2018年11月1日(木)
“新・龍が如く”の幕開けとなるスマホアプリ『龍が如く ONLINE』の実態を直撃!【電撃PS】
2016年――。“伝説の龍”と呼ばれた桐生一馬が姿を消したことで、1つの大きな区切りを迎えた『龍が如く』シリーズ。そこから約2年……“新・龍が如くプロジェクト”としてアナウンスされていた『龍が如く ONLINE』の配信日が、もう間もなくとなりました。
そこで今回はサービス開始に先駆け、『龍が如く ONLINE』の開発を指揮しているディレクターの堀井章生氏、シナリオ総指揮の横山昌義氏に、本作の見どころをタップリと語っていただいたので、その全文を電撃PlayStation編集部がお届けしたいと思います(インタビューは10月2日に実施)。
▲堀井章生氏(左)と横山昌義氏(右) |
『龍が如く』をアプリゲームに落とし込む新たなチャレンジ!
――まずはお2人が『龍が如く ONLINE』でどんなお仕事を担当されているのかを教えてください。
堀井章生氏(以下、敬称略):私は本作のディレクターを担当しています。開発全般の責任者としてゲームクオリティ管理と制作進行を行うことがメインの業務となります。また、本作はオンラインタイトル制作を得意とする“オンライン研究開発部”と“龍が如くスタジオ”の、2つのチームでの共同制作タイトルとなります。
両スタジオとの橋渡しをしつつ、チーム全員が同じ方向を向いて仕事ができるようにディレクションすることが本作における私の役割となります。“オンライン研究開発部”で培ったノウハウを活かして、ベースのゲームシステムや配信開始後にどうゲームが広がっていくかといった基礎部分をデザインし、そこに“龍が如くスタジオ”で組み立てた世界観・キャラの魅力を最大限活かせるようにゲームのシステムに乗せていきました。
横山昌義氏(以下、敬称略):私は予算と制作進行をしていない、プロデューサーみたいな感じでしょうか(笑)。ブランドの責任者として、本作を“『龍が如く』シリーズの正統続編にする”と決めたり、“『龍が如く』として、どういうゲームにしていくか”という根本的なゲームデザインの設計にもかかわっています。
また、同時進行中である“新・龍が如くプロジェクト”のコンシューマゲーム版との線引き……、つまり“アプリとコンシューマの2つのゲームを、どういうエンターテイメントサービスにしていくのか”といった、総合的なブランドデザインも担当しています。
ただ、アプリとコンシューマでは勝手が違うところも多々ありまして、最初の1年くらいはすり合わせで時間を使いました。本作もそのときに、すごく大きな作り直しを1度、中規模の作り直しを何度も挟みつつ、やっとサービスに向けてのいい着地点が見えてきた感じですね。
あとは、シリーズ構成として物語の柱の部分も僕が考えています。それを、いろいろなスタッフがシナリオを執筆しているのですが、すべて“龍が如くスタジオ”で監修しています。ここで誤解しないでほしいのが、アプリ開発チームに『龍が如く』シリーズの世界観を渡しておしまいではなく、“龍が如くスタジオ”もしっかりと開発にかかわっている点です。
例えば、画面背景デザインの総責任者は『龍が如く』シリーズのステージ班のリーダーが、プログラムのクライアントも『龍が如く』シリーズでプログラムのチーフをしていた人間が入っています。キャラバランスの調整も、僕らがチェックしています。なので、当初は2つのチームがタッグを組んで……という言い方をしていましたが、今は同じチームという感覚で仕事をしていますね。
――もう間もなくの配信となりますが、事前登録数の手応えはいかがですか?
横山:自分たちでも驚くほど好評です。アプリゲームで事前登録を集めるにもいろいろな方法があって、数を増やすこと自体はプレゼントを豪華にしたりすればいいだけなので、けっこう簡単にできます。
ですが、今回は事前登録数を増やすことよりも、“本当に遊びたくて登録してくれる人はどれくらいいるのか?”を調べたくて、すごくシンプルな事前登録のシステムにしました。実際、あまりオマケとかもほかのアプリゲームと比べても多くないですよね。
堀井:それでも、おかげさまで10月10日の時点で30万人を突破しました。当初の予定よりもだいぶ順調です。
横山:Webアクセスやワードのトレンドなどの反応は、『龍が如く』本編を出すときといろいろな意味で似ていて、ユーザーにはすごくいい感じに伝わっているのかなと思います。先日の東京ゲームショウ(TGS)に出展したこともそうですが、コンシューマゲームの論法に乗せて“どこまでファンがついてきてくれるか?”というのは、正直不安でした。
実際、数年前と比べてTGSに出展するアプリゲームはものすごく減りましたよね。アプリゲームのユーザーを増やすという点において、TGSへの出展は費用対効果が薄いことも1つの要因なんだと思います。
そこをあえて、“『龍が如く』ファンに訴えかける”“僕らがどれだけ本気で作っているかを見てもらう”という意味も込めて、そこに飛び込んでいった結果、すべてにおいて反応がとてもいいです。話題性が高く、多くツイートされればたくさん売れるというわけではありませんが、今見える数値感覚で言えば『龍が如く』本編発売直前ぐらいの手応えはあります。
ただ、こればかりは蓋を開けてみなければわかりません。みなさんに遊んでもらってからが勝負だと思っているので、仮に事前登録数が100万いっていたとしても安心はできません(苦笑)。
――そもそもの発端として、『龍が如く』のアプリゲームの開発は、今までとは違う層へユーザーを広げたいという意図があったのでしょうか?
