2018年12月21日(金)
『SOULCALIBUR VI』と『NieR:Automata』のコラボ企画。『NieR:Automata』の人気キャラクター・2Bが、12月18日に『SOULCALIBUR VI』の戦いに参戦!
ゲームファンにとっては夢のコラボといえるこの企画が実現した経緯とはいったいなんだったのか? 気になっている人は少なくないはずだ。そこで電撃編集部では、両作のキーパーソンをお招きしての座談会を決行。下記の豪華ゲームクリエイターたちに集まっていただき、コラボが決まったきっかけから開発中のエピソードまで、さまざまなお話をお聞きしてみた。
大久保元博氏 |
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▲『SOULCALIBUR VI』と『鉄拳7』のプロデュースを同時にこなす、常に魂を燃やし続ける男。 |
高橋良至氏 |
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▲『SOULCALIBUR VI』のディレクター。苗字がかぶりやすいので“マステル”と名乗っている。 |
齊藤陽介氏 |
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▲『ニーア』シリーズのプロデューサー。会社の重役を務めつつヨコオさんを見守る。 |
ヨコオタロウ氏 |
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▲『ニーア』シリーズのディレクター。現在もさまざまな作品にかかわっており忙しい。 |
田浦貴久氏 |
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▲プラチナゲームズ所属。『ニーア オートマタ』のゲームデザイン担当。イケメン。 |
岡部啓一氏 |
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▲MONACA所属のサウンドクリエイター。ヨコオさんとの付き合いは長い。 |
帆足圭吾氏 |
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▲MONACA所属のサウンドクリエイター。今回のコラボ楽曲のアレンジを手掛けている。 |
──『SOULCALIBUR VI』と『NieR:Automata』のコラボ実現、おめでとうございます。多くのファンから反響が寄せられているかと思いますが、そもそも今回の企画が動き出すことになった経緯を教えてもらえますか?
ヨコオタロウさん(以下、ヨコオ):癒着です。
齊藤陽介さん(以下、齊藤):癒着ですね(笑)。
──ゆ、癒着!? のっけからものすごいパワーワードが……。
ヨコオ:くわしく説明しましょう。そもそも、僕と岡部さんは同じ大学の同じ学科出身なんです。僕のほうが1年先輩なんですけどね。さらに、バンダイナムコエンターテインメントさんに所属していて、『エースコンバット』シリーズのブランドディレクターを務めている河野さん(河野一聡氏)も僕の1年後輩、つまり岡部さんと同期なんです。なので、もともと個人的な交流はあったわけですが、ある日『NieR:Automata』がおかげ様でヒットしていることをかぎつけた河野さんから、「2Bをぜひ『SOULCALIBUR VI』に登場させてほしい」という連絡が飛んできまして。それもSNSで。
──SNS!? 会社間のやりとりになりますし、広報さんをとおしてのメールとかではなくですか?
ヨコオ:そう、SNS(笑)。
齊藤:後日、正式なルートでもしっかりオファーはいただきましたけどね。じつは、ヨコオさんにそのような連絡が届いたちょっとあとに、別の格闘ゲームシリーズからも『NieR:Automata』とコラボしたいというオファーをいただきまして。これはどうしたものかとチーム内で話し合ったんですけど、そこは先に企画が持ち込まれていた『SOULCALIBUR VI』から進めようということになりました。タイミングを考えると、あのSNSは大きな意味を持つことになりましたね。
ヨコオ:まあ、天下のバンナムさんであの『エースコンバット』を手掛ける河野さんからのお願いというか命令とあっては、僕としては断れませんから。
横で聞いている河野一聡さん:いやいやいや! 命令じゃなくてお願いでしたよね? 齊藤さんもおっしゃっていましたが、そのあと正式なルートでもお願いをさせてもらいましたし、間違ったイメージを植え付けようとするのは止めてください(苦笑)。
ヨコオ:命令じゃないのなら、脅迫でした。
齊藤:こらこら、河野さんに迷惑をかけるようなウソを重ねても仕方ないでしょう。
大久保元さん(以下、大久保):では、気を取り直して。『ソウルキャリバー』シリーズでは、作品ごとにコラボキャラクターを登場させるのがお約束なんです。なのでこの『SOULCALIBUR VI』でも何かコラボをさせていただこうと考え、その第1弾として『ウィッチャー3 ワイルドハント』のゲラルト、そして第2弾で『NieR:Automata』の2Bとのコラボを実現させてもらっています。じつは、本作のDLCで誰をコラボキャラとして実現させるか考え始めたころには、まだ『NieR:Automata』は発売されておらず、リストアップはされていなかったんですよ。ところが、本格的にゲストキャラを決定させようというタイミングになったころ、ディレクターの高橋から「2Bを『SOULCALIBUR VI』の世界でアクションさせてみたい」というお話が出てきまして。
──では、最初は高橋さんきっかけだったわけですね?
