2018年10月24日(水)
10月25日から始まる日本ファルコムの『英雄伝説 閃の軌跡IV -THE END OF SAGA-』と、アクアプラスの『うたわれるもの斬』のスペシャルコラボ。それを記念して電撃PlayStation誌上で行われた、日本ファルコムの近藤季洋氏とアクアプラスの下川直哉氏の対談を全3回でお届けしています。
第1回ではコラボが実現した経緯、そして第2回ではクリエイターと社長という両面から、お2人のゲーム制作にかける想いをお伝えしました。ラストとなる第3回では、ゲーム制作の今と未来を語っていただきます(インタビューは8月29日に実施)。
2007年に32歳という若さで社長に就任。『軌跡』『イース』シリーズなど、日本ファルコムを代表するタイトルのプロデューサー兼シナリオライターを務める。
社長業をこなしつつ、アクアプラス作品のプロデューサーを務める。また、サウンドクリエイターとしても積極的に活動をこなす。
――最近プレイされたタイトルから影響を受けることはありましたか?
近藤:弊社の作るゲームはRPGが中心なので、当然シングルプレイのゲームが多いです。昨今はオンラインで人と遊ぶゲームが主流なこともあり、もうシングルプレイのゲームは終わりなんじゃないと言われていますよね。
でも海外ではSIEさんの『アンチャーテッド』シリーズや『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズなど、しっかりシナリオとエンディングがあるタイトルがきちんと評価されていますよね。そのゲームをプレイしたから「じゃあこんな風にしよう」とは考えたことはありませんが、それらのタイトルは必ず遊んでいますし、まだまだやれるんだという元気をもらっています。
下川:僕は気になるのがタイトルというよりもジャンルですね。一昔前まで日本人はあまり対人ゲームを好まないイメージだったんです。でも、今の小中高くらいの子どもたちを見ていると、スマホなどで対人ゲームを普通に遊んでいるので、今後は対人戦に抵抗がないプレイヤーがどんどん出てくるのかなと。
それが僕のゲーム作りに影響があるかと問われるとまだわかりませんが、気になっていますね。自分の子どももそうなので(笑)。
近藤:たしかに僕の子どもも、海外のプレイヤーと普通に遊んでいます。
下川:なんとなくですが、日本人も僕らのひと回り、ふた回り下から感覚が少し違うのかなと思います。洋ゲーにもドンドン慣れていますし、対人要素も部分的に無視できなくなるのかもしれません。
これはちょっと怖いなと感じていて、弊社はアドベンチャーを軸としたゲームを作っていますよね。でも、アドベンチャー要素だけでは買ってもらえなくなってきています。お話はいいのにゲームの土壌で売ろうとすると、「ゲーム要素はどこにあるの?」と言われているような気もしまして。
だから例えば“『ToHeart3』を作るならば?”という議論が会議で出ても“キャラクターがバストアップで出てきて、テキストが流れて背景があればいいのか。そこにゲーム性がなくていいのか?”と、なんとなく盛り上がらないんですね。
――そういった部分で今後のゲーム市場についてはどうお考えですか?
