2018年11月1日(木)

『デッドバイデイライト』に登場する殺人鬼の元ネタは? 映画コラボ殺人鬼 などの小ネタ考察&紹介第2回【電撃PS】

文:電撃PlayStation

『Dead by Daylight』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 殺人鬼と4人の生存者たちの攻防を描いた、非対称型対戦アクションゲーム『デッドバイデイライト(DbD)』。その息詰まるゲーム展開は、まさにホラー映画そのものといっても過言ではありません。

『デッドバイデイライト』

 本作に登場するさまざまな殺人鬼の元ネタを紹介する第2回は、シェイプ、ハグ、カニバル、ドクターの4人の殺人鬼と、生存者のローリー・ストロードを紹介します。

⇒“『デッドバイデイライト』に登場する殺人鬼の元ネタは?”第1回はこちら

【注意!】殺人鬼の元ネタとなった映画については、内容のネタバレに言及しているものもあります。今回紹介している映画をこれから見ようと思っている人はご注意ください。

THE SHAPE(シェイプ)

シェイプ

本名:マイケル・マイヤーズ
性別:男
武器:包丁
固有能力:内なる邪悪

 シェイプことマイケル・マイヤーズは、ジョン・カーペンター監督の出世作となったホラー映画『ハロウィン』(1978年公開)シリーズに登場する殺人鬼です。実の妹や姪、その子どもなど、なぜか近親者のみを執拗に狙います。

 1980年代以降におけるスプラッター映画の隆盛は、この映画から始まったと言われています。銃で撃たれても死なない超人的な殺人鬼として描かれているマイケルの存在がなければ、あのジェイソンやフレディも生まれていなかったいなかったかもしれません。

 名前の“シェイプ”とは影のこと。日本では『ハロウィン』の殺人鬼といえば“ブギーマン”と呼ぶのが定着していますが(そもそも2作目の邦題が『ブギーマン』になっていました)、ブギーマンは日本で言うところの“お化け”のようなニュアンスの言葉で、特定の姿形を持たない存在です。

 映画1作目のラストシーンでマイケルはルーミス医師に撃たれ、2階から落下したにもかかわらず、その死体はなく忽然と姿を消し去っていました。ヒロインのローリーが「あれは(兄のマイケルではなく)本物のブギーマンなの……?」とルーミスに問いただしたところで映画は終了しています。銃で撃たれても死ななかったマイケルは、ローリーには到底通常の人間とは思えず、まるでハロウィンの夜に現れるといわれる化け物“ブギーマン”のように感じられたわけです。

 以上のことからわかるように、映画が作られたアメリカではマイケルを“ブギーマン”とは呼ばれずに、影のように犠牲者に忍び寄ることから“シェイプ”と呼ぶのが一般的なようです。映画のメイキング映像でも、カーペンター監督をはじめスタッフは全員マイケルのことをシェイプと呼んでいます。

 『ハロウィン』はリメイク版(2007年公開)も作成されています。終始まったくの無言でサイコパス感全開のオリジナル版マイケルとは異なり、リメイク版のほうは幼少時には母親とよく会話する、普通(?)の少年でした。ナチュラルボーンキラー(生まれついての殺人鬼)というよりは、その置かれた境遇により徐々に歪んでいった悲劇の人物、といった描かれ方をしています。このことから、『DbD』のシェイプはオリジナル版のほうのマイケルをモデルにしているようですね。

 オリジナル版『ハロウィン』の劇中では、マイケルが遠くから犠牲者をじっと見つめるというシーンが何度も登場しています。ゲーム中では、固有能力“内なる邪悪”で生存者を凝視することによってレベルが上がっていくという形で描かれています。このときに流れるピアノの旋律が印象的な“ハロウィンのテーマ”は、カーペンター監督が自ら作曲したもの。

 またマイケルと言えばその白いマスクが特徴的ですが、これは俳優のウィリアム・シャトナー(『スタートレック』のカーク船長役で有名ですね)のマスクを改造したものです。アメリカではその時々の大統領や有名俳優のマスクが売られるという文化があるようで、これもその1つだったのでしょう。日本の縁日で売られるアニメや特撮のお面みたいな感覚でしょうか。

 じつはこのマスクは、アメリカの有名なピエロでありサーカス演出家でもあったエメット・ケリーにするという案もあったようです。もしこちらが採用されていたら、ホラー映画の歴史が変わっていたかもしれませんね。マイケルがピエロのマスクを被っていたのなら、あの有名な『IT』(1990年公開)のペニーワイズも登場し得なかったかもしれませんし、そのフォロワーとして後に数多く作られたピエロの殺人鬼が登場する映画も、今ほどは見られなかったかもしれません。

ローリー・ストロード

ローリー

 シェイプことマイケル・マイヤーズと同じく、映画『ハロウィン』からの出演となる生存者。マイケルの実の妹です。姉のジュディスをマイケルに殺され、両親も事故で亡くしたローリーは孤児となり、ストロード家の養子になりました。マイケルと名字が違うのはこのためです。