横山:そこの部分は人によりますね。例えばオンライン研究開発部は、“『龍が如く』という名前と世界観を使って、これまで興味はあったけどプレイしたことがない人に伝えていきたい”という意図が強いです。
逆に“龍が如くスタジオ”側からすると、新規獲得よりも“一度『龍が如く』から離れてしまった人を取り戻したい”という気持ちが大きいです。というのも、PS2、PS3、PS4とゲームハードが進化するたびに、ユーザー層が変わっているという実感がありました。
『龍が如く3』のPS3初期世代、『龍が如く 維新!』のPS4世代等、いろいろな層があります。よく、長く続いている音楽バンドのファンでも、そのバンドを知った曲で世代分けされたりしますよね。それと同じ感じ感覚です。
そして、そんな層のなかには“『龍が如く』にはサヨナラしている”世代もいるんですよ。最近、「『龍が如く』? あぁ、遊んでいました!」という方に会う機会が多くて。彼らに遊ぶことをやめた理由を聞くと、「結婚したから」「子どもができて」「遊ぶ時間がなくなった」という理由が大半なんです。
そもそも、エンタメ産業はリアルの隙間に存在するので、その人の生活が変わると省かれていくものです。生活必需品ではないですからね。では、「どうやったら遊んでもらえますか?」と聞くと、やはり「まとまった時間が取れたら」という答えが返ってきます。
だから数年前から“そういう人たちが遊びやすい状況を整えたい”という思いがありました。おそらく当時のインタビューでもお話ししていると思いますが、『維新!』のタイミングで、そのことを強烈に意識しはじめました。それで、『維新!』や『龍が如く0 誓いの場所(龍0)』では、PS Vitaを使った“じっくり腰を据えて遊ばなくても楽しめるもの”を開発したんです。ですが、それでもまだまだ現状の打破には届きませんでした。
――“無料アプリfor PS Vita”ですね。『維新!』も『龍0』もかなり遊びごたえがありましたが、たしかに手軽さではスマホには及ばないですね。
横山:なので、スマホで展開するという企画自体は、“龍が如くスタジオ”でもずっと考えていたことなんです。ここに至るまでにいろいろなテストを行っていて、じつは現行のスマホですと『龍が如く』シリーズのいくつかは普通に動くんですよ。
しかし、PSコントローラのボタンをスマホに対応させても、まともにプレイできません。なので、移植という形ではうまくいかないことはわかっていました。また、演者のみなさんの熱演を大画面・大音量で楽しむことをベースに作っているので、イベントシーンをスマホで見てもつまらなくて(苦笑)。結果として、「スマホで遊ぶ『龍が如く』は、これまでと同じ形ではダメだ。スマホで一番楽しい形に落とし込むのが適切である」という結論に至りました。
そんななか、渡りに船ではありませんが、この企画が別のチームから立ち上がったんです。そして、やるのなら『龍が如く』の名前だけ預けて「さあ、どうぞ」ではなく、自分たちでもちゃんと参加する形で開発を始めた……というのが、本作の開発経緯ですね。
まとめると、思惑として、オンライン研究開発部は“『龍が如く』の知名度を最大活用することで、新規層に遊んでほしい”。龍が如くスタジオは“昔遊んでいたけどやめてしまった人を取り戻したい”。お互いの意図を叶える形で今の形にたどり着きました。なので、どちらのユーザーも楽しめるものになっていますよ。
――お話を聞いていると、最初は目標としていたベクトルが大きく違ったようですが、それがまとまるまでにかなりの紆余曲折があったのでは……?
堀井:ありましたね(苦笑)。
横山:すごく大変でしたよ。これは1例ですが、コンシューマゲームではフルフェイシャルかつボイス入りでしたが、アプリではそうもいかないので、シナリオを書く際に文字を読むことを前提にある程度は配慮して作りました。
『龍が如く』は、1つのシーン・セリフが長いんですよ。これが“龍が如く節”なわけですが、オンライン研究開発部からは「アプリゲームの場合は、次のバトルに9タップでたどり着かないといけない」というツッコミがありました。これには、過去のユーザーデータを根拠としているので、「それなら仕方ない。とりあえず短くしてみよう」と話し合ったわけです。
ですが、それでテストをしてみたら「ツマラナイ」「もっと話がちゃんと見たい」という不満が噴出してしまって(笑)。最終的に、「それなら、『龍が如く ONLINE』だけの適切なテンポを作っていこう」という結論になりました。
堀井:結局、一周回ってかなり長くなっちゃいましたけど(笑)。
横山:あとは、アプリゲームはバトルをして進んでいくのが基本なので、話をぶった切ってでも敵が出てきていたんです。ですが、それに対しても「話に集中したいからバトルがないクエストがあってもいいんじゃない?」という意見が出てきて、バトルを無理に挟まないクエストも作ることにしました。
そういったチーム外の人や一般の方にテストプレイしてもらうフォーカステストのフィードバックを受けて、最終的な『龍が如くONLINE』オリジナルの独特なテンポ感ができあがっていったわけです。
堀井:昨今、クエストつなぎにシナリオが入るぐらいのアプリゲームが多いのですが、本作はそれらと真逆をいく形になっています。“シナリオをどう見せるか”という前提に“バトルがどう絡んでいくのか”という順番の作り方になっていて、そこの楽しみ方は本作ならではですね。ある意味これまでの『龍が如く』と作り方のアプローチが同じになっていると思います。
――『龍が如く』のシナリオは、バックボーンがしっかりとしたキャラたちが欠かせないと思いますが、その辺りはいかがですか?