近藤:悩ましいですね。対談前も少し下川さんとお話したのですが、海外では非常に好調なのですが、国内では苦戦しています。ただ、僕らはやっぱり日本人なので、日本人の感覚で作るゲームを追及したいと思っているんです。
その意味では、先日発売したPS4の『閃の軌跡I:改』『閃の軌跡II:改』は、海外のほうが売れてきているという状況が出てきています。例えばこれが10年後もこの状況がさらに進んでいくのか、それとも日本国内の市場が、ゲームを一生懸命作れば取り戻せるのかなど、そういった部分が今はまったく見えません。
▲海外で発売が待ち望まれていた『閃の軌跡』シリーズ(こちらは『閃の軌跡II:改)』。 |
これについてはどんな人間にも断定できるものではないので、そんな不安のなかでも僕らはベストだと思える方向に進んでいくしかないですね。そういう悩みは常にあります。
下川:今、スマートホンなどの手軽にどこでもゲームが楽しめることが当たり前になっていますが、僕は音楽を作っている人間なので、どうしてもスマホは移動しながらのプレイになり、音を切った形で遊ぶことが多いのが気になりまして。音をなくして遊んでストーリーの温度感とかね。
もちろん、音楽がなくても楽しいゲームがもっとも大切なのかもしれませんが、もうゲームに音楽が必要なくなってきているのではないかと。海外も含めてですが、そこがどうなっていくのか不安はあります。
あとは近藤さんもおっしゃっていましたが、今は海外の売り上げを見込んでの予算組をしたタイトルになっていることも気になります。国内だけで回収できる予算組で作られたタイトルが“クオリティがしょぼいね”となってしまうのが怖いですね。
僕らは日本人向けに作っているメーカーですから。日本のゲーム市場で、パッケージもシングルプレイのゲームも買ってもらえるようになったらいいなと思いますが、どちらかといえば厳しい方向になると思っています。
近藤:日本人の感覚で作ったゲームなのに日本国内では売れなくて、そういう日本文化が好きな海外の方向けに10年後はゲーム作りをしているのかなとか、そんなことが頭をよぎったりしますね。
下川:それはありますね。人口が多いだけに、和ゲーが好きな海外の方の数が、日本人の総人口より多いという感じになるかもしれませんし。
近藤:なんだか日本刀の美術コレクターに向けて、日本刀を打っているような感覚ですね。日本人には売れないのに(苦笑)。
下川:日本では誰も見向きはしないのに、海外ではメッチャ売れているみたいな(笑)。
――そのなかでもアジア市場はどうお考えですか?
下川:アジアは日本と文化が近いから、可能性はあるかなと思います。もしかしたら、日本よりも売れていくかもしれません。アジアは日本のアニメとかを見て育っているから、今の子どもたちは日本の文化をわかっている感じがします。だから僕らが作るゲームも、わりと楽しんでいただけているのかなと。
近藤:弊社はアジアでの販売本数が国内に迫るどころか、タイトルによっては抜いてしまっているので、今後もアジア市場は重要な市場だと考えています。やはり日本人との感覚が近いですね。北米市場では『イース』シリーズのほうが多く売れるのですが、アジアではやはり『軌跡』シリーズのほうがたくさん売れるんです。
シナリオがいい、キャラクターがいいと、日本とまったく同じような感想をアジアのファンからいただきます。だから、日本のファンとなにも変わることがないですね。しかもイベントを開けば、とにかくノリがいい人たちが集まって、欧米と同じくらい「ウォー!」と盛り上がるんですよ(笑)。そういうところでも親近感があります。親和性という意味では、アジア市場はほぼ日本と同じ感覚で戦えると感じています。
▲日本のファンの間で人気のイベントといえばお風呂(写真は『閃の軌跡IV』)。 |
それと海外からは“スマホでこういうことをやってもいいですか? 御社のIPを使ってこういうことをやりたいです”などのご提案をたくさんいただくんですよ。とくに中国方面からたくさんお声がけいただくのですが、“ストーリーを作る力が自分たちにないから、このIPを使わせてほしいんだ”という。彼らはグラフィック制作の技術はすごい力を持っているので、そういう方たちと組むことで、何かおもしろいこともできるのではと考えています。
――両社ともにPCからスタートして、コンシューマにプラットフォームを変えてきたという経緯がありますが、移行するにあたって会社の方針や、気を使った部分はありますか?