 ローリーは『1』『2』および、ケリー・テイトと名前を変えて7作目『ハロウィンH2O』(1998年公開)、8作目『ハロウィン・レザレクション』(2002年公開)に登場しています。またアメリカで2018年10月19日から公開されている最新作『ハロウィン』では、オリジナル版『1』『2』から40年後の物語が展開。40年経ってもマイケルの影に怯え、いまだに彼が自分を殺しに来ると信じ込んでいるローリーの姿が描かれています。この最新作でも、シリーズで一貫してローリー役を演じてきたジェイミー・リー・カーティスが同役を担当しています(ちなみにマイケル役も『1』と同じニック・キャッスル!)。

 ジェイミー・リー・カーティスは幼少時に両親が離婚したため、父方と母方の両方の名字を持っています。彼女はオリジナル版『ハロウィン』でスクリーンにデビューしました。その絶叫ぶりが高く評価され、以後“スクリーミングクイーン(絶叫女優)”として『プロムナイト』や『テラートレイン』(ともに1980年公開)などのホラー作品に次々と出演しています。

 ところでホラー映画の初代スクリーミングクイーンといえば、アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作『サイコ』(1960年公開)に登場するジャネット・リーがまっさきに思い浮かびます。あの有名なシャワールームでの殺害シーンは、皆さんもどこかで一度は見たことがあるのではないでしょうか。このジャネット・リー、どこかで見覚えのある名字のような……。そう、ジェイミー・リー・カーティスとジャネット・リーは実の親子なのです。彼女たちは母娘二代でスクリーミングクイーンを襲名していたのですね。この2人は『ハロウィン』と同じジョン・カーペンター監督が手がけた映画『ザ・フォッグ』(1980年)で共演もしています。

THE HAG(ハグ)

ハグ

本名:リサ・シャーウッド
性別:女
武器:青白い爪
固有能力:黒ずんだ触媒

 ベアハッグや抱きしめるのハグ(Hug)ではなくて、“Hag”です。『DbD』オリジナルの殺人鬼であるハグ。もともと彼女はおまじない好きのリサ・シャーウッドという少女でした。彼女はある日、食人部族に捕まって生きながら身体を削がれ食べられるという凄惨な目にあいます。やがてやせ衰えたリサは右腕を引きちぎって脱出しましたが、極限の飢えと恐怖を感じた彼女は部族に逆襲し、皆殺しにして食い尽くしました。両腕の長さが微妙に違うのは、ちぎれた右腕の代わりに食い残しの腕を適当にくっつけたからとのこと。

 ハグは、アイルランドやイギリスに広く伝承が残されている同名の妖精から名を取られています。妖精といっても外見は人間の老婆のような姿で、日本で言うなら“山姥”が一番近い存在でしょうか。

 ハグは魔法を使い、杖や大釜に乗って空を飛び、ときには人をさらって食うというので、後の魔女(Witch)とかなり混同されて伝わっていきます。アイルランドのカリアッハ・ヴェーラ、レスターシャーのブラックアニス、クロマーティ湾のおだやかアニス、アルスターのカリー・ベリー、スコットランド低地のゲア・カーリングなど、これらはすべてハグの仲間です。

 このうちのブラックアニスは“人食いアニス”とも呼ばれており、青い顔と白く長い牙、鉄の爪を持つといわれているハグです。自分の爪で岩に掘った洞窟に住み、通りかかった子どもや羊を捕らえてむさぼり食うということで、『DbD』に登場するハグに一番近いイメージでしょうか。

THE CANNIBAL(カ二バル)

カニバル

本名:ババ・ソーヤー
性別:男
武器:スレッジハンマー
固有能力:ババのチェーンソー

 カニバルことレザーフェイスは、トビー・フーパー監督の映画『悪魔のいけにえ』(1974年公開)に登場する殺人鬼です。墓荒らしをしたり旅行者を殺してはその肉を食べたり売ったりして生活している食人一族、ソーヤー家の末っ子です。

 彼が被っているマスクは、犠牲となった人間の皮膚で作られています。マスクの額にあたる部分に縫い目があるのは、手にしたハンマーで額を打ち付けて殺害しているときに傷が付くからだとか。

 レザーフェイスのマスクは、『悪魔のいけにえ』で3種類登場しています。まずKILLING MASKという作業用のもの。『DbD』内に登場しているものは、このマスクです。次にOLD LADYと呼ばれる、食事などの家事をするときに着用していたもの。エプロンを付けておばちゃんパーマのカツラなんかも被っています。最後に正装(?)であるPRETTY WOMAN。晩餐時にスーツで着用します。女装癖もある彼なりの正装であるため、ルージュやシャドーなんかも(マスクに)付けています。

 『DbD』ではダウンさせた生存者をフックに吊してエンティティに捧げますが、映画でもまさに犠牲者を生きたままフックに吊すシーンが登場しています。『DbD』のフックに吊すというシステムは、まさに映画『悪魔のいけにえ』のオマージュと言っていいでしょう。

 またカニバルのパークは、『悪魔のいけにえ』の内容にかかわっているものがいくつかあります。“バーベキュー&チリ”はソーヤー家の長男、ドレイトンが関係しています。映画1作目でドレイトンはガソリンスタンドと雑貨店が併設された小さな店を経営していましたが、そこで出されるバーベキューは絶品と評判で店の名物となっています。

