2018年12月1日(土)
【おすすめDLゲーム】『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』は“選択”の葛藤がディープなRPG体験をもたらす
ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回は、PS4/Xbox One版の配信が12月4日に始まるRPG『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』のプレイレポートをお届けします。
本作は、CD PROJEKT REDが開発を手がける『ウィッチャー』シリーズに登場するカードゲーム『グウェント ウィッチャーカードゲーム』をベースに、シングルプレイ用の2DRPGとして独自のシナリオと戦闘を楽しめるタイトルです。
筆者はカードゲームをあまりプレイしないので、『ウィッチャー』は好きなものの、『グウェント ウィッチャーカードゲーム』のベータ版が始まった時は未プレイでした。
ですが、今作はシナリオが気になって触れてみたところ、純粋にRPGとしてめちゃくちゃおもしろい! 世界観や物語、ゲームプレイに『ウィッチャー』らしいテイストがあふれ、“1本のRPGとしての本気”を感じるクオリティです。本記事では、そのあたりを掘り下げてお伝えしましょう。
▲RPGとしてマップを自由に探索することが可能。『ウィッチャー』の魅力の1つである国際情勢を、本作では第2次北方戦争を題材にして詳細に体験できます。 |
『ウィッチャー』らしい選択の葛藤とロールプレイ
本作は、『ウィッチャー』シリーズ3部作よりも時間をさかのぼり、原作小説と同期する時間軸でのオリジナルストーリーが描かれます。
主人公は、北方諸国の君主の1人であるライリアとリヴィアの女王メーヴ。原作の3巻を読んだ人は、彼女がゲラルトを騎士に叙任して“リヴィアのゲラルト”という公式な名を与えた人物であることを覚えているでしょう。
▲主人公のメーヴ(左)と側近のオド伯爵(右)。メーヴの声は朴ろ美さん(ろは王偏に路)が演じています。 |
▲ゲーム後半では、小説で描かれたゲラルトとライリア軍が共闘するシーンを体験できます。 |
そんなメーヴが、ニルフガード帝国の陰謀によって王位を追われ、祖国奪還を掲げて義勇軍を率いながら第2次北方戦争を戦い抜くという、まさに『奪われし玉座』というタイトル通りの物語が展開します。
▲ライリアを襲うニルフガード軍。なお、『ウィッチャー3 ワイルドハント』で描かれていた戦いは第3次北方戦争となります。 |
ゲームをプレイしてまず引き込まれるのは、CD PROJEKT REDが色濃く描いた『ウィッチャー』ならではのリアリティに富んだファンタジー世界です。
人々は貧しく怪物に怯え、非人間族と人間の間には確執があり、しかも戦時下にある。その荒んだ現実にエゴがむき出しになる社会像は泥臭くあり、エゴと表裏一体で人間臭さを感じる部分もあって、絶妙な魅力を放っています。
▲クエストの演出はゲームブック風に。テキストが非常によく、語り部の朗読やキャラクターの会話はフルボイスなので、味わいがあります。 |
▲洒落の利いた皮肉が会話のスパイスになっているのも『ウィッチャー』の魅力。人間味のあるキャラクターが生き生きと描かれます。 |
しかしながら、争いの悲惨さとエゴの蔓延する世界で皆が幸せになる道はなく、メーヴ=プレイヤーは、クエストを通じて自軍と他者の運命に対して厳しい選択を何度も迫られます。
代償を払って困った村や人を助けるか、敵の迫る状況で負傷した部下を救うか、規律を犯した者にどんな罰を与えるか、対立する人々のどちらに味方するか。選択には、人情や利益など複雑な要因が絡み、単純な善悪で割り切れない状況もしばしばです。
▲自軍を助けてくれた街の人々に、非人間族から市民権を剥奪するように求められる場面。人道的な観点に加え、自軍にドワーフが協力していると板挟みになります。 |
▲過酷な戦いの最中で脱走兵が出た際、どのような処罰を下すべきなのか……。 |
どうせ苦渋の選択をしても結果的に救われるだろうなんて甘い展開はなく、何かを切り捨てれば本当に切り捨てるしかないのがつらいところ。
しかし、だからこそ重い選択の1つ1つに心からの葛藤が生まれ、物語にどんどん引き込まれていきます。
選択はクエストの結末を変えるだけでなく、後の展開に影響することもあるので、選択を重ねるほど感情移入し、“メーヴの物語”が“自分の物語”になっていく……これがたまらない!