近藤:ちょうど弊社がコンシューマに舵を切らなければいけないと判断したのが、10年くらい前になります。当時はPCのパッケージタイトルにお客様はいますが、売り場がなくなってきていたんですね。PCのソフト売り場に行くとまだいわゆる美少女ゲームは多くありましたが、弊社みたいな一般的なゲームは売り場の面積が減少していまして。どちらかといえば、ウイルスソフトが平積みになっている状態でした。
流通さんからもそういう事情があり、なかなか今までのように本数が取れないと言われていたんです。ですが僕らはPC市場でずっとゲームを作っていくんだと思っていたので、なかなかその状況を受け入れられなくて、それでも頑張ってタイトルを出していたんです。
最後にPCで発売したのが『ZWEI II』で、自分たちも非常に自信を持っていた内容で、遊んでいただいたユーザーさんからも絶賛していただきました。ですが、そのタイトルがファルコムの販売本数ワースト記録を更新してしまいまして……(苦笑)。創業者から「ワースト記録を更新したからな」と言われたのが決定打でした。
▲内容は評価されたが、ビジネス的には実らなかった『ZWEI II』。 |
それで“これはいよいよコンシューマをちゃんとやるしかない”と。ただ、コンシューマで最初にPSPの『空の軌跡』を出したときは、PCと作り方を意識して変えていませんでした。やはりPSでRPGを遊ばれている方たちは『FF』シリーズを筆頭に、さまざまなRPGをずっと遊んでいて、目の肥えた方が多かったんですよ。そのため、初期出荷が2万本に届かず、非常に苦戦した覚えがあります。
▲日本ファルコムが家庭用に初参入して発売したPSPの『空の軌跡』。最初はPC版に戦闘ボイスなどの要素を追加したものだった。 |
そこからいろいろと悩みもあったのですが、内容に関しては手に取って遊んでさえいただければ、ちゃんとファンの心に届くという自信はありましたので、そこから粘り強く広告を出しながら少しずつ販売本数を伸ばしていきました。そして僕のなかで決定的にコンシューマを意識したタイトルが『零の軌跡』だったんです。
『軌跡』シリーズは内容を理解して遊んでいただけた方からはホメていただけて、喜んでもらえることがわかっていました。ですが、やっぱりみなさん口をそろえて「手に取ればおもしろいことがわかるのに、見た目が地味だから手に取ってもらえない」「友だちに進めてもなかなか遊んでもらえない」という意見をけっこう言われまして。
そこからキャラクターのデザインや世界観を、もう少しコンシューマ寄りにしなくてはいけないと思ったんです。前作に当たる『空の軌跡』はPCと同じ内容で、ファルコムらしくすごく牧歌的な、少年少女が田舎の街から育って成長していくところから始まるゲームでした。
ですが『零の軌跡』からはわりと都会が舞台であることをバンと押し出して、服装もこれまでの『軌跡』シリーズから一気に近代的に切り替えたんですよ。社内でも「なんでこんなことをするの?」と怒られたんですよ。「『空の軌跡』がよかったのに、支持されたのに売れなかったらどうするんだ」と。
でも、コンシューマで売っていくにあたり、ある程度キャッチアップしていく必要があると考えました。そのなかで自分たちの力を生かす方向で『零の軌跡』を打ち出しました。タイトルに“零”と付けたのは“僕らもゼロからのスタートだ”とスタッフに言い聞かせて作ったんですけども(笑)。だから『零の軌跡』のときに考えたことが、今のファルコムの礎になっていると思います。
▲あらゆる面から家庭用を意識した『零の軌跡』(写真は『零の軌跡 Evolution』)。 |
下川:弊社はファルコムさんが置かれていた状況と少し違いますね。ご存じのとおり当時は主力がリーフブランドで、ジャンルがアダルトであり、PCがどうのこうのというよりも売れても10万人、15万人がMAXでした。
それに対して、当時のPSやSSではミリオンタイトルがバンバン出ていて、200万だ! 300万だ!!という言葉が飛び交っていました。それで“そんなにゲームをする人がいるならば、そちらに出したら今の倍くらい売れるのでは?”と考えたのがコンシューマでのスタートですね。実際家庭用ゲーム機にPCから移植されたアダルト系の作品も、PC市場の倍以上の売り上げを出していましたから。
