けますが、ちょっと偏食気味だったり引きこもり気味だったりと、会話の端々に「もしかすると意外とダメな娘?」と思わせる何かがあります。
▲みらいが言うには零は“ポテトイーター”だそう。妹よりもダメな姉、という設定がツボな人もいるのでは? |
さらに物語序盤の零は、かなりの巻き込まれ気質。フェレスや小衣などの妙なテンションなキャラクターのターゲットはおおむね零です。少し戸惑いながらも彼女たちに付き合う零の姿は、妹を殺したという重たい背景がありながら、日常もののようなゆるい雰囲気があります。
▲零への過剰なほどの愛着を見せるフェレス。声を演じる立花理香さんの演技もピッタリで、笑い声を聞くたびゾクゾクします。 |
▲小衣はかわいい女の子が大好き! 当然、零もターゲットの1人です。出会い頭に抱きついてきたりとかなり自由な感じです。 |
メタ的な話をするなら、巻き込まれ気質の主人公というのは会話の受け手になることで、プレイヤーに間接的に世界設定などを知らせる存在です。実際、辺獄とは何かや幽鬼と普通の魂との違いなど、さまざまなことを零と一緒に知ることができます。
そうやって『CRYSTAR ‐クライスタ‐』の世界をある程度零と一緒に学んだころに、ふと気づくんですよ。零ってかなり“危うい”なと。
妹を“ヨミガエリ”させるという真っすぐな想いで行動している零ですが、そのためには、幽鬼を刈らなければいけません。言い換えれば死者を蘇生させるために死者を殺しているわけです。
零自身、この事実に気づいてしまうのですが、それでも止まれません。そして止まれなくても、死者を殺すことに後悔はある。この矛盾が零の心を傷つけているのは、プレイしていても明らか。心を傷つけ続けた零は、ある瞬間にこれ以上ないほどはっきりと壊れてしまいます。
死者を刈らなければゲームが進まないことはわかっているのですが、それでも零の心が壊れる一連の流れは、ある種の後悔や、何が起きてしまったのかという戸惑い、これからどう物語が展開していくのかという不安といろいろな感情が押し寄せてきます。
▲刈った幽鬼の断末魔の思念は、まるで自分の感情のように代行者の心に入り込んできます。 |
考えてみれば、零にとってみらいの“ヨミガエリ”がなによりも優先するのと同様に、他の代行者にも譲れないものがありますよね。
例えば小衣の場合、代行者と活動しているのはアナムネシスに復讐するため。この復讐がなんらかの理由で果たせなくなってしまったら、彼女はどうなってしまうのでしょうか?
千にしたってそう。自分の信じる“正義”のために代行者になった彼女が、その正義を崩さなければいけないとしたら?
そんな代行者として活動するうえで致命的なできごとがいつ起きるのか? それともまったく起きないのか? 何か少しのきっかけで崩れてしまいそうな彼女たちの有様は、どれだけ物語が順調に進んでいるようでも常にハラハラさせてくれます。
零たち代行者の心の機微を語るうえで、外せないのが彼女たちに因縁のある幽鬼です。その1人が零の中学生時代の親友である水無乃有理。彼女は千が巻き込まれ、千の母親が命を落としたあるバス事故の犠牲者です。零が辺獄の奥を目指す中、有理との再会が待っているのですが……。
▲叶うはずのなかった親友との再会。しかし、有理の口からは冷たい言葉が。 |
そして、小衣のかつての恋人にして失ったお腹の子の父親である南羽新志も辺獄で姿を見せる人物の1人。辺獄ではアナムネシスを崇拝しているようで、もはや会話の余地さえないように見えます。
▲小衣に「抱いてやる」と声を掛ける新志。ですが、その姿はすでに人でもなければ、純粋な魂でさえありません。 |
千の場合は、直接因縁のある相手ではないのですが、検事である父によって有罪にされた罪人と辺獄で出会うことに。「自分は無実だった」と主張する彼ですが、果たして真実は?
▲千を辺獄に引きずり込んだ恐介。その理由は千の父にあるようです。 |
生者のまま代行者になった3人が、自分に縁のある幽鬼とどう接するのかや互いの関係にどう決着を付けていくのかは、間違いなく『CRYSTAR ‐クライスタ‐』の物語の中で外せないポイント。それぞれがどんな答えを出すかは目が離せませんよ。
さて、ここまで読んだ人は777のことが気になるかと思います。詳しいことを語るとネタバレになりますが、777は一番安心して見ていられる子だと思います。最初は零たちの行く手を遮る敵として登場しますが、それさえも許せるくらいです。
▲零と一緒にいたい。そんな純粋な想いで777は代行者になります。 |
ですが、皮肉なことに777を安心して見ていられるのは彼女がすでに亡くなっているからでもあります。幽鬼であるからこそ生前の因縁も打算もなく、純粋な気持ちで零と行動をともにする。そんな姿がとにかくかわいいです。
ただ、777が幽鬼であるということには大きな意味があります。それが理由で777はある決断をしていたのですが、正直物語中で明かされるまで気にも留めていませんでした。生者である3人は過去の因縁と向かい合うからこその輝きがありますが、777は777だからこその向かい合わなければいけないものがあって……。
ある意味代行者の中で1人だけ仲間はずれではありますが、だからこそより一層777が魅力的に見えました。
舞台が死者の世界で、自らの手で妹を殺していて、仲間たちもそれぞれ悲しい出来事に巻き込まれていて……。『CRYSTAR ‐クライスタ‐』は決して100%明るい物語ではありません。一方で100%明るい物語だったら誰も『CRYSTAR ‐クライスタ‐』の物語には引き込まれなかったと思います。
下げて、上げて、壊れて、乗り越えて。キャラクターたちの繊細な心の動きが丁寧に描かれた物語。だからこそ、プレイヤーである我々も涙することになります。涙の意味を知るために、ぜひ最後までゲームをプレイしてみてください。
(C) FURYU Corporation.
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