『ウィッチャー』らしいロールプレイを楽しめるシナリオは、本作の一番の魅力だと思います。シリーズのこうした部分に惚れ込んだ人は、本作でも非常に濃いストーリー体験を得られるはずです。
▲プレイヤーの選択次第で、仲間が加入することも離脱することもあります。上は原作2巻で窮地が描かれていた黒のレイラで、仲間になる人物の1人です。 |
シチュエーション重視のRPGらしいカードバトル
ストーリーは章立てで進行し、章ごとに変わるマップを自由に探索可能です。ゴールド、木材、新兵といった資源を集めて自軍を拡張しながら、さまざまなクエストとバトルを体験していきます。
▲マップ上にはさまざまなサブクエストが存在します。また、宝の地図から宝箱の場所を探り当てる要素も。 |
▲拠点となる野営地の施設は、好きな順番で拡張できます。 |
バトルは、『グウェント』のカードを使って戦いますが、1つ1つカスタマイズされた特別ルールが数多く用意され、バトルからもストーリー性を感じられるのがいいところです。
例としては、厚い壁と門に阻まれた砦を攻略したり、周囲のものを利用して怪物を追い込んだり、バトル中に増援が現れたり。状況に応じて会話が発生することもあり、一般的なカードバトルのイメージとは異なる、シチュエーション重視のRPGらしい戦いを体験できます。
▲マンティコアとのバトルでは、部位破壊の要領で強敵の撃破を狙います。 |
▲原作3巻でも描かれたゲラルトとライリア軍の共闘では、増援としてゲラルト、カヒル、ダンディリオンらが登場! |
せっかく『グウェント』というベースが存在するにもかかわらず、エピソードに応じてカスタマイズされたバトルが豊富にあるのは、何気にすごいことではないかと。
お陰で1つ1つのバトルが新鮮で、カードバトルの経験がほとんどない自分でもかなり戦闘を楽しめました。何というか……苦手だったピーマンを好きになったような気分です(笑)。
▲特別ルールで戦うバトルの中には、専用のデッキでプレイする詰め将棋やパズル的な遊びのものもあります。 |
もちろん、『グウェント』のスタンダードルールで遊ぶバトルも存在し、通常のバトルの流れを練習することもできます。
基本は場に出したカードの合計戦力値を競い、2ラウンド先取したほうが勝ちというシンプルなルールなので、筆者のようにカードバトルの経験が浅い人でもすぐにゲームを覚えて楽しめるはず。難易度は3種類あって、いつでも変更できます。
▲宝箱から『グウェント ウィッチャーカードゲーム』で使用可能なアバターやカードなどを入手できることもあります。 |
▲ちなみにカードゲーム初心者の筆者は、クエストの選択肢を選ぶ時とは違って迷わずに、一番簡単な新米君主を選びました。 |
RPGとして完成度が高いおすすめの作品
筆者は、『ウィッチャー2 王の暗殺者』ではじめて同シリーズに触れましたが、社会を生々しく描いた世界観と、人間味にあふれたキャラクターたち、それらが織り成す物語とドラマに深く引き込まれたのを覚えています。
ファンタジーの世界設定としては王道なのに、世界観やドラマが深くなることで、ここまでおもしろくなるのかと感動したものです。
その感動は、本作でも同じものを覚え、秀逸なシナリオと自分の選択という行為が相まって、物語に深い没入感を得られました。今作は状況的に民衆や主人公の配下を天秤にかけることが多いため、葛藤を感じたぶんだけ、ストーリー面で濃い体験ができると思います。
RPGとして完成度が高く、『ウィッチャー3 ワイルドハント』などの作品を楽しんだ人はきっとおもしろく感じるはず。RPG好きに超おすすめです!
The Witcher (R) is a trademark of CD PROJEKR S.A. The Witcher game (C) CD PROJEKT S.A. All rights reserved. The witches game is based on the prose of Andrzej Sapkowski. All other copyrights and trademarks are the properly od their respective owners.
データ
- ▼『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』
- ■メーカー:CD PROJEKT RED
- ■対応機種:PS4
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2018年12月4日
- ■価格:3,300円(税込)
- ▼『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』
- ■メーカー:CD PROJEKT RED
- ■対応機種:Xbox One
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2018年12月4日
- ■価格:3,326円(税込)
- ▼『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』
- ■メーカー:CD PROJEKT RED
- ■対応機種:PC(Steam)
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2018年11月10日
- ■価格:3,300円(税込)
- ▼『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』
- ■メーカー:CD PROJEKT RED
- ■対応機種:PC
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2018年10月23日
- ■価格:$29.99