近藤:それは僕らもあります。やっぱりまぶしいんですよね。50万本、100万本も売れていた時代じゃないですか。僕らは一生懸命作っても10万、20万の市場でしたし。
下川:弊社の作品はアダルトというジャンルでしたが、アダルトをウリにしているのではなく、お話がいいから遊んでほしいという想いがありました。気持ちとしては家庭用の他社さんの美少女ゲームよりもストーリーがよくて感動できるという自信があったので、少しでも多くの人がいる市場へ出てチャレンジしてみたかったというのもあります。
例えばプロ野球の選手がメジャーに挑戦するような気持ちが近いかもしれません。おかげさまで弊社が最初にPSで出した『To Heart』は、16万本の出荷からスタートできたので、「やはりコンシューマはすごいね」となったのを覚えています。
▲アクアプラスが家庭用に初参入して発売した『To Heart』。 |
近藤:僕らにもチャレンジという想いはあったのですが、なにせ最初に2万本を切ってしまったので(苦笑)。
下川:ただ、コンシューマは開発費がグンと上がりますし、参入障壁が高いんですよ。当時は機材を買うのも大変でした。なにせPCはPCさえあれば開発できるわけで、コストが全然違うんです。生々しい話ですが(笑)。
近藤:わかります。マスターアップギリギリまで作れますからね(笑)。
下川:そうなんですよ。マスターアップの2、3カ月前に承認用のROMを提出しなさいとか、最初は“何を言っているの?”という感じでしたからね(笑)。
――コンシューマに舵を切った経緯は違いますが、どちらもファンに支持され続けているのはやはり地道にやってきて、よい作品を出し続けてきたからこそだと思います。
近藤:ゲームの制作手法などが変わったわけではないんですけどね。PCでやっていた頃はもはやファルコムしか残っていないと言われる時代でした。仲間もいなくて、比較されるメーカーさんもいなくて、自分たちしかいない世界で自分たちのゲームを売っている雰囲気だったのが、コンシューマという市場に出たことで、こういった対談の機会もいただけましたし、ゲーム作りの見方も変わりました。
――そんななか、昨今はPCのSteamも含めてグローバルの市場が火が付いてきていますが、そちらでのビジネスはいかがでしょうか?
近藤:じつはSteamでの販売は7~8年前から手掛けているんです。他社さんの参入があまりない頃に、当時のマーベラスUSAの代表の方からご提案いただきまして(日本ファルコムの北米販売はマーベラスなどが担当)。DLで売れるのかなどけっこう半信半疑でしたが、実際に始めてみたら10年前、20年前に発売した弊社の旧作タイトルが、20万本とか売れるんですね。
▲Steamの販売も積極的に展開する日本ファルコム。評価も“非常に高い”を得ている。 |
当然値段もパッケージより低めの設定で、期間的にセールすると数が出るというやり方ではありますが、昔作った作品がまだまだ売れるということに驚いていますし、しっかり作っておいてよかったなと思いました。
今でもパッケージで定期的にリピートがかかりますが、弊社の作品はロングセラーが多いんです。そのときにできる限り内容を詰めて、その時点で胸をはれるものを作ろうとやっています。そういう姿勢でもあるので、Steamなどでも販売数が伸びているのかなと。
下川:「Steamは考えなくてはいけないね」とは話していますが、今は市場も飽和してきているので悩みどころですね。ですが今の時代はSteamなどのPC、コンシューマ、スマホも含めてあらゆるものがおもしろい作品を広げるマーケットだという見方をしていて、どんな環境でも遊べるようにしていくことは重要だと思っています。
とはいえ、何本もラインを走らせることができませんから、なかなかその作業にスタッフを割くのが大変でして(苦笑)。もちろん、ローカライズは他社さんにお願いするとは思いますが、それでも監修などの作業がちょくちょく挟まります。そうすると、新作を作っているスタッフの時間が割と取られてしまうんですね。だからなかなか重い腰を上げられないというのが実情です。
――ゲームにとどまらず、クリエイターとしてインスパイアを受けた作品はありますか?