堀井:キャラのイラストもひと悶着ありましたね。
横山:春日一番は、キャラ設定から生まれているのでスムーズに決まったのですが、問題は全体的なラインナップでした。一般的なアプリゲームは、単純に女性キャラの人気が高い傾向にあります。でも『龍が如く』でアプリゲームを作った場合は、原作に準じると男女比率が9:1ぐらいになってしまって。とはいえ、商売としては女性キャラもある程度は必要なので、そうなるとオリジナルキャラを作っていかなければなりません。
そもそもの話として『龍が如く』というブランドにおいて、女性キャラのほうが多いというのは正しいのか、という話になりますよね。データとしては、もちろん女性キャラが多いほうがいいですから、間を取って5:5くらいの割合キャラを用意して『龍が如く』にそれほど精通していない社外テスターの方々対象に意見をうかがったんです。そうしたら、「そういうのはいらない」「裏社会のゲームでしょ?」という答えが返ってきちゃって(笑)。
結局のところ、『龍が如く』だからとかではなくて、本作の世界観をプレイしたときに期待する“筋”と違うものが用意されている感じが強く出てしまいました。そういうこともあり、“この世界観を選んで遊ぶ人は、この世界観のものを楽しみたい”という視点から、世界観に合わない女性キャラの多くをボツにする結果になりました。
堀井:ボツにしたキャラクターはめちゃくちゃたくさんいましたね(笑)。
横山:最初はメインストーリーにかかわらないオリジナルキャラのイラストは、設定だけチェックして、その後の制作はアート班にまかせていたのです。でも、途中からは“このキャラは、なぜ神室町にいなくちゃいけないのか”など、プロットを細部まで固めてからキャラクター化していくという形に切り替えました。
そうしないと、ただ女性が必要だからという理由だけでなぜか女性武闘家が街を歩いている……なんて状態になってしまったんですね。神室町は修行に来る場所ではないですし(笑)。安直に作るとそうなってしまうので、それぞれに“ここにいる意味”という概念を用意していきました。
――神室町の住人である説得力ということですね。
横山:思いきり世界観を崩してくるオリジナルのキャライラストもたくさんありましたが、ことごとく排除しました。こんなヤクザだらけの街にいるということは、何かしらの強い理由がないといけないんですよ。何かの事件を追っているだったり、復讐のためだったりといったバックボーンを作ってからイラスト化しよう、と。
堀井:ほとんど闇に消えました。剣から炎出してるヤツもいましたね(苦笑)。
横山:ビキニ一丁の女性とかもいたました。「なんで?」みたいな(笑)。もちろん、いずれはほかのIPとのコラボをやってもいいと思っていますし、相手の世界観をはねつける気もありません。ですが、最初はあくまで『龍が如く』の世界でいこうと。とくにリリース初期は、『龍が如く』を触れたことがある人がかなりの割合を占めると思いますので。
堀井:イラストは本当に難しいですね。没個性でもいけないが、個性的でありすぎてもいけない。世界観とのすり合わせという面ではまた別の問題もありまして。アプリゲームのキャラカードには、ひとつの“美術品”としての価値も必要になってきます。人気のアプリゲームのキャラクターイラストは、構図や密度が工夫されているんですよ。
『龍が如く』のキャラは、どちらかというとシンプルな姿をしています。これは、シナリオやムービーでキャラの生き様とか魅力が十分に伝わるからなんですね。ですが、それゆえにシンプルなデザインのキャラが多く、“カードにしたときの美術品としての商品価値の出し方”が非常に難しい。ここは、いまだに悩んでいます。
――たしかに、『龍が如く』のキャラクターは外見ではなく、言葉だったり行動だったりに魅力を感じているファンが多いと思います。
横山:ある意味、“キャラもの”とは真逆の論法で作ってきたのが『龍が如く』ですから、そこをどうアプリゲームとして落とし込むかという部分は、けっこう厳しいんです。ただ、それはそれとして『龍が如く』を知っている人からすると、絵の構図云々の前に原作のキャラが出ると超うれしいんですよ。
堀井:キャラのバックボーンを知っているからほしくなる人もいるってことですね。例えば、サイの花屋なんかだとほかのアプリゲームでは考えられない外見をしていますよね。そこをどう通していくかが問題でした。
横山:見た目だけで言えば、「引かないでいいかな」と思う人もいるのは理解できます。ですが、『龍が如く』の場合はそうではないので。そういった感覚の齟齬を埋めていくのも大変でしたね。
――ビジュアルを美術的に表現するかという部分に苦労なされたとのことですが、よくあるパターンで“衣装を変えて別カード扱いに”というケースも多くあります。その辺りは、『龍が如く』の世界観に合っていないと思いますが、いかがですか?
堀井:本作のカードバリエーションは、キャラの生き様にフィーチャーしています。例えば錦山彰の場合、『龍1』の凶行に及んだ錦山のシーンを1枚のカードに切り出したりしています。そこが錦山のバックボーンとなる部分なので。最終的にそのキャラの特徴的なシーンを切り取る方法で、カードを表現していく形に落ち着きました。
――名場面のワンショットをカードに落としていく形なんですね。
堀井:例えば『龍0』の柏木修とその後の柏木とでは、生き様も魅力も違いますが、この出し方ならばそれらを個別に表現できます。また、ユーザーとしても「あのときの柏木はどうだった?」という2重の楽しみ方ができるのではないかなと思っています。
横山:こうすれば、シリーズ全部遊んできた人も楽しいでしょうし、知らない人も何か強いカードがきて「なんかおっかねー人が来たわ!」という感じで楽しめるのかなと(笑)。『龍が如く』シリーズは十数年続いているので、その歴史を詰め込めるんですね。
――歴史による違いが顕著なキャラといえば、真島吾朗もそうですよね。
横山:真島は、スピードが早くて手数が多く、さらに打撃力も高いというステータスになっているんですよ。これは2005年以降の真島の作中でのイメージから設定されたものです。ですが今後『龍0』時代の真島が実装された場合は、まったく違う性能になると思います。『龍0』の真島は、どちらかといえば知的なキャラですし、店のキャストたちをまとめるようなリーダーシップもある。個の力だけでなく、周囲の能力を高めるようなスキルを持つキャラになるかもしれませんね。
▲オール真島……なんてデッキ構築も夢じゃない!? |
――同じキャラでも、カードのシチュエーションによって性能も異なるんですね。
横山:リリース時のバージョンでは、別の時代の同キャラは実装していませんが、追々そうする予定です。例えば、通常の柏木は人を守る立場なので防衛系の能力をしていますが、『龍0』の柏木が実装されると超攻撃的になるでしょうし。だって、バイクに跨った久世大作に鉄パイプで殴られて平気だった桐生一馬が、当時の柏木にはワンパンで倒されていますから(笑)。僕のノリとしては、『龍0』の柏木は、当時の世界で最強です!
▲横山氏が最強と語る『龍0』時代の柏木。その圧倒的な強さが本作でどう表現されるのか期待したい。 |
『龍が如く』の新境地を主人公・春日一番が切り拓く!