高橋良至さん(以下、高橋):きっかけという意味ではそうですね。単純に自分が『NieR:Automata』のファンということもありまして……。
大久保:会社的にも『NieR:Automata』であればおもしろいコラボになりそうだという判断になりました。ただ、会社としての正式なオファーはどうしても手続きに時間がかかってしまう側面があり、そのタイムラグを埋めるため、河野から大学でつながりがあったヨコオさんに、渡りをつけてもらったしだいです。
齊藤:2Bはいろいろな武器を使って戦うキャラではあるものの、そのなかでも象徴となるのはやはり刀。なので、同じく剣や刀が象徴として扱われている『ソウルキャリバー』とのコラボはおもしろいだろうと思ったんですよね。
高橋:私としては、個人的に2Bが好きなことはもちろん、彼女が『SOULCALIBUR VI』に参戦することで喜ぶファンが多いことも予想できていました。なので、いざスクウェア・エニックスさんにプレゼンする際は、大量の愛を注ぎ込んだパワポを用意したんです(笑)。なかには実現させるのが難しいようなアイデアもあったんですけど、書いておけばスクウェア・エニックスさんも熱意を汲んでくださるだろう、と。
──インタビュー前に2Bが実機で動いている姿を見て、ものすごく感動しました。『SOULCALIBUR VI』の開発チームに、ものすごい『NieR:Automata』のファンがいることがすぐにわかります。投げが釣りのモーションになっていたり、スカートが消滅する自爆を再現していたりと、愛がびんびんに感じられました。
ヨコオ:あれはすごいですよね。モーションデータってそちらに資料としてお渡ししていましたっけ?
高橋:参考資料としてはいただいています。ただ、今回のアニメーターには、趣味でコンサートにも行くし、設定資料集も当然買っているようなコアな『ニーア』ファンがいまして。自分自身も『NieR:Automata』が大好きなので、その再現には全力投球させていただいています。本当なら、自爆技の後は、なぜかバンカーに戻って、目を覚ました2Bに9Sが「おはようございます、2Bさん」と声を掛けるようにしたかったのですが……それだと格闘ゲームとして成り立たないなと思い、泣く泣くオミットした要素もたくさんあります。
大久保:かなり無茶なことも話していたよね。
高橋:できる限りのことをしたいと思っていたので、ステージも含めてスクウェア・エニックスさんにはわがままを言ってしまいました(笑)。
齊藤:そう、あのステージへのこだわりもすごくて。よく見ると、じつはいろいろなキャラクターがいてビックリするんですよ。気になって戦闘どころじゃない(苦笑)。
高橋:当たり前の話ですが、ステージのビジュアルや配置するキャラを制作する際、どういったところに注意したらよいかを相談させてもらったんですよ。そのほかのコラボ案件であれば、背景のオブジェクトのサイズやキャラの色味に言及した返答をもらうことが多いのですが、今回『ニーア』スタッフのみなさんから返ってきた回答は違いました。「対戦する際にバランスの取れた、ちゃんとトーナメントなどで使えるステージにしてほしい」だったんです(笑)。
齊藤:コラボ企画って、こだわり過ぎたあまりに一発ネタとしてはおもしろいけれど、ここで対戦するのはちょっと……みたいになる場合があるじゃないですか。そういうのを避けてほしかったんですよ。ちゃんと大会でもステージとして選択される場所にしてほしいという思いがあったので。
田浦貴久さん(以下、田浦):『ニーア』が好きな人が見て楽しいだけでなく、『ソウルキャリバー』ファンが遊んでも楽しいステージにしてもらいました。プラチナゲームズにも対戦格闘ゲームが大好きで、大会にも積極的に出るくらいのメンバーがいるのですが、彼からも“『ソウルキャリバー』の大会でぜひ使いたいからこそ、ちゃんと遊べるステージにしてほしい”と熱望されました。