 劇中ではレザーフェイスに追われたヒロインのサリーがこの店に逃げ込みますが、そこでバーベキューに使われていた食材の正体を目撃してしまいます。続編の『悪魔のいけにえ2』(1986年公開)では、ドレイトンはダラスで毎年開かれるチリコンカンのコンテストに出場しており、2年連続の優勝を勝ち取っています。ドレイトンいわく「肉が味の決め手だ」とのことですが、もちろん使われている肉はあのバーベキューと同じものなのでしょう……。

 次に“フランクリンの悲劇”ですが、このフランクリンとは1作目に登場する、サリーの兄の名前です。劇中で懐中電灯を巡ってサリーとフランクリンがケンカするシーンがあるのですが、結局その懐中電灯はフランクリンが持つことになります。しかし結果として、それがフランクリンの命取りになってしまうのでした。『2』ではミイラ化したフランクリンの死体が登場するのですが、そのときの懐中電灯をまだ手にしています。パークのアイコンに懐中電灯が描かれてるのは、このためだと思われます。

 映画『悪魔のいけにえ』は『13日の金曜日』(1980年公開)や『エルム街の悪夢』(1984年公開)に先駆けるスプラッタホラー映画の開祖だと言われる向きがありますが、じつはこの映画には血が派手に飛び散るようなスプラッタシーンは登場していません。それどころか、残虐なゴアシーンさえもほとんどないのです。なので、ある意味ホラーが苦手な人も安心(?)して見ることができる映画かもしれません。

 とはいえ古典ホラー映画の傑作として名高い『悪魔のいけにえ』は、これまでに続編やリメイク作品がいくつも作られています。1作目の『悪魔のいけにえ』と、その続編シリーズとして2作目『悪魔のいけにえ2』(1986年公開)、3作目『悪魔のいけにえ3 レザーフェイス襲撃』(1990年公開)、そして4作目『悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス』(1995年公開)があります。

 またリブート作品としては『テキサス・チェーンソー』(2003年公開)とその前日譚である『テキサス・チェーンソー ビギニング』(2006年公開)、1作目の別の続編が新たに展開する3D映画『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』(2013年公開)、最後にレザーフェイスの少年時代を描いた最新作『LEATHER FACE レザーフェイス - 悪魔のいけにえ -』(2017年公開)などです。

 ……もう、いっぱいありすぎて何がなんだかわかりませんね。強いてそれぞれの作品の傾向をあげるなら、ちょっとブラックなユーモアが漂う、コメディ要素ありのホラーがオリジナル1作目から続くシリーズ、気合いの入ったゴア描写を堪能したいなら『テキサス・チェーンソー』や『LEATHER FACE レザーフェイス - 悪魔のいけにえ -』でしょうか。

THE DOCTOR(ドクター)

ドクター

本名:ハーマン・カーター
性別:男
武器:スティック
固有能力:カーターの電光

『DbD』オリジナルの殺人鬼であるドクターことハーマン・カーターに明確なモデルはいないようですが、一説では実在する中国の医師、楊永信(ヤン・ヨンシン)氏がモデルになったのではないかといわれています。

 中国ではネット依存になる若者が激増しており、民間の医療機関が電気ショックで治療を行うということが横行しているという事実があります。そこで楊氏は息子がインターネット依存症になったことをきっかけに、電気ショック療法を導入。オンラインゲームやスマホ依存症の若者を中心に医療行為を行っていました。

 しかしこの治療法に科学的な根拠はないといわれており、2009年に中国政府から禁止令が出されました。楊永信氏は、2006年の治療開始から3年間でのべ3000人以上の患者を完治させたと主張しています。

 実在した医師の殺人鬼では、英国史上最悪といわれる連続殺人者、“死の医師”ことハロルド・シップマンがあげられます。患者をモルヒネの過剰投与などで次々と殺害し、その人数は判明しているだけでも最低215人にのぼります。実際には、さらに多くの人が殺されているだろうと噂されています。

 彼の犯行で不可解な点は、たった一件の遺産相続書偽造(この件でそれまでの多くの犯行が明るみに出ました)を除き、殺人の動機が皆目わからなかったという点です。逮捕後もシップマンは一貫して「自分には動機がない」と主張しています。判決では15人の殺害に対してすべてに終身刑が適用され(イギリスには死刑制度がありません),その後服役中のヨークシャー州ウェイクフィールド刑務所で、2004年に首を吊って自殺しています。享年57歳でした。

 電気ショック療法を取り扱った映画といいますと、2015年に公開されたブラジル映画『ニーゼと光のアトリエ』があげられます。これはホラー作品ではないのですが(というかむしろ感動的な名作なのですが)、冒頭にかなり非人道的な治療方法のシーンが登場しています。

 いかがでしたか? シェイプやカニバルなど、原作映画を見ると再現度がかなり高いものであることがわかるでしょう。次回は残りの殺人鬼たちに加え、おまけとして次に登場する映画のコラボ殺人鬼予想を掲載の予定。お楽しみに!

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