――キャラクターといえば、本作の主人公・春日一番ははずせません。これまでの桐生一馬ではなく、新キャラを主人公に据えたからこそできたこと、逆に大変だったことを教えてください。
横山:じつは、大変だったことはないですね。あるエピソードに対して、大げさに驚くし、大げさに痛がるし、大げさに泣く。喜怒哀楽が強く、桐生とは指向性がまったく異なる人間ですが、シナリオを書く立場としては書きやすかったです。
▲“新・龍が如くプロジェクト”の主人公・春日一番。 |
春日一番(CV:中谷一博)
大歓楽街・神室町に生まれ、幼くして天涯孤独の身となる。荒川真澄に惚れて極道になるも、同門が犯した殺人の罪を被り出頭し、17年ぶりに娑婆へと出てきた。喜怒哀楽の振れ幅が大きく、どこか愛嬌のある人物。
――たしかに、寡黙な桐生とは真逆の存在です。
横山:『龍1』は、日本の任侠映画のフォーマットなんですよね。高倉健さんや菅原文太さん、深作欣二さんが作ってきた、脈々とある“寡黙で不器用だけどカッコイイ”という典型的な象徴の延長線上に桐生という主人公を作っただけで、それらとやっていることは同じなんですよ。それがコンセプトだったわけですし。
“任侠もの”がジャンルとして高認知で確実なファンがいるのにゲーム化されていない。だからこそ、踏み込む価値がある……。『龍が如く』は、そうやって「ゲームはもっと踏み込めないのか?」というメッセージとともに生み出しました。『龍が如く』シリーズ自体、アクションアドベンチャーとしてはオーソドックスな箱庭ゲーですが、システムではなく題材の選び方の概念を新しくするというのが本シリーズの最初のチャレンジだったんです。
そして『龍6』で桐生の話が終りを迎えたことで、これからの僕らは『龍が如く』という名前を使ったうえで違うチャレンジをしなければならない。それに対する僕の答えが、“古い任侠像の打破”だったんです。
そういう経緯もあって、そもそも“新・龍が如くプロジェクト”は、“こういうゲームを作る”というところではなく“新たな主人公を作る”ところからスタートしました。“『龍が如く』シリーズを使ったアプリゲームを作りたい”という企画をオンライン研究開発部から持ちかけられた頃、ちょうど僕と名越(稔洋総合監督)のほうで「『龍6』のあとの主人公」について打ち合わせていたんですよ。
そのとき僕が持っていったプロットが、いまWEBで公開されている 春日一番のプロローグの原型となったものです。「桐生と真逆の何をやってもダメだった男の人生を描いてみたいんです」と話しました。そのコンセプトが認められ、その場で「オンラインもコンシューマも両方この主人公でやろう」となりました。同じストーリーでやるかどうかは別にして、この男に賭けてみようと。
その頃はまだ新主人公は未定だったのですが、名越から「この男には一番という名前を背負わせたい」という話があり、後に春日一番という名前が決まりました。“究極の名前負けというビリっ尻人生を、一番という名前であっけらかんと強く生きる”いう思いが込められています。
▲究極の名前負けの人生だったという一番。それは幼き頃からである。 |
また、過去にお話しましたが、春日一番の41歳という年齢を僕は歳を取っているとは思っていないんですよ。今活躍されている40代の俳優さんを見てもらえればわかると思いますが、イメージの40歳と実際の姿って、わりと乖離してて、実際ものすごく若いんですね。今の世の40代を正しく描きたいという気持ちもありました。
――たしかに、『龍1』の桐生は37歳ですが、春日一番はより若く見えます。
横山:それがリアルなんです。桐生は、現実の同年齢の人よりもかなり老けていますよ(笑)。そうやって春日一番というキャラができて、そこから“新・龍が如くプロジェクト”をどういう展開にしていくかと考えていき、その過程で“設定は同じだが、どこかでボタンの掛け違いが起きて、物語が変わっていく”という発想を膨らませていきました。
――コンシューマとスマホ版はプロローグだけは同じで、それから大きく変わるというお話でしたよね。
横山:まだ秘密ですが、序盤から大きく変わっていきます(笑)。ただ、春日一番のバックボーンや設定はまったく同じなので、2つとも物語は2000年の12月31日から始まります。
この日は彼が出頭する前日なのですが、この日に起こる出来事が違うんですよ。そこが運命の分かれ道のひとつだったりもします。結果として“身代わりとなって刑務所に入る”という部分は同じなのですが、ボタンの掛け違いによって、その後の彼の人生が大きく変わってしまう……そんな構成を考えています。
つまりアプリとコンシューマ版のストーリーはパラレルで分岐していく構成になっているのですが、僕は“その片方しか遊んでない”でもいいと思っています。これに関しては『維新!』を歴史を知っている状態でプレイするのか、歴史を知らずにプレイするのかに近い感覚なのではないかと。
――『維新!』で言えば実際の歴史が“正史”という捉え方になります。そういった意味で、本作も“どちらかが正史”であると捉えられるのでしょうか?
横山:どちらもその世界の正史だと考えています。じつは『維新!』を作ってるときもそう思っていて、もしかしたら『維新!』が事実なのかもしれない。歴史って正直なところ何が正しいかなんてわかりませんしね(笑)。ただ一般的に伝わっているエピソードを知っていると、新たな別視点のストーリーの楽しみ方、感じ方があるのではないかと思っています。
――ちなみに、アプリとコンシューマで、ゲームとしてのテーマは変わるのでしょうか?
横山:テーマは、どちらも同じで“成り上がり”なのですが、「何を持って成り上がりとするのか」というところを見てもらえればと思います。例えば、『龍が如く ONLINE』の春日一番は、どん底から人とつながって成り上がっていくんですよ。
――たしかに、ストーリーラインを拝見したときは、より神室町という街とそこに住む人たちのつながりを意識しているように感じました。
横山:春日一番は、根っからの神室町住人なので、言ってしまえば『龍1』の桐生や『龍4』の谷村正義みたいなエピソードを持っているんです。神室町の住人としての目線、世の中に捨てられたという弱者としての目線、元ヤクザとしての目線もあるという、いろいろな目線を持ったキャラですね。
楽しいところを全部詰め込んでみたというキャラでもあります。これまで出てきた主人公たちのいろいろな要素・エッセンスを凝縮したようなキャラかもしれません。
▲神室町の住人である春日一番。 |
――メインストーリーにおける主要キャラが3人公開(荒川・沢城・瀬戸)されていますが、彼らは今回のメインストーリーに深くかかわってくるのでしょうか?
