2019年1月8日(火)
ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回は、PC向けに日本語版が配信されている『Mutant Year Zero: Road to Eden』のプレイレポートをお届けします。
『Mutant Year Zero: Road to Eden』は、核兵器の使用によって人類の文明が滅んだポストアポカリプス、本作においてはミュータントが主人公であるため“ポストヒューマン”と冠された世界観が特徴のタイトルです。
『X-COM』ライクな戦闘を打ち出しており、バトルシステムはターン制SLGで、戦術性を問われる歯応えと遊び応えを楽しめます。ただし、ステルスを深く追求して主軸に据えたゲームデザインが、『X-COM』とはひと味違う遊びを体験させてくれるでしょう。また、ゲームの進行としてはRPGのプレイ感に近いところもあります。
▲ポストアポカリプスの世界観であるため、敵はグールやロボット。 |
本作をプレイして、そのアクの強さで筆者の心を鷲づかみにしてきたのが、人ならぬミュータントを主役にした物語と世界観です。
▲病気の蔓延と核によって世界が滅んだ後、人々はアークと呼ばれる居住地で細々と生きながらえています。 |
▲居住地の外側“ゾーン”に出て、文明の残骸から生活に必要な資源を拾ってくる役割のストーカー。主人公のミュータントたちもこのストーカーです。 |
視点人物はイノシシの姿をしたミュータントのボーミンで、彼を演じるEnzo Squillino Jr.氏の声は何とも渋い!
最初は見た目とのギャップに驚きながら、物語を通じて描かれるハードボイルドでシニカルなボーミンの性格に惹かれ、ゲームを進めると外観とのギャップも味わい深さに変わっていきます。
▲「俺は変な姿をしてる。でもな、俺から見ればあんたたちが変な姿をしてる。だからほっといてくれ」と語るボーミン。ゲームを進めると、むしろかっこよく見えてきます。 |
とはいえ、彼に思い入れを持てるかは人によるかもしれません。豚の丸焼きを見たボーミンが「気分が悪くなってきた」と吐き捨てる場面もあるくらいで、イノシシだから当然、外観は豚に似ていますし(笑)。
それでも、口は悪いが人間味にあふれたミュータントの存在が、人類文明の崩壊した世界でもっとも人間らしく描かれる皮肉は、世界観と物語をとても魅力的に見せています。「玉座ってのは危険人物の尻の置き場だ」などの表現で添えられるビターな洒落の効いたセリフも、ゲームの世界に引き込んでくれるエッセンスです。
ポストアポカリプスや○○パンクと表現される世界観は、歪んだ社会への皮肉や現代への風刺を含むところが、おもしろさの1つでもあると思いますが、そうした魅力は本作からも十分に感じられるでしょう。
▲アークで店を営む人々も、ひと癖あるキャラクターばかりです。 |
なお本作は、『ミュータント』シリーズと呼ばれるスウェーデン生まれのテーブルトークRPGを題材にしたゲームで、『Mutant Year Zero』は2014年に発行されたルールブックの英題です。デラックスエディションには、そのデジタル版が付属します。
本作は、基本的にマップを攻略してストーリーを進めていきます。1つ1つのマップはそれなりの広さがあり、SLGのステージというよりRPGのフィールドに似ていて、探索しながらアイテムや装備品、世界設定にかかわる小物などを発見できます。ただし戦闘は、マス目で区切られたターン制SLGバトルです。
物語、探索、戦闘のサイクルで進むプレイ感は、多分にRPG的です。ステルス行動によって非戦闘時のほうがプレイ時間は長いので、そこもプレイのRPG感を強める一因かもしれません。なお、公式のジャンルはタクティカルアドベンチャーと銘打たれ、“戦術”と“冒険”が主要なゲーム性であることが表現されています。
非戦闘時(ステルス時)はターン制でなくリアルタイムに移動でき、マップ全体を探索をしつつ敵に接近しながら、その戦力や配置を確認していきます。いわゆる索敵です。