高橋:「処理落ちしないでほしい」といった、格闘ゲームファンならではのオーダーもあったもので、我々としても燃える部分がありまして(笑)。これぐらいなら入るね? 処理落ちしないよね? と探りながら、『NieR:Automata』のサブクエストに登場するNPCなどを配置していきました。
ヨコオ:あれはすごすぎるというか、正直やりすぎだと思いましたね。
高橋:『SOULCALIBUR VI』では、基本的に最大5ラウンドで勝負が決まるのですが、ラウンド1と5ではNPCの位置が変わっていたりして(笑)。そこにちょっとしたストーリー性を感じられるようにしていますので、そんな空気を楽しんでほしいです。
田浦:対戦を忘れるくらいにいろいろなキャラがいますよね。たとえば「ロミオ達とジュリエット達」が、後ろからしれっと対戦を応援してたり(笑)。あと、赤い少女たちも登場したりもします。
──えっ? それ、いいんですか!?
齊藤:いいんじゃないですか? ファンに喜んでもらえそうですし。
高橋:赤い少女は重要キャラですから、こちらとしてもこだわりましたよ。登場パターンを3種類用意していて、ラウンド開始時にスッと後ろに現れたりします。
──すさまじいこだわりですね。
高橋:両作のファンって、感じ方が近いところがあると思うんですよね。武器を使って戦うという根源的な点も同じですし、キャラにフォーカスして世界観を広げている部分が評価されている部分も同じ。そして、『ソウルキャリバー』は対戦格闘ゲームのなかでも、女性キャラがかわいいという評判をいただいているんです。そんななかで、今このとき、武器を使って戦うヒロインといったら2Bしかいないだろうと。自分は正直、『ソウルキャリバー』ファンにこのコラボをきっかけに『ニーア』の世界を知ってもらいたいと思っています。
田浦:高橋さんが『NieR:Automata』のプロモーションをしてくれていますね(笑)。
──普通であれば“『ニーア』のファンに『ソウルキャリバー』を知ってほしい”が趣旨になると思うのですが……完全に逆ですね(笑)。
大久保:そんな高橋が手をかけて作り込んだコラボですから、『ニーア』ファンのみなさんにも響くものになっていると思います。これまで『ソウルキャリバー』を遊んだことがない方にも、これを機にぜひプレイしてみてほしいですね。
──今回のコラボBGMはMONACAさんが手掛けておられるんですよね?
岡部啓一さん(以下、岡部):ええ、ありがたいことにMONACAで1曲アレンジを担当させていただきました。じつは、コラボ企画が動き始めた当初は、ステージBGMは既存のものを使うか、もしくは原曲を『SOULCALIBUR VI』チームの方にアレンジしてもらう予定だったんですよ。
ヨコオ:最初の打ち合わせではそんな予定でしたよね。岡部さんから「お仕事をしたくないオーラ」がただよっていたから(笑)。
岡部:いやいや、そんなわけないでしょう(笑)。実際のところは、私が原曲をアレンジするよりも『ソウルキャリバー』のBGMのルールに精通した方々がアレンジしたほうが、タイトルとしてまとまりが取れたものになると考えたんですよ。というのも、私は初代『ソウルキャリバー』の開発当時はナムコに所属していて、そのころ『ソウルキャリバー』を率いていた方が「この『ソウルキャリバー』のBGMのキモはオーケストラなんだ」という話をしていたんです。実際、その血脈は『SOULCALIBUR VI』まで受け継がれていると感じます。一方で『ニーア』の楽曲は、オーケストラにいろいろな音楽のルールをあえて混ぜ込んだもの。『ソウルキャリバー』のBGMの作り方とはまったく軸が異なるんですよね。そんな『NieR:Automata』の楽曲ですから、あえて『SOULCALIBUR VI』のスタッフさんにアレンジを手掛けてもらい、どんな化学変化が生まれるかを見てみたかったという意図はありました。
──でも、実際はそうはならなかったわけですね?