近藤:僕は自社の作品になりますが、やはり『英雄伝説III 白き魔女』です。シナリオがすごく素晴らしくてものすごく感動して、ファンサイトを作ったことが、入社にもつながっているので(笑)。
下川:自分がこの業界を目指したきっかけは、間違いなく『イース』ですね。これはファルコムさんに気を使って言っているわけではないですよ(笑)。先ほども言ったように『イースI』『イースII』のBGMを、CDサイズの譜面がボロボロになってセロハンテープで補修するくらい、何度も何度も打ち込んでいましたから。新しい音楽ソフトが出るたびに打ち込み直していたんです。
もちろん、ゲーム自体もものすごく素晴らしく、なかでも『イースII』のオープニングにはものすごく痺れました。だからこの業界にいる分岐点の1つに、ファルコムさんのゲームが占める割合が非常に大きいです。
――ということは、アクアプラスの音楽の根幹でもあるんですね(笑)。
下川:そうですね(笑)。まあ、ファルコムさんがという話からちょっと離れてしまうかもしれませんが、古代祐三さんのファンでしたし、ファルコムさんのゲームが出るのを学生時代からずっと追いかけていました。
中学生の頃はPCがなかったので、『イースI』は友だちの家で見ていて、『イースII』は高校のお祝いでPC98を買ってもらって遊んで、『イースIII』はリアルタイムで発売を追いかけていましたから。ちなみに『うたわれるもの斬』の曲はユーロビート調ですが、僕の中のユーロビートの走りは古代さんが音楽を手掛けた『ミスティ・ブルー』(エニックス)なんです。
▲下川氏の音楽づくりの原点でもある古代氏が手掛けた『イース』シリーズ(写真は『イースIII』)。 |
だから今回音楽を作るときにも一緒にずっと仕事をしている石川(真也氏)に、“『ミスティ・ブルー』のような、シンプルなユーロビートを刻んだほうがいいのでは?”と話題に出すくらい、あの当時自分たちに影響を与えたファルコムさんと古代さんの存在は大きいんですよ。そのおかげで曲の指示をするときの例えも“『イースII』のダンジョン曲みたいに”なんて話も出るくらいです(笑)。
――最後に今後挑戦したい、抱負などがあればぜひ教えてください。
下川:素直に言うと挑戦はとくにないですね。僕が常に思っているのは、単純に売れてほしいということです。『うたわれるもの斬』を抜きにしても、シリーズの3部作は遊んでさえいただければ、「おもしろかった!」と言ってもらえると考えています。
それならば50万人、100万人に遊んでもらうにはどうしたらいいんだろうと。いいお話は風化しないと僕は思っているので、“なんらかの形で手に取ってもらえる方法はないのか”“もしかしたら意外とシミュレーションパートが邪魔なのかな?”とか考えたり(笑)。
▲アドベンチャーとシミュレーションが融合した『うたわれるもの』シリーズ(写真は『散りゆく者への子守唄』)。 |
また“それならばストーリーと音楽だけで進むゲームを無料で出せばみんなが遊んでくれるのかな”など、チャレンジというよりも自分たちが作ったものをどう広げられるかを考えています。まあ、間口を広げるための施策という意味では、『うたわれるもの斬』はチャレンジと言えるかもしれません。
▲作品を広げる一環として作られた『うたわれるもの斬』。 |
近藤:今回の『閃の軌跡IV』で、シリーズは一区切りがつきます。シリーズものが続いた弊害でもありますが、制作の中心となる人間がだいたい40代の半ばに差し掛かっているんですよね。弊社も下川さんがおっしゃっていたように、高校や大学にかけてファルコムが好きであこがれて入って来た人間が多いんです。そこで過去のタイトルをリスペクトしながら、『軌跡』シリーズや『イース』シリーズを復活させながらやってきました。
ですが、もうそろそろ次の世代にバトンタッチじゃないですが、次の世代が作るファルコムの新作が見てみたいです。今までは自分が中心で作る形で作って来ましたし、今後も自分でも作り続けますが、それと並行して次の世代が新しい作品を作れる環境みたいなものをちょっとずつ用意してあげたいです。
