2018年11月4日(日)
『オーバーウォッチ』新ヒーロー“アッシュ”や今後の展望についてJeff Kaplan氏に訊く【電撃PS】
アメリカ・アナハイムで開催されたBlizzard社のイベント“BlizzCon 2018”。本イベントにて、『オーバーウォッチ』のディレクターを務めるJeff Kaplan氏への合同インタビューを実施。
本イベントで発表された新ヒーロー“アッシュ”や、熱戦の繰り広げられたオーバーウォッチワールドカップ、気になる今後の展開についてなど、『オーバーウォッチ』を最も知る人物に訊いた。
なお、通訳は去年と同様、本作の日本語ローカライズを担当したスクウェア・エニックスの西尾勇輝氏が務めた。
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▲Jeff Kaplan氏 |
新ヒーロー“アッシュ”を触れるのは間もなく?
――今回発表された新ヒーローの“アッシュ”ですが、非常に魅力的なキャラクターだと思いました。今回、スナイパーキャラを追加した理由を教えてください。
Jeff Kaplan氏:開発チームのなかで常に話し合いが行われているのですが、コミュニティのみなさんからのフィードバックを受け、今はドゥームフィストなどのアビリティベースのヒーローではなく、ソルジャー76やマクリーといったメイン武器を運用するウェポンベースのキャラクターが望まれていると感じました。
今、登場しているヒーローのなかでは、マクリーが中距離、ウィドウメイカーが長距離がメインとなっており、アッシュはその中間に位置するヒーローになっています。
――アッシュがヒットスキャン系のヒーローになった理由はなぜでしょうか?
Jeff Kaplan氏:アッシュはこれまでのヒーローとは違って、短編アニメーションのなかで存在していたキャラクターをプレイアブルキャラクターにしています。
なので、彼女はレバーアクションのライフルを使用することは決まっていて、その武器をどう活かすかと考えたときに、プロジェクタイルではなくてヒットスキャンのほうがより合うのではないかと。彼女のキャラクター性から見てヒットスキャンにしています。
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――アニメーションでマクリーと再開しますが、2人の関係はどういった関係なのでしょうか?
Jeff Kaplan氏:まだ、あまり語れないんですけど、今後2人の関係は明らかになってきます。すでに日本のなかでもアッシュが39歳であることがネタになっていたとは思いますが、アッシュはマクリーより年上で彼女がデッドロック・ギャングのリーダーで、創設者です。
現時点では2人に恋愛感情のようなものがあったかどうかは言えないんですけども、明らかに過去にちょっとしたいざこざはあったので、今後そのあたりも少しづつ明らかにしていければと思います。
――それはコミックで明らかになるのでしょうか?
Jeff Kaplan氏:今、確実に言えることといえば、ゲーム内のキャラクターの掛け合いを通してもう少し2人の関係性が明らかになってくるんじゃないかと。開発チームとしてはいろんな媒体をとおして、そういったヒーローの物語を伝えることが面白いと感じているので、今後注目してもらえればと思います。
――今回公開した短編アニメーション“REUNION”は、長くてストーリー性がありますが、これに込めたメッセージはなんでしょうか?
Jeff Kaplan氏:まずは“REUNION”は開発陣が幼少期から見ていた『マカロニ・ウエスタン』へのラブレターであり、マクリーという西部劇のヒーローがいるなかで、『マカロニ・ウエスタン』をリスペクトした作品をまず作りたかったというのが1つ。
そして、昔からデッドロック・ギャングという組織の名前は出てはいたんですけど、これまでなかなか詳しく語られることはなかったので、そこのストーリーを短編アニメーションで少しお伝えしたかったんです。
あとは、ゲーム内のシネマティックトレーラーのなかでも描かれていますが、解散したオーバーウォッチのエージェントたちに対し、ウィンストン「また再結成しよう」とリコールをしています。
もちろんマクリーもそのメッセージを受け取っていましたが、彼の場合はそのままオーバーウォッチに戻るわけではなく、最後に出てきたエコーという女性のヒーローを解放し、エコーをオーバーウォッチに戻すことが最善だと考えていました。
これがマクリーなりのウィンストンのリコールへの返事ということもみなさんにお伝えしたかったというところです。
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――エコーはアテナとは別人なんですか?
Jeff Kaplan氏:エコーとアテナ(ウィンストンと一緒に居るAIのヒーロー)ですが、彼女は関係ありません。エコーは2014年ぐらいにはすでにコンセプトアートとして登場していて、そのときの彼女の胸にはアテナのロゴがあったんですね。
別バージョンにはシンメトラとかがいるヴィシュカーのロゴが入ってたりしていたんですけど、単に埋めるためにロゴを入れただけで、今回公開したときこれがアテナなんだとちょっと勘違いされてしまいましたが、実は別人です。
――オムニックのボブが生まれた経緯について教えてください。
Jeff Kaplan氏:『オーバーウォッチ』は未来のストーリーなのですが、アッシュというステレオタイプに近いウエスタンなキャラクターに、『オーバーウォッチ』の未来感のあるオムニックという存在を合わせ、対称的な2人を1つの世界に作り出せることがとても面白いと感じています。
また、オムニックというのが重要な要素の1つで、『オーバーウォッチ』の世界では人類対オムニックの対立というのが再激化しようとしていて、いずれ来るであろう抗争を描くためにオムニックを『オーバーウォッチ』の世界に追加しようとしているところです。
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――アッシュとボブ、どちらをプレイアブルするか迷ったりしましたか?