岡部:ええ。開発途中でバンダイナムコエンターテインメントさんから「原作サイドでアレンジBGMを制作しませんか?」とお話をいただきまして。最終的に、ステージとして決まっていた廃墟都市のBGMをベースに、MONACAがアレンジをさせていただいています。
──実際に、アレンジの作業をしてみていかがでしたか?
岡部:『ソウルキャリバー』のBGMって単にオーケストラというだけでなく、80年代から90年代のテイストもかなり盛り込まれているんですよ。そこで自分よりもそのジャンルが得意な帆足に、アレンジを手掛けてもらうことにしました。帆足自身、対戦格闘ゲームが好きですし、オーケストラの作曲やアレンジもこなしていますので、適役だったと思います。
──帆足さんはどんなイメージから楽曲をアレンジしていったのでしょうか?
帆足圭吾さん(以下、帆足):自分のなかに“『ソウルキャリバー』とはこういうものだろう”というイメージがあったので、そこに『NieR:Automata』の曲を寄せていった形ですね。ただアレンジをするだけだと、楽曲のイメージが大きく変わりそうだったのですが、ユーザーが自分で『NieR:Automata』の曲のアレンジだと気付けるようにしたかったので、原曲のピアノのリフをそのまま盛り込むなど、工夫してみました。
──廃墟都市のBGMで対戦格闘……まるでイメージがわかないので楽しみですね。
帆足:そうですよね。ただ、やってみたら意外とできちゃいました(笑)。
ヨコオ:天才の発言だ(笑)。
岡部:私のディレクションのおかげですかね(笑)。
ヨコオ:岡部さんも偉くなったよねえ……。
──『ニーア』スタッフからご覧になって、『SOULCALIBUR VI』の2Bの出来栄えはいかがでしたか?
田浦:プラチナゲームズが作った2Bより、よくできているんじゃないですかね(笑)。制作途中で監修用の動画などをいただけたので、2Bのモーションを担当しているスタッフと一緒にチェックしていたんですよ。そうしたら、ニヤニヤしながらずっと無言でうれしそうに動画を眺めていましたね。ただ単に、こちらから渡したデータを流用して作ったわけではなく、ちゃんと『ソウルキャリバー』のキャラとしてのプロポーションとモーションになっていて感動しました。
──エフェクトもほぼ完全に再現していますよね。
高橋:エフェクトに関しても、担当スタッフと相談しながらこだわりを持って作っていきました。対戦格闘ゲームとして遊ぶ以上、完全に再現しては遊びにくくなるエフェクトもあったのですが、そういったものは『ソウルキャリバー』としてのエフェクトに落とし込んだうえで再現しています。これもコラボのだいご味と思っていただければ。
田浦:『NieR:Automata』はアクションゲームなので、“操作していて気持ちいいエフェクト”ならそれでいいんですけど、対戦格闘になるとそうもいきませんからね。ジャンルが違うがゆえの制約があるなか、違うエフェクトで再現しているところに『ソウルキャリバー』スタッフのこだわりや職人芸を感じました。本当にありがとうございます。
高橋:いえいえ。じつは、モーション自体も対戦格闘向けに調整しているんですよ。『NieR:Automata』の場合、2Bが目にもとまらぬ速さで攻撃を繰り出しても問題ないですし、実際プレイしていて気持ちいい。ただ、気持ちいいからといってまったく同じモーション、速度の技を対戦格闘に用意するわけにはいきません。対戦相手にとって……すなわち人類にとっては早すぎる攻撃になってしまいますから(笑)。そういった技に関しては出の早さであったり、スキの大きさであったりといった部分を、対戦格闘に適した範囲に落とし込んでいます。
ヨコオ:それだけこだわってもらえただけあって、すごいクオリティですよ。それこそ『SOULCALIBUR VI』のDLCで2Bが登場しましたというわけではなく、『NieR:Automata』のDLCがバンダイナムコエンターテインメントさんからリリースされましたと言ってもいいぐらいです。なんならパッケージだけちょっと変えて、スクウェア・エニックスさんからリリースできませんかね(笑)。