横山:瀬戸の場合、彼女は彼女で復讐のために動いているので、春日一番と目的が似ていることもあって協力関係になっていく感じです。
▲瀬戸真弓(CV:種崎敦美)。神室町の片隅にあるスナックのママの孫娘。2017年に祖母を殺害され、復讐すべく犯人を追っている。驚異的な記憶力の持ち主。 |
荒川と沢城に至っては、物語の中心人物ですね。『龍が如く ONLINE』は、本当の敵が見えない感じで進みます。表立っての敵は近江連合ですが、それを裏で操っているであろう荒川のことを、春日一番は「そんなことをする人ではない」と信じており、一人だけ現実を受け入れずに戦っています。
▲荒川真澄(CV:堀内賢雄)。東城会三次団体荒川組組長。武闘派ながら仁義に篤い人格者で、春日一番があこがれる男の中の男。 |
▲沢城 丈(CV:高橋広樹)。荒川組の若頭で、超武闘派集団の中でも突出した冷酷さと凶暴性を持つ。春日一番も、この男に睨まれると震え上がるという。 |
――荒川のことを信じつつ真実を追っていくわけですね。
堀井:春日一番が荒川を信じる根拠の1つになっているのが、荒川が春日一番に銃口を向けたときに“歯を見せて笑っていたこと”なんです。春日一番は、昔から荒川に「ヤクザはヤバイときにしか歯見せて笑うんじゃねえ」と教えられ生きてきました。
そんな荒川が、あのシーンでは歯を見せて笑っているんですよ。春日一番は、それを荒川からのSOSと受け取って、助けに行かなければと考えているわけです。
――ちなみに、リリース時は11章まで実装されているそうですが、その辺りの話は結末を見られるのでしょうか?
横山:ぜんぜん途中ですね。すいません、けっこうモヤモヤするところで止まっています。そういうところで止めないと引きにならないですから(笑)。
――近江連合が神室町を支配している、熱を失った神室町といった設定が公開されていますが、具体的にはどういう状況なのでしょうか?
横山:単純に言うと『龍6』のその後ですね。桐生がいなくなった神室町で、警察が東城会を徹底的に壊滅まで追い込みました。ですが、東城会がいなくなった街に、なぜか関西ヤクザの近江連合が流入して支配するようになります。そこに警察と近江連合の癒着・陰謀が垣間見られ、それをコントロールしているのが荒川ではないかと言われている……という部分が、背景の大筋です。
ですが、春日一番にとってはその陰謀はどうでもよくて、彼が問題視しているのは荒川のことと、神室町の住人が虐げられていることなんです。言ってしまえば、彼はこの街にやってきた正義のヒーロー的な位置づけなのかなと思っています。本人としては、無職の男が近江連合相手に暴れているだけですが、街の弱者から見れば誰も逆らえない近江連合に立ち向かっている唯一の人なんですよ。
――そんな彼が、しだいに仲間を増やしていくわけですね。
横山:当然、そんな状況で黙っている人ばかりではないんです。秋山駿もそうですが、水面下では各々動いています。
――神室町における春日一番の知名度はどれぐらいですか?
横山:商店街のスナックのおばちゃんぐらいしか知らないですね。17年も刑務所に入っていましたし、そもそも桐生のような大きな組の所属でもありませんでした。荒川組は東城会でも小規模な組織で、そのなかの若衆。しかも絶縁されてカタギとして捕まっているので、本当に知名度はゼロ。
知っている人がいるとすれば、昔からの土着の人で、春日一番を子どものころから知っている老人たちだけなんです。ですが、当時の人のなかには亡くなっている人も少なくありません。世話になった店も代替わりしていたりするので、知名度は消えています。
――ちなみに、神室町以外の都市も登場しますか?
横山:ストーリーで必要があれば、神室町を飛び出していきますよ。相手は近江連合ですから、本拠地は大阪ですし。なので、そのあたりの今後の苦労は覚悟しています(苦笑)。
――TGSで公開されたスペシャルムービーには、アイドル姿で戦う澤村遥や桐生のシルエットが登場するなど、気になるところが多かったです。あの動画の真相は……?
横山:あれは、単純なイメージ映像でしかありません(笑)。ゲームの画面でもないですし、完全にあのPV用に作ったものです。このゲームがこれまでの『龍が如く』とまったくつながりのないオリジナルだと思っている方がいるかもしれないので、映像を見て“これまでのシリーズを内包したものなんだ。おもしろそう、やってみたい!”と思えるような映像を作りたかったんです。そういった意味で、歴代の人気キャラが出てきますし、パーティに女性を組み込めるという本作の特徴を伝えたくて、遥も登場させました。
もっと細かく言えば、配信開始の段階で春日一番と面識があるのは秋山だけなんです。なので、映像のなかで「一番さん」と呼び、2人が知り合いであることを表しています。それ以外は、あえて春日一番から親しげなリアクションを取っていません。それは、カードとして手に入れたら自分のパーティに組み込めるというかかわり方になるためですね。
あのムービーで、遥がヤクザを投げ飛ばしたあとに、春日一番が「なんなんだよ、この状況はぁ?」、秋山が「いいじゃないですか、理由が違っても、近江を倒してこの街を守る。みんな目的は同じですから」と言いますが、その流れがこのゲームを表しています。
じつは、プロジェクトの最初期に、チームの方から「歴代キャラは出さないほうがいいですか?」という相談があったんですよ。それに対して、名越が「設定やリアリティを求めすぎてエンタメの幅を狭めるのはつまらないと思う」と。ならば『龍が如く ONLINE』では思いっきりユーザーが喜ぶ方向に舵を切ろうということで、今の流れになりました。
――そこは舞台設定である2018年とは関係なく、“なんでもあり”とした部分なんですね。
横山:そういう作品性の表現としてあのPVを作りました。ですが、TGSでいざ流してみると、ユーザーを戸惑わせてしまい……(苦笑)。「終わったはずの桐生が、もう復活するの!?」「遥がまたアイドルに……?」といった意見が多くて。でも、それでいいと思っています。普通に春日一番のカッコイイPVを作っても、そもそもシリーズファンに春日一番が受け入れられているかというと、まだ判別がつく状態ではないですし。
ここで何が怖いかというと、僕らは開発している側ですから春日一番とはもう2年以上の付き合いになります。僕らのなかでは、“春日一番は有名人”になっちゃっているんですよ。しかも、チーム全員が春日一番のことを好いている状態でして。
堀井:テストユーザーからも人気を得ていて、春日一番というキャラにすごく自信を持っているんです。
横山:そうなると、“春日一番押し”でいいんじゃないかと思ってしまうんですけど、そこは“そうじゃないだろう”とブレーキをかけています。『龍が如く ONLINE』をユーザーにどう伝えていきたいのか一度ちゃんと整理したうえで、感情をくすぐるようなPVを作ろうと。なので、いっぱい勘違いしてもらってもいいかなと思っているわけです。
――つまり『龍が如く ONLINE』は、骨太なストーリーがありつつも、自由なところはとことん自由であるという認識ですか?