Jeff Kaplan氏:“REUNION”のアニメーションを作るにあたって、アッシュが一番印象的なキャラクターであったのと、2人のデザイナーにアッシュがゲーム内でどういうヒーローになるか考えてもらったんです。
そうしたらボブをアルティメット・アビリティで召喚するというのが共通したアイデアとして出てきたこともあり、これが面白いのではないかと、今のようになっています。
彼らもヒーローを作り出すことは楽しい作業だと言っていて、“REUNION”のなかでも3つ子など、いろいろなキャラクターたちが登場したとは思いますが、そういったキャラクターが実際のゲームのなかに登場するのであれば、どのようなヒーローになるのだろうかというのは開発陣のなかで常に話されています。
――ボブはアッシュの執事であって、育ての親であるという以外に彼のキャラクター設定などがあれば教えてください。
Jeff Kaplan氏:まだ、あまり知られていないのですが、実はボブ(B.O.B.)というのはビッグオムニックバトラー(でかいオムニックの執事)で、その頭文字を取ってアッシュはボブと呼んでいるバックストーリーがあります。
アッシュは裕福な家庭に生まれていますが、両親にはずっと放置されていて、そんなアッシュにとってボブは支えになっているキャラクターではあります。ただ、主従関係にはあるのでアッシュはどちらかというと命令口調で、ボブに対してはお願いするのではなくて命令するっていう関係でもあります。
――アッシュに付き合わされて悪ぶっている感じが面白いなと思いました。
Jeff Kaplan氏:ボブは一切しゃべらないので、多分彼のなかで「こんなことをやりたくないのに」と思っているのかもしれませんが、基本的にボブはアッシュの命令どおりに動くので、アッシュが消防士や宇宙飛行士になると言っていたら、ボブもそれについてきていたと思います。
――PTR(公開テスト)に入るのはいつごろでしょう?
Jeff Kaplan氏:早ければ来週の月曜日にはPTRに実装したいと考えています。この日だと確定でお伝えすることはできないのですが、可能な限り早めに実装しようとしています。
『オーバーウォッチ』のe-sportsは更に熱く進化する
――ワールドカップビューアーはどういったコンセプトで開発していて、今後どうなるのか教えてください。
Jeff Kaplan氏:ワールドカップのビューアーというのは見た目上、1つの機能ではあるんですけど、実際は2つ機能を含んでいるフィーチャーな1つです。これまでカスタムゲームを作って観戦者を入れることはできていたんですけど、その場合は観戦者の方々もマッチメイクされるので、最大4人という限定された視聴者しか許すことができなかったんです。
今回はスペクテイトということで、ビューアーをとおすことで、より大勢の方が視聴できる機能を設けることができたというのが今回の大きな要素です。
オーバーウォッチリーグに関してはまだ名言できないのですが、もちろん可能性の1つとしてあります。あとは、多くの視聴者が見るようなTwitchのストリーマーのマッチも、ゲーム内で同じように見てもらえることも今後できたらいいなと思いますね。
ビューアーに関してはe-sportsの発展のための重要な要素であるということがまず1つ、そしてインスタントリプレイがもう1つの大きな要素です。
見られなかった試合があった場合、これまでであれば公式のアーカイブを見てどういった試合だったかというのを見ていたと思うんですけど、ビューアーをとおしてインスタントリプレイすることで、カメラを自分で動かすこともできますし、早送りをしてチームファイトがあるところまで移動させることもできます。
私は、気に入っているプレイヤーがどういった動きをしているのかをインスタントリプレイで見ていました。そういったところはインスタントリプレイの優秀な点ですね。
今はワールドカップに限定されているんですけど、もし『オーバーウォッチ』の全プレイヤーがこの機能を使えるようになったとすれば、試合に負けてしまったあとにインスタントリプレイをとおして、敵の動きをより細かく観戦することができて勉強に使えるようになれるのではないかと思います。
e-sportsに限らず、全プレイヤーにそういった恩恵を持たせられるようになるのが、インスタントリプレイには可能性として秘められています。
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――ダウンロードなしに試合のリプレイを見られるのはどういったことなのでしょうか?
Jeff Kaplan氏:ビューアーは、実際のマッチそのもののデータをロードしているので、動画を再生しているわけでなく、行われたマッチのプレイヤーのポジションなどをすべてデータとして読み込んで、クライアントでそれを再現しています。
動画を見ているのではなく、同じデータを使った別の試合をクライアント側で新しく再生しているという形なので、大量のデータのダウンロードを必要としないのが仕組みです。
今は別クライアントをダウンロードしなければいけないという点と、コンソールにはまだ実装されていないという点があるのですが、今後は1つの『オーバーウォッチ』のクライアントでビュ―アーを使えるようにすること、コンソールにも今後実装したいと考えているので、それを実現するために開発を続けていきたいと思います。
ビューアー自体は『オーバーウォッチ』が発足したときからずっと開発を続けていたので、何年もずっと開発していました。
――ワールドカップのタイミングにリプレイ機能を実装したのはなぜでしょうか?