齊藤:なるほど。
田浦:さすがにそれはダメでしょう(笑)。お2人にご迷惑がかかりますよ。
大久保・高橋:(苦笑)。
──2Bのキャラ性能に関して、『ニーア』チームから何かオーダーはあったのでしょうか? たとえばファンが遊びやすい強いキャラにしてほしい、とか。
田浦:むしろ逆ですね。「ほかのキャラと比較して強過ぎるキャラにはしないでください」とお願いしました。強いのはファンサービスなのかもしれませんが、あまりに強すぎて大会では使用NGになったりすると悲しいので。
齊藤:でも、チラッと見た感じスキがなくてすごく強いキャラに思えたけどね。大丈夫ですか? いざ大会を開いたらあっちも2B、こっちも2Bなんてことになったりしません?(笑)
高橋:開発中は原作を再現して超高性能にしたいという思いと、バランス調整チームからの「この技、強すぎるのでもう少し性能を落としていいですか?」というオーダーのせめぎあいでした。ただ、『ニーア』スタッフのみなさんから強くしすぎないでほしいというお話があったので、結果的にはいい塩梅に調整できたと思います。
田浦:我々としては、2Bがほかのキャラとバランスよく戦える性能になっていれば、原作の再現度とか二の次だったんですよ(笑)。
──ただ、『NieR:Automata』ファンとしては、原作のあの技で戦えることはうれしいですよ。
高橋:そうそう、技といえば。今回、格闘ゲームになるにあたってすべての技名をヨコオさんに監修してもらったんですよ。
ヨコオ:あれは予想以上にたいへんでしたね。そもそも『NieR:Automata』には個々のアクションに技名がないので、考えていなかったんです。でも、この機会につけるのであれば本編に登場してもおかしくないようにしなければならない。そこで、まず2Bの技名全体に関するルール決めをして、そこから個々の技名を決めていきました。
田浦:結果的に、技名によって『NieR:Automata』に新しい設定が生まれたともいえますね。
──ビジュアル面についてのオーダーはなかったのでしょうか? たとえばヒップについてなど。
ヨコオ:そんなにはありませんでしたよ。
田浦:プラチナゲームズからオーダーをする前に、すでにいいモデルができあがっていましたからね。
ヨコオ:ただ、プロポーションの落としどころだけは事前に相談しましたね。『SOULCALIBUR VI』って肉付きのいいキャラが多いんですよ。たいして、『NieR:Automata』の2Bはかなりスレンダーにデザインしていますので、そのままのプロポーションで登場させてしまうと違和感がものすごいんです。なので、ほかのキャラと対峙しても自然で、なおかつ2Bらしい丁度いいラインを作ってもらいました。できばえにはものすごく満足しています。
──たしかに、よく見ると『SOULCALIBUR VI』の2Bは少しだけ肉付きがいいですよね。
ヨコオ:少しだけマッシブ。でも、そこがいい。
齊藤:肉付きもそうなんですけど、影の付け方のせいか、本編よりもちょっとセクシーに見えるんだけど、俺だけかな(笑)。
田浦:わかります! じつは自分は『NieR:Automata』では2Bのお尻を見ても平然としていられたんですけど、『SOULCALIBUR VI』の2Bのお尻を見ているとなんかこう……あるんですよね(笑)。
高橋:お尻や胸元はじつは少しセクシーに見えるように、影の付け方を調整しています。もちろん、最初は他社さんのキャラをお借りしているなかでセクシャルな表現に踏み込むことにためらいはありました。ただ、『NieR:Automata』スタッフの方々にオススメの技を挙げてもらったなかに、素手で空中から突進する技が挙がっていて、チョイスの理由を聞いたら「お尻が見えるから」と返答がありまして。「ああ、そこに踏み込んでも大丈夫なんだな」と察しました(笑)。