シリーズ作品が続くと、どうしてもチャレンジする機会が減っていくんですよね。チャレンジという部分では、昔のファルコムにはあったはずなんです。シリーズを作るのに夢中でそこは減ってきているので、なんとか復活できないかなと。それが今パッと思いつくチャレンジです。
下川:僕らの時代でのゲーム作りはこじんまりしていましたから。
近藤:ファルコムも少ないところは3~4人で1本作っていました。
▲1989年にPCで発売された『イースIII』。 |
下川:弊社も4~5人で作っていて、グラフィック兼シナリオ兼とか、全員が企画者みたいな形でやっていました。でも、今はゲームの規模もクオリティも上がっているため、どうしてもみんながスペシャリスト化してきているなと。“グラフィック以外は触ったことがありません”“僕はシナリオを書くだけです”とかね。全体的にゲームプランを立てる、ディレクションを行って経験を積む場がないので、ある意味かわいそうですね。
近藤:たしかにここ10年で一番大きく変わったのはそこでしょうね。
下川:だからどうしても10年くらい前のゲームを作っていた、総合的にゲームの作り方をわかっている人が、現場でもディレクションをやってしまうという流れになっています。今の若い子たちにディレクションを回せないという状況が続いているのは、ファルコムさんとまったく一緒です。
近藤:昔はグラフィックデザイナーがシナリオに文句を付けたりとか、プログラマーの仕事が終わったからシナリオを書いていたりとか、そういう時代でしたね。
下川:僕もシナリオを書いていましたよ(笑)。かと思えば、グラフィッカーからチップ(画像を構成するパーツ)が上がってきたら、人手がないのでそのチップでマップを組み立てる仕事もやっていました。
近藤:昔はだまっていてもゲーム全体に口を出すというか、ケンカをし始めるとかありましたね。逆にそれでゲーム制作が進んでいた部分もあったと思います。今は自分の仕事に関係ない部分は本当に口を出しませんし、悪く言えばタイトルに対しての責任感が薄れてきている感もあります。だから、何らかの形で取り戻して、ゲームを作る本当の楽しみを復活させたいなと。
下川:なかなかディレクターになっていくような人材が育たないというのは悩みですね。経験させられる環境はどう作ればいいんでしょうね?
近藤:スタッフからは「やはり規模を小さい何かを作ればいい」と言われますが、その「何か」が具体的じゃないといけないじゃないですか(笑)。
下川:小規模な作品には何度かトライしているんですよ。でも、けっこうまじめにおもしろくなりそうだと、規模って大きくなっていきませんか?(笑)。
近藤:企画の規模が大きくなっていくことに対しては、僕はまったく何も言えないんですよ。なにせ『軌跡』シリーズが15年続くとは思っていなかったので(笑)。
下川:弊社もシリーズものばかりですけど、これは本当に難しいですね。ユーザーさんの意見も難しいです。「この作品がおもしろい」という声を無視してほかの作品を作れば、「それはいいからこれを作ってくれと」と言われますし。
ならばと『うたわれるもの』シリーズをすごく喜んでいただけたので、今回のように『うたわれるもの』尽くしでプランニングしてみたら、「もう『うたわれるもの』はいいよ」とか一部では言われるんですよ。結局どうしたらいいんだろうと(笑)。両方の意見があるから、どちらが正解なのかわからないんですよ。ネットの意見は気にしないといいながらも、とても気にしますからね。
近藤:両方が正解なんじゃないですかね。どちらも遊びたいんだと思います(笑)。
全3回に渡ってお届けした近藤社長と下川社長のコラボ対談企画。クリエイターでありながら社長でもあるお2人の、ゲーム制作への熱意が伝わったのではないでしょうか。ぜひ25日からはじまる『閃の軌跡IV』と『うたわれるもの斬』のコラボを堪能しつつ、改めて通しでも両氏の言葉をチェックしてみてください。
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