2018年11月12日(月)
フリューが2018年11月15日に発売予定の、PS4用ソフト『ゆらぎ荘の幽奈さん 湯けむり迷宮(ダンジョン)』。ローグライクRPGファン視点のレビュー記事をお届けします。
『ゆらぎ荘の幽奈さん 湯けむり迷宮』は、『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)で漫画が好評連載中で、7月14日からはTOKYO MX他全国7局でTVアニメも放送された『ゆらぎ荘の幽奈さん』を原作としたローグライクRPGゲームです。
漫画を原作とするいわゆる“キャラゲー”ですが、その中身ははたしてローグライクRPGとしてちゃんと楽しめるのか? “不思議の”だったり“不思議な”だったりの数多くのダンジョンを旅してきたライターが、本作のポイントを語っていきます。
服が溶けちゃって温泉に入ってと、いろいろと華やかな部分が目を引きますが『ゆらぎ荘の幽奈さん 湯けむり迷宮』はローグライクRPGとして手堅い作りになっています。
自分と敵が交互に動くターン性で、ランダム生成されるダンジョンに潜って、力尽きたらすべてを失ってやり直し。そんなローグライクRPGとしてはずせないポイントを押さえているのは当たり前。その場で向きを変える、一時的に斜め移動しかできないようにするといったサポートも完備されているので非常に遊びやすくなっています。
▲ある意味、この写真1枚で理解できる通りのローグライクRPGです。 |
▲もちろんダンジョン内には、お店も完備。泥棒だってできます。 |
▲泥棒したら大変な目に合うのはお約束。番犬的な敵に遭遇するとなすすべもなく倒されることも。 |
ただ、これだけでは手堅いとは言えませんよね。個人的にローグライクRPGは一般的なRPG以上に、プレイヤーに適度にストレスを与える敵が存在するか否かが大事だと考えています。
もちろん本作にも、距離を取りながら遠距離攻撃をしてくる敵やこちらの能力を下げてくる敵など、いやらしい敵が満載。アイテムを別のアイテムに変える敵や装備をはじく敵など、せっかく集めたアイテムを台無しにする出会いたくない、でもいないとスリルがない。そんな敵もしっかり登場します。
▲多数のモンスター、アイテム、ワナが一部屋に詰まった、モンスターの家的な部屋もバッチリ登場します。 |
そこそこの時間プレイしましたが、ゲームシステムとして気になったのは、足元にある“湯かご(中にアイテムを入れて保存したり、識別したりできるアイテム)”に手持ちのアイテムを入れられない点くらい。
「そんな重箱の隅をつつくようなところを難点として挙げなくても……」と思う人もいるでしょうが、逆にもっと浅いラインで難点を探そうとするとまったく見当たらない。そのぐらい正しくローグライクRPGをしています。
ちなみに本作のダンジョンはストーリーに紐づくものはアイテムの持ち込みができますが、持ち込み不可のチャレンジ用ダンジョンもいくつか用意されています。
後者は手に入る装備のほとんどが呪われて(装備すると任意には外せない)いたり、そもそもアイテムがほとんど出なかったりと、ローグライクRPGに慣れている人でも手ごたえ十分な難易度になっていますよ。
▲チャレンジ用のダンジョンは、霊石(お金)を支払うことで解放されます。 |
ローグライクRPGのお約束をしっかり備えた『ゆらぎ荘の幽奈さん 湯けむり迷宮』で大きな特徴となるのが“アクションスキル”です。
これは、各キャラクターが習得する特殊な行動で1回の探索中に一定回数使用できます。もちろんキャラクターの持つ能力なので、アイテム欄を圧迫することはなし。実質的にどれだけアイテムに恵まれなくても、キャラクターごとに固有のアイテムを持っている状態で探索に臨めるのとほぼ同じです。
▲感応霊泉に入ると、ステータスが上昇したりスキルを習得したりできます。 |
ローグライクRPGはランダム要素が強く、時にはアイテムに恵まれないまま探索をしていたら、フロアを登った直後に敵に囲まれているなんて状況もありえます。
スキルがあることで、そんなどうしようもない事態を打開するチャンスが最初から与えられている安心感ったらないですよ。アイテムをやりくりすることに加えて、いつアクションスキルを使うかという判断が本作の探索をおもしろくしていますね。
▲1フロアの間攻撃力と防御力を高めるなど、アクションスキルは強力なものばかり。絶妙に使い惜しみたくなる性能をしています。 |
さらに本作は、自分で操作するキャラクターとAIで動くパートナーの最大2人で探索するのが基本なので、アクションスキルも2人分使えます。
パートナーの行動は完全には制御できないため、全体攻撃をしてほしいと思った時におもむろに回復系のアクションスキルを使うこともあったりしますが、そういったハプニングも含めてアクションスキルの存在が本作ならではの探索の魅力でしょう。
もう1つ、本作の特徴となるのが探索中に力尽きた後のやり直しがしやすくなっていること。
上で書いた通り、本作ではダンジョン内で力尽きると持っていたアイテムをすべて失います。ですが、“霊印”を付けた装備は探索中に失った場合にショップに陳列。ある程度“霊石(本作におけるお金)”がたまっていれば、装備だけはベストな状態で探索に臨めるわけです。
ただ、なんらかの“印”を付けた装備だけ回収できるというシステムは、昨今のローグライクRPGでは決して珍しいものではありません。
▲霊印はショップで付けることが可能です。 |
重要なのはダンジョン内で力尽きると“残留思念”がダンジョンに残る点。この残留思念は出現した次の探索に限り、同じダンジョンの同じフロアに出現するものです。無事に接触できれば前の探索で力尽きた際に持っていたアイテムを回収できます。
正直、ローグライクRPGで大事なアイテムを失うというのはショックが大きいもの。ですが、そんな時に一度限りとはいえ、回収の機会があると次の探索へのモチベーションがまるで違いますよね。
▲力尽きた時と、残留思念の回収に向かう時はもちろんダンジョンの構造が変化しています。 |
装備は霊印で回収できて、残留思念に触れれば他のアイテムも回収可能。このように力尽きた時のリカバリー手段が2種類用意されているので、本作はローグライクRPGの中でもかなり遊びやすいタイトルになっている思います。
ただ、これらの救済システムは強制的に利用させられるものではなく、自分から使おうとして初めて使えるもの。「こんなにリカバリーしやすいなんて親切すぎる」というローグライクRPG大好きなドMさんは、あえて回収に行かずにすべてのアイテムを失うという遊び方もできますよ。
『幽奈さん』ファンにとってローグライクRPGである本作は「手は出したいけれど、敷居が高そうなジャンルのゲーム」に見えることはあるでしょう。ですが、ローグライクRPGというジャンルの中ではともすればやや簡単に見えるくらい遊びやすく作られているので、むしろ初めてローグライクRPGを遊ぶという人にもおすすめできる内容です。
また、ローグライクRPG好き向けの高難易度ダンジョンも用意されているので、上級者も問題なく遊べるようになっています。『幽奈さん』が好きという人だけでなく、ローグライクRPGファンで「最近ローグライクRPGに餓えている」という人も手にする価値はありますよ!
▲ちなみに原作を知らなくてもゲームオリジナルのストーリーが展開するので大丈夫です! 興味が出たら、漫画やアニメを見てみるのもいいですね。 |
(C) ミウラタダヒロ/集英社・ゆらぎ荘の幽奈さん製作委員会
(C) FURYU Corporation.
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