横山:それでいいと思います。今作は“キャラを集める”というタイプの遊びなので、“そこでしかできないこと”がたくさんあるんです。なので、その“そこでしかできないこと”を思いっきりやろうという感じですよね。
――本編のシリーズで亡くなっているキャラも、キャライベントという形で新たなエピソードを見ることができると。
横山:彼らが生きていたころにあった、新エピソードを見ることができますね。また、アップデートを重ねることで、『龍0』の真島や柏木など、追加キャラもどんどん増えていきます。
堀井:事前登録開始記念に行った『龍が如く』シリーズ キャラクター総選挙も参考にしていて、とくに上位10名は何らかの形でゲーム内に登場させる予定です。
――ゲームを始める取っ掛かりとしては、“『龍が如く』がアプリゲームになった”というところから入る人が多いと思いますが、そのあたりはどう想定していますか?
横山:そういう人たちの支持を受けたうえで、横に広がっていけばいいなと思います。やはり今の時代は、CMなどで認知度を上げても、そこから「遊んでみよう」にはなかなかつながりません。誰かがやって「おもしろいよ」と言ってもらって、やっと「俺もやってみよう」となる時代です。最近は、お金を出してもらう以前にダウンロードしてもらうことすら壁になってきていると感じます。
堀井:容量にも制限がありますし、余計なアプリは入れたくないんですよね。
横山:一台のスマホのなかにアプリゲームの席は2~3個しかないと思います。その2~3個に新しく入れるかどうか……、というか僕らからしたら“そこに入れざるを得ない”んです。そのために、すごく真剣に作りました。
いろいろな意味で『龍が如く』本編1本と変わらないぐらいのパワーをかけています。込み込みで考えると過去作のコンシューマ版と変わらない領域かもしれない……そういうレベルです。「アプリだから、どーんとライトに作ったよ!」なんて言えればラクだったんですけどね(笑)。ラクじゃなかったな!
堀井:ラクではないですね(苦笑)。
――本気度が伺えますね。『龍が如く』のファンからすると、プレイする動機としては「物語が見たい」という気持ちが大きいと思います。ストーリーは、どういう形で配信されていくのでしょうか?
横山:まず前提として、本作は延々と終わりがない話が続くというタイプのゲームではありません。アップデートのたびに、大きな話が追加されてある程度で区切りがきて、次のアップデートでその続きが……という流れではありますが、どこかのタイミングでそのエピソードにエンディングを迎えます。そして、またアップデートで新しい物語がスタートする形です。
これは“『龍1』の次に『龍2』が出る”というイメージを持ってもらえば問題ありません。ちなみに、リリースの段階で11章まで実装されていますが、そこはまだ最初のエピソードの途中になります。もちろん、けっこう先までエピソードは準備されているので、行き当たりばったりで話を伸ばしていくつもりはありません。
ただ、アプリゲームは僕らの想像を超えて遊び尽くされるものですから、ユーザーによっては数日で11章まで行ってしまうでしょう。僕がまじめに1日8時間とかプレイしても、1週間かかるボリュームではあるのですが(笑)。なので、それだけでは終わらないようにイベントなどを用意して、“常に何か遊べるものがある”状態にしたいとは思っています。
堀井:今までの街遊びのような脇道の要素を用意して、ユーザーに楽しんでもらえるようにしていく予定です。
横山:『龍が如く』シリーズは、クリアすると達成率○%と表示されるじゃないですか。おそらくですが、1日8時間遊んでいても1週間で10%ぐらいだと思いますよ。キャラクエストも絆を上げていく過程も含めるとものすごく長いですし、「キャバクラ」なんかは一人の女性に集中しても3分の1ぐらいしか進みませんでした。
――キャラごとのクエストもあるんですね。それは、本編でいうサブストーリーのようなものですか?
横山:完全なサブストーリーです。
堀井:それを各キャラが持っていて、そのキャラをクエストに連れて行って絆を上げて解放するという作りになっています。
横山:自分の主要パーティに入っているキャラはすぐなんですけどね。それ以外は、けっこう大変ですね。
――全キャラのコンプリートを目指すとなると……?
横山:果てしないですね(笑)。
――サブストーリーを楽しむためには、キャラカードを手に入れるところからですよね?
堀井:そうですね。手に入れて、育成して絆を上げるがワンセットです。
横山:キャラによってはシリーズキャラに絡んでいるのもあっておもしろいですよ。また、シリーズキャラのエピソードでは、「このキャラはあの事件にかかわっていましたよ」といった裏話的なものもあります。
たとえば『龍3』のアンドレ・リチャードソンのキャラクエストは、かなりおもしろいのでオススメです。原作では、彼が来日してから『龍3』の事件までの間に何をしていたかは語られませんでしたが、そこが本作で判明するんですよ(笑)。
堀井:リチャードソンはおもしろいですよね。テストしていて爆笑しちゃいました(笑)。
――そのキャラクエストは、シリーズキャラだけではなく本作オリジナルキャラにも用意されているのでしょうか?
横山:はい、用意されています。
オーソドックスながら爽快感がたまらないのボコボコ痛快バトル!
――実際の遊びについてお伺いしていきます。まず、本作のプレイサイクルは、どのようなものを想定しているのでしょうか?