──2Bファンのなかには、お尻が好きって人も多いですからね(笑)。それも国内外を問わず。
高橋:そうですね。自分もイチファンですから、お尻のファンが多いことも知っています。だからこそ、そこにこだわらなければファンに申し訳が立たないと考えて調整を重ねました。
ヨコオ:デザインの相談でひとつ覚えているのが、“クリエイション”に関してですね。『SOULCALIBUR VI』にはクリエイションモードがあって、自分でキャラを作ったり、既存キャラのコスチュームを変更したりできます。そのクリエイションで2Bの衣装を変えられるようにしていいか、それとももともとのコスチュームの色だけ変えられるようにするかという“2Bをどこまでユーザーが自由にいじっていいのか”について、相談があったんです。
──コスチュームひとつで受ける印象は大きく変わりますもんね。
ヨコオ:そうなんですよ。僕は「いっそ全裸にできるようにしてください」とオーダーを出させてもらいました。ただ、なぜか全裸にはできないそうです。不思議だなあ。原作サイドはOKなのに。
齊藤:不思議も何も、それはダメでしょう(笑)。
高橋:さすがに怒られてしまうので、全裸は無理でした(笑)。ただ、ニーアチームのみなさんに「好きにしていいよ」というお墨付きはいただいたので、2Bはクリエイションで衣装の変更もできるようになっています。そのほか、せっかく着せ替えができるので、前作にあたる『ニーア レプリカント』のカイネの衣装をクリエイション用のパーツとして用意させてもらいました。
大久保:世の中にはレーティング審査というものがあるもので……。2Bしかり、カイネの衣装しかり、高橋があまりにギリギリを攻めるのでひやひやしました。結果としていろいろありましたが、無事に原作のカイネそのままの衣装を用意することができたことは、自分としてもうれしいです。
──対戦格闘ということで、2Bに2Pカラーが用意されていますよね。色のチョイスが斬新というか、イメージががらりと変わりました。
高橋:最初はこちらで元々の2Bのイメージを崩さないものを2Pカラーとしてデザインしました。ただ、それを見せたら「もっと大きく変えてほしい」というお話が来まして。
ヨコオ:当初もらったデザインは、通常の2Bのまま衣装を白ベースにアレンジしただけのものでした。ですが、せっかくの機会なので、もっと新しい2B像が生まれたほうが僕たちとしてもうれしいし、ファンも楽しいですよね。そこで「遠慮せずに肌の色や髪の色も全部ひっくり返してほしい」とお願いしたんです。
──それがいわゆる“2P”である、と。ちなみに2Pの“P”にはどんな設定があるんでしょう?
ヨコオ:そこはまだ考えていませんでした……。いいんじゃないですかね、なんでも。
齊藤:“パワー”とか、そんな感じ?
ヨコオ:“パ●●ニック”とか……。
田浦:ええっ? それはあまりに雑すぎません?
ヨコオ:いいでしょ、世界的に有名だし。“2PのPはパ●●ニックのP”ということで!
──ものすごい後付け設定だ……(苦笑)。ちなみに『NieR』本編に登場した小型剣、大型剣、槍、格闘という4種類の武器はすべて使えるのでしょうか?
高橋:「白」シリーズの4種類はすべて使えますよ。あと、小型剣と大型剣に関してはクリエイションで不死鳥の短剣や鉄塊といった、原作に登場した別の武器に切り替えることも可能です。
ヨコオ:鉄パイプも登場します(笑)。すごいシュールですよね、鉄パイプと鉄塊の持ち合わせ。
高橋:自分は舞台「ヨルハ」の4号がすごく好きなので、配信後はクリエイションで4号っぽい青年を作って遊ぼうと考えています(笑)。
──2Bは対戦格闘ゲームのキャラとして、どんな性能になっているのでしょう?
高橋:先ほどお話したとおり、4種類の武器を使い分けて戦うキャラクターです。ポッドによるガトリング砲などの遠距離攻撃もありますので、どんな間合いでも戦えます。
齊藤:えっ、強そう! やっぱり大会のレギュレーションとかで使えなくなったりしません?