▲ライトのオン・オフによって敵の感知範囲が変わるので、息を潜めて敵の近くを通るような場合は、ライトを消して移動します。 |
巡回する敵や移動しない敵など行動を見極め、孤立している敵がいるようなら各個撃破で数を減らすのが基本。ただし、敵に発見されると多勢に無勢で勝ち目がないので、“ステルス状態を維持したまま”というのがキモになります。
▲巡回する敵はどこかで孤立するので、待ち伏せて撃破。数を減らせば動かない敵が孤立することもあるので、徐々に敵の戦力を削って勝利をつかみ取る! |
索敵して敵の陣容を調べ、数に勝る敵をどう打ち崩すかを考え、慎重にそれを実行していく。そのすべてが“ステルス”を軸に成立しているので、ステルスの緊張感とSLGの戦術性が見事に噛み合い、独自のおもしろさを持つゲームプレイを体験できます。
序盤はマップ内を道なりに進んで小さなハードルを乗り越えていきますが、プレイヤーがゲームに慣れた中盤からは、一戦も交えずにマップ全体を索敵できることがほとんどのため、マップ全体に対してどうアプローチするかという戦術の自由度が高いです。
ストーリーと無関係に立ち寄れる“寄り道”的なマップも含め、敵の配置と地形は“そのマップだけのシチュエーション”として練り込まれているので、1つ1つのマップに遊び応えを感じられると思います。
そのぶん、手に入るリソースは有限となるので、闇雲に使ってしまうと後悔するかもしれません。本作は武器の改造が可能ですが、ステルス状態を維持することが何よりも重要なゲームなので、筆者は無音武器を優先的に改造してプレイしました。
カスタマイズ要素は当然キャラクターにも用意されていて、5人いるキャラクターのそれぞれが固有のミューテーション(スキル)ツリーを持っています。
セットできるミューテーションは各カテゴリ1つなので、複数のミューテーションを修得したうえで敵の配置や地形によってセットするミューテーションを変えることも戦術の一環になってきます。
▲1度の攻撃で2発撃てる“ツイッチショット”や、隠れているとクリティカル率が2倍になる“サイレントアサシン”は、無音武器で攻撃する際に重宝するはず。 |
難易度はノーマル、ハード、べリーハードの3種類あって、ゲーム開始後も変更可能です。筆者の場合は、デフォルトでハードにカーソルが合っていたのでそのまま始めたら、回復薬の手持ちが厳しくなったため、途中でノーマルに下げてプレイしました。
ノーマルは薬の消費が少ないのでリソース管理はかなりラクですが、中盤以降になると、戦闘の歯応えをわりと楽しめると思います。難易度の話なので、人それぞれではありますが。
▲ちなみに本来のゲーム体験として作られた難易度は、ベリーハードとのことです。 |
本作をプレイして少し勿体ないと感じたのは、共通効果のミューテーションや実質的に必須のミューテーションがあることで、キャラクター育成の部分が少し弱く感じたところです。また、バトルメンバーは5人の中から3人を選ぶので、5、6人かそれ以上のユニットを動かすSLGが好きな人は、やや寂しく感じるかもしれません。
ただ、人数に関してはステルスを主体にしたゲーム性と、それを踏まえたバランスを考慮すると仕方がないのかなと。緊張感とおもしろさを一番感じるのは、敵をひっそりと1体ずつ葬り去っている時で、正面からだと勝てない敵をじわじわと追い詰めていく感覚は、相手を罠にはめるようなサドっ気を刺激します(笑)。
▲多くの敵に守られていたボスも、お前1人だ! 追い詰めた敵にトドメを刺す瞬間もまた気持ちいい。 |
もちろん、ミュータントの視点から描かれる物語と世界観も、独自の魅力を放っています。言うなれば珍味のように、“癖”の部分が人を選びつつも刺さる人には刺さる、そんなゲームだと思います。
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