横山:スタンス的には、すごく斬新な要素を無理にやる必要はないと考えています。わかりやすくて、かつ好きなキャラで自由にパーティを組めたほうがいいでしょうし。なので、けっこうオーソドックスな作りになっています。
堀井:クエストリストからクエストを選んで攻略し、クリアすると報酬がもらえるオーソドックスなゲーム性です。ゲームサイクルとしては、一本筋のメインストーリーを進めていく過程で、成長用の素材を獲得します。それを使ってキャラを強化し、高難易度のクエストに挑む……というのが、本作の基本的な流れになります。
育成画面では、成長用の素材を使ってレベルを上げることができます。レベルを上げるとゲージが伸びてステータスが上昇。さらに、一定値まで行くと特定の素材を使って「バトルスキル」「ヒートアクション」のレベルを上げられたり、キャラクターの全ステータスを大幅に上げることができる“覚醒“を行うことも可能です。
――成長要素はけっこうありますね。
堀井:そうですね。レベル上限も、同じカードもしくは専用素材を使うことで限界突破が可能です。それを含め、すべての素材はゲーム内ですべて完結できるようになっていて、成長用の素材は曜日クエストで入手でき、成金試練だと資金が、強化試練では強化素材が獲得できます。能力試練では、それぞれの属性に応じた成長素材が落ちます。
――メインストーリーでは、クエストによってパーティ編成を変えたりしたほうがいいのでしょうか?
堀井:メインストーリーに関しては、純粋にお話を楽しんでもらうために、そこまで編成にこだわらなくてもクリアできるようになっています。ただ、キャラクエストの場合は、該当キャラを組み込んで「そのキャラが倒されていない状態でクリアする」といった条件が追加されるものもあります。あとは、高難易度のクエストでは敵が強くなったり制限時間が短くなったりといった変化もあります。
――メインストーリーはお気に入りのキャラで問題なく遊べるようになっているんですね。
堀井:そこは、あえてそうしています。
――戦闘は“超ボコボコ痛快バトルシステム”と謳われていますが、画面をタップしてボコボコ殴ることがキモになるのでしょうか?
堀井:基本はセミオートで、ある程度放置してもバトルが進む作りになっています。プレイヤーは、タイミングを見て“バトルスキル”や“ヒートアクション”を使用する感じです。
キャラカードには4つのタイプがあって、それぞれに対応したバトルスキルを習得します。攻撃タイプは敵のHPを減らすのが得意、防御タイプは敵を惹きつけて味方を守るのが得意、補助タイプは味方の攻撃力を上げる、などの補助スキルが使え、回復タイプは味方を回復するといった感じです。
さきほどの“時代によって同キャラでも性能が変わる”という話をしましたが、このタイプが変わることも想定しています。
また、タイプとは別に、“心・技・体・陽・陰”いう属性の概念もあります。敵が心属性の場合は、有利属性である体属性で攻撃したほうがいいといった具合ですね。
――キャラはガチャで入手するとのことですが、ガチャの演出的な見どころはありますか?
堀井:期待値を示唆する演出は演出中いくつか用意されています。例えばガチャ開始時に“レバーを引け”と白字で表示されるのですが、これが赤字になったときは高レアリティ排出の期待値が少し上がったりですとか。
じつは、チーム内にはパチンコファンのスタッフが結構いて、それらの演出もかなり参考にして取り入れてます。パチンコでいうところの“激アツ柄”というものもありますよ(笑)。
マルチプレイの勝利には“キャバクラ”が重要!?
――キャバクラはどういう形にゲームに絡んでくるのでしょうか?
堀井:メインストーリーを進めると、その流れに伴って遊べるようになります。
横山:開放されるのはすごく序盤です。スピカというキャバクラがヤバイやつらに襲われそうだから守ってくれ、という導入ですね。要は“ケツ持ち(店舗などを反社会的組織が守る代わりに対価を得る行為)”になる感じです。このキャバクラは、プレイチケットというアイテムを使って遊ぶことになります。
堀井:じつは“ギルドvsギルド(GvG)”ともリンクしているんですよ。
横山:これを『龍が如く ONLINE』では“ドンパチ”と呼んでいますが、キャバクラはその重要な要素なんです。ケツ持ちするためにプレイヤー同士が組んだギルドの“連合”を強くするためにもキャバクラをたくさん遊んだほうがいいですね。
堀井:キャバクラで遊ぶと遊ポイントがたまっていって、これを連合に投資すると連合のレベルが上がる仕組みになっています。連合を強くするごとに、攻撃力や防御力、体力、獲得経験値にボーナスが発生するのですが、これは連合に所属しているメンバー全員が恩恵を得ることができます。
――それは“ドンパチ”だけでなく、ほかのコンテンツにも影響があるものですか?
堀井:そうなんです。この恩恵はソロプレイ時にも受けることができます。より強い連合を目指す目的になりますし、マルチプレイへの動線になればいいかなと。
横山:強い連合に入れてもらっても、最初から高い役職に置いてもらえるわけではないですけどね。“誰を幹部にするか”といったジャッジは、完全に組長しだいです。功績を挙げていけば、組長が慮ってくれるんじゃないですかね。
――それはけっこう生々しいですね!
横山:僕は部内テストではずっと若衆でしたよ。組長は入社3年目のスタッフで「なんで俺を昇格させてくれないんだよ!」みたいなやり取りもありました(笑)。
――リアルで内紛が(笑)。
横山:もちろん、独立や代替わりもできますよ。
堀井:“ドンパチ”に勝つと、役職に応じた勝利報酬がプラスで獲得できますので、高役職を目指してがんばってください。
――複数の連合に所属することはできますか?
横山:できません。不義理は許されない世界ですから(笑)。
――組長は連合を立ち上げた人になるのですか?
堀井:そうなります。マルチプレイ時に組長だけが使える“号令”というものがあったりして、組長はやりごたえがあると思いますよ。
――ちなみに、下剋上はありますか?
横山:組織内での下剋上はありません。親の命令は絶対なので。下剋上を起こしたければ、組を割って出るしかないですね(笑)。
――“ドンパチ”は具体的にどんなコンテンツなのでしょうか?