Jeff Kaplan氏:開発のなかでは常にマイルストーンを作っていて、今後のスケジュールを立てているんですけど、なぜこのタイミングでビューアーって機能を実装したかというと、最初から一般ユーザー向けに実装してしまうより、ワールドカップという大きなイベントに向けて実装することで、ユーザーに注目してもらえるのでそうしています。
――オーバーウォッチリーグは20チーム体制になっていますが、これ以上増える予定はありますか?
Jeff Kaplan氏:シーズン2前にこれ以上増やす予定はありません。8チームをこの時点で追加するだけで冒険的な施策ではあるので、シーズン2は今発表されている20チームで行う予定です。
――中国国内だけで4組おり、そこに韓国も加わるとなると、ディヴィジョンをアジア単体で分けたりする予定はありますか?
Jeff Kaplan氏:基本的にはグローバルで1つのディヴィジョンで行うことをポリシーとして掲げているので、プレイヤーを地域ごとにブロックはしたくないと考えています。世界中のプレイヤーがどのチームにも属して競い合うことができるようにしたいので、アジア専用のディヴィジョンを作ることはしません。
現在、多くの試合が南カルフォルニアで行われており、移動距離などの面でアジアの人たちは大変だったりするので、今後リーグが成長するにつれてアジア内でのマッチっていうのは増え続けていくとは思います。ただ基本的にリーグとしてはグローバルで1つのリーグとして機能していくといった形になります。
――オーバーウォッチリーグ シーズン1を終えた感想と、シーズン2の抱負をお聞かせください。
Jeff Kaplan氏:シーズン1に関しては、大成功を収めることができました。Blizzardが自ら主催・運営するリーグを12チームでシーズン1から発足できたことがまず誇りに思っています。
チームのみなさんもコーチを呼んだり、サポートのスタッフを呼んだりというなかで、多大なる協力していただき、おかげでとてもよいシーズン1を成し遂げられたのではないかと感じています。
視聴するといった観点からも、ストリーミングで応援してくれたり、現地に足を運んでくれた方も多く、グランドファイナルはニューヨークのブルックリンで行われたのですが、チケットも2日間売り切れといったところで、シーズン1は大成功だったと考えています。
シーズン2に関しては、8つのチームが新たに追加されることは楽しみにしていますし、各チームやBlizzardのスタッフがシーズン1を経験したことにより、今後チームが成功するため、リーグ自体が成功するための土台が築けたと思っています。そういった経験をシーズン2に活かすことで、シーズン1よりさらなる成功を目指せるのではないかと考えています。
――これまでヒーローたちの過去の話を掘り下げてきましたが、今後、未来のストーリーは描かれるのでしょうか?
Jeff Kaplan氏:いろいろ伝えたいことが満載で展開を予定しており、今後ヒーローたちがどういう物語を展開していくのかは同じように伝えるべきだと考えています。
今回公開された“REUNION”の短編アニメーションのほうでも、ウィンストンのリコールに応じたマクリー、今まで語られなかったエコーという新ヒーローが登場したとは思いますが、過去ではなくウィンストンの呼びかけに応じたあとのヒーローたちの話も、ちょっとずつ増え始めているので期待していてください。
――マーシーの“ピンク”スキンのようなチャリティー的な取り組みは今後も行っていく予定はありますか? チャリティースキンを作った経緯についても教えてください。
Jeff Kaplan氏:開発陣の家族のなかにも乳がんを患ってしまった方もいて、『オーバーウォッチ』を通じて乳がんに対して認知度を上げることと、撲滅に向けてチャリティーをやることでなにかを変えられるのではないかと強く信念を持ってやっていました。
また調査を進めたところ、BCRFが世界でもが乳がん撲滅を志す一番大きな団体だということもあり、ともに組んでピンクマーシーを実装しました。
今回、ピンクマーシーを通じて『オーバーウォッチ』のコミュニティの力を実感できました。チャリティー成功というと語弊があるとは思いますが、『オーバーウォッチ』のコミュニティのみなさんがどれだけ影響を及ぼすことができるのかというのが実感できたので、今後も別の形、別のチャリティーで同じような施策をすることは考えています。どれがベストかというのを検討した上で実施したいと思います。
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データ
- ▼『オーバーウォッチ ゲームオブザイヤー・エディション』
- ■メーカー:スクウェア・エニックス
- ■対応機種:PS4
- ■ジャンル:STG
- ■発売日:2017年10月5日
- ■価格:7,800円+税
- ▼『オーバーウォッチ ゲームオブザイヤー・エディション(ダウンロード版)』
- ■メーカー:スクウェア・エニックス
- ■対応機種:PS4
- ■ジャンル:STG
- ■発売日:2017年5月24日
- ■価格:7,800円+税