高橋:大丈夫です(笑)。いろいろな間合いで戦えるぶん、近距離戦を得意とするキャラと密着して戦ったりすると分が悪いですから。少し距離を取ったくらいが一番動きやすい間合いですね。原作どおりの高速移動も行えますので、少し離れた間合いから一気に近づいて攻撃を仕掛け、すぐに相手と距離を取るといったヒット&アウェイを意識できれば強力です。
──対戦格闘ゲームに慣れていない人に向けて、何か簡単な使い方を教えてくれませんか?
高橋:はい。まず□ボタンを連打すると原作のスピードアタックが、△ボタンを連打するとヘヴィアタックが繰り出せるので、これを使い分けるだけでも2Bらしく戦えます。そして相手と距離が離れたらL1ボタンでポッドを呼び出すのがオススメですね。ただ、『SOULCALIBUR VI』の対戦では相手に攻撃をガードされたあとは、相手のほうが先に攻撃や移動を行えます。そんなときに便利なのがR1ボタンで出せる“リバーサルエッジ”です。
──リバーサルエッジですか……具体的にはどのようなアクションなんですか?
高橋:リバーサルエッジはボタンを押しっぱなしにしている間、ほぼどんな攻撃でも受け流してくれるガードアクションです。さらに、相手の攻撃が終わったと思ったときにボタンを放せば、自動的に反撃までしてくれるので強力です。
──ものすごく便利なアクションなんですね。
高橋:スピードアタックやヘヴィアタックを主軸に戦い、相手の攻撃のターンだと思ったらリバーサルエッジを出す。これだけで初心者さんでもかなり気持ちよく駆け引きできると思います。
ヨコオ:2Bに触れた『ニーア』ファンが次に別のキャラを使いたいとなったときのオススメとかありますか?
田浦:ソン・ミナです。むしろ2Bの前にソン・ミナを使いましょう。すごくかわいいのでね。
高橋:え、えっと……。
ヨコオ:田浦さんはソン・ミナが好きですね(笑)。高橋さんが困ってる。ドン引きしている人間の表情ですよこれは。
高橋:とんでもない、うれしいですよ(笑)。ただ、2Bを使うと近距離でスピーディに立ち回る気持ちよさを体験できますから、逆に一撃の重さを楽しんでみたいと思ったら、ナイトメアというキャラクターがオススメです。あと、別の視点で考えると、コラボイラストにも描かれているアイヴィーもいいと思います。彼女はかなり遠距離戦が得意なキャラなので、2Bを使っていると戦いにくい側面があります。そこで逆に、自分でアイヴィーを使ってみると操作感の違いが楽しめますし、アイヴィーの弱点も見えてくるでしょう。そこで再び2Bを使ってもらえれば、アイヴィーに対しても立ち回りやすくなりますよ。
──アイヴィーはティザームービーやコラボイラストで2Bと共演していますよね。2人にフィーチャーした新規ストーリーなどもあるのでしょうか?
大久保:明確なストーリーは設けていませんが、試合開始前などに2Bには特定のキャラクターとの専用のセリフを用意しています。そのあたりからユーザーさんが好きなように『SOULCALIBUR VI』の世界に来た2Bの物語を想像してもらえれば。
──ちなみに、ボイスは新規収録なのでしょうか?