堀井:“ドンパチ”は、キャバクラに攻めてきた軍勢からキャバクラを守るというコンテンツで、内部的にはほかのプレイヤーたちの連合との戦いになります。攻撃部隊と防衛部隊の2つのパーティを使って戦闘し、敵の防衛部隊をすべて倒すとボスにダメージを与える。その応酬の結果、先に獲得ポイント量を先にゼロにしたほうが勝ちというゲームデザインです。
横山:戦闘自体は、クエストバトルと同じ挙動で操作することになりますが、味方を強化する奥義が連合全体にかかったりと、細かい部分での違いはあります。
堀井:奥義はキャラクターにつき一つ習得しているのですが、1パーティ10人という縛りを踏まえて、“どういう奥義を持って参戦するか”という部分も戦術の幅ですね。
さきほどの号令はここで使用でき、一定時間参加メンバーに獲得ポイント量にブーストがかかるので、タイミングを合わせて「今やでー!」と乗り込むことも可能です。ちなみに、“ドンパチ”での貢献度が高いとMVPに選ばれて報酬が増えます。
また、連合内で誰がどういうタイプのパーティを使うかも重要です。僕の場合は、防御タイプが多くて防衛に徹しています。
横山:僕は攻撃タイプで殲滅に向かうタイプですね。
堀井:そういう人は多いと思いますが、連合の20人全員が攻撃タイプに回ると相当苦しい戦いになると思います(笑)。
横山:どのカードを持っているかによって、自分の役割が変わってくると思います。
堀井:連合内で役割を決めてそれらをしっかりと組み合わせたほうが、強くなるゲームデザインですね。ちなみに、“ドンパチ”はチュートリアルとして初級・中級・上級とゲームの流れや戦術を好きな時に体験できるようにしていて、なるべく多くの人に遊んでもらえるように作っています。操作自体は、普通のプレイと変わらないので、ぜひ楽しんでもらえればと。
――メインストーリーを進めつつ、サイドの遊びも触れ、トータルでレベルを上げていくという感じですね。
堀井:メインストーリーを進めるうえで、“ドンパチ”は最初の一回以外必須ではありません。ただ、これに参加すると“ドンパチメダル”というリソースが手に入ります。このアイテムは、成長アイテムなどに交換できるように設定しました。
キャラ育成のサイクルが早くなりますので、“ドンパチ”はできるだけ遊んでおいたほうがお得です。先述の覚醒用アイテムは、かなり希少なのですが、この手段が一番手に入れやすい形になっています、また、けっこう多めのメダル数が必要になりますが、SSRのカードとも交換できますよ!
――ちなみに、リアルタイムで参戦できない場合はどうなるのでしょうか?
堀井:代理参戦という、プレイヤーのパーティを使って自動で戦闘してくれる機能があります。どうしても都合がつかない時でも連合に貢献することができますよ。
――ほかの遊びも“ドンパチ”とリンクするのでしょうか?
横山:配信開始時点ではキャバクラのみが対象なのですが、今後はバッティングセンターなどの街遊びを追加した際も、連合と紐づけていく予定です。
人気キャラクター・ちぃたん☆とのコラボも……!?
――ちなみに、TGSのステージではゲーム内にちぃたん☆が登場することが発表されましたが、どういう経緯があったのでしょうか?
横山:本作には“カムロップ”というマスコットが登場するのですが、けっこう外見がかわいくできたので、いっそ着ぐるみを作って宣伝キャラとして扱おうという話になりまして。また、スタッフのなかにこういったキャラクター方面に鼻が利く人間がいて、「ハメをはずした系のキャラクター同士ということで、今ノッているちぃたん☆と組ませたらおもしろいんじゃないか?」と提案してきました。
その時点でオファーすればTGSに間に合うタイミングだったので、「TGSでお披露目して、壇上に立ってもらおう」と実行したら、まぁ反応がすごかった(笑)。“『龍が如く ONLINE』にちぃたん☆参戦”のツイートも、ものすごい反響があったらしいですよ。それは『龍が如く ONLINE』というよりも、ちぃたん☆の力ですけど(笑)。
――では、最後に本作の配信を心待ちにしている『龍が如く』ファンに向けて、メッセージをお願いします。
横山:率直に言って、『龍が如く ONLINE』は骨太なストーリーが柱となった、ある意味王道的なアプリゲームです。ですが『龍1』を発売したときも、アクションアドベンチャーとしてはオーソドックスなものでした。そこに夜の繁華街と裏社会というテーマが入ったことによって起きた化学変化で、新しい概念の遊びが生まれたんです。
ゲーム的なシステムではなく、今まで誰もやってこなかった要素を取り入れたことが、斬新でウケたわけです。そういう意味で、本作はその『龍が如く』の原点へと立ち返った作品とも言えます。今作の遊び方のスタイル自体は、アプリゲームの1つの答えだと思っています。すでにあるから古いという話ではなく、このスタイルは“いろいろな人が作り上げてきた結果、おもしろいからこの形になっている”わけです。
本作は、そこに『龍が如く』の世界観やストーリーを入れたらどうなるのか、というチャレンジでもあります。そのうえで、9タップで次に進むという概念を壊してシナリオの比重を増やし、この世界の中に埋没していける感覚を生み出した本作を、僕は『龍が如く』の新しいゲームだとあらためて感じました。
メインストーリー自体は無課金でもぜんぜんクリアできるバランスにしていますので、まずはとにかく遊んでほしい! そのうえで、キャラを集めるかどうかはその人の愛によって変わると思うので、無理のない範囲で楽しんでもらえればと思います。
堀井:『龍が如く』シリーズは、我々だけでなく遊んでくれるユーザーさんやコラボ企業、俳優さんたちなど、みんなで一緒に作り上げてきたブランドだと感じています。今回、『龍が如く ONLINE』を作っているときに、また新しくみなさんといっしょにシリーズを作っていけるんじゃないかと、ワクワクした気持ちを抱きました。
オンラインゲームは、イベントやクエストを随時足していけるのが利点です。1つ1つどう盛り上げていくかを、ユーザーのみなさんと楽しみつつ、新たな『龍が如く』を一緒にデザインしていければと思います。
(C)SEGA ※画面はすべて開発中のものです。
データ