ヨコオ:ボイスは新録ですね。ただ、対戦格闘ゲームではキャラクターがはっきりしゃべることが多いですが、2Bは原作を重視してあまりはっきり声を出さず、声のボリュームも落としてもらいました。もともと根暗な子なので(笑)。
高橋:ポッド042と2Bの2人ぶんに加えて、ピンチ時のボイスも別に用意したのでかなりのデータ量になりました。
──ピンチといえば、衣装が破けることもありますよね。
高橋:『SOULCALIBUR VI』では、どのキャラも特定条件で衣装が破損するようになっています。2Bにもその仕組みを搭載していまして、下半身はスカート、頭部は眼帯がなくなったりします。
ヨコオ:『NieR:Automata』では2Bの素顔をアップで見る機会はあまりないので、かなり貴重ですよ。
──今回のコラボを見て、『NieR:Automata』本編での対戦格闘が期待されるかもしれませんね。
ヨコオ:『SOULCALIBUR VI』があるし、いらないですよ(笑)。
田浦:それこそ、バンダイナムコエンターテインメントさんにリリースしてもらうくらいしか(笑)。
齊藤:DLC第30弾くらいで、『ニーア』からほかのキャラクターも出してもらいましょうか。
大久保:そんな予定は少なくとも今のところないです(笑)。
高橋:作らせてもらえるなら、パスカルもエミールも、本当に誰でも作りたいですけどね……。
ヨコオ:大久保さんの目が泳いでいる(笑)。
大久保:次は『エースコンバット』に飛行ユニットが出るってことでいいんじゃないですかね。
齊藤:じゃあ、今度その契約をまとめましょう(笑)。
──あっちで河野さんも苦笑いですよ(苦笑)。
高橋:自分としても、ぜひ期待したいですね!
──高橋さんの愛がすごい……。大久保さんは高橋さんの制御に苦労したりされたのでは?
大久保:そうですね。でも、彼を信じてもいますので。できあがってから、これは危ないと思ったものを削ったり、おとなしくさせたりするのが自分のおもな役割でしたね。ただ、本当に危険なものは高橋は最後まで見せてくれないんですよね。だいたい調整が間に合わないタイミングになってから「じつははこんなものが」と……確信犯的に(笑)。
高橋:たまたまですよ(笑)。ただ、実際開発スケジュールがカツカツななか、いろいろやらせてもらいましたね。監修についても厳しいスケジュールでお願いしましたし、BGMもMONACAさんに新たに作っていただけて、自分にとっては夢のようです。
田浦:それは僕にとっても同じですね。中学時代にドリームキャストで初代『ソウルキャリバー』をプレイしていた自分に「やったぞ!」って言ってあげたい。それぐらい『ソウルキャリバー』にかかわれただけで夢心地です。こだわりを持って2Bを作ってもらえたことに感謝しています。
ヨコオ:正直、『SOULCALIBUR VI』の2Bはものすごくよくできています。『ニーア』のファンで『ソウルキャリバー』を知らない人でも、2Bを操作するだけでソフト代の元が取れるといってもいいくらい。そのうえいっぱいほかのキャラクターがいて、お値打ちなゲームだと思いますので、興味を抱いてもらえた方はぜひプレイしてもらえれば。
齊藤:『NieR:Automata』がリリースされてしばらくたった今、新しい2Bに出会う機会って早々はないと思うんですよ。極端な話をすると『ソウルキャリバー』の2Bが最後の2Bかもしれません。ですから、今まで対戦格闘を遊んだことがなかった人も、この作品でぜひ新しい2Bに出会ってみてほしいですね。
高橋:今回ゲストキャラクターを作るなかで、いろいろなわがままを聞いてもらい、しかも2Bという素晴らしいキャラクターを登場させてもらえたことをうれしく思っています。『NieR:Automata』スタッフのみなさん、本当に、本当にありがとうございました。そしてファンのみなさん、よろしければプレイしてみてください!
大久保:パリゲームズウィークでこのコラボについてアナウンスする際、一定の反響があることは予想していましたが、フタを開けてみたら予想以上に喜んでいただくことができました。『SOULCALIBUR VI』自体、開発スタッフの力もあってすごく高評価をいただいており、対戦格闘としての個性付けも成功したと思っています。『NieR:Automata』のファンの方にもぜひ触れてみてほしい作品だと自信をもって言えますね。
──対戦格闘ゲームを遊んだことがない人にこそ、手に取ってみてほしいですよね。
大久保:そうですね。じつは『SOULCALIBUR VI』って、本気で戦うプレイヤーさんもいる一方で、ライトに、いわゆるガチャプレイで戦って楽しんでいる層も少なくないんです。だから、まずは怖がることなく遊んでみてください。2B自体、ボタン連打での攻撃回数が多いなど『SOULCALIBUR VI』のキャラクターのなかでもライトに遊べるキャラに仕上げていますので、どうぞよろしくお願いいたします!
──みなさん、本日はどうもありがとうございました!
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